『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
保安署とは地球で言うところの警察機関のことだ。
そこに預けるというのは、ミュウを公的機関に預けるということで、完全に自分達の手を離れるということでもある。
なので、見捨てるというわけではなく迷子を見つけた時の正規の手順ではあるのだが、事が事だけにシアとしてはそういう気持ちになってしまうのだろう。
それに、誘拐されたという証言があれば公的機関が動いて誘拐組織の摘発もしてくれるだろう。
どう考えてもメリットが有る。
ハジメと京矢は、そんなシアに噛んで含めるように説明する。
「あのな、シア。迷子を見つけたら保安署に送り届けるのは当然のことだ。まして、ミュウは海人族の子だ。必ず手厚く保護してくれるさ。それどころか、海人族をオークションに掛けようなんて大問題だ。正式に捜査が始まるだろうし、そうすれば他の子達も保護されるだろう」
「それに、これは大都市にはつきものの闇って奴なんだろ? その子が捕まっていたところだけじゃなく、公的機関の手が及ばない場所では普通にある事だろ。こりゃ、フューレンの問題だ。どっちにしろ、通報は必要だ」
「……お前の境遇を考えると、自分の手で何とかしたいという気持ちはわからんでもないがな……」
「そ、それは……そうですが……でも、せめてこの子だけでも私達が連れて行きませんか? どうせ、西の海には行くんですし……」
「はぁ~、あのな。その前に大火山に行かにゃならんだろうが。まさか、迷宮攻略に連れて行く気か? それとも、砂漠地帯に一人で留守番させるか?」
「ってか、誘拐された海人族の子を勝手に連れて行ったら、オレ達も誘拐犯の仲間入りだろうが」
「指揮官達の言う通りだ。あまり無茶な事を言うな」
「……うぅ、はいです……」
どうやら、シアはこの短い時間で相当ミュウに情が湧いてしまったようだ。
自分の事で不穏な空気が流れていることを察したのか、ミュウはシアの体にギュウと抱きついている。ミュウの方もシアにはかなり気を許しているようだ。それがまた、手放すことに抵抗感を覚えさせるのだろう。
しかし、京矢達の言っていることは当然の事なので、肩を落としながらも頷くシア。
そんな中、ハジメは屈んでミュウに視線を合わせると、ミュウが理解出来るようにゆっくりと話し始めた。
「いいか、ミュウ。これから、お前を守ってくれる人達の所へ連れて行く。時間は掛かるだろうが、いつか西の海にも帰れるだろう」
「……お兄ちゃん達は?」
ミュウが、ハジメの言葉に不安そうな声音で京矢達はどうするのかと尋ねる。
「悪いが、そこでお別れだ」
「やっ!」
「いや、やっ! じゃなくてな……」
「お兄ちゃん達がいいの! お兄ちゃん達といるの!」
思いのほか強い拒絶が返ってきてハジメが若干たじろぐ。ミュウは、駄々っ子のようにシアの膝の上でジタバタと暴れ始めた。
今まで、割りかし大人しい感じの子だと思っていたが、どうやらそれは、ハジメとシアの人柄を確認中だったからであり、信頼できる相手と判断したのか中々の駄々っ子ぶりを発揮している。元々は、結構明るい子なのかもしれない。
ハジメとしても京矢としても信頼してくれるのは悪い気はしないのだが、どっちにしろ公的機関への通報は必要であるし、途中で【大火山】という大迷宮の攻略にも行かなければならないのでミュウを連れて行くつもりはなかった。
なので、「やっーー!!」と全力で不満を表にして、一向に納得しないミュウへの説得を諦めて、ハジメが抱きかかえると強制的に保安署に連れて行くことにした。
ミュウとしても、窮地を脱して奇跡的に見つけた信頼出来る相手から離れるのはどうしても嫌だったので、保安署への道中、抱え上げているハジメの髪やら眼帯やら頬やらを盛大に引っ張り引っかき必死の抵抗を試みる。隣におめかしして愛想笑いを浮かべるシアや苦笑いをしている京矢、こんな時にどうすればいいのかと戸惑っているエンタープライズがいなければ、ハジメこそ誘拐犯として通報されていたかもしれない。
髪はボサボサ、眼帯は奪われて片目を閉じたまま、頬に引っかき傷を作って保安署に到着したハジメは、目を丸くする保安員に事情を説明した。
事情を聞いた保安員は、表情を険しくすると、今後の捜査やミュウの送還手続きに本人が必要との事で、ミュウを手厚く保護する事を約束しつつ署で預かる旨を申し出た。ハジメの予想通り、やはり大きな問題らしく、直ぐに本部からも応援が来るそうで、自分達はお役目御免だろうと引き下がろうとした。が……
「お兄ちゃんは、ミュウが嫌いなの?」
幼女にウルウルと潤んだ瞳で、しかも上目遣いでそんな事を言われて平常心を保てるヤツはそうはいない。
早々に抵抗を諦めてハジメに説得を丸投げした京矢に恨めしげな視線を向けつつ、ハジメも「うっ」と唸り声を上げ、旅には連れて行けないこと、眼前の保安員のおっちゃんに任せておけば家に帰れる事を根気よく説明するが、ミュウの悲しそうな表情は一向に晴れなかった。
そんな様子を見かねた保安員達が、ミュウを宥めつつ少し強引にハジメ達と引き離し、ミュウの悲しげな声に後ろ髪を引かれつつも、ようやく一行は保安署を出たのだった。
当然、そのままデート再開という気分ではなくなり、シアは心配そうに眉を八の字にして、何度も保安署を振り返っていた。
やがて保安署も見えなくなり、かなり離れた場所に来たころ、未だに沈んだ表情のシアにハジメが何か声をかけようとした。と、その瞬間、
背後で爆発が起き、黒煙が上がっているのが見えた。その場所は、
「ハ、ハジメさん。あそこって……」
「チッ、保安署か!」
「チッ、甘く見ていたつもりはねえが、仕事の早い事だなっ!」
そう、黒煙の上がっている場所は、さっきまで京矢達がいた保安署があった場所だった。
四人は、互いに頷くと保安署へと駆け戻る。タイミング的に最悪の事態が脳裏をよぎった。すなわち、ミュウを誘拐していた組織が、情報漏洩を防ぐためにミュウごと保安署を爆破した等だ。
焦る気持ちを抑えつけて保安署にたどり着くと、表通りに署の窓ガラスや扉が吹き飛んで散らばっている光景が目に入った。しかし、建物自体はさほどダメージを受けていないようで、倒壊の心配はなさそうだった。
四人が、中に踏み込むと、対応してくれたおっちゃんの保安員がうつ伏せに倒れているのを発見する。
両腕が折れて、気を失っているようだ。他の職員も同じような感じだ。幸い、命に関わる怪我をしている者は見た感じではいなさそうである。
ハジメと京矢が、職員達を見ている間、エンタープライズと共に他の場所を調べに行ったシアが、焦った表情で戻ってきた。
「ハジメさん! 京矢さん! ミュウちゃんがいません! それにこんなものが!」
シアが手渡してきたのは、一枚の紙。そこにはこう書かれていた。
〝海人族の子を死なせたくなければ、白髪の兎人族を連れて○○に来い〟
「ハジメさん、これって……」
「どうやら、あちらさんは欲をかいたらしいな……」
「随分とふざけた真似をしてくれるな」
「やれやれ、下手な欲を出さなきゃ良かったのによ」
ハジメはメモ用紙をグシャと握り潰すと凶悪な笑みを浮かべ、京矢は軽い口調に似合わない冷酷な笑みを浮かべ、エンタープライズは表情と言う物が抜け落ちた様な顔をしていた。
おそらく、連中は保安署でのミュウと京矢達のやり取りを何らかの方法で聞いていたのだろう。そして、ミュウが人質として役に立つと判断し、口封じに殺すよりも、どうせならレアな兎人族も手に入れてしまおうとでも考えたようだ。
そんな三人の横で、シアは、決然とした表情をする。
「ハジメさん! 私!」
「みなまでいうな。わーてるよ。こいつ等はもう俺の敵だ……御託を並べるのは終わりだ。全部ぶちのめして、ミュウを奪い返すぞ」
「たっぷりと教えてやろうぜ、下手な欲は身を滅ぼすってな。大掃除と行くか」
「はいです!」
「了解した」
正直、これから先の危険な旅に同行させる気がない以上、さっさと別れるのがベターだと考えていた。
精神的に追い詰められた幼子に、下手に情を抱かせると逆に辛い思いをさせることになるからだ。
とはいえ、再度拐われたとなれば放っておくわけにはいかない。余裕があり出来るのに、窮地にある幼子を放置するのはきっと〝寂しい生き方〟だからだ。
実際、自分には関係ないと見捨てる判断をすれば、確実にシアは悲しむだろう。
それに、今回、相手はシアをも奪おうとしている。ハジメの〝大切〟に手を出そうというのだ。つまり、〝敵〟である。
京矢に至っては異世界の裏社会に対応しても後始末まで手が回らないなら手を出すべきではないと考えていた。だが、敵対したのならば既に相応の対処をするべきと斬り捨てる。
最早、遠慮容赦一切無用。彼等は触れてはならない一線に触れてしまったのだ。
一同は武器を携え、京矢に至っては鎧の魔剣だけでなく、ディノミーゴとピーたんまで取り出している。
そして、化け物を呼び起こした愚か者達の指定場所へと一気に駆け出した。
最早、愚者達が明日の朝日を拝む事はないだろう。
ハジメに巨大戦力を渡すとしたら?
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倒したのを頑張って修復キングジョー
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