『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝   作:ドラゴンネスト

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その頃のクラスメイト達③

光輝の対戦相手は、なんとも平凡そうな男だった。

高すぎず低すぎない身長、特徴という特徴がないのが逆に特徴とでも言うべきか、人ごみに紛れたらすぐ見失ってしまいそうな平凡な顔。一見すると全く強そうに見えない。

 

刃引きした大型の剣をだらんと無造作にぶら下げており。構えらしい構えもとっていなかった。

 

光輝は、舐められているのかと剣道部での京矢との試合を思い出して怒りを抱く。

油断しているなら油断していればいい、一撃で吹き飛ばしてやる。と京矢から受けていた屈辱的な負け方を味合わせてやろうと思った。

 

「いきます!」

 

光輝が風となる。〝縮地〟により高速で踏み込むと豪風を伴って横凪に剣を振るう。

並みの戦士なら視認することも難しかったかもしれない。

だが、次の瞬間、相手を舐めていたのは光輝の方だと証明されてしまう結果となった。

 

バキィ!!

 

「ガフッ!?」

 

吹き飛んだのは光輝の方だった。護衛の方は剣を掲げるように振り抜いたまま光輝を睥睨している。

光輝の全力の横凪を微かに後ろに下がる事で避け、全力で剣を振り切った直後の無防備なところに、無造作に下げられていた剣が跳ね上がり光輝を吹き飛ばしたのだ。

 

光輝は地滑りしながら何とか体勢を整え、驚愕の面持ちで護衛を見る。一撃で終わらせる事に集中していたとは言え護衛の攻撃がほとんど認識できなかったのだ。

護衛は掲げた剣をまた力を抜いた自然な体勢で構えている。そう、先ほどの攻撃も動きがあまりに自然すぎて危機感が働かず反応できなかったのである。

 

「はぁ~、おいおい、勇者ってのはこんなもんか? まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?」

 

平凡な顔に似合わない乱暴な口調で呆れた視線を送る護衛。その表情には失望が浮かんでいた。

 

確かに、光輝は護衛を見た目で判断して無造作に正面から突っ込んでいき、あっさり返り討ちにあったというのが現在の構図だ。この場に京矢が居たら爆笑していた所だろう。

光輝は相手を舐めていたのは自分の方であったと自覚し、怒りを抱いた。今度は自分に向けて。

 

「すみませんでした。もう一度、お願いします」

 

今度こそ、本気の目になり、自分の無礼を謝罪する光輝。護衛は、そんな光輝を見て、「戦場じゃあ〝次〟なんてないんだがな」と不機嫌そうに目元を歪めるが相手はするようだ。先程と同様に自然体で立つ。

 

光輝は気合を入れ直すと再び踏み込んだ。

 

唐竹、袈裟斬り、切り上げ、突き、と〝縮地〟を使いこなしながら超高速の剣撃を振るう。その速度は既に、光輝の体をブレさせて残像を生み出しているほどだ。

 

しかし、そんな嵐のような剣撃を護衛は最小限の動きでかわし捌き、隙あらば反撃に転じている。時々、光輝の動きを見失っているにもかかわらず、死角からの攻撃にしっかり反応している。

 

光輝には護衛の動きに覚えがあった。それはメルド団長と京矢だ。

メルドの場合、彼と光輝のスペック差は既にかなりの開きが出ている。にもかかわらず、未だ光輝はメルド団長との模擬戦で勝ち越せていないのだ。それはひとえに圧倒的な戦闘経験の差が原因である。

この世界に来てからすぐの頃に一度メルド団長立ち会いの元に京矢とも模擬戦をする事になったが、一度も勝てていない。戦闘経験など自分と大差ないはずなのに、と悔しく思った程だ。

……だが、正しくはPT事件に闇の書、二度に渡るセフィーロでの戦いと短期間の間にメルド団長にも匹敵する、或いは上回る戦闘経験が培われている。光輝との模擬戦での動きからメルド団長もその事に気付きつつ有ったりするが、それはそれ。

 

おそらく護衛も、メルド団長と同じく数多の戦場に身を置いたのではないだろうか。

その戦闘経験が光輝とのスペック差を埋めている。つまり、この護衛はメルド団長並かそれ以上の実力者というわけだ。

 

「ふん、確かに並の人間じゃ相手にならん程の身体能力だ。しかし、少々素直すぎる。元々、戦いとは無縁か?」

 

「えっ? えっと、はい、そうです。俺は元々ただの学生ですから」

 

「……それが今や〝神の使徒〟か」

 

チラッとイシュタル達聖教教会関係者を見ると護衛は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「おい、勇者。構えろ。今度はこちらから行くぞ。気を抜くなよ? うっかり殺してしまうかもしれんからな」

 

護衛はそう宣言するやいなや一気に踏み込んだ。光輝程の高速移動ではない。むしろ遅く感じるほどだ。だというのに、

 

「ッ!?」

 

気がつけば目の前に護衛が迫っており剣が下方より跳ね上がってきていた。光輝は慌てて飛び退る。しかし、まるで磁石が引き合うかのようにピッタリと間合いを一定に保ちながら鞭のような剣撃が光輝を襲った。

 

その不規則で軌道を読みづらい剣の動きに、〝先読〟で辛うじて対応しながら一度距離を取ろうとするが、まるで引き離せない。

〝縮地〟で一気に距離を取ろうとしても、それを見越したように先手を打たれて発動に至らない。次第に光輝の顔に焦りが生まれてくる。

 

そして遂に、光輝がダメージ覚悟で剣を振ろうとした瞬間、その隙を逃さず護衛が魔法のトリガーを引く。

 

「穿て――〝風撃〟」

 

呟くような声で唱えられた詠唱は小さな風の礫を発生させ、光輝の片足を打ち据えた。

 

「うわっ!?」

 

風の礫によって踏み込もうとした足を払われてバランスを崩す光輝。その瞬間、壮絶な殺気が光輝を射貫く。

冷徹な眼光で光輝を睨む護衛の剣が途轍もない圧力を持って振り下ろされた。

 

刹那、光輝は悟る。彼は自分を殺すつもりだと。

 

実際、護衛はそうなっても仕方ないと考えていた。自分の攻撃に対応できないくらいなら、本当の意味で殺し合いを知らない少年に人間族のリーダーを任せる気など毛頭なかった。

例えそれで聖教教会からどのような咎めが来ようとも、戦場で無能な味方を放置する方がずっと耐え難い。それならいっそと、そう考えたのだ。

 

しかし、そうはならなかった。

 

ズドンッ!

 

「ガァ!?」

 

先ほどの再現か。今度は護衛が吹き飛んだからだ。

護衛が地面を数度バウンドし両手も使いながら勢いを殺して光輝を見る。

光輝は全身から純白のオーラを吹き出しながら、護衛に向かって剣を振り抜いた姿で立っていた。

 

護衛の剣が振り下ろされる瞬間、光輝は生存本能に突き動かされるように〝限界突破〟を使ったのだ。

これは、一時的に全ステータスを三倍に引き上げてくれるという、ピンチの時に覚醒する主人公らしい技能である。当然ながら一時的に全ステータスを三倍にする以上リスクは大きい。

 

だが、限界突破を使った光輝の顔には一切余裕はなかった。恐怖を必死で押し殺すように険しい表情で剣を構えている。

 

そんな光輝の様子を見て、護衛はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

 

「ハッ、少しはマシな顔するようになったじゃねぇか。さっきまでのビビリ顔より、よほどいいぞ!」

 

「ビビリ顔? 今の方が恐怖を感じてます。……さっき俺を殺す気ではありませんでしたか? これは模擬戦ですよ?」

 

「だからなんだ? まさか適当に戦って、はい終わりっとでもなると思ったか? この程度で死ぬならそれまでだったってことだろ。お前は、俺達人間の上に立って率いるんだぞ? その自覚があんのかよ?」

 

「自覚って……俺はもちろん人々を救って……」

 

「傷つけることも、傷つくことも恐れているガキに何ができる? 剣に殺気一つ込められない奴がご大層なこと言ってんじゃねぇよ。おら、しっかり構えな? 最初に言ったろ? 気抜いてっと……死ぬってな!」

 

護衛が再び尋常でない殺気を放ちながら光輝に迫ろう脚に力を溜める。光輝は苦しそうに表情を歪めた。

 

しかし、護衛が実際に踏み込むことはなかった。イシュタルが手を出して試合自体を無効にしたのだ。

光輝と戦った護衛、実はその正体は護衛などではなく、帝国の現皇帝ガハルド・D・ヘルシャーが変装していたモノだったのだ。

使者どころか皇帝直々に光輝を試しに来ていたのである。

 

右耳のイヤリングを外すと護衛の姿が変わる。特徴の無い男から四十代位の野性味溢れる男へと。

短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。

 

「どういうおつもりですかな、ガハルド殿」

 

「これは、これはエリヒド殿。ろくな挨拶もせず済まなかった。ただな、どうせなら自分で確認した方が早いだろうと一芝居打たせてもらったのよ。今後の戦争に関わる重要なことだ。無礼は許して頂きたい」

 

謝罪すると言いながら、全く反省の色がないガハルド皇帝。それに溜息を吐きながら「もう良い」とかぶりを振るエリヒド陛下。

 

なし崩しで模擬戦も終わってしまい、その後に予定されていた晩餐で帝国からも勇者を認めるとの言質をとることができ、一応、今回の訪問の目的は達成されたようだ。

 

しかし、その晩、部屋で部下に本音を聞かれた皇帝陛下は面倒くさそうに答えた。

 

「ありゃ、ダメだな。ただの子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだな。〝神の使徒〟である以上蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろう」

 

「それで、あわよくば試合で殺すつもりだったのですか?」

 

「あぁ? 違ぇよ。少しは腑抜けた精神を叩き治せるかと思っただけだ。あのままやっても教皇が邪魔して絶対殺れなかっただろうよ」

 

どうやら、皇帝陛下の中で光輝達勇者一行は興味の対象とはならなかったようである。無理もないことだろう。

彼等は数ヶ月前までただの学生。それも平和な日本の。歴戦の戦士が認めるような戦場の心構えなど出来ているはずがないのである。

 

「寧ろ、勇者よりも噂の剣聖の方に興味が有ったんだがな」

 

「召喚された直後からこの国の騎士団長と互角に渡り合ったとか言う、あの?」

 

「勇者達がベヒモスを倒せたのは真実だろうが、それは二度目だそうだ。最初にベヒモスを倒したのはその剣聖と錬成師の二人が簡単に始末したそうだぜ」

 

予め間者でも送り込んでいたのだろうか、一部の者達の間で知れ渡っている京矢の噂も掴んでいる。

 

「まったく、冷遇されているなら帝国に引き抜きたかったんだがな」

 

皇帝陛下は残念そうに呟く。ベヒモスを簡単に倒せるほどの実力の戦士ならば、実力主義の帝国が欲しがらないはずはない。

寧ろ、皇帝陛下としては剣聖の力に興味が有っただけの様子だ。

 

「まぁ、魔人共との戦争が本格化したら変わるかもな。見るとしてもそれからだろうよ。今は、小僧どもに巻き込まれないよう上手く立ち回ることが重要だ。教皇には気をつけろ」

 

「御意」

 

そんな評価を下されているとは露にも思わず、光輝達は、翌日に帰国するという皇帝陛下一行を見送ることになった。

用事はもう済んだ以上留まる理由もないということだ。本当にフットワークの軽い皇帝である。

 

ちなみに、早朝訓練をしている雫を見て気に入った皇帝が愛人にどうだと割かし本気で誘ったというハプニングがあった。雫は丁寧に断り、皇帝陛下も「まぁ、焦らんさ」と不敵に笑いながら引き下がったので特に大事になったわけではなかったが、その時、光輝を見て鼻で笑ったことで光輝はこの男とは絶対に馬が合わないと感じ、しばらく不機嫌だった。

 

雫の溜息が増えたことは言うまでもない。

 

なお、帰国の途中に慌てた様子の兵士から鎧の巨人の報告を聞いた皇帝は急遽予定を変更して渓谷の方に突撃していったとか。

そして、そんな皇帝陛下を慌てて追いかける部下の皆さんであった。

ハジメに巨大戦力を渡すとしたら?

  • 倒したのを頑張って修復キングジョー
  • 京矢からのレンタル、ヨクリューオー
  • グランドライナー
  • ダイボウケン
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