不意。
それは、
『!』
第六感を刺激した。
そして、足を止めるギンガ。
その背中へ、
「どうしたんだ?」
声をかけるオルト。
それは、
「なんでも無い…。」
問い掛けの返事か、自分自身への否定か。
右足から歩みを再開させるギンガ。
思い出す、
〘まただ…。〙
先程の事。
考える心が、
〘……。〙
作る静寂の声。
気付く、
〘最初の声は、俺を「来い!」って呼んだ…。〙
違いに、
〘けど、今のは俺に「来るな!」って…。〙
困惑する。
歓声。
右人指しで、
「あれじゃない!」
施設を指しながら、
「ほら!」
大声を上げるギリニオ。
ギリニオに近い方の耳を、
「うっさいわね!」
塞ぎながら、
「言われなくても!」
顔をしかめ、
「分かってるわよ!」
負けない程の大声を出すレイカ。
どこ吹く風。
そんな言葉を顔に出し、
「一番!」
駆け出すギリニオ。
フゥーのそれは呼び掛けではなく、
「待って!」
駆け出す合図。
遅れ、
「あっ!」
オルトも、
「待って!」
駆け出す。
一瞬の唖然、
「あ!」
三つの背中に、
「待ちなさいよ!」
駆け出す合図を、
「あなた達だけ行っても駄目でしょ!」
放ち駆け出すレイカ。
どこかで見た平和ないざこざの光景が繰り返される。
小さくなる背中に視線を送りながら、空虚を見るギンガは未だ考え事の最中であった。
周りに誰も居なくなった事にも気付かず。
答えの無い、
〘俺は…。〙
問答は繰り返され、
〘どうかしたのか?〙
ただ漠然と歩くだけのギンガ。
ギンガの歩みは続く…。
そして…。
小さく四人が見え、
「おーい!」
大きく響く、
「ギンガ! 早く来こいよ!」
皆の声。
一歩、二歩、三歩、
「早く!」
前に出ながら、
「来なさい!」
両手で口の前に、
「ギンガ!」
声を増幅させる筒を作るレイカ。
そんな皆の姿に、
〘考えても仕方ないか…。〙
ギンガ自身が答えを出した。
皆への合図に上げる右手と、
「お…。」
開く口。
『シュルルルルルル。』
ギンガの声を、遮る爆音。
それは平和な時の終わりを告げた。
反射。
音の出処へ向いたギンガの目に映るのは…。
長い煙の尾を引く円筒形のモノ。
実物を見るのは初めてだが、その正体を知らない者は少ないであろうモノ。
【ミサイル】
それは、そう呼ばれた。
軌道をギンガの視線が追いかける。
声にならない、
「!?」
悲鳴をギンガの喉が上げる。
長く尾を引く【ミサイル】の行き先が、ギンガにそうさせた。
残っていた左腕も上げ、
「逃げろぉぉぉぉ!」
渾身の大声も上げ、
「みんなぁぁぁぁぁ!」
両腕で合図を送る。
皆はそれぞれが腕を上げ、遠くてもはっきりと判る笑顔でギンガを呼ぶ。
そう、彼等は今だ日常の中にいたのだ。
一発のミサイルが起こす…。
爆音。
爆光。
爆風。
それが、手を振る皆を巻き込み、日常の終わりを告げた。
両腕で顔を庇い、
「くっ!」
ミサイルの余波に耐えるギンガ。
足の裏と人工の地面が作る摩擦が抵抗し、僅かに後ろへ下がるだけで体制を維持させた。
鳴る!
『キーーン。』
ギンガの耳の奥。
収まる爆発と共に踏み出す右脚はギンガを疾走へと加速させる。
瞳の奥に焼き付いた、今の瞬間を思い出し、爆心地へと向かう。
山。
ギンガが辿り着いた元はモノだった瓦礫の積み重なり。
振る首は、
「レイカ!」
呼ぶ人物を探す。
しかし、声は…。
『ドウ!』
『ドウ!』
『ドウ!』
続く非日常の音に掻き消された。
その音を例えるなら、映画などで聞く銃の発射音を何倍にもしたものが近いと思われた。
そして、発射音に続くのは…。
『ボン!』
『ボン!』
『ボン!』
破裂音であった。
それは、
「くそ!」
見付けられない自分に言ったのか、
「どこだ!」
それとも、
「レイカ!」
邪魔する音に言ったのかギンガ自身にも分からなかった。
鞄。
それは、不意にギンガの目に入った。
瓦礫の陰から覗いた、あのレイカが手にしていたものが。
叫ぶよりも、
「レイカ!」
早く駆け出していた。
安堵。
瓦礫を回り込み見えた、鞄を力強く握り締める持ち主。
駆け寄り、
「レイカ!」
片膝立ちで、
「おい!」
抱き抱え、
「レイカ!」
覆い被さる様に見つめ下ろすギンガ。