単に、
『カチャン。』
ソーサーに置かれたカップが出した小さな音。
合図。
ソファーにかけたまま、
『チラリ。』
鋭い視線を送り、間とする上官。
ゆっくりと前かがみの両膝に、
「本題に…。」
乗せた両肘を立て、
「入ろうか。」
手を組む。
よく見るポーズ。
空調で温度と湿度か管理されているはずの部屋。
だが…。
下がる温度。
乾く空気。
その両方を肌で感じる艦長。
釘。
それも特大。
「これから話す事は…。」
「一切、記録に残す事も許されない。」
「一辺のメモにもだ。」
「君の記憶にだけ残す事を許される話だ。」
ゆったりと取る間で、言葉を心に刺し止めていく。
返答の代わりに軽く頷く艦長。
満足げに、
「よろしい。」
その目が笑う。
そして、
『ふーっ。』
ひと呼吸。
切り出しは、
「あれは…。」
小さく。
「第二次月資源調査の時の事だ…。」
思い出す、
〘第二次だと、ダークサイド側か?〙
艦長。
「調査地点七十八番…。」
「人類は異文明と初の接触した。」
飲んだ固唾が喉を鳴らし、
『ゴクリ。』
部屋を響として走り回らせた。
「後に【モビルスーツ】と呼ばれるモノを発見したのだ。」
理解を超えた話は、
「えっ!?」
驚きを通り越し、混乱の領域へ思考を到達させた。
送る視線で、
『チラリ。』
艦長の表情を監査。
「驚くのも無理はない。」
そこには、
「私も最初に知った時は同じ表情だったろうからな。」
軽い作り笑いが浮んでいた。
それは、
「はぁ…。」
曖昧な相槌。
それを見る目は、
「発見したものを研究し我々が使っているモビルスーツが造られたのだよ。」
明らかに艦長の反応を楽しんでいた。
それは、
「ちなみに…。」
作為的に、
「だ…。」
作られた間は…。
「学者先生達は、発見されたモビルスーツを…。」
「遺物【Relic(レリック)】」
「未知【X(エックス)】」
「原型【Original(オリジナル)】」
「発見場所【78】」
「それを組み合わせ【RX‐O−78】と呼んでいたがね…。」
「まあ…。」
「あれだ…。」
「私も、便宜上【RX-O-78】と呼ぶがね。」
呆れたと言葉に込めていた。
内容に緩急を付け際立たせた、上手い話し方である。
「【RX-O-78】が、月にあった意味は解らないが…。」
「【RX-O-78】が、存在する意味は一目瞭然だった。」
二人の間に、
『…。』
沈黙が流れ間となる。
切り出したのは、
「戦争…。」
艦長。
相槌は、
「うむ…。」
上官。
「戦闘用の機体。それが見た者、全ての意見だ。」
眉唾もの。
当然、そんな言葉が艦長の頭を過る。
その表情を読み取ったかの様に、
「研究が進み…。」
秘書官へ一瞬、送る視線が、
「【RX-O-78】の内部データにアクセスできた…。」
合図となり近付いて来る。
そっとテーブルに、
「これを…。」
紙束を纏めたファイルを置く秘書官。
頷き、
「拝見します。」
艦長の右手がファイルを開く。
そこには、手書きのレポート。
右隅にクリップで留められた化学反応で現像された一枚限りの写真。
釘付け。
レポートを読み進める艦長の紙を捲る音が、
『パラリ。』
『パラリ。』
『パラリ。』
この部屋を静寂で満たす。
一枚のレポートを読み終えたタイミングに、
「お代りをどうぞ。」
入れたての香りで刺激するコーヒーが置かれた。
手を、
「ありがとう…。」
伸ばす艦長。
覚えているのは、最初の一口。
いつの間にか、飲み終えていたコーヒー。
だが、レポートの内容が喉を干上がらせる程に緊張させていた。
温かい一口が、
「ふう…。」
艦長の…。
いや、部屋全体を一息付かせた。
そして…、
『パラリ。』
『パラリ。』
また、レポートを読み耽る艦長。