あの坂を登れば…。
ギンガとオルトの目的の場所が見える。
そこには、既に約束したメンバーが待っている。
ギンガが、
「遅ーい!」
声をかけるよりも、
「約束の時間過ぎてる!」
先に文句を付けた女性。
その女性に対するギンガの形式通りの、
「ごめん。」
謝罪は、
「レイカ。」
本当に怒ってないと解っていたから。
レイカと呼ばれた女性の瞳の奥の、
「本当に…。」
真意は、
「ギンガは時間にルーズなんだから…。」
会えた喜びに溢れていた。
もう一度、
「だから。」
形式的な、
「ごめん。」
謝罪を、
「って。」
繰り返すギンガ。
赤く血色の良い頬を、
「折角…。」
膨らませ、
「私が教えてあげたのに。」
そっぽを向くレイカ。
うんざり。
他の面々は、こんな二人のやり取りを見慣れているのか止めるどころか、見てもいない。
唯、一人を除いて。
間に、
「二人とも…。」
割り込む、
「喧嘩しちゃ駄目だよ。」
見るからに気の弱そうな青年。名をギリニオと言う。
諍(いさか)いを嫌うが故に巻き込まれる、俗に言う[損な性格]であった。
視線を送り、
「ギリニオ!」
一喝、
『ギロリ!』
目力が効果音を、
「ギンガには言わないと駄目なのよ!」
皆に聞かせるレイカ。
背筋に冷たいものを、
「いや…。」
感じ、
「ほら…。」
それでも、
「だから…。」
考えるギリニオ。
レイカに浮き出た、
「あん?」
十字の怒りマークが声にも付き、
「だから…。」
顔を何倍にも見せ、
「何!」
無言の脅迫となる。
背筋を流れる幻の汗は、
「なんでも…。」
恐怖を増幅させ、
「無いです…。」
ギリニオの全身を縮み上がらせた。
レイカの、
「解れば…。」
胸の前で、
「よろしい!」
組んだ両腕は、
「ねぇ…。」
相手をやり込めた、
「みんな…。」
勝者の証。
同意を求め向いた先にレイカが見たものは…。
無人の場所。
先程まで、他のメンバーが待っていた場所。
擬音を出し、
『キョロキョロ。』
レイカが、
「みんな、何処へ?」
皆の姿を求める。
振られた視線が、
「あっ!」
目的の人物達を、
「いた!」
探し当てる。
右手で、
「ちょっと!」
皆の背中を、
「待ちなさいよ!」
掴む様に差し出す。
だが、背中は遠く。掴んだのは虚空。
先に行く三人。
うち、一人がゆっくりと、
「遅れちゃうよ…。」
首を向けギリニオとレイカに理由(わけ)を言う。
その人物の名前を、
「フゥー!」
怒りを込め呼ぶレイカ。
レイカの横を駆け抜けた影が、
「待ってよ…。」
声を出しギリニオとなる。
レイカの、
『ピクッ!』
左目が、
「待ちなさいよ!」
釣り上がり、
「置いてくなんて酷いじゃない!」
怒りを表す。
前を行く三人に、
「待ってよ…。」
追い付くギリニオ。
踏み出す右足と共に、
「待ちなさいよ!」
声を出すレイカ。
そして、前の四人の背中に、
「あなた達だけで…。」
悪態を、
「行っても駄目でしょうが!」
付く。