『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
「1992?」
「真?」
胸に刻まれた数字と文字。それは京矢がガチャで手に入れた仮面ライダーシリーズのDVDで出てきた怪人の特徴と合致する。
「おい、あいつ……」
「アナザーライダーに似ている」
残念ながら昭和ライダーのDVDはガチャで手に入れていないのでハジメの知識にはディケイドの映画での出番でしか無いが、京矢には真と言う名前に心当たりはある。
仮面ライダーシン。1992年に放映された映画の主人公の変身する仮面ライダーだ。
数ある仮面ライダー達の中でも異形のその姿は主役ライダー同士で並んだら、知らない者にも忘れられないインパクトがあるだろう。
目の前の相手はシンを思わせる緑の体色と、頭部から伸びる触覚を思わせるアンテナ程度しか仮面ライダーシンの姿の面影はない。だが、何処かメカニカルながらもアナザーシンの姿はシンを思わせる。
「元が元だけに、ヒーローっぽい姿だな」
「動くなぁ! ぶっ殺すぞぉ!」
裏返ったヒステリックな声でそう叫ぶ清水改めアナザーシン。
バイザーと金属の装甲に包まれたその表情は読み取れないが、眼は京矢とハジメに向けていた時と同じ狂気を宿している。
「…………」
「…………」
「特撮ヒーローみたいな姿になってやる言動か?」
「特撮の怪人でもあんな余裕ない声でしないだろ?」
ってか、下手したら戦闘員でもそんな三下なチンピラの台詞は吐かない。人質とっても動くなと余裕ある様子で宣言する。
もはや焦ってヒステリックなその姿はヒーロー然とした姿が泣くレベルで情け無い。
当然ながら、愛子が苦しそうに自分の喉に食い込むアナザーシンの腕を掴んでいるが彼女の力では引き離せないようだ。
周囲の者達が、アナザーシンの警告を受けて飛び出しそうな体を必死に押し止める。アナザーシンの様子から、やると言ったら本気で殺るということが分かったからだ。みな、口々に心配そうな、悔しそうな声音で愛子の名を呼び、アナザーシンを罵倒する。
事前に京矢とハジメによる仮面ライダーへの変身等と言うものを見せた事が原因なのか、クラスメイト達には意外と動揺は無い。
怪人とヒーローと言う違いこそあるが、そこはアナザーシンの外見が良い方に絡んでくれたと言う事だろうか。
「いいかぁ、今のオレは人の首をねじ切る事なんで簡単なんだよ! わかったら、全員、武器を捨てて手を上げろ!」
アナザーシンの狂気を宿した言葉に、周囲の者達が顔を青ざめさせる。
完全に動きを止めた生徒達や護衛隊の騎士達にニヤニヤと笑っているのだろうアナザーシンは、その視線を京矢とハジメに向ける。
「ってか、ヒステリックに叫びすぎだろ? 怪人でもそんな三下は居ないだろうが」
「全くだな」
そんなアナザーシンの様子を、我関せずと冷めた目で見て酷評している京矢とハジメの図。
「おい、お前等、鳳凰寺と厨二野郎、お前等だ! 後ろじゃねぇよ! 厨二野郎はお前だっつってんだろっ! 馬鹿にしやがって、クソが! これ以上ふざけた態度とる気なら、マジで殺すからなっ! わかったら、そのベルトを寄越せ! それと他の兵器もだ!」
アナザーシンの余りに酷い呼び掛けに、つい後ろを振り返って「自分じゃない」アピールをしてみるが無駄に終わり、嫌そうな顔をするハジメ。その呼び掛けに爆笑しそうになっている京矢。
緊迫した状況にもかかわらず、全く変わらない態度で平然としていることに、またもや馬鹿にされたと思いアナザーシンは癇癪を起こす。そして、ヒステリックに、二人の持つライダーシステムと重火器を渡せと要求した。
「え? ヤダけど」
「渡すわけねーだろ?」
二人の言葉にアナザーシンも含めて全員が「え?」と言った様子でフリーズする。
「お前、自分で言ってただろ? どっちにしたって、お前は先生を殺さなきゃ目的は達成出来ないだろうが」
「うるさい、うるさい、うるさい! いいから黙って全部渡しやがれ! お前らみたいな馬鹿どもは俺の言うこと聞いてればいいんだよぉ!」
「お前がうるさい3連発しても気色悪いだけだからやめろ。大体バカはお前だ。根本的に人質を間違えてるぜ」
ゆっくりと言葉を続けながら京矢はアナザーシンに近づいて行く。
「一つはターゲットを人質に選んだ事。楯にしたつもりだろうが、殺した瞬間お前は自分を守る盾が無くなる」
「うるさい!」
「人質に取るなら他の生徒の誰かを選ぶべきだったな。そうして、先生に武器を持ってこいとでも要求すれば人質と標的を同時に確保出来た」
「うるさい! うるさい!」
「こっちは愛子先生と押し問答する羽目になったんだ。そっちの方が面倒だ」
「黙れ! 黙れ! 黙れぇ!」
ヒステリックに騒ぐアナザーシンを他所に、ゆっくりと腰の斬鉄剣へと手を伸ばして行く京矢。
「そして、一番の悪手は……」
「聞こえねぇのか!? 黙れって言ってんだよぉ!?」
アナザーシンが腕を振り上げた瞬間、京矢が居合の要領で斬鉄剣を抜刀する。
護衛の騎士達は何故そんなところでと思うが、クラスメイト達やハジメ達は違う。その距離こそが、京矢の攻撃範囲の中なのだ。
「ガッ!?」
京矢の斬撃の軌跡より放たれた気刃がアナザーシンの顔面を打つ。
幸いにも小さ……小柄な愛子の背丈はアナザーシンよりも低い。だからこそ、頭を狙った方が、その一撃が愛子に当たる可能性が一番低いのだ。
京矢の行動に反応してハジメ達が動く前に、
「ッ!? ダメです! 避けて!」
そう叫びながら、シアが一瞬で完了した全力の身体強化で縮地並みの高速移動をし、愛子に飛びかかった。
突然の事態に、体制を崩したアナザーシンが逃げられる前に愛子の頭を叩き潰そうとする。
シアが無理やり愛子を引き剥がし何かから庇うように身を捻ったのと、蒼色の水流が、アナザーシンの胸に、ついさっきまで愛子の頭があった場所をレーザーの如く直撃したのはほぼ同時だった。
シアの方は、愛子を抱きしめ突進の勢いそのままに肩から地面にダイブし地を滑った。もうもうと砂埃を上げながら、ようやく停止したシアは、「うぐっ」と苦しそうな呻き声を上げて横たわったままだ。
「シア!」
突然の事態に誰もが硬直する中、ユエがシアの名を呼びながら全力で駆け寄る。そして、追撃に備えてシアと彼女が抱きしめる愛子を守るように陣取った。
ハジメは、何も言わずとも望んだ通りの行動をしてくれたユエに内心で感謝と称賛を送りながら、ドンナーを両手で構え〝遠見〟で〝破断〟の射線を辿る。
すると、遠くで黒い服を来た耳の尖った男が、大型の鳥のような魔物に乗り込む姿が見えた。
「テメェかぁ!!!」
ハジメが引き金を引くよりも早く、胸に水流が直撃したアナザーシンが激昂しながら両胸の装甲を展開させる。其処から出現したレンズのような器官に、光の粒子が集まっていくと其処からレーザーが放出される。
後ろから迫ってくる極光に振り返り驚愕する表情を浮かべる男と、その男の乗る鳥の様な魔物が極光に飲み込まれ跡形も無く消え去って行った。
あまりの光景に膠着する一同を他所にアナザーシンは肩で息をしながら狂った様に笑い始める。
先ほどの攻撃には相当消耗するのだろう、それでも自分の手にした勇者である光輝すら超えた力に歓喜する。
「あははははははははっ! ヤッパリ、凄い力を持つとああ言う輩も出てくるよなぁ!? オレの力に嫉妬してオレを殺そうとする奴とかよぉ!? でもどうだ、この力……天之河なんて雑魚だろう!?」
狂ったように笑うアナザーシンをただ呆然と見つめるしか無いクラスメイト達。
「オレにはオレに力をくれた仲間とヒロインがいるんだ!? 認めてくれる仲間がいるんだよぉ!?」
(力を与えた……仲間?)
そんなアナザーシンの絶叫を疑問に思うが、今はそんな事を考えている場合では無い。
今は力を与えた黒幕よりも、アナザーシン自身をどうにかする必要がある。
アナザーシン
モチーフ:仮面ライダーシン
力:全身に仕込まれた生体兵器による特殊攻撃
元々有機的だった仮面ライダーシンの外見をメタルヒーローの様な金属的な装甲に包んだ正統派のヒーローに変えた様な外見。
胸には1992と真と言う文字が刻まれている。
その本質は生体兵器の仕込まれた異形の生物兵器に外見だけは綺麗な装甲を被せた戦闘兵士と言うべきアナザーライダー。
胸部の装甲を開く事で撃ち出す強力なビーム兵器や、腕に仕込まれた有機ミサイルや両腕のフィン状の機関が伸びる事で発生する高周波ソードなどの様々な武装が仕込まれている。武装のイメージはガイバー。
また、このアナザーライダーには他のアナザーライダーと違い、変身者の体を異形の怪物に変えてしまい、元には戻れないと言う性質を持つ。
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