Fate/Phantom Grail   作:朱鳥洵

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 皆さまお久しぶりです!
 忘れていたわけではありません作業が終わらなかったのです!
 というわけで2話目です。
 ライダーと逃げ果せた洲崎さんの運命やいかに。
 今回平和回です。


第2話 ボクの名前は

 ふわりと浮く感覚。

 無重力を感じたのも束の間、着地の強い重力が私を襲う。

「大丈夫?」

「大丈夫なわけないでしょ……」

「いきなりでごめんね」

「いや、まあそれはいいんだけど……」

 下ろされた私は改めて彼女の姿を見る。

 あざといばかりのニーソックス、ミニスカート、そして鎧とマント。

 三つ編みにしたピンク色の長い髪をなびかせて立つその顔はなぜか笑顔。

「どうかした? マスター」

「マスター……私が?」

「そ。だってボクを呼び出したのはキミだろ?」

「うん……多分、そう、なんだと思う」

「じゃあ、やっぱりキミはボクのマスターで、ボクはキミを守るためにここにいるんだよ」

「守る?」

 首をかしげた私の手を握り、目の前のサーヴァントは満面の笑みを浮かべる。

「そうさ。ボクは、キミの騎士になる」

「私の……」

「それがボクのあり方だからね」

 そのままぎゅっと抱きしめ、そして。

 ――グ〜……と、何かの音が聞こえた。

「……」

「……」

 そのまましばらく固まる私達。

「……ボク、お腹すいちゃった」

「やっぱりね!」

「ねぇ、キミの家ってどこなの?」

「私の家? あっちの方だけど」

「オッケー!」

 指差して方向を示した私を抱き上げて、再び大きく飛び上がる。

 だからさ、私の言うこと聞いてくれないかなぁ⁉︎

 

 

「ぅぷ……」

「酔った?」

「誰のせいだと……」

「ごめんね」

「いいけど……」

 家にあげた彼女は、私の背中を撫でながら心配そうな顔を見せる。

「うん、私は大丈夫。それでさ」

「ん?」

「あなた、一体……」

 その問いに手を叩いた彼女は、笑顔で答えた。

「ボクはライダーっていうんだ、よろしく!」

 …………。

 信用できないわけじゃ……いやごめん信用できない。

「おっとその顔はボクの事を一切信じる気ない顔だな?」

「そこまで分かってるなら事の一切合切と君の素性を明かしてくれないかなライダーさんや」

「うーんいいけどさー」

 ライダーは頭の後ろで手を組むと、そのままリビングの床に倒れこむ。

「正直長いし面倒なんだよね」

「おいこら説明責任くらい果たしなさい」

 なんなのかな。もしやライダーさんやる気ない? さっきはあんなにカッコよく登場したのに?

 私の困惑など意に介さず、ライダーは唇を尖らせながら続ける。

「召喚されたてでボクも疲れてるから寝ていい?」

「ふざけないでくれるかな?」

「だよねー……うん、よし。やっぱ何も知らないマスターにいきなり聖杯戦争しろってのは酷な話だし、聞かせてあげるよ」

「本当?」

「本当本当。ただちょっと長いから寝ないで聞いてね?」

「うん、分かった」

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 ……。

 ライダーの説明を要約するとだ。

 どうやらライダーとさっきのアーチャー、それと戦っていた狐耳JKもサーヴァントと呼ばれる英霊で、遠坂さんや私のようなマスターに呼び出されるらしい。そしてサーヴァントとマスターのペアが7つできる。その7ペアが端的に言えば殺しあって、勝った1ペアが聖杯を手に入れる。

 ということらしい。

 これはまた……変なことに巻き込まれた感じするなぁ……。

「――で? マスターになるには資格とかいるの?」

 私の質問に、ライダーは「うん!」と元気よく答える。

「マスターになるには魔術師じゃないといけないんだ」

「魔術師? なら私、マスターにはなれないと思うんだけど」

「ほぇ? 確かに令呪の繋がりも魔力も感じるけど、キミ魔術師じゃないのか?」

 ライダーはテーブルをくるっと回り私の隣に来ると、まじまじと私のことを見る。

 ……なんか恥ずかしい。

「あ、あの、ライダー?」

「キミが魔術師かどうか確かめる手段がないわけじゃないけど……」

「えっ、本当?」

 ライダーのいう手段で魔術師かどうか分かるなら、それに越したことはない。

 しかしライダーは「ただ、その手段っていうのが……」と言い淀む。

「どうしたの? ライダー」

「ちょっと、耳貸して」

 私の返答を待たずに、ライダーは私にその手段とやらを耳打ちする。

 ……………………………………………………。

 

「嫌だよ⁉︎」

 

 とっさに答えてしまった。

「そう言うと思ってた! マスターが正常な人間でよかった!」

「私はライダーの人間性を疑うよ……」

「勘違いしないでね⁉︎ これはボクの趣味とかじゃなくてあくまで手段、手段だから!」

 慌てて弁明するライダー。そして私は静かに距離を取る。

「露骨に引かないでよマスター! ボク……ボク泣くぞ! 傷ついたぞ!」

「うるさいライダー。正直私の方が驚いたし」

「マスターが冷たい……本気で泣きそうなんだけど……」

 ライダーから告げられた手段は……その、貞操に関わるので……こうなるのも当たり前なんだけど。

「こう、もっとソフトのとか、魔術師っぽいことで確かめるとかできないの?」

 私の質問に対し、ライダーは涙目になりながら答えてきた。

「魔力供給だけならソフトなのあるけど……魔術師っぽいこととなると、それこそボクはできないし……」

 そういえばライダー曰く、サーヴァントは魔力が無いと消えるんだっけ。マスターからは絶えず魔力が渡されているらしいけど、戦った後とかはその魔力じゃ間に合わないこともあるのだとか。

「分かった。今後のためにソフトな魔力供給手段を一応教えて」

「今度は引かない……?」

 ライダーが子犬のような目で私を見る。やめて、私が悪かったから。そのかわいい表情をやめて。

「引かない引かない」

「わかった。じゃあ教えてあげる……」

 言うと、なぜかライダーは恥ずかしそうにもじもじしながら……。

 

「………………――キス…………」

 

 ……と、小さく呟いたのだった。

 言葉だけならいいとしよう。ただその、頬を赤らめて唇に指当てながらそれ言う⁉︎ 破壊力凄すぎるんだけど……。

 お互い目を合わせないお見合い状態が数分続き、そして。

「……ま、まあ、必要になったら、してあげるよ……そのくらい……」

「本当⁉︎」

 えっ、私何言ってるの? なんで今OKしたの私⁉︎

 ……これはライダーのせいだ。そうだ私のせいじゃない。

 それに、さっきの行為をするくらいならだいぶマシだ。

 ここまで考えが及んだところで、私は一つライダーに聞いてない事があることを思い出した。

「そういやライダー、君の素性を知りたいんだけど」

「うーん……素性? うーん……」

何かを悩み始めたライダー。

「聖杯戦争ーーというかサーヴァントにとって、名前、ましてや過去の話っていうのは弱点に繋がることがあるんだ。宝具の対策もされてしまうだろうし……」

「そうなんだ……なら――」

「でも、マスターには名前くらい教えなきゃね! ボクの信頼の証だ!」

 ライダーは立ち上がり、自分の胸に親指を当てると元気よく名乗りを上げる。

 

「我が名はライダー! 月への旅だってなんのその、そうボクは――シャルルマーニュ十二勇士が1人、アストルフォ!」

 

「アストルフォ……」

 あまり世界史に詳しいわけじゃないから、シャルルマーニュ十二勇士がなんなのかとかはイマイチ分かってないんだけど、多分円卓の騎士的な何かなんだろう。

 もちろん、アストルフォという名に聞き覚えもない。

 そう考えていると、再び私の前に正座したアストルフォは満面の笑みで。

「名乗っておいてアレだけど、外ではできるだけライダーって呼んでほしいな」

 と言ってきた。

 さっき、名前が弱点になると聞いた。なるほどそういう事なら分かった。

「うん、分かった。よろしくライダー」

 そう言ったところで、ふと時計を見やる。

 ……午前2時半。

「……寝ないと」

「もうこんな時間だもんね。ボクも一緒にいいかな?」

「いいよ。ところでそのまま寝るの?」

 今のライダーは金属の鎧みたいなものを身にまとっている。そのまま寝ると寝心地悪そうだ。

「あー……うーん……パジャマ貸してください!」

「そうなるよねー……なら……最近使わなくなってたこれは?」

 ライダーに見せたのは、イチゴ柄の子供っぽいパジャマ。

 ……つい一昨年まで使ってたのだ。笑われるだろうか。

「……かわいい! えっ、マスターこんなかわいいの着てるの⁉︎」

「着てたの。い、いいでしょ別に……」

「じゃあ借りるね。ありがと、マスター!」

 ――こうして、私とライダーの共同生活が始まったのだった――。

 

衛宮士郎

「始まったか――」

 黒いコートにスーツ。手にはキャリーケースを握ると、親父はそう呟いた。

「キリツグ、これからお仕事?」

 そんな親父のもとに駆け寄るのは義妹、イリヤ。美しい白髪に白い肌、その白さに見合わないくらい紅い瞳をたたえた少女だ。

「ああ。それじゃあ僕は行くよ。士郎、今度は遅くなりそうだ。イリヤとアイリを頼んだよ」

「分かった。任せろ、切嗣」

 はっきりとそう答えた俺を見て、切嗣は小さく頷く。

「家を頼んだ、イリヤ」

 続いてイリヤの頭を撫でると、切嗣は闇夜に消えていった。

 切嗣の仕事はいわば殺し屋。魔術師を殺すための魔術師、といったところなのだ。

 標的は分からないが、切嗣がああやって出ていったってことはきっと相手は手練れなのだろう。

 残された俺たちができることといえば、切嗣の帰りを待つことだけだ。

「聖杯戦争、始まったみたいだね」

「ああ」

 イリヤの言葉に相槌をうつ。

 切嗣がああして出ていったのだ、何かあったに違いない。

「……。ねえ、お兄ちゃん」

 俺の服の裾を引っ張ったイリヤと目を合わせると、彼女はまっすぐ俺を見て。

「もし、私が死んじゃいそうになったら、守ってくれる……?」

 なんだ、そんなことなのか。

 俺はそんなふざけた問いをする彼女の頭を優しく撫でると、満面の笑みで答えた。

「ーーああ、当然だ。誰からだってイリヤを守ってやる」

 そうだ、それが俺の義務なのだ。

 必ずイリヤを守る。そして家族を殺そうとする人を――。

 ――誰であろうと、殺すだけだ――。

 

 ――第2話 「ボクの名前は」――




 ありがとうございました。
 そういえばここまで洲崎さんである事以外主人公の名前を出していませんでした。
 主人公は洲崎箕栞(すざき みしお)、高校2年生です。
 では、また次回もお会いしましょう!

[出典]
ライダー…Fate/Apocrypha
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