自殺愛好者(贋作)の刃   作:後藤さんのゲッターすごいのね〜‼︎

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あけましておめでとうございます。投稿が久しくなってしまって申し訳ないです。受験が終わるまでは不定期となってしまいます。何卒読者の皆様にはご理解いただけますように…


自殺愛好者(贋作)と時透兄弟

 

 

 

 

 

まだ夏に入りかけの時期に、時透宅を訪問したら全身に水をぶっ掛けられるという手荒い歓迎を受けた私は今、草木が茂る森の中で入浴を楽しんでいた。

 

「湯加減はどうですか?」

 

「あぁ、丁度良いよ。しかし、大正にもなってもこんな(タイプ)の風呂があるなんて…」

 

私が言うこんな(タイプ)の風呂とは、簡単に説明すると江戸時代では主流(メジャー)だった風呂である。だが黒船襲来によって始まった文明開化によって近年化が進んだ大正の世では、絶滅危惧種になりかけている、湯を沸かすための竈門の上に湯船代わりの桶があり、桶の中に竈門で足の裏をやけどしないように底板という板がある五右衛門風呂だった。

 

 そんな絶滅危惧種(五右衛門風呂)の火の番をしてくれているのは、私に水をぶっ掛けた張本人である時透有一郎くんの双子の弟であり、この風呂まで案内してくれた無一郎くんだ。

 

 毎日使っているからなのか、無一郎くんの湯加減が丁度良い。此処(景信山)までやってくるのに、酷使し続けていた全身によく染みる。極楽極楽というのがよくわかるありがたみだ。

 

「僕の家は、山の中にあるので湯船を作るのができなかったんです。だからこの(タイプ)になったそうです」

 

「なるほどね」

 

 こんな山奥では、湯船を作るのが難しいが、五右衛門風呂の湯船となる桶ならば運べる大きさだし、運ばなくとも家を建てる場所が木の多い山なので原料(木材)ならいくらでもある。

 

「………」

 

「どうしたんだい?なんだか迷い子のような顔をしているのだけれど…?」

 

「えっ…?」

 

「私でもいいのなら悩みでも聞こうか?」

 

 竈門の中の火を眺めている無一郎くんの顔は、なんだか親とはぐれてしまい道に迷って、泣きそうな子供のような顔をしていた。

 

 ある学者は、火は原初(ルーツ)なのだという。だからこそ、人は火を眺めていると落ち着き、本性を表れるのだという。

 

 私はこの生きる理由探しの旅の道中に、金策のために、酒場にて男版の芸女のような事をして女の人を手玉に取り、男の人には悩みを聞いてあげ、打開策を提示し、相槌を打った。そして彼らに貢がせて金をがっぽり稼いでいた。えっ…。私…屑過ぎ…?たまに、私の身体目当ての方々がいたが、全力疾走(全集中の呼吸)で、逃げた。なので私の身体は汚されていない!本当だよ!

 

 話が脱線しすぎてしまった。本題に戻そう。そのおかげと言っていいのか、ある程度の話術が身に付いた。警戒心を張りまくっている人と仲良く酒を飲めるほどに。なので、何か思い詰めた無一郎君いや、むーくんの力になれるかもしれない。

 

「………」

 

「………」

 

 だが、むーくんは話し出す気配がない。おそらく、私に悩みを話すか、話さないかを悩んでいるのだろう。まぁ、それも是非もない。いきなりであった人に悩みを話すなんて思えない。私は、お悩み相談所の職員じゃないのだから。

 

「すまなかったね。部外者である私に悩みをそう易々とは話せないよね…。話を変えよう。この山に樵夫(きこり)をしている人はいるかい?」

 

樵夫(きこり)…ですか…?」

 

「あぁ、私はある事情でいい木材が欲しくて腕のいい樵夫(きこり) を探していたんだ。そしたら伝手(ツテ)に、この山に腕のいい樵夫(きこり)がいると紹介されたんだ」

 

「あっ、それ…。僕たちのことです…」

 

「えっ…?!」

 

 なんともまぁ間抜けな声が、我が喉から出てしまった。いや、知ってたさ。君たち(時透兄弟)樵夫(きこり)だという事を。

 

 でも少し言い訳させて!原作に、景信山の『け』の字すら出てこなかったじゃないか!それだから時透兄弟って言う発想が出るだろうか?いや、出るわけがない。(半切レ(キレ))

 

 でもまぁいい。私は木材が手に入ればいいのだ。だったら原作登場人物(キャラ)相手でもやってやろうじゃねぇか!

 

 さてとこれからどうしましょうか…。(現実逃避)

 

 

 

***

 

 

 僕たちの家、兄さんと二人ぼっちだっただけど居心地が悪くなっていた家に奇妙な居候が増えた。

 

 きっかけは、あまねさんの件から一週間ほど経ったある日、兄さんが僕たちの家まで訪ねて来た太宰さんに水をぶっかけた事だった。いくら夏とはいえども、水をかぶったままで山にいることなんて危険な事この上ない。

 

 なので、何もしようとしなかった兄さんの代わりに、太宰さんを風呂まで案内して、丁度良い湯加減のために僕が火の番をした。

 

 その入浴中に太宰さんは、此処に来た経緯を教えてくれた。なんでも太宰さんは、とある事情で質の良い木材が必要らしい。そのため太宰さんは、伝手を頼ったところ此処、『景信山』の木材を勧められ、そこで樵夫(きこり)をしている僕ら(時透兄弟)が選ばれたらしい。

 

 そしてのんびりと入浴を終えた太宰さんは、濡れてしまった服を物干し竿に干して、僕が出しておいた亡くなった父さんの着流しを着て、兄さんに水をかけられたことを材料(ネタ)にして交渉をしていた。

 

 その交渉は夜遅くまで続き、翌朝になると太宰さんは僕らの家の居候となっていた。ちなみに兄さんは虚な瞳をし、ぶつぶつと何やらを呟いていた。

 

 その日は疲れていたので、僕はいつの間にか寝てしまっていた。なので、一体太宰さんと兄さんに、どのような交渉が行われたのかは分からない。だけど言葉がきつく、注意深すぎる兄さんがこうなってしまうなんて…。一体太宰さんは何をしたんだ…?

 

 こうして始まった居候となった太宰さんと僕ら(時透兄弟)の奇妙な日々が始まった。

 

 

 

***

 

 

 そして二週間ほどが経った。僕たちの環境が少し、いやかなり変わった。まず第一に変わった事は食事だ。僕たちは木を刈って売る事で、生活している樵夫(きこり)だ。だが決して豊かとは言えず、足りないところは両親が遺してくれた財産で賄いながらなんとか過ごしていた。

 

 なので食事はいつも質素なもので、お肉や魚なんかは滅多に食べれず、料理上手だった母さんと違って料理がそこまでうまくない僕たち(時透兄弟)は美味しい料理なんか作れず、なんとも微妙な味の料理を食べていた。

 

 だが、太宰さんは僕たちが山に木を刈っている時に、山のあちこちに仕掛けた罠などで仕留めた猪、鹿といった獣を解体し得た獣肉や、実っていた木の実、(きのこ)らを使って、鍋、蒸し焼き、厚い肉を焼いた物(ステーキ)などの様々な美味しい料理を作ってくれた。

 

 そんな絶品料理を前には、兄さんは何も言えず、年相応の子供の顔をしてがつがつと食べ終えると、渋々嫌な顔をしながら三角頭巾に割烹着姿の太宰さんにおかわりをしていた。これじゃあまるで太宰さんは僕たちのお母さんみたいだ。

 

 そして次に変わったことといえば、僕らが街で売る商品が増えたことだ。いつもは、僕たちが頑張って採った木材だけを売っていたが、太宰さんが作ってくれた竈にて、教えてくれた炭の焼き方で焼いた炭も売るようになった。

 

 その炭はよく燃え、出来が良いので街の人たちには好評で、たくさん買ってくれて作った炭は全て売れ、僕たちの収入がたくさん増えた。買ってくれた人の中に過呼吸しているお姉さんたちがたくさんいたけど大丈夫かな…?

 

こうして奇妙な居候である太宰さんとの楽しい日々は流れるように経ち、じめじめとした梅雨が過ぎて蒸すような暑い夏がやってきた。

 

 そして僕たちの運命を変えるきっかけ(人生の分岐点)がやってくることを僕たちはまだ知らなかった…。

 

 

 

 

 





太宰さん
むーくん兄弟に竈門家の炭の焼き方を教えた。そこ裏切り者とは言わないで…

大正コソコソ話
太宰さん目当てのお客さんのおかげで勤め先の居酒屋さんの売り上げはやばかったんだって(語彙力消失)

あと料理の腕はその居酒屋で磨いたんだって

時透兄弟
太宰さんの家事力に負けてしまった方々。美味しい料理には勝てなかったよ…
大正コソコソ話
太宰さんの教えで焼いた炭のおかげで生活がだいぶ楽になったんだって
あと過呼吸のお姉さんはHentaiなので安心して…

五右衛門風呂
名前の由来は石川五右衛門をかまゆでの刑にしたという俗説から。余談だが、いつぞやに書いた『東海道中膝栗毛』の中に五右衛門風呂をネタとしたものがあります。よろしければ是非。


竈門一家は

  • 全員死亡(悲しいかなぁ…)
  • 一部生存

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