ベストタイミング。
そこへ、艦長へ振り返りながらの、
「通信繋がりそうです!」
通信オペレーターの女性の声が響く。
コントロールパネルを滑る手が、
「繋がります!」
演奏を思わせる。
その言葉で、通信専用に設けられた中型モニターが艦橋のクルー全員の視線を独り占めにした。
映し出されたブロックノイズと共に、
『ガッ!』
『ピッ!』
『ガーッ!』
『ピーッ!』
音声ノイズがスピーカーから吐き出させる。
テレビ放送なら、電波状態のマシなチャンネルへ変えるだろう状態であった。
だが、誰一人として目の耳を離さなかった。
暫時。
続くブロックノイズの画面。
響いたのは、
『ゴクリ…。』
その空気に耐えられなかった誰かの喉の音。
それはゲームの様に…。
ノイズである色とりどりのブロックが集まり形に成り始める。
唐突に現れる画面のブロックノイズがよりゲーム感を増していた。
そして、モニターに映るのはモビルスーツのコックピット。
呼びかける、
「聞こえますか?」
通信オペレーターの女性。
しかし、
『うぅ…。』
答えは無い。
それに、
「嗚咽?」
気付く艦長。
映るコックピットの映像の下の部分に時折映る動くもの。
その二つが艦長の中で、
「モビルスーツとそれに付随するものの回収をさせろ!」
指示をさせた。
反応は、
「はっ!」
素早い副艦長。
クルーに向き直り、
「出せものは全て出せ!」
右腕の振りと共に、
「モビルスーツもだ!」
指示を出す副艦長。
再び艦長に向けた顔に浮かぶは、疑問の表情。
軍人として、上官の命令は絶対であるが疑問を持たない訳ではない。
副艦長へ、
「あのパイロット…。」
視線を、
「あれは素人だ…。」
向け、
「暫くは使い物にならん。」
説明する艦長。
その説明を確かめる様に、
「はあ…。」
向けた視線で、
「なるほど。」
確かめた通信モニター画面で自分を納得させた副艦長。
そして、切り替え完了と言わんばかりの声を、
「回収部隊の準備はどうだ!?」
クルーへ飛ばす。
反応は、
「モビルスーツの装備に、もう少し時間が掛かるそうです!」
素早い女性オペレーター。
それは、
「チィッ!」
声でなく音。
副艦長の口の中で生まれた不満が人の耳に聞こえる形をとったものであった。
更に苛立ちが、
『ズカズカ!』
大股歩きの形と音となる。
歩み寄った女性オペレーターから、
「貸せ!」
マイクと一体型のヘッドホンを乱暴に取り上げ、
「回収作業だ!」
怒鳴り上げ、
「装備は要らん!」
顔を、
「そのまま出せ!」
赤く染める副艦長。
この時…。
女性オペレーターの体が副艦長から離れる方向に傾いていたのを、見ていた艦長の口元は確かに笑っていた。
と…、後に証言したのは、その状況を見ていたクルーだった。
突如、
「なにぃ!」
声を荒らげる副艦長。
何事かと皆が向くのは条件反射であった。
この場の視線を一身に集めた副艦長は、
「ごちゃごちゃ…。」
マイクではなく、
「言わずに!」
ヘッドホンへ向かって、
「直ぐに出せ!」
怒鳴り上げた。
この時、クルー達は確かに見たと…。
副艦長の真っ赤な顔で熱せられた、蒸気が頭から噴き出した。
そう、証言した。
死語で例えるなら…。
瞬間湯沸かし器の様な性格。
今風ならば…。
キレやすい性格。
一瞬にして、冷静な感情が沸騰し怒りのマグマが噴火する。
幸いだったのは、怒鳴り声の音量のおかげでマイクは難無く拾い伝える事が出来た。
怒りのエネルギーは全て放出され、再び静なる水面(みなも)へと戻る心。
我に返る副艦長。
その顔をゆっくりと朱に染める。
先程の怒りの色がどす黒い赤なら、こちらは恥ずかしさの桜色。
右手を軽く握り作った虚構へと、
『コホン』
その気持ちを吐き出し隠す副艦長。
それは、合図…。
いえ、どちらかと言うとスイッチ。
艦橋のクルー全員が、一斉に自分の仕事に戻った。
こういう時の対応を心得ていたのである。
そう…。
皆が…。
[見なかった事にした!]
当然、艦長もである。
一件落着。