重力。
それは人工であれ、等しく作用する。
跳ね上げさせられた右腕へ、
『従え!』
重力が命令を出す。
パイロットと言う主を失い、更に支える下半身から分断された上半身は素直に従った。
ゆっくりと右側から、
『ズドン!』
地面へ落ちた上半身は、
『ズシン!』
軽くバウンドし仰向けで安定した。
どれほどの集中力が、
「はぁ…。」
肩で息をさせたのか、
「はぁ…。」
額に滲む汗も、答える者のいない問い掛けをする。
極自然に、
「やったのか?」
ギンガの口から出た質問。
答えるは、
『動力の停止を確認。』
AIギンガ。
祝砲…。
否!
[アラート!]
砲撃!
それがガンダム・ギンガの機体を揺らす。
メインモニターに注釈線が、
『ピピピッ!』
砲撃主のモビルスーツのデータを表示する。
それは、片腕を失ったモビルスーツを引き起こした場所に立ち、援護の位置としていた。
仲間を殺られた感情が、
[憎しみ]
[仇]
[恨み]
一つ目の奥に浮かぶ。
白兵武器に対して、有利な射撃の距離。
新たなマズルフラッシュが、弾丸を放ったと知らせる。
着弾。
それがガンダム・ギンガを、
「クッ!」
揺らし、
「このぉ!」
ギンガを揺さぶる。
操縦桿に込めた力が、
「これなら!」
機体の左腕に防御を指示した。
構えた盾が砲撃を受け、
『ドゥ!』
機体の揺れを少し軽減する。
[アラート]
[アラート]
続き、メインモニターに新たな注釈線が浮かび、
『ピピピッ!』
地面の落としたビームライフルを指し、状況を打破する選択肢を表示した。
思い出す、
「駄目だ!」
先程の惨劇に、
「コロニー内では使えない!」
指示を拒否するギンガ。
張り上げる声は、
「他に武器は無いのか!」
怒りに近い。
答えるは、
『ピピピ…。』
メインモニターに開く小窓。
揺れに耐えながら、
「使えるのは…。」
追うギンガの視線。
止まるは、
「こいつか…。」
緑色の表示。
突然、
『ポン!』
『ポン!』
『ポン!』
響く音。
その音に反応し、カメラが寄ったとメインモニターの小窓がアップ画像を開く。
見たままを、
「狼煙?」
口にするギンガ。
一つ目が右横に可動範囲の目一杯に、
『グゥイン。』
移動し、注目したと語る。
舌打ち。
一つ目のパイロットの口が苛立つと音を出す。
狼煙の正体。
それは信号弾。
意味は《撤退》。
意識…。
いや…。
視線がモニターの信号弾へと反れた僅かな時間。
それが、隙きに変わる。
無意識。
動かしたのは…。
パイロットか?
それとも、モビルスーツか?
押し込む操縦桿。
構える剣(ビームサーベル)と盾(シールド)。
踏み込むペダル。
背後のブースターが吐き出す炎が推力へと変わる。
引かれるトリガー。
人間で言う[こめかみ]付近に、断続的に点る光。
そして、光は放出され弾丸へと変わり一つ目を襲う。
その様子を第三者視点で見ると、ガンダム・ギンガが一つ目へと突進しながらの頭部射撃武器による攻撃であった。
後悔。
戻した視線が捉えたのは、無数の光弾。
パイロットは、間に合わないと知りながらも防御の体制をモビルスーツに指示した。
着弾がダメージに変わり、一つ目を揺らす。
それが、連続で起きる。
舌打ち。
これは、自分の迂闊(うかつ)さに行われた行為。
同じ行為でも、意味が異なる。
更に踏み込んだペダルが、
「うぉぉぉぉぉ!」
背後のブースターへ喝を入れ、
「行けぇぇぇぇぇ!」
機体を加速させる。
そして、始まる新たな対決。
振り上げたビームサーベル。
構えるシールド。
頂点まで達したビームサーベルは、
「そこだぁぁぁぁぁ!」
遠心力を纏い威力を増しながら振り下ろされる。
袈裟懸け。
そう呼ばれる斬撃。
剣(ビームサーベル)は間に合わなかった盾(シールド)を嘲り笑い、モビルスーツの左の肩口へ、その灼熱の刃を喰い込ませた。
そのまま斜めに斬り進む。
放電。
機体を食い破る死神の光に負けたとエネルギーを、その切れ目から血の代わりに流す。
出口。
そこは、右の脇腹辺り。
進むビームサーベルが斜めに胴体を横断し終えた場所。
離れる。
ビームサーベルの軌跡が作った裂け目が、自重によりゆっくりと広がっていく。
その距離を埋める様に放電が強くなる。
[アラート!]
メインモニターの文字が赤く強く点滅し、その光でギンガの顔を染める。
目の前のモビルスーツを映したモニターに赤い注釈線が走り警告を出す。
そして、円で形成されたグラフが現れた。
その歪な円の形が熱の放出量を示し、色が温度を表していた。
見詰める円グラフと、
「これは…。」
その向こうのモビルスーツ。
直後。
袈裟懸けに分断されたモビルスーツが光になった。