運命の眷属   作:正直者ライアー

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宴を終えて

 もうそろそろ日を越してしまいそうな深夜、ハールは本日2度目のダンジョンを急ぎながら進む。進路を阻むモンスターは矢で射抜き、魔石も拾うこと無く急いで走るとそこには点々と誰かが狩ったモンスターの魔石が落ちていた。ハールはそれがあの少年が戦った痕跡だと見抜き、弓に矢を違えて駆け出す。すると戦闘音が聞こえてきた。そして少し開けた場所に少年は居た。ここはダンジョン六階層。少年の身体は傷だらけで、まるで幽霊のようなモンスターに囲まれてもなお必死にナイフを振っていた。しかし彼の周りにモンスターはどんどん増えていく。そろそろ助太刀に入っても良いだろうと考えたハールは弓の弦を引き絞って直ぐに狙いを定めると弦から手が離れた。矢を放つと直ぐに次の矢を番えて放つ。ごく数秒の間に何本もの矢が放たれ、その全てがモンスターの頭部を的確に射抜いた。残り一体となった敵を少年は切り刻むと一言凄いと呟いてハールを見た。

 

「少年。傷がすごいな。これを使え」

 

そしてポーションを投げる。少年はそれを一気に飲み干した。

 

「ありがとうございます。それとこの間もありがとうございました。すみません。助けてもらったのにお礼も言わず、、、」

 

「まぁ気にするな。トマト野郎同士、仲良く助け合おうじゃないか」

 

そう言うと彼は笑みを浮かべた。

 

「僕、ヘスティアファミリアのベル・クラネルと言います。よろしくお願いします」

 

「僕はノルンファミリアのハール・ノルン・レガリアだ。気軽にハールと呼んでくれて構わないよ」

 

そう言い、少年に手を差し出した。差し出された手を少年は握るとハールは上下に振った。

 

「ベルのレベルはどのくらいだ」

 

「1です。ハールさん、お強いんですね。この前もさっきも、、、」

 

「お世辞はよしてくれ。僕だって君と変わらないレベル1だ」

 

「ええ!?尚更驚きました」

 

「それと敬語もよしてくれ。普通に話してくれて構わないよ。さんもいらない」

 

ハールは弓の弦を麻ぐすねで擦りながら話す。

 

「大きな弓だね」

 

「極東の弓だからな。色んな弓を使ってみたらこいつが一番使い難かったからこいつを使ってるんだ」

 

「使い難かったから?」

 

「ああ。そうだ。使い難かったから上手く扱えるようになりたいって言うのと使えるようになれば凄い強いと思ったからこいつを使い続けてる。教えてくれるひとも居たしな」

 

そんなことを話しているとベルが唐突にハールに正面を向いた。

 

「あの。お願いがあります。僕、強くなりたいです!ハールみたいに。戦い方を教えて下さい」

 

「僕に言うよりもう少しレベルが高い人に言った方が良いんじゃないのか?」

 

「ハールはレベルは僕と同じだけどもの凄く強い。それに筋肉をみて思ったんだけど沢山努力をしたんじゃないかな。今の弓のやつだって誰にだって出来るものじゃないし実際レベル2の弓使いだって出来る人はいないんじゃないかと思う。それにあのミノタウロスの時、アイズさんが来てミノタウロスは倒れたけどあのままでもハールは倒せてたと思う。だからハールは凄い。そんなハールに僕は教えて欲しいんだ」

 

「ベル、、、そうか。、、、丁度敵が湧いてきた。ナイフを構えろ。ベル。僕が戦い方を教えよう」

 

 

 

 

 

 それからハールによるベルの訓練は長く続き、今二人は朝陽が昇る様子を拝みながら人の少ないオラリオを歩いていた。やがて分かれ道が来て二人はお互いにさよならと言うと各々の寝床へと帰って行く。クタクタの身体でハールは歩き、宿に着くとこっそりと自分の部屋を開けた。すると、飛び蹴りが飛んできた。

 

「ハール!何やっての!?心配したんだからね!」

 

「どこに何しに行ったのかは予想ついたけど、心配させないで」

 

当たり前といえば当たり前だが二人は既に起きていたらしい。ハールはスクルドの飛び蹴りを大人しく受けて二人に感謝と謝罪を述べる。しかしもう一人の姿が見当たらない。

 

「ハール。お帰りなさい。先ずは言う言葉があるのではないかしら?」

 

雪の千倍冷たい風に背中をなぞられた気がしてぶるりと震えた。ハールの視界の先には笑みを浮かべるウルドがいる。しかしその笑みは鬼が可愛く思えてしまうほど怖い。ハールは静かに死を悟り眼を閉じた。

 

「楽には死なせないからね?」

 

 数時間後ハールが疲れに疲れ切っていたのは彼の自業自得だろう。

 

「ほんっとに心配したわ」

 

説教を終えたウルドはハールに抱き付く。そしてスクルドも同じように飛び込んで来てヴェルダンディは少し顔を赤くしながら姉妹と同じように抱きつく。

 

「本当に済まなかった」 

 

「ほんとだよ!!ハール、後で市壁の上に来なさい!罰として私達が流した涙の分血を流してもらうわ!みっちり稽古してあげる」

 

「妥当ね」

 

「ウルドに同感」

 

これこそハールが何かしでかした時の罰。スクルドとの鬼の特訓だ。普段は割と手加減してハールと剣や弓の稽古をするスクルドだがこの罰の場合は本気で打ち込んでくる。刃を潰した剣や木刀を使うため死ぬことは無いがめちゃめちゃ痛いしキツい。ハールはもう一度死を覚悟した。

 

 

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