『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝   作:ドラゴンネスト

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「くそっ、さっきの緑玉か!?」

 

「それしか考えられそうもないな」

 

安全策で燃やすことで対処していた京矢とは違い、ハジメとユエは弾丸や風の魔法で対処していたのだ、結果的に緑玉の中に有ったであろう花粉の様な物に寄生される隙が出来てしまったのだろう。

 

ハジメは己の迂闊さに自分を殴りたくなる衝動を抑えながら風の刃を回避し続ける。

 

「やってくれるな、キング天之川」

 

憎々しげに呟く京矢の言葉に同意するが、ハジメは内心で思う。この状況で仮名のキング天之川は止めろ、と。緊迫した状況なのにその名前が出るたびに爆笑しそうになる。

どうにかして頭の花を取らなければならないが、操っている者もハジメが飛び道具を持っていることを知っているのだろう、照準をつけさせない様に操っているユエに上下の運動を多用させていた。ならば、京矢が近づいて切り落とせば良いのだが、突然ユエが自分の片手を首に突きつけると言う行動に出た。

 

「近づくなって事かよ」

 

手持ちのカードでの遠距離攻撃、花の魔物に効果的な広範囲の火炎攻撃が可能な炎の魔剣の類は魔剣目録の中にはそれなりに有るが、残念ながらどれも強力すぎる。

 

マッハのカードを使った上での全力での接近からの斬撃による花の排除とユエの風の魔法による自身の首の切断の早打ち勝負など持ち込む気は京矢には無い。

 

「……ハジメ……うぅ……」

 

ユエが無表情を崩して悲痛な表情を浮かべる。天之川ラプトルの花を排除した時、ラプトル擬きは花を憎々しげに踏みつけて、他の天之川モンスターに攻撃も仕掛けていた。つまり、花をつけられて操られていても意識はあるという事だろう。体の自由だけを奪うというのは最悪な能力だ。

 

「……やってくれるじゃねえか……」

 

(調子に乗って出て来てくれれば隙を見て大技叩き込んでやれるんだけどな)

 

忌々しげに呟くハジメに対して、京矢は口に出さずそう考えているが、それだけ高い知性があるのかは分からない。

 

そんな二人の逡巡を察したのかキング天之川と仮名を付けられていた親玉が奥の暗闇から現れる。

 

「ブスなドリアードかアルラウネ? いや、マンドラゴラの化け物か?」

 

奥から現れたのは人間と植物が融合した様な魔物だった。内面の醜悪さが表面に現れた様な醜い顔の人と植物のキメラの様な化け物。

ウネウネと無数の蔓が触手の様にうねり、何が面白いのかその表情にはニタニタと笑いを浮かべている。

 

「南雲、上手くあのキングドブス天之川の注意を引いてくれねえか、隙を見つけて体の中から灰にしてやるから」

 

態々ギャレンのダイアスートのラウズカードを取り出して聞こえるように告げる京矢の言葉にビクっとした姿を見せるブスアルラウネ。慌ててユエを盾にするように自分の前に立たせてその後ろに隠れる。

 

「……ハジメ……ごめんなさい……」

 

自分が足手纏いになっている状況が悔しいのだろう、ユエは悔しそうな表情で歯を食いしばっている。

 

ユエを盾にしながらブスアルラウネは緑の球を放ってくる。ハジメがドンナーで撃ち落とす事で弾けた球の中から視認不可能の大きさの胞子が詰まっているのだろう。

 

だが、京矢にもハジメにも一向に花が咲く様子は無い。自分が優位に立っていることから浮かべていたニタニタ笑いを止めて怪訝な表情を浮かべる。

 

「……流石、アンデッド相手のライダーシステムだな。あいつ程度の胞子は通さないか」

 

「オレも使っときゃ良かったか、それ」

 

態々ブスアルラウネに対して挑発する様に敵の優位が消えている事を教えてやる京矢。

そんなに便利なら自分も変身ヒーローになっておけば良かったかと思うハジメであった。貸すのではなく貰ったのだし。

 

同時にハジメの持つ耐性から注意を晒せればラッキーとばかりに思いながら再度ファイアのカードを使いブレイラウザーに纏わせた炎を周囲に巻く様に剣を振る。

 

相手に胞子が効かないと知ったブスアルラウネは不機嫌そうに京矢を狙ってユエに魔法を発動させる。

 

 

『metal』

 

 

京矢が回避しようとするとこれ見よがしにユエが自分の首に手を向けるのでメタルのカードで動きを止めて風の刃を受ける。

 

(鳳凰寺)

 

京矢が先程からブスアルラウネに自分を狙う様に仕向けていた狙いを理解する。ハジメの耐性のことを悟らせない為に、自分へと注意を引きつける為に行動していたと。

 

固有魔法『金剛』をハジメは使えるが、それでも生身のハジメよりもライダーシステムに守られた上に近接戦闘に特化した自分の方が攻撃を受けるのは良いと判断したのだろう。

 

(やっぱり、お前だけは信用して良かったよ)

 

京矢の期待に応える方法を模索するが、それでも答えは出ない。

 

「ハジメ! 私はいいから……撃って!!!」

 

そんな二人の行動に触発されてか、覚悟を決めた様子でユエが自分に構わず撃てと叫ぶ。

足手纏いどころか攻撃してしまうくらいなら自分ごと撃って欲しい、そんな決意をしたのだろう。

 

「え? いいのか? 助かるわー」

 

これで後顧の憂いは無くなった、ラッキーとばかりに躊躇なく引き金を引くハジメくん。

 

パァーンと乾いた音が鳴ると同時に音が消えた気がした。京矢もユエもブスアルラウネも唖然とした様子でハジメを見ていた。

 

全員の意思が統一されてしまっていた。

 

 

『何やってんだよ、少しくらいは躊躇しろ』と

 

 

 

ポトっとユエの頭から花が落ちた音が響いた気がした。それほど深い沈黙だった。当のハジメは何故だとばかりに首を傾げている。

 

ユエはそっと頭の上を両手で触れてみるが花は無く、代わりに縮れたり焼けたりした自分の髪の毛が有った。

ブスアルラウネも避難するような目でハジメを見ている。

 

『ドロップ』『ファイア』『ジェミニ』

『バーニングディバインド』

 

 

そんな中、急にそんな電子音が響く。

 

「いや、気持ちはわかるけど、お前が抗議するんじゃねえよ!」

 

そんなツッコミが響いたのはブスアルラウネの真上で分身している京矢からだった。正気に戻った京矢が即座に突っ込みと共に元はギャレンの必殺技のバーニングディバインドを発動させていたのだ。

 

元々ラウズカードを使って他のライダーの技を使えるのはカリスとレンゲルの例を見ても明らかだ。今回はそれを利用してブレイドのままギャレンの必殺技を発動させた。

 

真上で炎を纏って分身して回転しながら放たれたドロップキックがブスアルラウネの頭に叩きつけられる。

所詮は植物の体に炎を纏った必殺キックの火力と破壊力を耐える力など無く、敢え無く断末魔の悲鳴を上げながら、砕かれながら焼かれると言う最後を遂げたのだった。

 

「今のがお前にやったギャレンの必殺技のバーニングディバインドだぜ」

 

「マジかよ、オレも今の技を使えるのか!?」

 

「バーニングディバイドのディバインドのタイミングで恋人の名前とか叫べば完璧だぜ」

 

リアル特撮ヒーローの必殺技を間近で見て、それを自分も使えると知って興奮気味のハジメだった。

 

「で、ユエ、無事か? 違和感とか無いか?」

 

気軽な感じで無事を確認するハジメをユエはジトーッとした目で頭をさすりながら睨んでいた。

 

「ちゃんとフォローしとけよ、はーちゃん」

 

「いや、なんだよ、はーちゃんって」

 

そう言い残して奥の探索に向かう京矢にツッコミを入れつつ、

 

「……撃った……」

 

「あ? そりゃあ……撃っていいって言うから……」

 

「…………ためらわなかった…………」

 

一瞬の躊躇いもなく撃ったことが不満そうなユエに(二人の身長差からお腹の辺りを)不満そうな顔でポカポカと叩かれているハジメをブレイドの仮面の奥でヤレヤレと言う顔で眺めながら先の道の探索を終えた京矢は空気を読んでユエの機嫌が直るまで黙っている事にした京矢だった。

 

自分達よりも長命種で年上であろうが、ユエとても女の子なのだ(光の巨人の若き最強戦士は光の国の基準では高校生くらいの年齢だそうなのでこの場合の年上と言うのも判断基準としては考えない方がいいかもしれない)。足手纏いになる位なら撃たれた方が愛と覚悟していても、乙女心としては少しくらいの躊躇はして欲しかったのだろう。

 

(まっ、今回は乙女心が分からないはーちゃんが悪いって事で、な)

 

そもそも、その後の言動も乙女心が分かって入ればもっと良いリアクションもあるだろう。

今後、ハジメの周りに集まる女が増えそう予感がするので少しは女心を理解した方が良い、とボス討伐と入口の閉鎖で安全が確保されたので休憩している間存分にユエのご機嫌取りをして貰おうと思う。

 

だが、ハジメの反応にユエはますますヘソを曲げてしまった様子で、ついにプイッとそっぽを向いてしまった。

ハジメは内心溜息を吐きながらどうやってユエの機嫌を直すか考え始める。

それはブスアルラウネの討伐よりも遥かに難しそうだ。

 

(まっ、人の恋路に首突っ込んで馬には切られたく無いからな)

 

そんな二人に全面的に無関係を貫く事にした京矢だった。

 


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