吐き出したのは、
「ふう…。」
緊張の残り香と安堵のため息。
食いしばった目と固く閉じた上下の歯をゆっくりと解放する。
それで一安心し、
「生きてる…。」
もう一度、言葉で確かめる。
ほんの少し前…。
光は生んだモビルスーツを贄(にえ)にして急成長した。
熱量に膨張を伴う現象。
爆発。
それが付けられた名前。
咄嗟。
盾を構え、目の前で起きる現象へ対応する。
極限まで育ったそれは、
『ズドドドドォォォォォン!』
断末魔を上げた。
一瞬の始まり。
だが、収まるまでは数秒を要した。
元の位置から、モビルスーツの足で大地に作らされた二本の電車道。
それが、爆発の威力を無言で物語る。
ゆっくりと下げた盾の、
「えっ…。」
向こうに広がる光景に、
「これは…。」
固まるギンガの表情。
そこは…。
自分が異なる場所へと連れて来られたのではないか?
そう、錯覚する光景。
だが…。
見覚えのある建物。
正確には、建物だったもの…。
見覚えのある施設。
正確には、施設だったもの…。
それらが、元の場所だと主張していた。
突如。
体の内部から、
「うっ!」
込み上げるものを、
「おっ!」
両手で口の中へ押し戻すギンガ。
だが、その本流は止まる事なく出口である口へと押し寄せる。
手の平で作った堰(せき)は、いとも簡単に破られ、
「うえぇぇぇぇぇ!」
強い酸の味を口に残し、
『ドバドバババ』
床へとぶち撒けた。
口に残る酸の味にか、
「うぅ…っ。」
目の前の現実に苦しむのか、
「うぅ…。」
苦悶の声は、
「うぅふっ…。」
いつしか嗚咽に変わっていた。
その状態を冷静に、
『パイロットのコンディションレベル低下。』
判断するAIギンガ。
それを体現する様に、ビームサーベルが短くなって行くのは偶然であった。
己の罪を知ったギンガは、
「俺の…。」
その両腕で自分の肩を抱き、
「せいだ…。」
防御反応でシートの上で、膝を曲げ体を丸める。
そして、起動状態のまま物言わぬ彫像となるガンダム・ギンガ。
同刻。
艦橋内。
緑のモビルスーツが、
「誘爆だと!?」
生んだ光の正体を口にした艦長。
幸いしたのは、爆心地からの距離。
カメラは最大望遠であった為に、爆発の影響は少なく画面の揺れだけだった。
誰もが気になる事を、
「どうなった!?」
代表する艦長の台詞。
爆炎が巻き起こした爆煙を濃くする人型の影がゆっくりと現れる。
前のめりだった体を、
「ふぅ…。」
背もたれへと深く預け、
「無事だったか…。」
安堵のため息と共に言葉を吐き出す艦長。
そこへ、バージョンアップさせたオペレーションシステムで、
「ミノフスキー粒子の濃度低下!」
表示されたデータを、
「通信状態回復しつつあります!」
読み上げる女性オペレーター。
その言葉に返された艦長の視線に、
「おそらくは…。」
詳しいデータを、
「敵モビルスーツのロストと…。」
目で追い、
「爆発での濃度の低下だと思われます。」
答えた女性オペレーター。
その答えに、
〘ミノフスキー粒子か…。〙
両手を胸の前で組み、
〘あらゆる電波を妨害とは…。〙
知らず知らず苦笑いを、
〘厄介なものをばら撒いてくれる…。〙
浮かべる艦長。
その姿に、
「か、艦長…。」
一瞬の間を、
「どうされますか?」
開けていた副艦長であった。
答えの代わりに、
「残りの敵モビルスーツは?」
副艦長を一瞥しする艦長。
直ぐ様、
「現在…。」
モニターで確認し、
「確認できません…。」
報告する女性オペレーターだが、
「が…。」
区切る語尾。
それに艦長も、
「が?」
短く返す。
シートを回転させ、
「私の推測ですが…。」
艦長へと向き、
「このデータから考えられるのは…。」
送る視線は、
「コロニー内には居ないと思われます。」
自信に満ちていた。
右手で顎を掻きながら、
「ふむ…。」
考え、
「なるほど…。」
女性オペレーターへと、
「ミノフスキー粒子の特性が逆に存在を教えると…。」
視線を送る。
頷きが、
『コクリ。』
音を出し答えた女性オペレーター。
艦長のその顔に付けられた名前は…。
渋い顔。
そして、俯き加減に顎を掻く。
それは、
「さて…。」
切り替えの出だし。
ゆっくりと上げた艦長の顔には、
「我々に残された時間は…。」
決断が、
「如何程か…。」
見て取れた。
艦長の独り言に思えた台詞に、
「確かに…。」
副艦長も、
「本隊が、いつ来るかですな…。」
同意する。
副艦長を、
「では、急ぐとしよう。」
一瞥し、
「民間人の救助と避難を優先し出来る限り人を回せ。」
頷くクルーへ、
「ガンダムはどうだ?」
指示を出す。