天を向いていたカメラの視点が、機体の駆動音と共に次第に水平へ向けられる。
そして、椅子の背もたれに掛かっていた重力が座面へと移行した。
踏みしめた両の脚が大地を捉え、
『ビコーン。』
両目が完全起動状態を示す輝きを放つ。
合う。
二つの目と、一つの目の奥のレンズの視線がぶつかる。
音を出し、
『ピピピッ!』
画面に表示させたと知らせる。
そこには、目の前のモビルスーツに注釈線が付き、詳細なデータがあった…。
名前:Uka−Z(HMS−066)
所属:帝国軍
……
…
が!
今のギンガに読む余裕は無かった。
焦り。
戦いの緊張が目の前のモニター越しに、圧力となってギンガへ浴びせられる。
一つ目がゆっくりと上げる、
『ギラリ。』
銃口が音を出す。
思わず、
「ぶ、武器は!?」
声を上げるギンガ。
モニターの風景が、
『ピピピピッ』
網状の光で分割される。
俗に言うスキャン。
そして…。
答えるも、
『右前方のトレーラーに、専用のビームライフルとシールドがあります。』
ギンガ。
ただし、モビルスーツのAI。
⚠今後は、人間の方を只の【ギンガ】と、モビルスーツの方を【AIギンガ】と称します。
続け、
『肩のビームサーベルは使用可。』
咄嗟の、
「くっ!」
声と、
『グイッ!』
共に操縦桿を押し込むギンガ。
意識はトレーラーへ行き、
『頭部バルカン…。』
AIギンガのナビゲーションは聞いてはいないギンガ。
泳ぐ。
一つ目のモビルスーツが、ターゲットのモビルスーツの反応の早さに、銃口を合わせきれない。
驚き。
踏み出しから、トレーラーの荷台へ伸ばした腕が掴むビームライフルとシールド。
その手際は、ギンガの知るどのモビルスーツよりもスムーズであった。
右腕に装備されたライフル。
画面に[オンライン]の文字が表示され、【ターゲットマーカー】が現れる。
ビームライフルは、その状態を表す緑の光が点らせた。
左腕に装備されたシールド。
画面に[オンライン]の文字が表示され円形の【ゲージ】が現れた。
シールドは、その状態を表し灰色の表面を赤く色付かせた。
モビルスーツ乗り。
そんな言葉が、ベテランでは無いにしても、戦いを掻い潜ってきたという自負が遅れた反応を取り戻させる。
その一つ目が、
「させるか!」
そう叫び…、
『ドウッ!』
『ドウッ!』
『ドウッ!』
引かれたトリガーに、コンマ遅れ銃口を反応させた。
機体を、
『ドゥン!』
媒体として、
『ドゥン!』
音と、
『ドゥン!』
振動をギンガに伝える。
それは、
「くっ!」
食いしばる声。
その後ろで、
『機体のダメージはゼロ…。』
流れるアナウンスをギンガは聞いていない。
そして、行われたのは極自然な反応。
いや、反射。
操作する操縦桿の動きが、画面のターゲットマーカーにつぶさに伝わる。
コクピットで引かれた、
『カチッ。』
トリガーの音が、
『ドウ!』
まさに引き金となり、銃口から光の柱が放たれれる。
ビームは持つ熱量で周囲の大気をプラズマ化させ、一直線に伸びる。
命中。
ターゲットは反応出来ず、その光の柱を受けた。
ただし、左腕と左肩から下がったシールドへ。
融解。
そして…。
爆発。
シールドが飴細工の様に溶け、内側に装備されていたミサイルの残弾が誘爆した。
ビームの威力は、その爆発をも消し飛ばす。
そして…。
その圧力に耐えられなくなった両脚は、立っていることを止めた。
不満。
飽き足らぬ。
食い足らぬ。
破壊し足らぬ。
それがビームの威力。
そして、新たな目標(ターゲット)を見付ける。
ビル。
それが、名前。
一瞬。
それでも、よく持ったと褒めるべきだと…。
複数のビルを融解させたビームは、その威力のままに大地を抉(えぐ)る。
大地は、その下の隔壁へ警告を伝える間もなく蒸発し、コロニーは巨大な穴を穿(うが)たれた。
満足。
久々の獲物を堪能したビームは、宇宙(そら)を駆け、果(はて)へと消えて行った。