『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝   作:ドラゴンネスト

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冒頭に075の加筆部分を改めて書いております。既読の方は飛ばしてお読みください。


077

???

 

「やれやれ、上手く行かないものだな」

 

「そうだよね~」

 

オルクスの迷宮の表層の91階。其処には岩を削った横穴の様な空間に場違いな近代的、否、未来的な光景が広がっていた。

風魔とダークゴーストと名乗った二人組の周囲には机とその上に置かれたプリンター。プリントアウトされた物を忙しそうに製本していく。さらにその目の前には空中に浮かぶモニターが複数存在していた。

 

一つのモニターには次々と作られていくハジメと京矢の走破した真なる大迷宮のマップ。

一つのモニターには各階層のモンスターのデータ。

一つのモニターには最新の迷宮の戦闘映像が映し出されていた。

 

回収した檜山の脳を中枢のコンピューターとして使い完成した戦闘用のマギア達、通称檜山ギア達が己や味方の犠牲を厭わずに、休みなく真のオルクスの大迷宮を走破し、そのデータを得ては彼らの元に送り、得たデータは保存し、同時にプリントアウト。第一陣が全滅しては第二陣がそのデータを元に最短ルートで攻略する。それを繰り返していた。(痛みのデータも檜山の元に送られているので情報の多さに発狂しては激痛で正気に戻るを繰り返している)

瞬く間に、引き返せないはずの真の大迷宮の地図と生息するモンスターの図鑑が出来上がっていく。

 

また、彼らの仮拠点を護衛するのは、オリジナルの戦闘データ及び人格データより再現された、四人の複製仮面ライダー。

複製されたゼロワンの時代に存在していた滅、迅、雷、亡の四人の指揮の元にこの世界の武器の様に見える装備を与えられた檜山ギア達が守り、迷宮の攻略用に当時のハジメよりも強力な銃火器で武装した檜山ギア達が次々と送り込まれていく。

 

オルクスの大迷宮完全攻略ガイド。

それを元に攻略した檜山ギア達が、先陣を追い抜くか合流し、マッピングとデータ化が進み、攻略本の完成度が増していく。

 

「彼女が来るまでに終えておきたかったんだがな」

 

「でも、大丈夫だよ~。半分は完成してるし~」

 

風魔の残念そうな言葉にダークゴーストがそう返す。少なくとも、未踏の領域のデータが50%も有れば値千金だろう。

 

「そう言えば、上の階層が騒がしくなってきたな」

 

「ん~、何だか~、向こうから人質が来てくれたみたいだよ~」

 

「なるほど。召喚された奴等か」

 

ダークゴーストの言葉の意味を理解し、風魔は笑みを浮かべる。

この世界に召喚された者達が人族側の公的な記録を更新したのだろう。

 

少しずつ、だが確実に力を付けオルクスの大迷宮を走破している様は、異世界転移の強力な力を得た結果と褒めることはできるだろう。

 

既にこの迷宮の走破者が居なければ。

 

「新兵器の実験も兼ねて捕獲に行くか」

 

このまま順調に百層に到達されても困るのだ。彼らにとって大事なバールクスに対する人質になる者が、迷宮攻略のメンバーの中にはいるのだ。

本来、大半の神代魔法を必要とする。最低でも、食料を保存できる空間魔法を会得するか宝物庫のようなアーティファクトでも無ければ、後戻りの出来ない真の大迷宮など死にに行くようなものだ。

 

地球組の大半は始末しても構わないが、大事な人質だけは死なれても困る。今の内に捕らえてしまった方が良いだろう。

 

「彼女とエンカウントするのが先になりそうだな」

 

「そうだね~。私達が助けに行った方がいいよね~」

 

念の為に雷と亡に一部の檜山ギアを預け、92層にこの拠点を破棄した後の拠点の確保にあたらせる。

 

「そう言えば~、そろそろアナザーライダーがバールクスと会う頃だよね~」

 

「そうだな。それなりに働いてくれれば良いが」

 

攻略本の製作が忙しくて見に行けないと笑いながら、拠点の移動を滅と迅に任せ、用意していた四つの新兵器を檜山ギア達に運ばせ、一部を連れて此処に近づくであろう勇者(笑)達を迎え撃つ準備を整える。

 

人1人入るであろうカプセルを運ぶ檜山ギア達。そのカプセルの奥で爛々と輝く瞳の様な輝きが蠢くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何なんだよあれは!?)

 

幸利は心の中で絶叫する。

魔人族から自分たちの勇者として勧誘された。黒龍の様な強力な魔物を使役できた。

そして、自分に強力な力を与えてくれた仲間とヒロインだって出てきた。

 

どう考えても、自分が主人公では無いか?

あの忍者の風の男が自分よりも強いのは新たな力を得た自分を鍛え導く役割だからだ。

フードの少女は二大女神にも負けない美少女だった。寧ろ二人とは違う癒される様な可愛らしさのある少女で、常に自分を支えてくれるヒロインの筈だ。

 

仲間とヒロインに加え、その二人から強力な力を与えてくれた。やっと自分が主人公になれたと思っていた。

だが、目の前の光景は何だ? 自分の作った魔物の軍団をたった数人で蹂躙されている光景が広がっていた。

 

雷光の斬撃と火炎の弾丸が魔物を蹂躙する左右ではギャレンに変身したハジメの左手側では、オルカンを担いだシアが「好きに飛んでいけ~」とばかりに引き金を引きまくり、パシューという気の抜ける音と共に連続してロケットランチャーをぶっ放す。

その間抜けな音とは裏腹に、火花の尾を引いて大群のど真ん中に突き刺さった弾頭は、大爆発を引き起こし周囲数十メートルの魔物達をまとめて吹き飛ばした。

 

京矢の右手側ではエンタープライズの放つ矢が青い炎の鷲に変わり撃ち抜いていく。弓兵であるのならばと近いた魔物さえ、時に矢を放つはずの弓で打ち払い、時に零距離射撃で矢を脳天に撃ち込まれて絶命する魔物も出てくる。

 

エンタープライズ、ユニオン最強の空母の力をトータスにおいても見せつけていた。

 

シアの左に陣取るのはティオだ。その突き出された両手の先からは周囲の空気すら焦がしながら黒い極光が放たれる。あの竜化状態で放たれたブレスだ。どうやら人間形態でも放てるらしい。

殲滅の黒き炎は射線上の一切を刹那の間に消滅させ大群の後方にまで貫通した。ティオは、そのまま腕を水平に薙ぎ払っていき、それに合わせて真横へ移動する黒い砲撃は触れるものの一切を消滅させていく。

 

ハジメの右に陣取るユエの殲滅力は更に飛び抜けていた。ハジメ達が攻撃を開始しても、瞑目したまま静かに佇むユエ。右側の攻撃が薄いと悟った魔物達が、破壊の嵐から逃れるように集まり、右翼から攻め込もうと流れ出す。既に進軍にすら影響が出そうなほど密集して突進して来る魔物達。そして、遂に彼我の距離が五百メートルを切ったその瞬間、ユエは、スっと目を開きおもむろに右手を掲げた。そして、一言、囁くように、されど世界へ宣言するように力強く魔法名を唱えた。

 

「〝壊劫〟」

 

それは神代魔法を発動させるトリガー。ミレディ・ライセンにより授けられた世界の法則の一つに干渉する魔法〝重力操作〟。

魔法に関しては天性の才能を持つ吸血姫を以てして、魔力の練り上げとイメージの固定に長い〝タメ〟を必要とし即時発動は未だ困難な魔法。

 

ユエの詠唱と同時に迫る魔物の頭上に渦巻く闇色の球体が出現する。

薄く薄く引き伸ばされていく球体は魔物達の頭上で四方五百メートルの正四角形を形作る。そして、太陽の光を遮る闇色の天井は、一瞬の間のあと眼下の魔物達目掛けて一気に落下した。

 

次の瞬間、起こったことを端的に説明するなら、〝大地ごと魔物が消滅した〟というものになるだろう。事実、後ろの壁から京矢達の蹂躙劇を唖然として見ていたウルの町の人々には、そうとしか見えなかった。

 

「これでは念の為にと、京矢様から残る様に命じられておりましたが、必要はなさそうですね」

 

城壁の上で困った様に呟くのはベルファストだ。

撃ち漏らしの掃除と、ウルの町の住人達やクラスメイト達が飛び出さない様にと一人残されていたが、本格的に彼女の出番は無さそうだ。

戦場に似つかわしく無いメイドは、主人達の帰りを待つ為に優雅に佇んでいた。

 

大地に吹く風が、戦場から蹂躙された魔物の血の匂いを町へと運ぶ。強烈な匂いに、吐き気を抑えられない人々が続出するが、それでも人々は、現実とは思えない〝圧倒的な力〟と〝蹂躙劇〟に湧き上がった。町の至るところからワァアアアーーーと歓声が上がる。

 

町の重鎮や護衛騎士達は、初めて見る京矢達の力に呑まれてしまったかのように呆然としたままだ。

生徒達は、改めてその力を目の当たりにし、自分達との〝差〟を痛感して複雑な表情になっている。

それが、最初から勇者である光輝でさえ歯牙にもかけない強さを持っていた京矢ならば納得できる。

本来、あのような魔物の脅威から人々を守るはずだった、少なくとも当初はそう息巻いていた自分達が、ただ守られる側として町の人々と同じ場所から、最強と羨望の眼差しを向けていた京矢は兎も角、その最強と肩を並べて戦う〝無能〟と見下していたハジメの背中を見つめているのだ。複雑な心境にもなるだろう。

なお、そんなクラスメイト達の中で男子生徒一同は、リアルに変身ヒーローになっているハジメに対する複雑な心境と同時に二人に心底羨ましいと言う顔をしている。変なチートよりもあっちの方が良かったと言うのが彼らの心境だろう。

 

愛子は、ただひたすら祈っていた。ハジメ達の無事を。そして同時に、今更ながらに自分のした事の恐ろしさを実感し表情を歪めていた。

目の前の凄惨極まりない戦場(暴れまわる京矢とハジメの姿だけはヒーローショーだが)が、まるで自分の甘さと矛盾に満ちた心をガツンと殴りつけているように感じたのだ。

 

やがて、魔物の数が目に見えて減り、密集した大群のせいで隠れていた北の地平が見え始めた頃、遂にティオが倒れた。渡された魔晶石の魔力も使い切り、魔力枯渇で動けなくなったのだ。

 

「むぅ、妾はここまでのようじゃ……もう、火球一つ出せん……すまぬ」

 

うつ伏せに倒れながら、顔だけをハジメの方に向けて申し訳なさそうに謝罪するティオの顔色は、青を通り越して白くなっていた。文字通り、死力を尽くす意気込みで魔力を消費したのだろう。

 

「……十分だ。変態にしてはやるじゃねぇの。後は、任せてそのまま寝てろ」

 

「……ご主人様が優しい……罵ってくれるかと思ったのじゃが……いや、でもアメの後にはムチが……期待しても?」

 

「そのまま死ね」

 

「いや、期待するなよ、そんなモン」

 

血の気の引いた死人のような顔色で、ハジメの言葉にゾクゾクと身を震わせるティオ。とても満足げな表情をしている。

互いに仮面に包まれていて表情は分からないが、本当に変な風に変えたなと同情する様な態度の京矢に肩を叩かれたハジメは、その様子に嫌なものを見たと舌打ちしながら、魔物の群れに視線を戻す。

 

「しかし、やっぱり群れのボスを操ってるみたいだな。お前が動きの鈍いやつを吹き飛ばせば何体か逃げてく奴が出てきてたぜ」

 

既に、その数は一万を割り八千から九千と言ったところか。最初の大群を思えば、壊滅状態と言っていいほどの被害のはずだ。人間の軍隊ならば既に撤退の判断を下さない時点で無能な謗りを受ける、全滅に近いレベルだ。

しかし、魔物達は依然、猪突猛進を繰り返している。正確には、一部の魔物がそう命令を出しているようだが、その様は獣とは言え異常だ。

大抵の魔物は完全に及び腰になっており、命令を出している各種族のリーダー格の魔物に従って、戸惑ったように突進して来ている。数が少なくなったことにより、ハジメは京矢の予想通りだと気がついた。

 

「本当に剣を振り回して突進するしか脳がない奴を重宝する、馬鹿王は無能だな」

 

短期間でこの数を集めた方法は不明だが、幸利の方が勇者(笑)よりも有能としか思えない。京矢がどちらを選べと問われたら、好感度の補正を無視しても幸利を優遇する。

 

(まあ、あの悪霊擬きの正体を知った今となったら、都合がいいんだろうな、あれは)

 

取り敢えず、どうやって集めたのかと言う疑問は置いておくとして、動きが鈍く単調なリーダー格と、動きに臨機応変さはあるが、命令に従って猪突猛進を繰り返す及び腰の魔物達という構成ならば、さっさとリーダー格だけを仕留めるのが妥当だろう。

そうすれば、本能に忠実な魔物達は、京矢達との実力差をその身に刻んでいるがために北の山へと逃げ帰るはずだ。

 

ハジメはギャレンラウザーを一瞥する。ラウズカードを通しての能力とは言え、同じサイズの自身の作ったアーティファクトを遥かに超える破壊力を出せるのだから、便利極まりないと思う。

 

「ユエ、魔力残量は?」

 

「……ん、残り魔晶石二個分くらい……重力魔法の消費が予想以上。要練習」

 

「いやいや、一人で二万以上殺っただろ? 十分だ。残りはピンポイントで殺る。援護を頼む」

 

「んっ」

 

ハジメの少ない言葉でも、委細承知と即行で頷くユエ。阿吽の呼吸だ。ハジメは、それに満足しながら京矢に話しかける。

 

「鳳凰寺、お前はまだ余裕そうだな?」

 

「まあな。元々魔力に依存してないからな。それに、ライダーシステムの助けがあるのは、お前も同じだろ?」

 

「確かにな。ピンポイントでやるから、存分にやれよ」

 

「いっそ、競争するか?」

 

「数える奴居ないだろうが」

 

軽口を交わしながら、さっさと群れのボスを潰す事を決めると満足げに頷き合い、京矢はエンタープライズへと話しかける。ハジメは魔物の違いが分かるかシアに問いかけているのだろう。

 

「エンタープライズ、お前は大丈夫か?」

 

「ああ、この程度なら問題ない」

 

「なら、オレの支援を頼む。流石に阻まれたら近づけねえからな」

 

「ああ。指揮官の邪魔をするものは私が排除しよう」

 

弓を構えて魔物の群れを一瞥するエンタープライズの言葉に仮面の奥で笑みを浮かべ、京矢はブレイラウザーを構える。一騎当千ならぬ一騎当万を無双ゲームの如くやっていても良かったのだが、流石に万の敵を相手に首謀者を捕らえる余力を残しておきたい。

………………うっかり殺してしまわないように。流石に誤ってライトニングソニックやバーニングディバインドを撃ち込んだら絶対に死ぬだろう。

 

ティアモドキと称されている洗脳済みのモンスターは何体かついでに吹き飛ばしたのが2~3体は居るが、凡そ百体。下手に突撃させて即行で殺されては、配下の魔物の統率を失うと思い、大半を後方に下げておいたのだろう。

 

ティオの魔法による攻撃が無くなってチャンスと思ったのか、魔物達が息を吹き返すように突進を始める。

 

 

『サンダー』

 

 

「旋っ!」

 

調子に乗るなとばかりにサンダーのカードを読み込んだ後に剣掌・旋を放つ。雷光を纏った竜巻に呑まれる魔物達。更に、

 

「〝雷龍〟」

 

即座に立ち込めた天の暗雲から激しくスパークする雷の龍が落雷の咆哮を上げながら出現し、前線を右から左へと蹂躙する。大口を開けた黄金色の龍に、自ら飛び込むように滅却されていく魔物の群れを見て、後続の魔物が再び二の足を踏んだ。

その隙に、京矢とハジメとシアが一気に群れへと突撃する。

 

リーダー格の魔物に向かう京矢の行方を阻む魔物達が青い炎の鷹に撃ち抜かれていく。

それを放ったエンタープライズが尚も京矢の行手を阻もうとする魔物達を、続け様に撃ち抜く。

 

二の足を踏む魔物の目の前で、突然京矢の姿が消える。

一瞬で姿の消えた京矢を探そうとする魔物の景色が回転し、そのまま意識を絶たれていく。

タイムのカードで時間を停止させ、魔物の群れに飛び込み時間停止が解けた直後に首を跳ねていく。

 

時間操作という神の領域の力を使えるタイムスカラベのラウズカードだが、その力にも弱点はある。だが、移動に使う程度ならばその欠点も考慮しなくても済む。

 

見ればハジメも、〝縮地〟で大地を疾走しながらギャレンラウザーを連射し、群れの隙間から僅かに見えるリーダー格の魔物へと撃ち放たれた死の閃光は、その僅かな隙間を縫うようにして目標に到達、急所を容赦なく爆散させている。

前線の魔物には目もくれず、何故か背後のリーダー格ばかりが次々と爆ぜる奇怪さに、周囲の魔物が浮き足立ったところに、不意に一体の魔物の頭上に影が差す。

咄嗟に、天を仰ぎ見た魔物の眼には、ウサミミをなびかせ巨大な戦鎚を肩に担いだ少女が文字通り空から降ってくる光景が飛び込んできた。その少女、シアは、魔物の頭を踏み台に、ウサギらしくぴょんぴょんと群れの頭上を飛び越えていき、最後に踏み台にした魔物の頭を圧殺させる勢いで踏み込むと、自身の体重を重力魔法により軽くして一気に天高く舞い上がった。

そして、天頂まで上がると空中でくるりと反転し、今度は体重を一気に数倍まで引き上げ猛烈な勢いで落下し、自由落下の速度をドリュッケンの引き金を引き激発の反動を利用して更に加速させ、最大限の身体強化をも加えて一撃の威力を最高にまで引き上げ、全く勢いを減じることなく破壊の権化ともいうべき鉄槌を振り下ろした。

 

「おおっ、向こうも殺ってるな」

 

此処から先は通さないとばかりに襲いかかってきた魔物の頭を殴り飛ばす。仮面ライダーブレイドのパンチ力で殴り飛ばされたブルダールに似た魔物はそのまま吹き飛んで行く。アンデッドには単なるパンチ程度の威力しか無かったが、ブルタールモドキには十分必殺の破壊力を持っていた様子で、そのまま絶命している。

それを一瞥もせずに、京矢は微かに横にずれる。

すると、京矢の真横を通り過ぎた一条の矢は青い炎の鷹となり、その先にいたリーダー格の魔物の頭を吹き飛ばす。

 

エンタープライズのそれに仮面の奥で笑みを浮かべると、

 

「剣掌っ!」

 

ブレイラウザーを振るい放たれた剣掌・発勁により行手を阻んでいた魔物達を吹き飛ばし、

 

 

『キック』『サンダー』

『ライトニングブラスト』

 

 

必殺技を打ち込み、その先に居た数体のリーダー格を纏めて絶命させる。雷光に焼かれ、怪物にさえ致命を与えた必殺キックの衝撃により吹き飛んだ大量の土石に紛れて肥料のごとく地へと還る。

 

懐に入られて好き勝手をさせるほど魔物達も甘くない様子で、京矢を圧殺せんと数を武器に襲い掛かる。

 

「旋っ!」

 

再びブレイラウザーを地面に突き刺し、竜巻を起こし、一斉に襲いかかって来た魔物達を吹き飛ばす。

 

 

『ビート』

 

 

新たに読み込ませたカードの力でパンチ力を強化し、上空から落ちてくる魔物達を殴り飛ばしトドメを刺しながら、新たに襲い掛からんとする魔物達へと的確にぶつけて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそくそくそくそ! 何なんだよあいつらは!?」

 

たった六人で次々と自分の軍団が消し済みにされていく。

 

「六万の大群だぞ!? もう半分も居ないじゃないか!! こんなの聞いてない!?」

 

撤退するかという考えが幸利の脳裏によぎるが後ろに立つ魔物に視線を向け、己の中にある力へと意識を向ける。

 

「オレにはまだこいつがいる……。あの力だってある……。真の勇者はオレなんだ」

 

内心で苛立ちを覚えながら幸利はそう呟く。

自分の偉業を邪魔された事に、世界を救ってやるための冒険を邪魔された事に苛立ちながら、自身の後ろに立つ、黒い体毛に二本の尾と四つの紅玉のように輝く目を持った魔物に命令を下す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

粗方のリーダー格の魔物を倒した京矢が次の魔物を仕留めに行こうとした時、その魔物が視界に映る。

先程の幸利が命令を下した黒い体毛の四つ目の魔物だ。初めて見る魔物に先手必勝とばかりに斬撃を放つが、ブレイラウザーによる一閃を黒い体毛の四つ目の魔物は後ろに飛んで京矢の一閃を避けて見せる。

 

(へえ……)

 

その動きに京矢は薄らと仮面の奥で笑みを浮かべる。

一方的な無双劇も中々に悪くはなかったが、どうやったかは知らないが自分の一撃を避けて見せた。

それは、

 

(少しは全力を出しても良いって事か?)

 

少しだけ本気になれる相手という事だ。京矢が本気になった瞬間、黒い体毛の四つ目の魔物は京矢から距離を取るように後ろに下がる。

剣の間合いだけでなく、見事に発勁の射程の外だ。

 

(今までのオレの戦い方を見て学習したか? それにしては正確過ぎるな? って事は何らかの固有魔法)

 

相手の行動からそこに考えが至る。可能性はすぐに思いつくのは三つだ。

一つはシアと同じ予知。これは有り得ないだろう。予知が出来るのならば、初めから自分の前に立つ以前に、この場にいる事自体があり得ないからだ。

二つは読心だが、それも自分の思考を読んだとしても、相手が反応するよりも早く斬れば良いだけで、何よりそんな事を考えているのに逃げるそぶりさえ見せない。

ならば可能性は最後の一つ、先読み。そう結論付けると同時に、京矢を囲んでいた四つ目の魔物達が一斉に襲い掛かってくる。

 

 

『タイム』

 

 

そんな音が響くと同時に京矢の姿が消え、魔物の仲間の一匹が胴から真っ二つに切り裂かれる。

先読みも出来ない不可解にして不条理な動きに警戒したのか、慌てて動きを止めて後ろに下がる。

 

威嚇する様に挙げていた唸り声に怯えの色が見える。

先読み程度に対処する方法は幾らでもあるのだ。相手よりも早く動く、問答無用の範囲攻撃、回避しようも無い、先読みできるからこそ、理不尽すぎる死の宣告を己自身に下してしまった事に気が付いたのだろう。

 

それでも撤退しないのは、この四つ目の魔物達が何らかの制御下にあると言う事だろう。

意を決したのか恭弥の周囲を取り囲む魔物達が一斉に襲いかかってくる。確かに他生物とは比べ物にならないレベルの連携とポテンシャルだ。固有魔法と思われる先読みと合わせて、低層程度のレベルだが奈落にいてもおかしく無い力量の魔物だ。

 

(取り敢えず、オレの所に来てくれて助かったな)

 

間違いなく、この魔物が何処からか街に侵入してしまったら、犠牲者の数は爆発的に跳ね上がるだろう。この4体だけでも下手な群れの一つや二つよりも危険だと。だからこそ、自分の所に来てくれて助かったとしか思えない。

 

前後左右、更には上方からも波状攻撃を仕掛けてくる四つ目狼達にブレイラウザーを構える。確かにその動きは先読みさえも駆使した中々の連携と言えるだろう。

 

地上に於いては異常とも言える奈落レベルの魔物、だが、

 

 

『マッハ』

 

 

京矢はその奈落をバールクスの力があるとは言え余裕で生き抜き、今彼が纏っているブレイドはアンデッドと戦う為の戦闘システムだ。低層レベルの敵に負ける道理がない。

四つ目狼の牙が京矢に届きそうになる瞬間、彼の姿が掻き消える。それを察知してしまったのは最後に襲い掛かろうとしたものだ。

 

音速の斬撃で上方から襲い掛かろうとしていた狼の頭が斬り裂かれる光景を目視した瞬間、

 

 

『サンダー』

 

 

自身へと迫る雷撃によって全身を焼かれる事となってしまう。

 

仲間が瞬く間に二体も倒されたことに動揺を見せながらも残す二体は京矢に警戒しつつも、戦意を持ったまま撤退する様子はない。

 

(南雲やシアちゃん、エンタープライズの所にも居るか? 明らかに誰かが送り込みましたって感じの連中だな)

 

ふと、他のところへと視線を向けると、ハジメやシア、エンタープライズも同じ魔物と戦っている姿が見えた。

そんな京矢が見せた隙に飛び付いた一匹が京矢へと飛び掛かる。

 

「おっと」

 

態々片腕を盾に牙を受けるが、四つ目狼の牙はブレイドの装甲を貫けず痛みさえも与える事が出来ず、突き立てた牙も逆に砕けてしまう。

 

「捕まえたぜ」

 

そして、自分の腕に噛み付いている四つ目狼の首を掴み、無理矢理腕から引き離すとそのまま最後の一匹に向けて投げ付ける。

 

「ギャン!」

 

投げられた四つ目狼が悲鳴を上げるが、投げ付けられた四つ目狼はその隙に京矢へと飛び掛かる。

 

「鬼勁」

 

悲鳴を上げる四つ目狼に向け、その死角から飛ぶ気刃を放ち、飛びかかってきた四つ目狼の体を深々と切り裂く。

 

「まっ、群れで情報を共有して死角を潰そうが、それだけ減れば意味はねえだろ?」

 

そう呟きながら京矢はブレイラウザーを逆手に持ち替え、二体の四つ目狼が一直線に並んだ瞬間を逃さず、

 

「未完成版、アバン、ストラッシュ!」

 

京矢が鎧の魔剣から自身のスキルを通じて会得したのは、アバン流刀殺法の地と海の技であり、その二つだけでは空の欠けた不完全なものであるが故に、敢えて未完成と名を付けてその技を放つ。

後に遠距離攻撃用のアローと呼ばれるそれは二匹の四つ目狼を飲み込んで行った。

 

なお、バルムンクの真名開放と鎧の魔剣の持ち主の独自の必殺技と合わせて三択でティオに使用していたかもしれない技である。

 

「他の連中も終わったようだな」

 

斬撃の跡をその場に残し、エンタープライズ達も四つ目狼を倒した事を確認すると、最後にハジメへと視線を向ける。

すると最後の一匹であろう四つ目狼に跨って逃走を謀る黒ローブの姿があった。

 

「エンタープライズ、悪いけど、先生達とベルファストを呼んできてくれ」

 

「分かった」

 

ハジメが逃すとは思えず、同時に町の真ん中で召喚された神の使徒が魔物を率いて町を襲わせたなどと言う事実は知らせないほうが良いだろうと判断し、エンタープライズに愛子達を呼んでくるように指示を出す。

エンタープライズもまた京矢の意図を理解して、その言葉に従い町に戻った。

 

そして、逃走する黒ローブをハジメに任せて、京矢は目に付くリーダー格の魔物と序でに邪魔な魔物達を手当たり次第に始末していくのだった。

 

 

ハジメに巨大戦力を渡すとしたら?

  • 倒したのを頑張って修復キングジョー
  • 京矢からのレンタル、ヨクリューオー
  • グランドライナー
  • ダイボウケン
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