それは、
『ウォウォウォン。』
機械の心臓の鼓動。
それは、
『グィンインイン。』
機械の筋肉の軋み。
揺れないメインモニターは補正された結果。
揺れる椅子はアブソーバーが吸収しきれない結果。
それぞれが違和感を与えながらも、一体となる。
巨体の身じろぎが、
『ピチッ!』
覆い隠していたカバーシートのワイヤーを引き千切る。
トレーラーの荷台より、
『グウォ。』
左足が地面へ下りる。
同じく、
『ギギィ。』
左腕を地面を掴む。
そのまま捩(よじ)り、
『ゴゴゴ。』
久々に動かす機体(からだ)は鈍(なま)っていると軋む。
ゆっくりと…。
確実に…。
そして…。
力強く!
立てた両の脚は大地を踏む。
一方。
瓦礫に埋もれた一つ目の巨人。
それは、まるで神話の出来事。
ただ、違うのは目の前の出来事と言うことである。
自らの力で、瓦礫を押し退け立ち上がる一つ目の巨人。
武器を構え、右と左を往復する一つ目は何かを探す仕草。
そして…。
中央より、やや右よりで止まった一つ目。
『ニヤリ。』
モビルスーツに感情があったなら、一つ目はそう笑っただろう。
目の奥のカメラが自分を攻撃した、憎きバギーカーを捉えていた。
一つ目の視線に連動し、巨大な銃口が追う。
ドライバーは車の軽さを活かし、的を絞らせない蛇行運転。
荷台でロケットランチャーを構える兵士は、
〘今度こそは!〙
その思いを狙いにする。
パイロットは、小賢しい奴とモビルスーツが持つマシンガンの狙いを付ける。
兵士とパイロットの互いがトリガーに掛ける指が照準とシンクロ。
偶然…。
否!
必然。
同時に、引かれるトリガー。
巨大な銃口が、
『ドウッ!』
火を吹く!
四つ正方形に並んだ発射口の、
『ボウッ!』
次の出番が火を吹く!
交差する弾と弾。
互いは狙いを外した。
だが、それぞれは違う意味を持っていた。
モビルスーツへ放たれた弾は、外れたのではなく外された。
パイロットの意志に反応した機体が、飛来したロケット弾を交わした結果であった。
その後、モビルスーツの後ろのビルへと着弾し一角を破壊した。
バギーカーへ放たれた弾は、外れたのではなく避けられた。
ドライバーの意志に反応した車は、着弾地点を避けた結果であった。
しかし!
その威力は、着弾した地面の周囲ごとバギーカーを宙へと飛び散らせた。
そして…。
バウンドする毎に、原型を留めなくなる。
最後は、上を向いたタイヤが虚しく空気を回し続け、やがて動かなくなる。
笑う。
それは、一つ目の表情を表す的確な言葉。
五月蝿い蚊を退治した様にスッキリしていた。
そして、思い出した。
全身で、そう言いながら見をよじり、本来の目的方向へ向く。
驚愕!
一つ目の奥に映る映像が、機体とパイロットの両方を硬直させた。
そこには、トレーラーの荷台に寝ていたはずの標的が立っていたる!
パイロットは、バギーカーに気を取られた事を後悔する様に、
『ギュゥ!』
操縦桿を再度握り直した。