ポケモンの世界に転生したけど、なぁにこれぇ   作:パルモン

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AIBOとは遊戯王ネタでよく使われる闇遊戯じゃない方の遊戯のことを示す言葉です。闇遊戯はATMです。


俺のAIBOはイーブイ一択なんじゃボケ

 翌日。

 

 カーテンの隅から差し込む太陽の日差し。眩しいぜぇ。俺は今日からポケモントレーナーになる。そしていろんな地方を巡っていろんなポケモンと会って、俺は癒されたい。

 

 さぁ!無限の出逢いが俺を待っている!

 

「ユウキ!今日は昼から嵐みたいよ。出発は明日にしたら?」

 

 なぁにこれぇ。

 

 

 

 

 ホウエン地方編

 第1話『嵐の後に』

 

 

 

 

 朝食を食べ終え空を見ると確かに朝方の天気から急変して雲行きが悪くなってきた。旅を始めて早々に豪雨に濡らされるとかどこかの永遠の10歳ポケモントレーナーじゃあるまいし、ここは1日待って明日に出よう。焦ることはない。ここには俺の癒しのチルタリスがいる。

 

「あ、そうだ。なんなら今日博士からポケモン貰って今日一日で少しでも仲良くなろう」

 

「あ、いいんじゃないそれ?なら早めに行っておいで」

 

 母さんからの許可を得たため俺は運動できる服装に着替えて部屋のドアを開けた。

 

「チル!」

 

「お、チルタリスも来るのか?」

 

「チルッ!チルー!」

 

 頭を擦り付けてきたチルタリスを優しく撫でる。それを気持ち良さそうに肩に頭を乗せてくる。可愛い過ぎだろぉが!ちくせう。

 

 ついてきたチルタリスを撫でながら家を出てもう一度空を見上げる。空模様はどんどんドス黒くなっており早く行かないと大雨に晒されそうだ。

 駆け足で博士のいる研究所に向かう。ゲームと同じく家から研究所までは走ると2分で着く距離だ。そういえば言い忘れていたが、隣の家はハルカの家であるが、あいにく既に旅立っているためハルカルートは無さそうだ。無念。

 もちろん理由は他にもある。俺も驚いたがこの世界にはなんとサトシがいるのだ。今はサトシとの旅を終え、ジョウト地方に一人旅に出ているそうだ。まぁ、知ってるんだけどね。

 この話はハルカの弟マサトに聞いた。安定の緑のポロシャツに半ズボンの姿だったが、彼も9歳となっており、来年から取れるポケモントレーナーの資格のためにさらにポケモンについての勉強に熱を入れているそうだ。

 

 俺の予想ではあるが、マサトはジラーチやデオキシス、ラルトスなど、エスパータイプのポケモンとの縁があるため将来はエスパー使いのスペシャリストになるだろう。

 

 そうこうしているうちに博士の研究所に着いた。インターホンを鳴らすと中からどうぞと返事が返ってきたためドアを開けて中に入る。

 

「……広いなぁ」

 

 中には精密機械がずらりと並び、数人の白衣に身を包んだ研究員がパソコンを打ったり、スクリーンに映ったデータを見ながらノートに書き留めている人など、研究所らしい空気が漂っている。

 

「やあ!ユウキ君」

 

 奥からオダマキ博士が歩いてきた。その手にはモンスターボールが一つ握られている。

 

「今日ここに来たということは最初のポケモンを貰いにきたんだね」

 

 そういう博士の顔は少し引きずっているようだ。

 

「何かあったんすか?」

 

 博士は頭をポリポリとかきながら申し訳なさそうに答えた。

 

「本当に申し訳ないんだけどね、君に選んでもらおうとしたアチャモ、キモリ、ミズゴロウの三匹がみんな体調不良なんだよ。おそらく最初に風邪をひいたアチャモからみんな感染しちゃったんだよね」

 

 なるほどと俺は相づちをうつ。その報告については別に落ち込んだりはしない。なぜならば……

 

「博士、俺のAIBOはイーブイ一択なんじゃボケェい!」

 

「え?よくわかったね、このモンスターボールの中に入っているのがイーブイだって」

 

「はははっ!そのくらい当然……ゑ?」

 

「……え?」

 

「え?」

 

 その場がシンと静まりかえる。

 

「え?イーブイなの?」

 

「う、うん」

 

「本当に?」

 

「なかなか珍しいだろ?つい昨日の夜にこのイーブイが研究所に迷い込んだんだ」

 

「見せて」

 

「いいよ」

 

 博士がヒョイとモンスターボールを投げるとポカンと定番の音を立てて中からポケモンが出てくる。そのシルエットは見間違えようのない俺が望んだ姿だった。

 

「イーブゥ!」

 

 元気良く出てきたイーブイは大きな尻尾をフリフリとしながらこちらを見てる。

 

 ユウキはどうする?

 たたかう

 叫ぶ ← 

 チルタリス

 逃げる

 

「うぉぉおぉおおおおおおっ!!イー!ブッイィイ!!」

 

 ユウキはガッツポーズをして叫んだ。彼の発狂に周りの人はみんな引き気味で彼を見つめた。

 

「ありがとう!創造の神、アルセウス!全ての生き物に乾杯!」

 

「ユウキ君、少し落ち着いたら?」

 

 その後博士の説明を聞き流して勢いよく研究所を飛び出し自宅に向かう。

 

「イーブイ、これからよろしくな!モフモフモフ」

 

「イ……イブッ(ユウキ撫で過ぎだよ!)」

 

 ひたすらモフられ続けるイーブイだが、イーブイ自身無邪気で甘えん坊なため悪い気はしなかった。むしろ初対面でここまで自分を受け入れてくれる彼のもとならきっと楽しそうだと思った。

 

「やべぇ、これは想像以上のモフモフだ……今まで画面越しにひたすら撫でていたが実際に触れる日が来るとは……!ポケモンサイコー!イーブイサイコー!チルタリスサイコー!ポケモンライフエンジョイ!」

 

「イブイブ(ユウキっていっつもこんな感じなの?)」

 

「チルーチル(今日はイーブイが来てはしゃいでいるんだよ。いっつも私にイーブイの可愛さを語られていたよ)」

 

「ブイ、イーブ。イブイブイーブ(……そっかぁ、優しそうで安心した。僕実は前のトレーナーから捨てられたんだ、こたいち?が低いとかなんとかで使えないって……)」

 

「チル!?チルーチル!(そうなの!?でも、ユウキは絶対そんなことしないよ!)」

 

 ユウキはイーブイをモフりながら思った。

 

 俺、ハブられてない?

 

 

『ゴロゴロゴロ……』

 

 いつの間にか空は真っ黒に染まっており、昼にも関わらず周囲は暗くなってきた。

 家に着くとすぐに二階に上がり窓の閉め忘れがないかチェック、全ての窓が閉まっているのを確認すると再び一階に降りた。

 父はまだトウカシティにいるため今日の天気を考えると帰るのは遅くなりそうだ。

 

『ポツポツ……ザァァア!』

 

「うおっいよいよ降り出したな」

 

 まもなくして雨は大ぶりとなりあらゆる音は一瞬にして轟音に呑み込まれる。

 

 雨は、前世の俺は雨は嫌いじゃなかった。天気をテーマとしたあるアニメ映画を見てから雨にも趣を感じるようになった。独特の匂い、音、心を洗い流してくれるような感覚だ。そして全てを流すと新鮮になった心を写したかのように空は清々しく晴れるのだ。自分を祝福するように虹の橋がエールを送る。その声援に背中を押され、水溜りができた道を再び歩む。

 

 俺は今第二の人生を歩き出そうとしている。ポケモントレーナーとして全国を旅して、たくさんの人々、ポケモンに触れ合い、いずれは結婚もして子供に恵まれ、今度は子供の旅立ちを見送るのだ。残された俺は残りの人生をポケモンと妻と幸せに過ごす。

 

 ま、今はこれから見に行く世界にワクワクすっぞ。

 

 

 

 イーブイたちと家の中でゲームをしながら過ごし、昼を過ぎた。外は未だ豪雨でむしろその勢いは更に増している。

 

「すごい雨だな。今日だけで何日分やら」

 

 そんなことを考えているとドンドンとドアをノックする音が聞こえる。こんな豪雨の中わざわざ何の用だろうか?

 

 恐る恐るドアを開けるとそこには全身ずぶ濡れのオダマキ博士が睨め付けるほど真剣な表情で立っていた。

 

「は、博士!?」

 

「オダマキ博士!どうしたんですか!?」

 

 遅れて母さんが驚く。無理もない、こんな雨の中で傘も持たずにやってきたのだ。そして白衣はひどく汚れており、ズボンの端は何かに引っかけたのか破けている部分もある。

 

「た、大変だ!すぐに避難の準備をしてくれ!」

 

「避難んん!?」

 

 いや、あり得ない話ではない。これだけの雨なんだ、もしろまだここが浸水してない方が奇跡なのかもしれない。母さんはまだ理解できてないようだが、俺はそんな気がして博士の言葉を待つ。

 

「よく聞いてくれ、この近くの海で……カイオーガが出現した!!」

 

「な、なぬぅぅ!?」

 

 やはり展開が早すぎる。もうすでに昨日の時点でレックウザ、グラードンと三幻神のうちの二体が登場した。フラグは十分にあったのだ、この勢いでカイオーガも出るかもしれないと。

 

「こんな早くにカイオーガ出現イベントだと……だが、俺の手持ちはイーブイと母さんのチルタリスのみ。それにカイオーガのレベルはおそらく70だ。圧倒的なレベル差で弱らせることすらも難しいはずだ。そもそもこんな早くイベントくるか?もっと後半だろぉ?くそぉなんでだぁ?」

 

「ブイ?(大丈夫?)」

 

 破茶滅茶過ぎるぞいくらなんでも。それに今は結構ピンチでもある。この豪雨の影響で浸水する可能性もあるのだ。現に足が浸かる程の水量になっている。このままこの雨が降り続ければミシロタウンが浸水しかねないしこのままにしておくわけにもいかん。

 

「とりあえずここから避難した方がいいかも」

 

 母さんの言葉にそれぞれ頷く。大切なものを各自まとめる作業に入り、びしょ濡れのオダマキ博士はそのまま他の家に呼びかけに走った。なんだかんだ彼もいい人だなと初めて思った。

 

「ユウキ、準備できた?」

 

「おーけー、っていうかもともと今日旅立つ予定だったから荷物はまとまってんだよね」

 

「あら、それもそうね」

 

「ブイ!ブーイ(準備おーけ!みんな大丈夫かな)」

 

「お?イーブイこの状況を楽しむなんていい心臓してるな」

 

「ブイ!(違うわ!)」

 

 ポケモンは人間の言葉を理解するが、人間はポケモンの言葉を理解できない。しかし、中にはテレパシーによって人間の脳に訴えかけることで会話ができるポケモンもいるそうだ。

 

「よし、母さんも準備できたし高台に行こう」

 

 荷物を持って家を出る。外は未だどしゃ降りで傘を持っても意味が無さそうなほどなためカッパを着ている。イーブイにもポケモン用のカッパを着させて雨を凌いでいる。チルタリスは母さんのモンスターボールの中に入っている。

 

 森の中に入り傾斜を登っていく。当然地面はぬかるんでいるため気をつけないと足を滑らせかねん。

 

「ぐぼはぁ!」

 

 俺は足を滑らせそのまま倒れる。カッパのお陰で泥を被ったのは顔面だけで済んだ。

 

「ふぅん、フラグは回収した」

 

「何言ってるの?」

 

 その後は何事もなく高台に無事避難できた。顔についた泥をタオルで拭きながら周りを見渡して海の方向を探す。ミシロタウンから海の方向となるとムロタウンがある方向だ。

 

「あ!見つけた!」

 

 遠くの方に小さく建物が見える。おそらくムロタウンだろう。ムロタウンから東側の遠く離れた所にその箇所だけ一段とドス黒い雨雲がかかり大雨が降っているのだろうと予測できる。

 

「カイオーガの影響がここまで届いているとなると、やっぱり現実での伝説のポケモンは均衡を崩すほどってことか……!こりゃ、ゲームみたいにゲットなんかできんぞ」

 

 だが、胸の奥から湧き出るこのワクワク感はどういうことだろうか。やはり、自分に嘘はつけない。

 

 俺は、今この瞬間にでも相棒(イーブイ)と旅に出たい!

 

「母さん、やっぱ俺決めた!目の前に大冒険が待ってるっていうのにじっとなんかしてられねぇ!」

 

「ふふっ、ユウキならそう言うと思ったわ」

 

 母さんは俺の心中を察していたようだ。

 

「ほら、これを持って行きなさいな」

 

 ユウキはポケモン図鑑を手に入れた!

 

「いやこれ普通博士から貰うんじゃね?」

 

「博士に頼まれて預かったのよ。ユウキ君の顔は今すぐにでも旅に出たそうな顔してて朝一番に飛び出しそうだからお母さんから渡してくださいって」

 

 なんだ、博士のくせにずいぶんと気が利くじゃないか。

 

「ありがとう、母さん。俺行くよ!」

 

「母さんのことは心配しなくていいわよ。ほら、今オダマキ博士が登って来てるわ」

 

 遠くの方からドロドロに汚れた白衣を揺らしながら博士が登って来ているのが見える。

 

「ああ!最高の旅、行ってくる!よし!行くぞ!イーブイ!!」

 

「ブイブイ!」

 

 イーブイもやる気に溢れているようだ。

 肩に飛び乗ったイーブイと目を合わせ互いに頷く。家の中で一緒に過ごしただけであるが、イーブイは既にユウキを信頼しつつある。それは彼が心の底からポケモンが大好きだということが伝わってきたからだ。

 

「よっしゃー!!待ってろカイオーガ!デビュー戦はお前で決まりだ!」

 

「ブイブイ!(冗談じゃなくヤバイって!)」

 

「イーブイやる気だな!張り切っていくぜい!」

 

「ブイ──!!?(嘘でしょぉぉ!!?)」

 

 勢いに任せてユウキは下り坂を一気に駆け下りる。しかし、当然地面は雨でぬかるんでいるため滑りやすい。

 

「ぐあぁぁぁぁああ!!」

 

 ユウキは足を滑らせそのまま斜面を転がり落ちていく。

 

「行ってらっしゃい!ユウキ!」

 

 一瞬母さんが手を振っている姿が見えた。

 いや、俺今転がり落ちるんですけど。

 

「はぁ!はぁ!あれ?ユウキ君は?」

 

 遅れてオダマキ博士が到着した。

 

「ユウキなら今転がり落ちながら旅に出たわ。やっぱ若いっていいわね元気があって」

 

「それただの惨事じゃないのぉ!?」

 

 七転び八起きということわざがある。今の俺はひたすら転がるだけだが、いつか立派に立ち上がれるように頑張ろう。

 

 こうして、俺たちの旅は始まったのだった。

 

「クゥ?」

 

 ユウキが転がり落ちる様子を空から眺める一匹のポケモンは妙に彼に興味を持つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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