機動戦士ガンダム・ギンガ   作:ノザ鬼

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奈落

 

 

 傍観者。

 

 少し離れた場所で、二人の会話を聞いていたギンガ。

 

 博士の言葉に、

〘全人類の未来?〙

 釣られ、

〘こいつが?〙

 トレーラーの荷台へ視線を向ける。

 

 

『ドクン!』

 

 心が発する音が、心臓で増幅され全身へ、波紋の様に伝播する。

 

『ドクン!』

 

 二度目。

 

『ドクン!』

 

 三度目。

 

 それは、

〘なんだ…。〙

 どこかで、

〘この感覚は…。〙

 感じた事のある…。例えるなら【懐旧】。

 

 

「……。」

 

「…み。」

 

「君!」

 

 意識が心の中へと深く潜っていた。

 

 呼ばれている事にも気付かない程に。

 

 レイカ越しに、

「君は…。」

 博士が声を

「確か…。」

 かけていた。

 

 小さい頃にレイカの家に遊びに行った時に会ったきりだが、博士の顔に覚えていると書いてあった。

 

 それが、嬉しく自然と笑顔が生まれたギンガ。

 

 

〘!〙

 

 心の中で誰が叫ぶ。

 

 その声に反応し、

「モ…。」

 振り向く、

「モビルスーツ…」

 ギンガ。

 

 緑色の巨体に光る一つ目が笑う。ギンガには、そう見えた。

 

 その手の銃口が放つ光が、狙っているぞと笑いかける。

 

 咄嗟。

 

 無意識。

 

 例えるなら、その辺り。

 

 振り向き、

「危ない!」

 レイカと博士へ警告するギンガ。

 

 

 マズルフラッシュ。

 

 そんな単語が付けられた事象。

 

 放たれた弾丸は、そのサイズなら砲弾。

 

 飛。

 

 爆。

 

 風。

 

 それが起こしたもの全てが、三人をもて遊ぶ。

 

 

 体をかがめ、身を守るギンガは転がる。

 

 背中側で起きている事に対応できなかったレイカは立ち尽くす。

 

 博士は立ち尽くすレイカに覆い被さり、地面へと伏せる。

 爆風を一身に浴び、消え行く意識の中で娘を心配する。

 

 

 コロニーの回転による人工重力は、ギンガに下を教える。

 

 転がる勢いが、

「くっ!」

 緩やかに減り、

「このぉ!」

 足が地面を捉える。

 

 手もならう。

 

 その姿を四つん這いと呼ぶ。

 

 立ち上がるギンガに、湧き上がる感情。

 

 それは…。

 

 怒り。

 

 それは、突如として訪れる【死】に対するものなのか…。

 

 はたまた、それを訪れさせたモノへの感情なのか…。

 

 睨む先は、緑色のモビルスーツ。

 

 そいつは、ゆっくりと歩を進めると共に大地を揺らす。

 

 それは、こちらへと向かって来る行為。

 

 

 またも、光る銃口がこちらへ向けられ、死の宣告をする。

 

 

 突如。

 

 咄嗟。

 

 この二つは、どの時代でもセットなのだろう。

 

 

 炎を吐き出し、煙の尾を引く小型円筒形のモノが、モビルスーツの光る一つ目へと迫る。

 

 これは、突如。

 

 元を辿れば、バギーカーの荷台に立つ兵士が肩に構えたロケットランチャーから放たれたと判る。

 

 

 響く警告音。

 

 パイロットが、モニターの小窓に映る飛翔体を認識と同時に右手を掛けているレバーを引く。

 

 その動きに反応しモビルスーツが回避行動を行う。

 

 これは、咄嗟。

 

 左手で一つ目を庇いながら、身をよじる。

 

 装甲で覆われていない場所へのピンポイント攻撃を行った兵士の判断は正しかった。

 

 

 爆発。

 

 

 たたらを踏むモビルスーツ。

 

 それは…。

 

 咄嗟の回避行動がバランスの限界を引き下げ、爆発が後押しした結果であった。

 

 

 倒壊音。

 

 それは、転倒を防ごうと手を付いた建物がモビルスーツの重量に耐え切れず上げた悲鳴。

 

 

 与えられた時間。

 

 それは、兵士が作ったつかの間。

 

 それを知ってか、

「レイカ!」

 視線を、

「博士!」

 二人へ移すギンガ。

 

 走り寄り。

 

 覆い被さる博士へ、

「大丈夫ですか!」

 軽く揺すり確かめる。

 

 朗報。

 

 返答は、

「うっ…。」

 うめき声。

 

 更に視線をレイカへ向ける。

 

 苦しそうにだが、僅か動く唇は生の証。

 

 心の中で、

「二人共、生きてる…。」

 胸を撫で下ろすギンガ。

 

 

 悲報。

 

 その喜びを、

「駄目だ…。」

 否定する現実が、

「二人、一緒には運べない…。」

 ギンガに突き付けられた。

 

 自分の無力さに苛まれ、

「どうしたら…。」

 折る膝は地面へ音と痛みを伴いながら落ちる。

 

 そして、頭を項垂れる。

 

 

 無限。

 

 一瞬。

 

 時間の感覚は観測する人間が基準になる。

 

 前者は、ギンガから。

 

 後者は、他人から。

 

 そんな、時間の後。

 

 ゆっくりと上げる頭。

 

 その先に、

「お前か…。」

 見るのは、

「俺に、話かけていたのは…。」

 トレーラーの荷台のモノ。

 

 レイカと博士を一瞥する目に宿る決意の光。

 

 ギンガの踏ん張る脚が大地を蹴り、駆け出す。

 

 手を掛けたトレーラーの梯子は、軽々とギンガを上に登らせる。

 

 

 トレーラーの荷台の中央付近。

 

 身をかがめ、カバーシートを掴む。

 

 頬をすぼめ、

「ふーっ!」

 深呼吸は、心の準備。

 

 一気。

 

 それは、

『バサァァァァァ!』

 カバーシートと大気が奏でたBGM。

 

 

 奈落。

 

 

 ギンガの脳裏に浮かんだ現れたモノの名前。

 

 全てを落とす穴。

 

 そこに躊躇わず、

「くっ!」

 飛び込むギンガ。

 

 

 

 

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