火葬曲   作:海月大和

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24.ミクの日記

5月14日

 今日の”火葬”にはお客さんがいた。おじいちゃんに聞いてたから見物人がいることは知っていたけど、やっぱり人前で歌うのは緊張するなぁ。なんて思ってたらびっくり。お客さん、泣いちゃってた。男の人があんなに泣いてるのなんて初めて見たから、驚いて顔をそらしちゃった。そんなに思い入れのある楽譜だったのかな?

 

 

5月15日

 

 

 カイトさんという人と知り合った。足を挫いたところを助けてくれて、病院まで私を運んでくれた。昨日はすぐに目を逸しちゃって気付かなかったけど、”火葬”を見てたお客さんだった。歌の大会に出ないのかって聞かれて、つい冷たい言い方をしてしまった。反省。カイトさんは私の歌を綺麗だって言ってくれたけど、そんなに良いものじゃないよ、私の歌なんて。カイトさんが優しい人だから、きっとそう思うだけなんだ。

 

 

 

5月21日

 カイトさんがまた火葬を見に来た。こんなものを見たって面白くもなんともないと思うんだけどな……。自分の書いた曲を看取りたいから? それとも私の……ううん、そんなはずないよね。でも、そうだ。私が燃やしている曲ひとつひとつに、カイトさんみたいな作者さんがいるんだなって思ったら、もっとちゃんと心を込めて歌ってあげなきゃって気がした。だから、火葬を依頼された楽譜の中で、私が一番気に入った曲を選んで歌った。私なんかの声でも、音になるならこの曲も少しは報われるんじゃないか、って。

 カイトさんはどう思ったかな……?

 

 

 

5月28日

びっくりした……。学校帰りにカイトさんに会った。今週の土曜に用事に付き合って欲しいと言われた。横にいた友達にはきゃーきゃー言われるし、相談したルカには「デート?デートなの?ねえねえ?」なんてからかわれるし、もぉカイトさんももう少し場所を選んで誘ってくれたらいいのに。思わずデートじゃないよ!なんてルカには言っちゃったけど、やっぱりこれってそういうこと、なのかな?? 週末、なに着ていけばいいんだろ。

 

 

6月2日

 頭の中がぐちゃぐちゃしてる。楽しいデートだったのに。楽しいデートのはずだったのに。どうしてこんなことになってるの? どうしておじいちゃんはあのことをカイトさんに話したの? 僕の曲を歌ってほしいと言われた。どうしてそんなに優しい目でそんなことが言えるの? 私は嬉しいの? 悲しいの? 分からない。自分の気持ちが分からない。とにかくショックで、でも何がショックなのかも分からない。どうしたらいいんだろう?

 

 

 

 

6月7日

 あの日から、おじいちゃんとは気まずい雰囲気が続いてる。何も話せてないけど、落ち込んでる私のことを見て、何があったか薄々気付いてるのかもしれない。冷静に考えてみればおじいちゃんが無闇に私の秘密を話すわけがないし、なにか話そうと思った理由があったんだろうけど、やっぱり納得いかなくて許しきれてない、のかな?

 

 ルカにも相談してみたけど「あなたの心に従いなさい。自分の気持ちに素直になるのよ」なんてらしくない真面目な答えが返ってきて。ちょっと残念。やっぱり他人に決めてもらおうと思っちゃダメなんだよね。

 

 私の心かぁ……。私、どうしたいんだろう?? 全然分かんないや。

 

 

 

6月10日

 留守電にカイトさんからのメッセージが入っていた。パーティーの演奏者の顔合わせがあるから、私にも参加して欲しいって。場所と時間、それから渡された曲についても言っていた。あの曲はできれば私に歌ってほしいって。そのために作ったものだからって。

 これは、私のために用意されたもの。もしも私が歌わなかったら、この曲は誰が歌うんだろう?私じゃない誰かだろうか?カイトさんはそれを聴いてどう思うんだろう。悲しむかな。うん、そうだよね。きっと悲しい顔をするんだろうな。それは、やっぱりイヤだな……。

 お父さん、お母さん。一度だけ、一度だけでいいの。ごめんなさい。許してね。

 

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