自動扉が、
『ウィーン。』
音を出し、
「連れてまいりました。」
入室を許可した。
扉の開く演出に若い兵士が敬礼で現れる。
そこは、ブリーフィングルームと呼ばれる部屋。
若い兵士が後ろの人物を、
「入りたまえ。」
促(うなが)し部屋へと誘導する。
歓迎は…。
突進!
声が、
「ギンガ!」
先か、
『ドンッ!』
衝撃が先か…。
無重力が、ぶつかる二人を一つにし宙へと浮かせた。
どこか遠くへと行っていた意識が、胸元の顔へとゆっくりと注がれる。
知っていた…。
そして…。
その顔に、その人に、
「レイカ?」
付けられた名前を呼ぶ。
その声に安心したのか、
「良かった…。」
目の堰(せき)を越え、
「無事で…。」
涙が溢れ出し、無数の宙へ光の珠を作り出す。
疑問を口にし、
「どうして…。」
更に疑問が、
「ここは…?」
浮かぶギンガは、
「僕は…?」
辺りを見回した。
それは古来より、
『ウッ、ウン!』
注意を引くために使われる人造の音。
まんまと音に引かれ、
「貴方は?」
出処の人物へ向いたギンガ。
鋭い視線を、
「この艦(ふね)の艦長だ。」
返答と共に絡みつかせる。
言われれば、纏う雰囲気は軍人…。
それも練磨(れんま)の気を放つ兵(つわもの)であった。
気付き、
「ここは艦の中ですか!?」
驚くギンガ。
広げた両手は、
「ちゃー。」
明らかに大袈裟で、
「覚えちゃいないか…。」
その後に右手で、
「やっぱり…。」
顔を被うパイロットスーツの男。
思い出した様に、
「ごめんなさい…。」
謝り離れるレイカ。
その顔は羞恥の桜色に染まっていた。
天井に軽く右手を当て反動にし、『トン…。』
床へと降り立つギンガとレイカ。
あらため、ギンガが見回す室内には…。
艦長。
その横に、似た雰囲気を持つ男性…。
おそらくは…。
この艦の偉い人なのだろうと、容易に想像が付く身なりと雰囲気を纏っている。
そして…。
パイロットスーツの男。
両手を肩の高さで開き、
「たくよ…。」
顔を背け、
「俺を覚えてないなんてよ…。」
軽口を開く。
当然の、
「貴方は?」
返しをするギンガ。
向き直り、
「俺はな…。」
少し上げた左頬は、
「お前さんの乗ったモビルスーツをここまで運んで…。」
笑っていたが、
「コックピットから出してやった男だ。」
ただ、瞳の奥は軍人の鋭さだった。
一番に反応した、
「モビル…。」
瞼(まぶた)は見開かれ、
「スーツ…。」
驚きの表情を浮かべる。
熱酸!
それは、体の内部から出口である口へと駆け登る。
ギンガの記憶が拒絶反応を起こした。
ギンガの右手が、
『うっ!』
出口を塞ぐ。
またも、
「おいおい…。」
軽い口調で、
「こんなところで吐くなよ…。」
蔑(さげす)んだ視線を送る。
慌て、
「大丈夫!」
背中へ、
「ギンガ!」
手を回し擦(さす)るレイカ。
口を塞いだ右手に、腹に当てた左手…。
そして、丸めた背中を武器に胃から登る酸と戦うギンガ。
その姿に、せめてと右手を添えるレイカ。
暫時、続く攻防戦。
終了の合図は、
「はぁ…。」
肩で息を、
「はぁ…。」
始めたギンガ。
そして…。
項垂れ、
「……。」
声にならない、
「……。」
声で呟く。
それが、
「何!?」
聞こえたと、
「なんて言ったの?」
聞き返し、顔を近付けるレイカ。
今度は耳に、
「僕の…。」
はっきりと、
「せいだ…。」
届くギンガの声。
言葉は、
「なんの事?」
理解出来たが、
「ねえ!」
意味は判らないレイカ。
答える口は、
「僕が戦ったから…。」
乾き、
「人がいっぱい死んだんだ…。」
目は虚ろを見る。
その答えに、
「ギンガ…。」
レイカは、ただ一言。