ナルトの世界に転生したと思ったら、なぜか生まれたのは水の国でした。 作:八匙鴉
残念ながらリンクの張り方が分からずアドレスだけとなってしまいました
「さてシキ様、
「うーん……」
先月の荒行により天候の心配の無くなった昼下がり。良い天候の下で私は村長の言葉に頭を悩ます。
ここの所快晴が続くので洗濯物が干しやすくなったと家庭の奥様方からはお誉めを頂き、上々の出来で事がぽんぽんと進む仕事にホクホク顔でいられるのも少しの間だけ。
いくら物事が上手く行くからといって、頭を悩ます仕事や問題が減ったわけではなく、むしろ成功で終わらせるためには私の頭をフル回転させて、知識なり記憶なりを手繰り寄せなければならないんだから大変も大変で。
だから今回も私は、村の池の前に陣取って顎に手をやりながらこうやって次の作業について頭を悩ましていた。
「治水整備──上水に下水か~……。どうしようかな。下水菅を通す道は土遁で掘るとして、問題は『管』その物だよね。ここにはコンクリートなんて無いし、パイプを加工するような事も出来ないか…」
「──あの質問なんですがね、そのシキ様が言う下水菅というのは、いったいどんな物なんですかい?」
「ん──、簡単に言うと筒だね。中をくり貫いた円状の巨大な筒を何個も繋げて、その中に下水……家庭で使った後なんかの水や用を足した後の汚水なんかを流すんだ」
「水を……流す? わざわざ? 今のように土に埋めれば良いのでは?」
「それだと
「今まで考えたこともない事ですなぁ。……シキ様の言葉は時に私には難しいですよ……」
村長がそう言って首を傾げる姿に思わず苦笑する。うーん、そうか、これでも難しいのか。
確かに衛生の重要さを知らない人間に、掃除の何たるかを教えてもぴんと来ないのは仕方ないのだろう。
並行して下水処理場なんかも作りたいと思っていたのだが、それより先に皆へ衛生の大切さを説く講習会でも開いて知識を与えた方が良いだろうか。これは中々に難航するかもしれないぞ。
「とにかく、先に地下に下水道だけでも掘り進めてみようか。各家庭に穴を繋げて、地下に簡易の貯め場を造って繋げて……。ゆくゆくは浄水機能とかもつけたいけど、それには準備が必要になるから、先ずは汲み取り式にして畑の肥やしに利用を……」
もはや隣の存在を忘れて一人ぶつぶつと呟く私を村長はしばらく眺めて待っていたようだが、長くなると判断したのだろう。気づけば彼の姿は居なくなっていた。
まあ村の長だけあって暇じゃないだろうし、仕方ない。
そんな風に私は考えていたのだが、本当はただ私の話が理解できなくて彼が逃げただけだった。
ふう、と息を吐き出して空を見上げる。
良い天気だ。だけどまた少し
この前
一発目のあれは威力が強すぎて周りに少なからず被害が出てしまったから。
私は術の使用に夢中で気づいてなかったのだけど、聞けば人によってはチャクラの形が天に昇る龍のようにも見えたらしく、天変地異かなにかと、どうも酷く驚かせてしまったらしいのだ。
結果、家では事情を聞いた母が大層お怒りのご様子で待っていたから、あれはかなり冷や汗ものだった。
……正直、今生の母は普段優しい人だけに一度怒らすとめっぽう怖い。
「シキ。お母さん、前に貴方に『術は皆に迷惑はかけない範囲でやりなさい』って言ったわよね? そう何度も同じことを繰り返すようなら、お母さんにも考えが有るわよ?」
とそれはもう良い笑顔で脅された。
流石に逆らうことも出来なかった私には、すいませんでした。と素直に謝るしかなかったのだけど。
……でもご免なさい。多分これからも同じことは繰り返す気がします。
そんなふうに心の中で謝ったら、まるでその心の声が読まれたかのように母が目を座らせたように見えた。……恐らく私の自意識過剰による気のせい、だとは思いたいが。
「はたけカカシが使う《雷切》は雷を切るんだよね。なら雲を散らした私のこれは《雲散らし》? なーんて……ん?」
そんな風に技の名前で遊んでいた最中、一瞬視界の中に何か違和感を感じた気がして目を凝らす。
「……いま何かが通ったような気がしたけど、気のせい?」
それは本当に一瞬で、すぐに分からなくなる程度のものだったけど。言葉にして言うなら誰かが後ろに立ってから横切っていったような、そんな感覚? だけど、当然目に写る範囲には誰もいない。
「う……、気味悪いな。なんだろ…」
「──シキ?」
「──ひゃい!?」
モヤモヤする感じにうすら寒い感覚を覚えていた直後、真後ろから急に名を呼ばれたことで私は飛び上がった。
見れば立っていたのは母で、彼女は普通に呼び掛けたつもりだったのか、私が跳び跳ねてまで驚いたことに目を丸くしていた。
あれ? というか、もしかして今の母さんだったのかな。
「ぁ──ごめんごめん母さん。ちょっと考え事してて驚いたってゆーかなんてゆーか」
「そうなの? ご免なさい。お母さんも急だったわよね」
「別に謝らなくても……それよりどうしたの、なにか用事? と言うかお母さん、またそんな薄着で外に出てるし……」
そう呟くと母は先程のすまなそうな表情から一転、頬に手を当て艶やかに笑った。
「大丈夫よ。最近は調子が良いって言ったでしょう? それに私はいつも無茶をやる娘が心配でちょっと様子を見に来ただけよ~? お母さんにも考えがあるって言ったでしょう?」
「ええ!? あれってそう言う意味なの!?」
「そう言うもこう言うも無いけれど、最近の貴女が少し活発的なのは気になるわね~。ご近所さんから苦情……こほん、お話も聞いてるし、貴女が普段何してるのか気になって」
ちょっと待って、お母さん今『苦情』って言ったよね? 言い直してたけど、明らかにご近所さんの『苦情』って。
苦情ってなに? まさか私のやってること村でそんなに噂になってるの?
「そ、そんなに心配しなくても特別変なことしてるつもりはないんだけど……。ただ今回のは空の雲を吹き飛ばそうとして、ちょっとやり過ぎただけで…今は術も完璧だよ?」
「……その発想からしてもう普通じゃないわよ。それにしても雲を吹き飛ばす? それであの風を? …………」
あ、あれ。なんかお母さん神妙な顔になって黙り混んじゃったんだけど……。なに? 私怒られるの? なに馬鹿なことやってるのー! とか何とか怒られちゃうの?
どうしよう、お母さんまだ怒ってたのかな?
そりゃあ村のためとか言いながら結果やり過ぎて皆に迷惑かけるようじゃ本末転倒も良いところだけど、でも本当だよ? 嘘ついてないよ? わざとじゃ無いんだって!
「──シキ」
「はいっ、ごめんなさい!」
「ふふ……っ。シキったら、急になに謝ってるの?」
「へ?」
パニクり過ぎて咄嗟に謝ってしまった私を見た母が可笑しそうに笑う。そんな彼女の姿を見て私は目を丸くした。
「あ、あれ。怒ってないの?」
「怒る? 別に怒ってないわよ? ただ少し聞きたいのだけど…」
「あ、うん…なにかな?」
怒ってない。そう言う母にほっとしつつ頷くと、あのね、と母に切り出される。
「前もそう思ったのだけど、貴女チャクラの運用は一体どうしてるの? あんな巨大な技、使用しようとしたら並大抵のチャクラ量じゃ足りないでしょう。それこそ一度使えばそれだけで倒れるくらいに効率が悪いはず。なのに貴女にその傾向は無いわよね?」
「ああ…それは何でか分かんないんだけど、私の場合は疲れを感じにくい体質みたいで…何て言うのかな…チート…じゃ分かんないよね…」
「…チ?」
当然のごとく首を傾げて困り顔の母に慌てて訂正する。
「ああうん何でもない! 兎に角不思議なんだけど、私は疲れとか全然気にならないみたい!」
「……そう。不思議ね」
「うん不思議。──って、お母さん? あの、私も一つ聞いて良い? ……何でそんなに詳しいの?」
ちょっと質問の答えに困って焦ってしまったから気づくの遅れたけど。普通、チャクラの運用についてとか、この世界じゃ忍びでもないと分からないんじゃない…?
今度はこちらが疑問をぶつけると母はキョトンと目を瞬かせたあと。
「それはお父さんに習ったのよ~。忍者の妻になるのですもの。それくらい知ってなきゃでしょ~?」
「はあ…そういうもんですか…」
コロコロ鈴を転がすみたいに母が言う。
なにそれ、忍びの妻ってそういうことも勉強しなきゃいけないの? それは大変だね…。
じゃあなにか。母さんがチャクラ切れについて疑問に思ったのは父さんからの受け売りだったと。
「言ったでしょ。お母さん、シキが無理してないか心配だって」
「うん…その点についてはほんとご免なさい。でもこれも私のやりたいことだから多目に見てほしいな…」
「分かってるわよ。貴方のやりたいことだものね」
優しい目で微笑まれて、なんだかくすぐったい。
頬を指でかき、照れたように視線を反らすと、また背中に人の気配を感じて後ろを見てしまう。しかしやっぱりというか、そこには誰も居なくて。
(……え、また?)
「シキ? どうかしたの?」
「…ねえお母さん。今後ろに誰かいた?」
「え? 別に誰も居なかったわよ~? どうかしたの?」
「ぁ~…ううん何でもない。ちょっと人が居たような気がしたけど、気のせいだったみたい」
首を傾げてこちらを見る母に手を振って意を伝える。私と一緒に居た母が何も見ていないなら、本当にただの気のせいなんだろう。
もしかしたら最近根を詰めすぎていたから疲れが出てるのかもしれない。それなら今日はもう帰って休んだ方がきっと良いなと、そう結論付けて私は母に向けて微笑んだ。
「やっぱりちょっと疲れちゃったかもだから、今日はもう帰るよ。先に晩御飯の用意しとくから、お母さん何か食べたいのある?」
「そうねえ~、最近はお
「そういうの作る側にしたらスゴく大変なんだからね」
「あらあら、裕福も楽じゃないわね」
ニッコリと笑われて、なんだか
何が良いかな。そういえば去年浸けた梅がまだ残ってたはずだ。お米も充分あるし、今日は消化の良い梅粥にしようかな。冬に採った大根もおろして添えたら丁度良いだろう。
「…うん、決めた。今日はお粥にするわ。副菜も付けるから、ちょっと畑に寄って帰るね」
「分かったわ。気おつけてね~」
「お母さん……都会じゃ有るまいし、こんな田舎で気おつけるも何もないわよ、全く」
能天気にも手のひらを振って見せる母の姿に、私は体の力が抜ける思いでその場を離れた。
────
軽快な足取りで幼き少女が走っていく。その姿を見送りながら、それまで土の中に潜っていた彼は、器用にも頭だけを地上へと忍ばせた。
少女の姿はもう見えない。彼の前には背に肩掛けを羽織り、柔和な笑顔で少女の走り去っていった方をじっと見つめ続ける女性だけが残った。そして彼はその女性に向かって声を上げる。
「
「ご苦労さま、フブキ。変わりは無いかしら?」
女は今しがた自身でフブキと呼んだ名の青年には目もくれず、声だけで事を伝える。
彼女の視線はまだ前を向いたまま、青年が頭を出す足下には顔も向けない。しかしそれでもフブキと呼ばれた青年は、それを気にするような事はしなかった。
「はい、目立つところで変わりはありません。村にかけた術にも変化は見られず、奴等に気取られた心配はないかと。………むしろ今の方が危なかったかもしれませんね」
ポツリと先程感じた焦りを漏らすと、ふふ、と頭上から忍びめいた笑いが聞こえてきた。
「私も驚いたわ。まさか隠行している貴方に気づくなんて」
「……気配察知能力が飛び抜けて高いようですね」
「ええ、本当に。…うっかり近寄りすぎて土遁で土と一緒に掘り返されても知らないわよ?」
「…笑えない冗談ですね。………気をつけましょう」
事実、本当に掘り返されては堪らない。これからは土の中ではなく離れた場所からの監視も必要か……。考えると眉間に深いしわが寄るが仕方がない。
彼は一族の中でも特に隠密に長けた技を持っていた。そしてその腕を一族の当主たる人物に見込まれた結果、こうして彼はここでの任に就いているのだが──。
「カオリ様。これは里に潜っている仲間からの話ですが、聞きますか?」
「────あまり良くない知らせなのかしら?」
「いえ。ただ里に居る一人が、最近の水影の動きに疑問を持っているようでして、少し調べていたようです」
「……聞きましょう」
女性の目が鋭いものへと変わり青年へ向く。
彼はこの前の一族の定期報告の場で聞きかじった話を女性に向かって答えた。
それは些細な変化だったのだと、そう言っていた彼の言葉を思い出しながら。