『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝   作:ドラゴンネスト

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「ええ~い、あげないって言ってるでしょ! もう、帰れ!」

 

なお、ジリジリと迫ってくるハジメに、ミニ・ミレディは勢いよく踵を返すと壁際まで走り寄り、浮遊ブロックを浮かせると天井付近まで移動する。

 

「逃げるなよ。俺はただ、攻略報酬として身ぐるみを置いていけと言ってるだけじゃないか。至って正当な要求だろうに」

 

「それを正当と言える君の価値観はどうかしてるよ! うぅ、いつもオーちゃんに言われてた事を私が言う様になるなんて……」

 

「ちなみに、そのオーちゃんとやらの迷宮で培った価値観だ」

 

「オーちゃぁーーん!!」

 

「……」

 

そのオーちゃんの迷宮での自分宛の試練が物凄くハードモードになってしまったことを思い出して複雑な表情を浮かべてしまうが、特にハジメを止める気の無い京矢はミニ・ミレディの行動に嫌な予感を感じて身構えていた。

 

そんなハジメに呆れた視線を向ける京矢を他所に、今までの散々弄ばれた事を根に持っていたユエとシアも参戦し、ジリジリとミレディ包囲網を狭めていく。

半分は自業自得だが、もう半分はかつての仲間が創った迷宮のせいという辺りに何ともやるせなさを感じるミレディ。

 

「はぁ~、初めての攻略者がこんなキワモノだなんて……もぅ、いいや。君達を強制的に外に出すからねぇ! 戻ってきちゃダメよぉ!」

 

今にも飛びかからんとしていたハジメ達の目の前で、ミニ・ミレディは、いつの間にか天井からぶら下がっていた紐を掴みグイっと下に引っ張った。

 

「「「?」」」

 

一瞬、何してんだ? という表情をするハジメ達。だが、その耳に嫌というほど聞いてきたあの音が再び聞こえた。

 

ガコン!!

 

「「「!?」」」

 

そう、トラップの作動音だ。

その音が響き渡った瞬間、轟音と共に四方の壁から途轍もない勢いで水が流れ込んできた。正面ではなく斜め方向へ鉄砲水の様に吹き出す大量の水は、瞬く間に部屋の中を激流で満たす。同時に、部屋の中央にある魔法陣を中心にアリジゴクのように床が沈み、中央にぽっかりと穴が空いた。激流はその穴に向かって一気に流れ込む。

 

慌てて京矢達に警告を送ろうとするが、既にエンタープライズとベルファストは四次元ポケットの中に避難し、京矢はブレイドに変身していた。

 

「鳳凰寺?」

 

「いや、そこに強制排除用のトラップのスイッチとかありそうだな? なんて思ってな」

 

既に何かあった時の対策をしていた京矢に抗議するような視線を向けるハジメ。最後の最後まで気を抜かない事と、相手のホームグラウンドでは相手の行動の大半は怪しむべきと言う過去の経験ゆえの対応ではあるが、

 

「嫌なものは、水に流すに限るね☆」

 

ウインクするミニ・ミレディ。

ユエが咄嗟に魔法で全員を飛び上がらせようとする。この部屋の中は神代魔法の陣があるせいか分解作用がない。そのため、ユエに残された魔力は少ないが全員を激流から脱出させる程度のことは可能だった。

京矢も京矢で飛行可能なジャックフォームに変身することも出来たが、多少屈辱的だが楽に外まで運んでもらおうと敢えて抵抗はしない。

 

「〝来…〟」

 

「させなぁ~い!」

 

しかし、ユエが〝来翔〟の魔法を使おうとした瞬間、ミニ・ミレディが右手を突き出し、同時に途轍もない負荷が京矢達を襲った。

 

「あいつの神代魔法は重力だから、やっぱり、この状況で逃げるのは無理だったか」

 

「分かってたなら、もっと早く言えよ!?」

 

こうなると予想していて観念した声を呟く京矢にツッコミを入れるハジメ。

上から巨大な何かに押さえつけられるように激流へと沈められる。京矢の予想通り重力魔法で上から数倍の重力を掛けられたのだろう。

 

「それじゃあねぇ~、迷宮攻略頑張りなよぉ~」

 

「ごぽっ……てめぇ、俺たちゃ汚物か! いつか絶対破壊してやるからなぁ!」

 

「ケホッ……許さない」

 

「殺ってやるですぅ! ふがっ」

 

「覚悟してたが、これだけは行っておく……次に会ったら覚えてろ!」

 

京矢達はそう捨て台詞を吐きながら、なすすべなく激流に呑まれ穴へと吸い込まれていった。

穴に落ちる寸前、ハジメから何かを受け取った京矢だけは仕返しとばかりに何かを投げたようだが。

彼等が穴に流されると、流れ込んだときと同じくらいの速度であっという間に水が引き、床も戻って元の部屋の様相を取り戻した。

 

「ふぅ~、濃い連中だったねぇ~。それにしてもオーちゃんと同じ錬成師、か。ふふ、何だか運命を感じるね。願いのために足掻き続けなよ……さてさて、迷宮やらゴーレムの修繕やらしばらく忙しくなりそうだね……ん? なんだろ、あれ」

 

汗などかくはずもないのに、額を拭う仕草をするとミニ・ミレディは流されて行った京矢達を見送りながらそう独りごちる。

そして、ふと視界の端に見慣れぬ物を発見した。壁に突き刺さったナイフとそれにぶら下がる黒い物体。何だろう? と近寄る。

 

黒い物体、それは京矢が過去にガチャで大量に手に入れたハズレアイテムの一つ『時限バカ弾』だ。

ドラえもんに登場するバカバカしい道具の一つ。物が物だけに使い道がなくとも下手に処分もできないために数が貯まった単なる悪戯グッズだが、穴に落ちる寸前でせめてもの仕返しにとハジメから受け取ったナイフに括りつけた時限バカ弾を投擲したのだ。

一応爆発物だと気付かずに手にとってマジマジと見てしまうミニ・ミレディだったが、時すでに遅し。ミニ・ミレディが危険に気がついて踵を返した瞬間、白い部屋がカッと一瞬の閃光に満たされ、ついで激しい衝撃に襲われた。

 

『ベロベロバァー、オッペケペッポーペッポッポー、アジャラカモクレン! パッパラパー! スイスイスーダララ、ギッチョンチョンのパーイパイ!』

 

迷宮の最奥に、馬鹿踊りする女の叫び声とその後に自分の行動を認識して羞恥のあまり「ひにゃああー!!」という女の悲鳴が響き渡った。

 

物理的被害を与えなかっただけ感謝しろと仮面の奥で笑みを浮かべていた京矢がいたことを追記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、汚物の如く流された京矢達は、激流で満たされた地下トンネルのような場所を猛スピードで流されていた。息継ぎができるような場所もなく、ひたすら水中を進む。

何とか、壁に激突して意識を失うような下手だけは打たないように必死に体をコントロールした。

 

京矢はブレイドのシステムに守られている為にハジメ達よりも余裕はあるが、それでも下手に壁に激突してベルトが外れて変身解除というのは洒落にならないだろう。

 

壁に激突しそうなハジメ達をフォローしつつも、擬人化された艦船である二人を早めに四次元ポケットの中に避難させて良かったとも思う。

 

と、その時、京矢達の視界が自分達を追い越していく幾つもの影を捉えた。

それは、魚だった。どうやら流された場所は、他の川や湖とも繋がっている地下水脈らしい。

ただ、流されるハジメ達と違って魚達は激流の中を逞しく泳いでいるので、どんどんハジメ達を追い越して行く。

 

その内の一匹が、いつの間にか必死に息を止めているシアの顔のすぐ横を並走ならぬ並泳していた。何となし、その魚に視線を向けるシア。

 

目があった。

 

魚と。いや、魚ではあるが人間の顔、それもおっさん顔の目と。何を言っているかわからないだろうが、そうとしか言い様がない。つまり、シアと目があった魚は人面魚だったのだ。

どこかふてぶてしさと無気力さを感じさせるそのおっさん顔の人面魚は、あの懐かしきシーマ○を彷彿とさせた。

 

驚愕に大きく目を見開くシア。思わず息を吐きそうになって慌てて両手で口元を抑えた。しかし、驚愕のあまり視線を逸らすことができない。シアとおっさん(魚)は見つめ合ったまま激流の中を進む!

 

と、永遠に続くかと思われたシアとおっさん(魚)の時間は、唐突に終わりを迎えた。シアの頭に声が響いたからだ。

 

―――― 何見てんだよ

 

舌打ち付きだった。今度こそシアには耐えられなかった。水中でブフォア! と盛大に息を吐き出してしまった。もしかすると、このおっさん(魚)は魔物の一種なのかもしれない。そして〝念話〟のような固有魔法を持っているのかもしれない。だが、それを確かめる術はなく、おっさん(魚)はスイスイと激流の中を泳ぎあっという間に先へ行ってしまった。

 

後に残されたのは、そうなったその経緯を彼女しか知らずに、白目を向いて力なく流されるウサミミ少女だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町と町、あるいは村々をつなぐ街道を一台の馬車と数頭の馬がパッカパッカとリズミカルな足音と共にのんびりと進んでいた。もちろん、その馬上には人が乗っている。冒険者風の出で立ちをした男が三人と女が一人だ。馬車の方には、御者台に十五、六歳の女の子と化け物……もとい巨漢の漢女が乗っていた。

 

「ソーナちゃぁ~ん、もうすぐ泉があるから其処で少し休憩にするわよぉ~」

 

「了解です、クリスタベルさん。」

 

クリスタベルと呼ばれた漢女は、何を隠そうブルックの町でユエとシアが世話になった服飾店の店長である。そして、そのクリスタベルと隣に座る少女は、〝マサカの宿〟の看板娘ソーナ・マサカである。序でに冒険者風の男達は京矢と仲良くなったヒャッハー三兄弟である。

何やら常に驚愕してそうな名前だが、ちょっと好奇心と脳内の桃色成分が多いだけの普通の少女だ。

 

この五人、現在、冒険者の護衛を付けながら、隣町からブルックへの帰還中なのである。

クリスタベルは、その巨漢からも分かる通り鬼強いので、服飾関係の素材を自分で取りに行く事が多い。今回も仕入れ等のために一時、町を出たのだ。それに便乗したのがソーナである。隣町の親戚が大怪我を負ったと聞き、宿を離れられない両親に代わって見舞いの品を届けに行ったのだ。

冒険者のヒャッハー三兄弟は任務帰りなので、ついでに護衛しているのである。

 

ブルックの町まであと一日といったところ。クリスタベル達は、街道の傍にある泉でお昼休憩を取ることにした。

 

泉に到着したクリスタベル達が、馬に水を飲ませながら自分達も泉の畔で昼食の準備をする。

ソーナが水を汲みに泉の傍までやって来た。そして、いざ水を汲もうと入れ物を泉に浸けたその瞬間、

 

ゴポッ! ゴポゴポッゴバッ!!

 

と音を立てながら突如、泉の中央が泡立ち一気に水が噴き出始めた。

 

「きゃあ!」

 

「ソーナちゃん!」

 

悲鳴を上げて尻餅をつくソーナに、クリスタベルが一瞬で駆け寄り庇うように抱き上げヒャッハー三兄弟のもとへ戻る。

その間にも、噴き上げる水は激しさを増していき、遂には高さ十メートル以上はありそうな水柱となった。

 

この泉は街道沿いの休憩場所としては、よく知られた場所で、こんな現象は一度として報告されていない。それ故に、クリスタベルやソーナ、冒険者達も驚愕に口をポカンと開き、降り注ぐ雨の如き水滴も気にせず巨大な水柱を見上げた。

 

すると、

 

「どぅわぁあああーー!!」

 

「んっーーーー!!」

 

「…………」

 

噴き上がる水の勢いそのままに、五人……二人の人が悲鳴を上げながら飛び出してきた。

 

水が噴き上がる寸前で4次元ポケットの中から飛び出したエンタープライズが気絶していたシアを、ベルファストがユエを、ブレイドがハジメを受け止めて地面に降りる。

 

思わず「なにぃー!」と目が飛び出るクリスタベル達。クリスタベル達の前に降りたブレイドはゆっくりとバックルを外すと変身を解除する。

 

「「「「「「……」」」」」」

 

「な、何なの一体……」

 

言葉もない冒険者達とクリスタベル。ソーナの呟きが皆の気持ちを代弁していた。

 

「ふう……助かったな」

 

「そうだな、指揮官。それにしても……何故彼女だけこうなったんだ?」

 

白目を剥いているシアを一瞥しながら疑問を口にするエンタープライズ。

 

「それは解りませんが……。クリスタベル様、ソーナ様、お久しぶりです」

 

飛び出す際に濡れたメイド服のスカート部分の水気を絞っていたベルファストがソーナ達に気が付いて優雅な仕草で挨拶する。「あら? あなたたち確か……」と体をくねらせながら女性陣を記憶から呼び起こすクリスタベル。

 

その後、シアの人工呼吸で一悶着有ったが、自分達のいる場所が、ブルックの町から一日ほどの場所にあると判明し、ハジメ達も休息の為に町に寄って行くことにした。

クリスタベルの馬車に便乗させてくれるというので、その厚意に甘えることにする。濡れた服を着替え、道中、色々話をしながら、暖かな日差しの中を馬の足音をBGMに進んでいく。

 

新たな仲間と共に、二つ目の大迷宮の攻略を成し遂げたハジメと京矢。

馬車の荷台に寝転び燦々と輝く太陽を眩しげに見つめながら、京矢は、これからも色々あるだろう旅を思い薄らと口元に笑みを浮かべるのだった。

赤城(アズールレーン)はどちらのヒロインに

  • 京矢
  • ハジメ
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