そして今作からの方々、はじめまして。
Fateの二次創作は初めてなので不安はありますが、本当に短いプロローグなので少しでも読んでいただけると嬉しいです。
では、よろしくお願いします。
日本/とある地方都市
「貴方の望みはなんだ」
蒼き鎧を身に纏った騎士は、堂々たる眼差しを彼へと向ける。
「この戦いの勝者は貴方だ。貴方には、その権利がある」
「……昔から決めていた」
過去を反芻するように目を閉じる。
初恋だったのかもしれない。
でも僕は、彼女を手にかけた。そうせざるを得なかったから。
僕に戦い方を教えてくれたひとがいた。
でも僕は、その人を殺した。そうしなければ、きっともっと多くの人が死んだから。
何回も。
何回も、何回も、何回も。僕は大切なものを手放して、顔も知らない誰かを救ってきた。
……そのはずだ。
「そんな、君の願いはなんなんだい?」
決まっているだろう。
「分かっているよ。でも……君のやり方ではねぇ?」
何が言いたい。
「心の中で分かっているはずだよ。聖杯は、『その人が知っている方法でしか願いを叶えられない』とね」
それでは無駄だ。それでは、人は滅んでしまう。
「それが聖杯、恨むならその道を選ぶしかできない君自身を恨むんだね」
そうか。
「そうだよ。でも、代償があれば話は別さ」
僕に、また手放せというのか。失い続けた僕に。
「それが君の大切なものだからだよ」
「――なら、僕には必要のないものだ」
「マスター」
まぶたを開けた彼は、自らのサーヴァントを見つめる。
その腕に持つ星の聖剣を見つめて、彼女の瞳へと視線を移す。
「令呪をもって命ずる。セイバー――」
数ヶ月後。
「……どなたですか?」
祖母の家に預けられていた一人の少女の元へ、1組の男女がやってきた。
「だれ……?」
「君に渡しておかないとならないものがあるんだ」
「しらない人からは、なにももらうなって……」
「ううん。あげるんじゃなくて、あなたに返すの」
「かえす? なにもかしてないよ?」
「あなたのパパとママからよ」
優しい笑顔を向ける女性が差し出してきたものがなんなのか、その時の私には分からなかった。
けれど、なんなのかは分からないけど、不思議とこれだけはわかった。
――もう二度と、お父さんとお母さんには会えない。
さようなら、お父さん、お母さん。
おまじないは忘れないから。
あの日から10年。
お父さんと、お母さんと過ごしたこの場所に戻ってきた私は普通の女子高生として日々を過ごしている。
「おはよう」
「おはよう……ございます……」
挨拶と共に私を追い抜き、美しい黒髪を風になびかせる。
遠坂凛。当校が誇る優等生。
だけど今日は、なんか目の下にクマがついていた気がする……。
「通るぞ」
遠坂さんの背中を追っていた意識が引きずり戻され、道を開ける。
「サンキューな」
「いえ」
衛宮士郎……また、生徒会の手伝いなのかな。
ぼんやりと彼に続いて教室へと歩き出すと、不意に右の手の甲に痛みが走る。
顔をしかめて見てみると、身に覚えのないアザが浮いていた。
「こんなとこ……ぶつけたっけ……」
薄れかけた意識の中ではそんな事を思い出せるはずもない。
まあいっか、と再び歩き出したこの時には、私は知らなかった。
まさかこのアザが、私をあんな事に巻き込むなんて。
「マスター」
「分かってる。彼女はきっと……」
「芽は先に潰しておくべきだと考えるがね」
「それは早計じゃないかしら。まだ決まったわけじゃないんだし、経過次第よ。場合によっては便利に使えるし」
「……君がそう言うならいいのだが」
「この学校に他のマスターがいないとも限らない。始まるまでは、様子を見るだけよ」
神妙な面持ちで校庭を見つめる。
――彼女のこの顔は、どこにいようとも変わらない。
僅かに表情筋が緩む。霊体化していなければ、彼女に茶化されていたことだろう。
しかし。
何故だろう、朝にマスターとすれ違った彼女の事が、どうにも引っかかってしまうのだ。
――私がいた世界に、彼女はいなかった。
ありがとうございました。
次回以降は書け次第乗せていくつもりです。
予定ではプロローグを含めずに26話となります。
それではまた次回、お会いしましょう!