ポケモンの世界に転生したけど、なぁにこれぇ   作:パルモン

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ポケモンって何歳になっても楽しいよね


ホウエン地方編
プロローグ:遊戯vs海馬


 俺たちが生活している現代。

 それが過去……いや、古代の時代と呼ばれるまでの未来の世界。

 

 その世界ではポケットモンスター、通称ポケモンという生物が世界中に溢れ現代の生物がほとんど存在しない世界になっていた。

 ポケモンは人類と共存するものもいれば、野生のもの、時には人類にとって脅威となるものもいる。

 

 人類はそんなポケモンを捕獲する装置、モンスターボールを開発し、捕まえたポケモンを育てバトルしたり、共に生活したり、時にはコンサートに出場したりなど、あるゆる面でポケモンの力を借りて生活している。

 

 なぜ、こんな話をしているのか? 一言で言えば俺は生まれ変わったのだ。それも第3世代の主人公ユウキに。

 

 やだ、これヒロインはハルカ? 

 

 俺の前世はポケモンが現れる前、ポケモンはゲームやアニメで登場する架空の生物だった時代だ。

 

 もちろん俺は小さい頃からポケモンで遊び、アニメや映画も見た。

 正直この世界に自分が今いることはまだ夢じゃないかって思うほど興奮してる。夢にまで見たリアルポケモンワールド。

 

 つまり、ゲームみたいにグラフィックの向上のために連れてこれるポケモンを制限されたりなどしない、捕まえさえすればどの地方にでも連れて行けるというこの幸福! そして、実際に見て触れる祝福! 感動だ!! 

 

 それにホウエン地方は俺が好きなポケモンが勢揃いじゃないか! 

 

「よぉーし! 頑張るぞー!」

 

「ユウキ、ちょっとうるさいわよ」

 

「あ、はい、すみませんでした」

 

 母さんに叱られてしまった。

 今俺はゲームと同じくミシロタウンに引っ越して来て、引っ越しの手伝いをしている。ヤルキモノがフル稼働で家具を運び、30分ほどで完了した。

 

 ゲーム内では小さなエリアだったが、現実となると意外と大きく、家もそれなりにあった。周囲は森に囲まれており、古風な田舎といったところだろうか。なんとなく、俺の前世の実家と似たような場所だ。

 

 

 ちなみに俺は今年で16歳になる。え? 冒険に出るのが遅いって? たしかにアニメだとサトシは10歳で旅に出てるが、これは現実だ。小学生が1人旅など親が許してくれない。学校で勉強して、一般教養を身につけてからと両親に言われた。

 中学校を卒業すればポケモントレーナーになれるという流れだったが、親の仕事の手伝いをしていたため、予定より少し遅めの旅立ち、という設定で、俺が転生した時にはもう旅に出る数日前の状態だった。まぁ旅に出る前からポケモンとはいくらでも触れ合えたからいいけど。

 母さんが持っているポケモンはチルタリス、この雲のようなふわふわの羽毛は堪らん気持ちいい。

 

「チルー!」

 

 嬉しいことにチルタリスはかなり俺に懐いてくれている。作業が終わるとかまってくれと言わんばかりに顔を引っ付けてくる。

 

「待て……! そんなことされたら萌え死んじまう!」

 

「ふふっ、相変わらず仲がいいわね。せっかくだし2人で散歩でも行ってきたらどう?」

 

 確かに豊縁と書いてホウエン地方だ。自然豊かなここは空気も新鮮で風通しも良い。散歩には最適だ。

 

「よーし、じゃあ父さんのところまで行くか! チルタリス!」

 

「チルっ!」

 

「気をつけて行くのよ」

 

「了解の助!」

 

 勢いよく家を出るとドアの前に立っていた男性と正面衝突した。

 

「貴様ぁっ!」

 

「いやいやいや! ちょっと待って! 落ち着いて!」

 

 少々ぽっちゃりな体系だが、顔はそこまで太っておらず白衣に身を包んだ姿を見てすぐに誰でもあるか理解した。

 

「あれ? オダマキ博士?」

 

「なんだ、知ってるのか……って君、センリ君の息子のユウキ君じゃないか!大きくなったね!」

 

「あ、ども」

 

 俺の父さんの名前はセンリ。トウカシティでジムリーダーをすることになり、こうして引っ越してきたのだ。

 

「センリ君は今いるかな?」

 

「父さん? 父さんは今ジムにいるよ。今から向かおうと思ってたとこ」

 

「それなら丁度いい! 僕もセンリ君に挨拶しておこうと思ってたんだ」

 

 おいおい、まさか一緒に行くってか? こっちはチルタリスに乗ってのんびり行こうと思ってたのに。

 それにこれ絶対博士ジグザグマに追いかけ回されるフラグじゃん。

 

「ユウキ、いいんじゃない? 一緒に行って来なさいな」

 

「うぐっ……母さんに言われたんじゃ仕方ないか」

 

「そんなに嫌かい!?」

 

 結局博士と一緒にトウカシティに向かうことになり、まずはコトキタウンに向かう。

 コトキタウンは森を抜ければすぐに着く。ポケモンセンターやフレンドリィショップがあり、何も無いミシロタウンの住人はコトキタウンに買い物に行くことになる。

 

 森に入ると既に出口が先に見える。草むらに入るとどこからか鳴き声が聞こえて案の定ジグザグマが飛び出してきた。

 

「え? ちょ! うわぁー!?」

 

「よし、チルタリス! 博士が囮になってくれてる間に行こう!」

 

「いや待ってぇ! 違うから! 追われてるから! 囮じゃないから!」

 

 ジグザグマの突進に全力で逃げ回るオダマキ博士をこのまま放置してもいいが、それだと後先図鑑をもらえないという事態になりかねん。

 

「チルタリス、りゅうのいぶきで牽制だ」

 

「チルーっ!!」

 

 少々手加減した攻撃をジグザグマの横に出したことで、ジグザグマは驚いて森の奥に逃げていった。

 

「いやぁ、驚いた。たまに野生ポケモンに追いかけ回されることがあるんだが、今回はユウキ君がいて助かったよ」

 

 それ絶対結構な頻度で追いかけ回されてるよね? 

 

 その後すぐに森を抜けコトキタウンに着いた。コトキタウンの隣にある街がトウカシティだ。

 

 フレンドリィショップでオダマキ博士は先程助けてもらったお礼として飲み物を奢ってくれた。丁度喉も渇いていたため素直に嬉しかった。もちろんチルタリスの分も奢ってもらった。

 

 一息ついた後、トウカシティに向かい町の中央にあるポケモンジムに入った。

 

「おお、ユウキよく来たな。それにオダマキ博士も」

 

「やあセンリ君。トウカシティの新たなジムリーダーとしてこれからもよろしくお願いするよ」

 

「はい、ユウキがいつかバッチをかけてこのジムに挑んでくる日を楽しみにしていますよ」

 

 

 その後、俺をそっちのけで大人同士の会話が淡々と続いた。俺も前世の記憶があるため、中身は大人と変わらない。とはいえ、蚊帳の外にされていては退屈極まりないものだ。

 

 しばらくしてやっと会話が終わり、オダマキ博士はこの辺りでポケモンの観察を行うそうだ。

 俺はチルタリスに乗ってミシロタウンに一人で帰った。

 

「ただいまー」

 

「おかえりユウキ。お父さんと会えた?」

 

「まあ会えたけど、オダマキ博士とずっと話してて俺は蚊帳の外だよ」

 

 俺の言葉に母さんは苦笑した。明日旅に出る息子ともっと話したいとは思わなかったのだろうかと思ったが、あれはあれで父さんらしいといった感じだ。変に心配されるよりいつも通りの方が良かったのかもしれん。

 

「それにしても早いわねー。もう明日旅に行っちゃうなんて少し寂しいけど、きっといろんな人に出会っていろんなポケモンと冒険できるはずよ。あ、でも無理は禁物よ。体調には気をつけてね? それと困っている人がいたら助けてあげること。ポケモンには優しくしてね? バトルに負けたからってやつあたりしちゃだめよ? ポケモンも頑張ったんだから怒るんじゃなくて励ましてあげないとね? あとは……」

 

「ああ! 大丈夫だよ! 母さん! 心配してくれるのは嬉しいけど、俺もう子供じゃないんだから」

 

「……ふふっ、そうね。なら、明日に備えて今日は御馳走にしないとね!」

 

 母さんはそう言うと張り切って台所に向かった。

 俺は甘えてくるチルタリスを撫でながら椅子に座りテレビのチャンネルを変えた。

 

『さあ! ポケモントーナメント決勝戦です!』

 

「お、そういえば今日は決勝戦か」

 

 テレビではこう言った大会などをテレビ中継で見ることができる。ポケモンバトルは一つのエンターテインメントでもあるのだ。

 

 このトーナメントは見ておらず誰が参加しているのかも知らなかったが、決勝戦だし少し見てみることにした。

 俺が熱中してみるものは年に2回行われるポケモンリーグだ。いつか俺もあの舞台に立ちたいと毎回強く思う。

 

『では! 決勝まで勝ち抜いた両者の登場です!』

 

「誰なんだろうなぁ」

 

『まず赤コーナー! 武藤遊戯さん!』

 

「……は?」

 

 いやいや待てよ、ここはポケモンの世界だ。そんなカードゲームの主人公がいるわけがない。同姓同名だろう。全く驚かせやがって。

 

 豪快な煙が発射され、扉が開くとゆっくりと男が歩いてくる。

 

 だが、その男のシルエットはどう見てもそれだった。見間違えるはずがない。星の上半分を切り抜いたような髪型、どこでも学校の制服を着用し、その目は正に()()()()()()()()()()()

 

「おいおい、マジかよ……」

 

 これどういう世界観? あれ? ここポケモンの世界だよね? だってジグザグマいたもん。チルタリスいるもん。今俺撫でてるもん。

 

『続いて青コーナー! 海馬瀬戸さん!』

 

「しゃ……社長……だと……!」

 

 予想はしたが、まさか本当に海馬とは……

 

『海馬!このデュエル、俺が制してみせるぜ!』

 

 いや、決闘(デュエル)じゃないから。これポケモンバトルだから。

 

『ワハハハ! 遊戯! 俺は貴様を倒し決闘王(デュエルキング)になる!』

 

「だぁからポケモンバトルな」

 

「ユウキ?どうしたのー?」

 

「あーいやなんでもないよ。あれ?ユウキ……遊戯……名前似てんな!どうでもいいけどぉ!」

 

 会場は二人の登場で一気にヒートアップ。夕焼けが二人のデュエリストを照らしまさに宿命の対決に相応しい場になっている。

 

『行くぞ遊戯!』

 

『こい!海馬!』

 

『『決闘(デュエル)!!』』

 

「もうツッコムのもめんどくせえ」

 

「……チルー」

 

 何故二人がこの世界にいるのかわからないが、会場は大盛り上がりだ。もしかしてこっちの世界でもあの二人は有名人なのか? この世界に来て一度も耳にしたことがなかったのだが。

 

 もしかして俺の記憶がこの世界に反映してる? いやいや、まさかな。

 

 そうこう悩んでいるとバトルが始まった。

 

『これが俺の切り札にして、最強の僕!! いけ! ブラック・マジシャン!(フーディン)』

 

「その名前で出すんかーい」

 

「チル……」

 

『ふぅん……俺はこいつだ!グリムリン(グラエナ)を召喚!』

 

 おいおい、遊戯さん最初からエースモンスター出してきたよ。てか相性悪!絶対グラエナ有利じゃん。

 

『お前がグリムリンを出すことは読めていたぜ!』

 

『なに!』

 

 読めてたならなんでフーディン出したの?かくとうタイプ出しなよ。

 

『遊戯、お前が何を企んでいるか知らんが、この相性でどう立ち向かうつもりだ?ワハハハハっ!いけぇ!グリムリン!かみくだく!』

 

『ブラック・マジシャン!避けろ!』

 

 フーディンはグラエナのかみくだく攻撃を紙一重でかわし、追撃の姿勢を見せる。

 

『今だ!かなしばり!さらに、でんじはで追加攻撃!』

 

『くっ……!貴様ぁ!』

 

 なるほど、かなしばりでグラエナの攻撃を封じた。さらにでんじはで動きを鈍らせる。これでフーディンが一方的に攻撃ができるというわけだ。

 

『これで決めるぜ!ブラック・マジシャン!きあいだま!!』

 

 フーディンの手のひらに強力な気が集められそれが球体となり具現化する。その玉を痺れて動けないグラエナに投げ飛ばす。

 

『グォォオッ!!?』

 

 効果はバツグンだ!

 

 きあいだまにより一撃でグラエナは戦闘不能になった。やはりフーディンは特攻がかなり高い。さらにきあいだまの威力もあり一撃で倒れるにも納得がいく。

 

『流石だなと言ってやりたいが、この程度問題にもならんわ!』

 

 グラエナ可哀想だなおい。

 

『見せてやる!俺のプライド、そして俺の魂!』

 

 まさか、あのモンスターを!?

 

『いでよ!青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)(ボーマンダ)!!』

 

 ボーマンダかよ。てか白くないし。

 

『くらえ!滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)(はかいこうせん)!!』

 

 ボーマンダのはかいこうせんがフーディンに炸裂、大ダメージを受けフーディンは吹き飛ばされる。

 

『ワハハハハ!強靭!無敵!最強!』

 

『何勘違いしてやがる……』

 

 フーディンはボロボロになりながらも立ち上がる。フラフラとした足取りではあるがその目に宿る闘志はまだ消えていない。

 

『ひょ?』

 

 いや、海馬がそれ言うんかいww

 

『俺のブラック・マジシャンはまだ戦闘不能になってないぜ!速攻魔法発動!狂戦士の魂(バーサーカー・ソウル)!!』

 

『まさか……!』

 

 遊戯が持っているキーストーンがフーディンに反応、フーディンはメガシンカした!

 

『これが俺とブラック・マジシャンの絆だ!』

 

 すかさず遊戯はフーディンに技を命じる。

 

『いけ!ブラック・マジシャン!黒・魔・導(ブラック・マジック)!!』

 

『ガァウゥウウ!!?』

 

 フーディンのシャドーボールがボーマンダの顔面に命中。メガシンカしたことにより威力が増大したシャドーボールは確実にボーマンダの体力を削る。

 

 しかし、相手のボーマンダも十分な育成をしている。大ダメージを受けたもののまだまだ戦えると咆哮をあげフーディンを威嚇する。

 

『ふぅん……勝ったと思ったか?』

 

『くっ……』

 

 余裕の笑みを見せる海馬は腕に巻いてるキーストーンを掲げる。

 

『見るがいい!これが最強の称号を持つにふさわしいポケモンの姿だ!』

 

 海馬の持つキーストーンがボーマンダに反応、ボーマンダはメガシンカした!

 

『わははははっ!これがブルーアイズの究極の姿だ!いでよ……我が最強の僕、青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)!!!』

 

『まさか!?』

 

 メガシンカしたボーマンダはまさにドラゴンタイプのトップを競うステータスを誇るにふさわしい姿になった。

 

『これで終わりだ!全てを薙ぎ払え!アルティメット・バーストォオ!!!』

 

『ぐあぁぁぁあ!!』

『……っ!!?』

 

 ボーマンダのりゅうせいぐんがフーディンと遊戯に命中、2人は吹き飛び地面を転がる。

 フーディンは戦闘不能になり、遊戯は傷を負いながらもなんとか立ち上がる。

 

『わははは!粉砕!玉砕!大喝采!!』

 

『……俺は負けない!俺のターン!』

 

 遊戯は腰に巻いているベルトに取り付けているモンスターボールを取り出し新たなポケモンをくり出す。

 

『見せてやるぜ……神の姿を!』

 

『なに!?遊戯……貴様まさか!』

 

 え?神?もしかして……

 

『神の召喚!!いでよ……オシリスの天空竜!!(レックウザ)」

 

『オ……オシリス……だと……?』

 

 え?レックウザさん登場早くない?まだ俺冒険出てないんですけどぉ?レックウザのイベント見らずに終わる感じこれ?ちょっと嘘でしょぉお!?仮にもエメラルドのパッケージ飾ったポケモンだよね?メインポケだよね?

 

『オシリスの攻撃!超電磁波サンダー・フォース(かみなり)!!』

 

『ボオァァ!!』

 

 レックウザのかみなりが命中、フーディンのシャドーボールを受けていたこともありその一撃でボーマンダは倒れた。

 いよいよ追い詰められた海馬、しかし、その顔は不敵な笑みを浮かべていた。

 

『いいだろう……ならば俺も神を拝ませてやる!我が絶対の僕よ……我が領域に君臨せよ!オベリスクの巨神兵(グラードン)!!!』

 

 グラードォォン!!だから展開早いって!なんでこうも看板ポケモン出てくんのぉ!もうカイオーガしかいないじゃん!絶対顔芸(マリク)が持ってんじゃん……全然ラーに連想できないけどもぉ!

 

『ふっ……ここでオシリスの効果発動!召雷弾!!』

 

 普通にでんじはだよね……

 

『甘いわ遊戯!オベリスクはじめんタイプ。貴様の召雷弾など効かぬわ!』

 

『なにっ!?』

 

 あ、そこはちゃんとしてるんだ。

 

 彼らの『俺ルール』はこの世界ではないことに少しホッとした。

 

『いくぞ!ソーラービームだ!』

 

 グラードンは光を吸収し始める。だが、この勝負圧倒的にグラードンが不利だ。ひこうタイプのレックウザにじめんタイプの技は効かない。ましてはくさタイプ技のソーラービームはドラゴン・ひこうタイプであるレックウザにいまひとつだ。

 

『海馬、この勝負もらったぜ』

 

『なに……?』

 

『まだ気づかないのか?俺の真の狙いを!』

 

 そうか、レックウザは確かメガシンカの起源。未だ謎が多いポケモンの1匹だ。てか、遊戯が持ってるなら解明できんじゃね?

 

『オシリスのもう一つの効果!オシリスが場にいる限り、天気の影響を全て無効にする!エアロック!!』

 

『なにぃ……!』

 

『行くぜ海馬!』

 

 遊戯の掛け声に応えるようにレックウザが吠える。その声は空気を震えさえ、画面越しの俺ですらもその気迫に押された。

 レックウザの体が光を放ちその姿をさらなる進化した姿へと変化させる。

 

『メガシンカ!これが原始の神の姿、こい!メガレックウザ!』

 

『ギャォォオオ!!!』

 

 突き出した顎から生えた髭に粒子が流れ、バチバチと弾けるような音が響く。

 周囲はメガシンカしたレックウザの影響で乱気流が発生、中継しているカメラが揺らされて映像も揺れている。

 

『くっ……!これほどとは……遊戯ぃ……貴様ぁ!』

 

『これで終わりだ。オシリスの攻撃!ガリョウテンセイ!』

 

 レックウザは天に昇るように蛇行し一気に上昇した後、グラードンに向かって急降下して突進する。それは雷を纏った流星の如く、異常とも言える速度で敵を襲う。

 

『グオッ……オォォ……』

 

『ぐあぁぁぁ!』

 

 グラードンほどの巨体が軽々しく宙を舞い地面に叩きつけられる。その激しい突風に海馬を吹き飛ばされ地面を転がる。

 

 審判もなんとか立ち上がりグラードンの様子を見る。当然あれほどの攻撃を受けたグラードンは戦闘不能、手持ちがいなくなった海馬の負けが確定した。

 

『し、勝者!武藤遊戯ぃ!』

 

『俺の勝ちだ!海馬!』

 

『『……っ!!ワアアアア!!!』』

 

 遅れて観客が歓声を上げる。白熱したバトルの末、新たなるチャンピオンの誕生に熱狂する。

 

 その様子を画面越しに見ていたユウキはソファに体を委ね、一息ついて呟いた。

 

「……なぁにこれぇ」

 

 明日からいよいよ始まる冒険にユウキはただ天井を見上げもう一度ため息をついた

 

 




物語はまだ進まない……!

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