『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
改めてハジメは思う。どれだけコイツは非常識なんだ、と。
自分が信頼してた友人は最初から自力での帰還を模索していた。
彼から聞いた言葉は、彼の計画していた手段の模索の前提。
彼が僅かな間でも京矢がイシュタルという老人の言葉に従ったのもクラスメイト達が一時的にでも守られているという状況を確認するためだった。
力を存分に発揮して、時に実戦経験豊かな騎士と互角に渡り合い、人類の希望の勇者さえ終始圧倒したのも、それは今回の迷宮の探索を利用して単独で自由に動くために死んだふりをする序でに、光輝の無駄なカリスマによって扇動されてしまったクラスメイト達に冷や水を浴びせて冷静さを与えるためだった。
最も強い京矢も死ぬ時は死ぬ。
その事実に、
現実として存在する死に、
戦う事に、
怯えて貰うために。
まあ、予想としては光輝とそれに追随する龍太郎の京矢が真っ先に見捨てる事を決めた二人を先頭に数名が戦う事を続ける可能性も予想していたが、それはそれ、そうなるであろう数人はトップの戦闘力の持ち主達なので問題ないだろうと考えていた。
雫が上手くストッパーになってくれると思ってたし。
「ってのが、オレが立ててた計画だった訳だ」
目的は同じ、ハジメはユエと二人だけで、京矢は元檜山一味と光輝と龍太郎の二人を置いてクラスメイト全員で、と言う違いはあるが自力での帰還の方法を探すと言う違いはあるが。
「まあ、目的は同じだから協力もいいけど、なんでそいつらだけ除外してんだ?」
「いや、だってあの、都合のいいことしか見てない自分勝手な正義バカと、その御都合主義のイエスマンのコンビだろ? 『イシュタルさんのことを信じられないのか!?』とか言って絶対邪魔するだろ」
なお、バカ二人残して早々死なれたら夢見が悪いので、弱いものイジメが好きな連中を残して存分に最大規模のケンカを楽しんでもらおうと檜山一味を残した訳だ。
帰還の邪魔をされては堪らないので最初から光輝と、真っ先に光輝に言うであろう
「ぷっ」
京矢の光輝のモノマネに吹き出してしまうハジメ。そして、二人して光輝をネタにして大笑いを始める。
なお、二人は知らない事だが、『二人の死を無駄にしない為にも』と演説しているが、浴びせられた死の恐怖と言う絶対零度の冷水で大半のクラスメイト達の頭が冷えてしまったのも有り、誰も光輝に追随しようとしない。
序でに京矢の計算外は一つ有った。
このクラスにおける京矢の影響力だ。元々女子を中心に人気があった上にこの世界に来てから見せた実力。剣聖と言う前例の無い天職のスキルとして見せた技の数々、京矢が居ればイケると思わせるには十分な活躍を見せた。
だが、そんな京矢でさえ死んだ。しかも、誰かが檜山が撃った魔法が二人を落としたと証言した時、犯人として挙げられた檜山を全員が混乱の中で責める。死人に口なし、光輝が責める者たちをなだめようとするが、最終的には残りの檜山一味に恨みの矛先が向いたほどだった。
恐怖から引きこもろうにも無理矢理部屋から引きずり出された者もいた程だ。
光輝をネタに爆笑していた二人が落ち着くと、今後の目的を話し合う。
「まあ、オレ達の目的が僅かながらでもズレるのは、全部帰還方法を見つけてからの話だからな」
「そうだな、帰る方法を見つけてからでも遅くは無いか」
「まっ、最悪は先に帰ったお前が最悪妹や
セフィーロ経験者の魔法騎士達になんとか出来るかは分からないが、向こうにいる仲間に連絡が伝われば向こうからも帰還方法を探ってくれるはずだ。
「……
ふと、そんな疑問が湧いてくる。そもそも、義理の妹は居るはずだし会った事もあるのだが、ハジメの記憶では京矢に姉なんていなかった筈だ。
「ああ、オレがそう呼んでるだけで姉って訳じゃ無いぜ」
そう言えばハジメと会ったことは無かったと思いながら、ガチャから呼び出した二人目と三人目の人間の名前を挙げる。
「『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』とその妹の『セレナ・カデンツァヴナ・イヴ』。妹と同じくオレの力やらの事を知ってる知人なんだ」
主に、プレシア・テスタロッサが主犯となって行われたジュエルシードの一件の終盤に呼び出すことに成功した二人で有る。
闇の書の事件の折にはアガートラームのシンフォギアも入手出来たのでガイソーグの仲間として正体を隠して参戦もしてもらった。
「はぁ!? いや、マリア・カデンツァヴナ・イヴってあの歌手の!?」
「ハジメ……知り合い?」
「ああ、オレ達の世界の有名なトップアーティストなんだよ」
思いもしなかったビッグネームが出てきた事に驚愕を露わにするハジメ。
まさか自分の友人とトップアーティストと知り合いが言う事に本当に驚いてしまった。
既にこの時点でハジメの頭の中から檜山の存在は吹っ飛んでいまっていた。
「あー、そう言えば雫の奴がファンだって聞いたからサイン入りのCDを貰ったけど、お前には教えてなかったな」
「ああ、初耳だよ」
驚きすぎて疲れたと言う顔で京矢の言葉に返すハジメ。
友人が変身ヒーローで、巨大ロボも持ってて、地球が実は最近二度も滅びかけて、トップアーティストと知り合い。
これ以上は驚き過ぎで身が持たないと、もう本気で追求するのは辞めたハジメだった。
「最後に一つ聞いて良いか? どうやって、檜山の奴を道連れにしたんだ?」
「あー、それはな。……明らかにオレを狙った攻撃だったんで、反射的に攻撃された先にカウンターの鬼勁って技を打った」
「そうか」
京矢が剣士系の天職でありながら中距離のスキルを持って居る事は知っていたし、その中の技の一つに似た名前の物が有ると言っていた筈だ。その派生技なのだろうと思う。
その後はハジメ側のユエとの出会いを始まりとした事情説明となったのだが、その辺は割愛させて貰う。
「そっちは大変だったみたいだな。悪いな、せめてオレが同じ所に落ちてれば助けてやれてたってのに」
「そりゃ、お互い様だろ。お前だってオレを助けようとしなかったらこんな奈落の底に落ちなかったのに」
「さあな、檜山の奴からは恨まれてる自覚は有るからな。助けようとしなくても別の機会に命狙われただろうぜ」
そりゃ、露出狂の変態のレッテルを貼られれば誰だって恨むだろう。
「まっ、どっちにしても単独行動するために雲隠れする予定だったんだ、オレのことは狙い通りになった、その程度の事だぜ」
魔物の攻撃に巻き込まれて落ちる予定だったのがクラスメイトの攻撃によってになったのは問題だが、その程度の差でしかない。
寧ろ、雫が無茶をしてないかが心配なのだが、初日の内にコッソリとある程度の相談事はしておいたので、心配をかけた事を含めて後で謝っておこうと思う。
「それはそうと、手持ちの変身アイテムはまだ有るから、安全な所に出たらお前も使えそうな奴やろうか?」
「マジかよ!? 約束だからな!?」
自分向けではないライダーシステムはあるので、それらを渡したところで問題はないだろうと考えながら、オッケーという返事を返す京矢。
迷宮制覇に向けて改めて意識を向けるのだった。