邪神のお仕事   作:SINSOU

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外伝
外伝~新たな道を歩むもの~


意識しているのに、自分の意志で動いていないという感覚がある。

 

俺は今日まで、自分なりに生きていたと思っていた。自分なりに考えてきたし、自分なりに失敗をしてきた。叱られたこともあったし、褒められたこともあった。そうして大なり小なり、四苦八苦しながら生きてきたはずだった。数少ない、一緒に馬鹿ができる友人もできた。

 

 

だというのにこれはなんだ?

 

 

偶然ISを起動してしまったために、俺はこうしてIS学園に連れてこられ、あろうことか通学する羽目になった。もちろん、俺自身の身の安全のためという説明を受けたが、『はい解りました』と簡単に納得できるわけがなかった。俺自身、家族である姉に迷惑をかけっぱなしだったから、少しでも早く職に就きたかった。だから藍越学園に入りたかったのに、どうして俺はこんなところにいるんだ?

 

そうした……心の中にどろどろとした感情が宿るが、それでも『仕方がない』とそれを押し殺した。

 

幸運だったと思っていたのが、俺と同じようにISを起動してしまった男子生徒がいたということ。女子高であるIS学園において、一人でも男子がいる。これは俺にとってのクモの糸だと思っていた。

 

 

まあでも、そんな気持ちを抱いた俺を、今ではぶん殴りたくなるけどな。

 

 

 

 

『よぉ、一夏』

 

出会った当初から何も変わらず、俺を馬鹿にしたような口調の青年が、同じように上から俺を見下ろしている。応える義理も気力もないので、俺は無視をすることにした。

 

『貴様、何度も愛人を無視するとはいい度胸だな!』

 

まあでも、そんなことは許されるわけもなく、俺の最初の幼馴染だった少女が俺の服の襟を掴み上げた。がたんと椅子が倒れるが、周りは別に気にする素振りさえない。

 

 

なにせ、日常の光景なんだからな。

 

 

 

無理やり立たされた俺は、目だけを動かし、俺を引っ張り上げた犯人を睨みつける。

 

『なんだその目は!』

 

案の定、たいそうご立腹だから、俺を床にたたきつけるわけで。まあでも、そんなのはまだ序盤だ。

 

『まったく、本当にグズよね?』

 

はい、俺の頭を靴で踏んでくるのが第二の幼馴染だった少女。キンキン声が毎回耳に響くからうっとおしくて仕方がない。一度そのことを指摘したら、いきなり壁にたたきつけられたよ。逆らえば逆らうだけ余計に痛めつけられるから、ただただ嵐が過ぎ去るのを待つだけだ。

 

他にも、俺をゴミ屑のような目で見てくるお嬢様や、生存すら否定してくる軍人コスプレチビ、更にはハニートラップをしようとしてきた男女による、躾というなのパワーハラスメント。正直、慣れたから何とも思わなくなった。

 

だがまぁ、こいつだけは色々と思うところがあるわけで。

 

『おいおいどうした一夏?美少女ヒロインに可愛がって貰ったってのにそんな顔してよぉ』

 

世乃愛人(ヨノ・マナト)

 

成績優秀、運動万能、まるで世界の女の子たちの理想をこれでもかと固めたような男の子。それが愛人だ。俺自身、最初はその容姿から、いい友人になれると思っていたんだけどな。今じゃこれだ。

 

もはや隠す気もない、下卑た笑みで俺を見下ろしている。まあでも、俺からはそう見えるらしく、周りからはイケメンの笑顔だと。もはや俺とこいつらは別の世界を見ていると思うようになった。

 

『一夏!愛人が聞いてるのになぜ黙っている!』どこからともなく取り出した木刀を、俺に振り下ろそうとする暴力女。が、それを止めるのが愛人だ。

 

『やめてくれ箒。一夏だって困ってるだろ?それに、俺は箒が暴力を振るう姿を見たくないんだ』

 

『愛人…!』

 

キャー!と教室内で響き渡る女子の黄色い叫び声。

 

だったら始めから止めろよ、と思うがいえばどうなるかなんて知ってるから黙るだけだ。

 

『おら立てよ一夏、俺の手を煩わせるんじゃねえよこのカスが』

 

ま、これで終わるわけがなく無理やり立たたされてからの腹パンだ。

 

『よし!今日も絶好調だぜ!』

 

崩れ落ちてうずくまる俺を、周りはただただ『馬鹿みたい』とくすくす笑うだけ。正直、この学園はイカレテいるとしか思えっていない。

 

さて、いつも通り保健室に行くか。体を引きずつように、俺は歓迎されない保健室へと足を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

『いらっしゃい』

 

開口でこの言葉を吐き出す保険医。その手には包帯、絆創膏、消毒液と、いつもの道具が机に乗っていた。彼女は何も言わず、ただ俺の状態を見ながら、傷口を消毒し、絆創膏を貼り、包帯を巻く。いつものように、彼女は俺の状態を診察書に書く。保険医曰く、何度も担任に渡しているはずなのに、なぜか俺の不注意と判断されるらしい。暴行を目撃してる回りは、口を揃えて、俺の自作自演と証言。やはりこの学園はおかしいんだろうな。

 

治療を終え、俺はいつも通り保健室のベッドで横になろうとする。

 

『この世界をどう思う?』

 

いつもなら、二時限まで寝ていろと言ってくるが、今日の保険医はそう聞いてきた。

 

『糞ですよ』

 

正直に俺は答えた。

 

はっきり言って糞だった。いや、糞以下のクソだ。

まるで……そう、………まるで世界が、世乃愛人の味方になったかのような世界。何もかもが愛人の都合の良いように動く。

親しかったはずの幼馴染が、あいつと出会った瞬間、いきなり俺を侮蔑するようになった。あいつに媚びた視線を向け、あいつが俺の前で幼馴染みにキスした光景は今でもトラウマだ。ましてや、俺の家族や教師までがあいつの側だった。

 

あいつの寮室で、あいつとまぐわっている幼馴染や家族を見てどう思うだろうか?それも一緒に。

 

正直、吐いた。胃の中が空っぽになるまで吐き続けた。嬌声が今でも耳に刻まれて、悪夢にさえなっている。何度も俺はそのことを訴えた。おかしい、止めろと。

 

気づけば、逆に俺がそんなことをしているという根拠のない噂が広まり、いまでは俺は性犯罪者のレッテルだ。俺の指摘も、自分の罪を愛人におっかぶせようとしたということで塗りつぶされた。

 

『あいつらとやるのは気持ちよかったぜぇ?うらやましいだろ?ま、本当ならお前みたいな犯罪者にはもったいないからな!それともお前、自室で………』

 

何度も何度も、殺してやりたいと思ったことすらあった。でも、どうにかする度に、俺が悪いようになっていく。もはや意味が解らなくなっていた。あの、あの愛人はなんだ?いまじゃ、人の形をした化け物にしか見えない。そして俺は、その化け物にただただいたぶられるだけの存在だった。

 

もう、疲れました。

 

 

心の内をぶちまけた俺は、ただ曖昧に笑うだけだ。正直、誰も信じられないし、生きる気力すらない。

 

『そうか』

 

さらさらと紙の上でペンを走らせていた彼女は、ペンを置いた。

 

 

「じゃあ一緒に来るかい?」

 

え?

 

顔を上げれば、そこにいたのは保険医ではなくドレス姿の女性。ただし半分が黒く半分が白い、文字通り白黒の女性が立っていた。

 

 

「この世界を君は嫌だと言った/ならば別の世界なら好きというのか」

 

目の前の女性は一人しかいないのに、聞こえてくるのは二つの声。

 

「君はあの愛人という少年を怪物といった/ならば君は普通の人間と言えるのか。狂っているのは世界の方で/狂っていないのは君の方か」

 

な、何をいっているんですか?

 

訳が分からない言葉に、俺はただ戸惑うしかない。目の前の女性はため息をつき、俺を見据えた。

 

「もうこの作品の主人公は彼になってしまったから、モブになり下がった君はこの物語から消えてもいいみたいなの。恐ろしいことを言うと、いつ死んでもおかしくないんだ、なんせどう扱ってもいいモブだからね」

 

あまりのことに俺は口が開かない。

 

「だから君に選ばせてあげる」

 

女性は俺にその両手を差し出した。

 

「一夏君、すべてをあきらめてここに残るか、すべてを捨ててここを出るか」

 

胡散臭い彼女は微笑う。

 

「君は何を選ぶ?」

 

 

 

にこりと笑う女性を見ながら、俺は………選んだ。

 

 

 

「さて、踏み台前提の作品から踏み台がいなくなったらどうなるでしょうか?」

 

突如、まばゆい光と轟音に襲われ、俺の意識は途切れるのだった。

 

 

「答えは簡単、全部壊れちゃう(崩壊だよ)

 

 

 

 


 

  

『殺す!殺してやる!』

 

『許さない!絶対に許さない!あいつだけは絶対に殺してやる!』

 

『あははははは、お父様、お母様!申し訳ありません!私は、身も心も穢れてしまいましたぁ!ですが、最後に、もう一度、穢れることを許してください。あの男だけは絶対にこの手で…!』

 

窓ガラスは割れ放題、壁面は罅だらけ。美しかったであろうその校舎は、今では無残な姿になってしまった。全身を兵器で固めた少女たちは、口が裂けるほどの笑みを浮かべ、その目は真っ赤に血走っていた。求めているのはただ一人。ただ一人の少年だ。

 

愛した、愛していた、ただ愛するようにされていた。少年の言葉にただ肯き、好きという美辞麗句を謡わされ、人形のようにおままごとをさせられた。

好きでもない奴を愛し、好きな人を罵倒する。自分の手が、好きな人を傷つける。唾棄すべき相手から下卑た視線を向けられて、好きな人からは憎悪の目を向けられる。

 

すでに壊れてしまった心は、何度もつぎはぎに直され、繰り返される作業に、どんどん歪になっていく。

 

自分の人生が一瞬にして、幸せになる権利すらないガラクタになったことをどう思うだろうか?地獄なんて生ぬるい。もはや虚無だった。

 

ああでも…その枷はなくなった。私は、私たちは、自分の意思であいつを探している。みんな一緒だった。

 

大切な人はもういない。保健室から起きた謎の爆発により、見つかった黒焦げの塊。もはや原型さえなく判別も不可能なほどだった。だがそれが何かはみんな解っていた。それを嘲笑った自分たちがいた。それを見せられる『私たち』がいた。もう生きていても救いはない。残されたのは、白濁液まみれの身体と継ぎはぎだらけの歪な心。もう私たちは終わりたいのだ。全ての元凶を終わらせて。

 

 

 

その光景を、白黒の女性が見下ろしている。彼女の隣には簀巻きにされた少年。その顔は真っ蒼に染まり、猿轡をされた口からはくぐもった声が響く。

 

「ですって。みんなあなたを探しているわ。良かったわね、可愛がって貰えるわよ」

 

靴のつま先でコツコツとつつく女性。少年は首をぶんぶんと横に振るう。

 

「そんな恥ずかしがらなくてもいいわ。モテる男は、それだけ罪ってことなんだから」

 

こつんこつん突っつきながら、女性は少しずつ少年を動かしていく。そして落ちるか落ちないかの瀬戸際で、少年の口枷を解いた。

 

「さて、ここで貴方に選択です。このまま反省せずに落ちるか/それとも反省して全てをなかったことにするか。さあどっち?」

 

にこりと笑うモノクロウーマン。その問いかけに、少年は口を開いた。

 

 

『くたばれ!』

 

 

その瞬間、彼女の胸から、突き破るように刃が飛び出した。モノクロウーマンは、突然のことに思考が追い付いていないのか、胸から飛び出た刃先に視線を落とす。振り返れば、背後には白いロボットが佇み、その右手には自分を突き刺している剣が握られていた。

 

「それが君の選択か」

 

少年の方に顔を向け、そのままガクリ……と動かなくなった。傷口から噴水のように血が飛び出し続ける女性の姿を見ながら、少年、世乃愛人は勝ち誇ったように笑う。

 

『ひっ、ひひ……!ざ、ざまぁみやがれ!』

 

埃のように、突き刺した女を無造作に払うと、ロボットは縛られている少年の縄を切った。自由になった少年は、事切れた女性の側まで行き、何度も何度も踏みつける。

 

『死ね!死ね!死んじまえ!俺以外の転生者は邪魔なんだよ!』

 

靴が汚れるのもお構いなしに少年は何度も踏みつける。しばらくして落ち着いたのか、怒りに震えていた顔はすっきりとしたイケメン顔に戻っている。

 

『まあいい。これで、こいつに洗脳されたあいつらも元に戻るってもんだ』

 

ペッと、死体に唾を吐き捨てる。本当なら、灰に変えてやりたい衝動を、優しい心で押さえ込む。今大切なのは、洗脳されたハーレムたちのことだ。きっと混乱しているに違いない!愛人は光迸る笑顔で、ハーレムたちに駆け寄る。

 

『みんな大丈夫かい!?』

 

そういって近づく愛人に対して、少女たちの答えは決まっていた。一斉攻撃だ。

 

『なっ!?』

 

予想外の展開に愛人は驚くが、彼の『転生特典チートマシマシデメリットなしイケメンフェイスに最強ステータスニコポナデポ、他アニメ能力セット』により創られたオリジナルIS『νフリーダムゴッドクアンタユニコーンダブルエックスバルバドスゼロカスタム』がその攻撃を凌ぐ。

 

『な、なんで……?』

 

愛人はハーレムたちの行いに理解が追い付かない。洗脳していた転生者を殺したんだから、洗脳は解けるはずだ。なのに彼女たちは自分を殺そうとしてくる。

 

『ふざけるな』

 

愛人に湧いた感情は、理不尽に対する怒り。

 

『愛してやっていたのに……!』

 

愛人は愛犬に手を噛まれたような、信じられない裏切り行為に激怒した。

 

『俺が愛してやっていたのに!可愛いだけのお前らを、俺がわざわざ愛してやったのに!この恩知らずどもがぁ!』

 

主の怒りに呼応するかのように、彼のISは赤い光を放ち始める。

 

『もうお前らみたいな売○なんてもういらねぇ!俺に逆らう奴は誰であろうとぶっ殺す!』

 

その一言が響いた瞬間、愛人を攻撃する彼女たちの身体から、紅い花が咲いた。

 

 

 

 

 

 

『ひ、ひひ!ざまぁみやがれビッ○どもが!俺に逆らう奴は……え、お……俺は何をしたんだ!?』

 

回りを見渡せば、廃墟となった学園に、血塗れに息絶えたハーレムたち。

 

『ち、違う!』

 

愛人は叫ぶ。

 

『お、俺じゃない!俺は悪くない!俺に逆らうからこうなったんだ!み、みんなお前らが悪いんだ!』

 

一人、誰にも聞かれない言い訳をする愛人。

 

「いやぁ、君の選択だよ」

 

ガラクタを踏みながら自分に近づく足音。振り返れば、そこには身綺麗なモノクロ女が立っていた。胸を貫かれた傷や血の染みさえない。

 

『な、なんで生きて……!?なら!』

 

一瞬驚くが、すぐさま相手が転生者だったことを思い出す。ならばと、今度は再生できないまでにバラバラにする。文字通り細切れになる女。だが、まるで時間が巻き戻るかのように、彼女は目の前で元に戻る。首を切るも首なしの身体が首を受け止めて元に戻し、ビームで焼き殺すも焼け焦げたところから元に戻り、亜空間に飛ばすも別の異空間から戻ってくる。

 

『ばっ、バケモノのがぁ!』

 

目の前の怪物に、愛人は腰を抜かして狼狽えるばかり。

 

「もういいかな?」

 

ため息とともにモノクロ女が愛人のISを指さし、「ちょっとおとなしくしててね」と言葉を口にする。その言葉を受け、彼のISは機能を停止。本来の主の指示すら跳ねのける。もはや何が何だかわからない愛人に、モノクロ女はうんうんと納得したように頷いた。

 

「さて、さっきの言葉だけど…」

 

『ヒッ…!』

 

「この惨状は君が引きおこしたことが原因だよ。だってさ、君、好き勝手やったんだもの」

 

指折り数えるように、彼のしたことを上げていく女。

 

「この世界の原作主人公に対する暴行、恐喝、精神的ストレス、殺人未遂、人格否定等々に加え、ヒロインたちに対する、XXにXXX、XXXXXなんてしてるし、ましてやXXXXXXXXXなんてやってるわけでさぁ」

 

口元を歪める。

 

「こんなんやってて、愛されると思ってたの?」

 

どこから取り出したのか、彼女の両手には2冊の本。右手と左手に一冊ずつ。そのどちらにも『インフィニットストラトス』と書かれている。

 

「君は選んだ。手に入れた力を使い、自分の好きに生きることを。その結果がこれだ。君には二つの未来があった。一つ目は自分の力に調子に乗って、好き勝手やって破滅する未来。もう一つは、彼らとともに成長したであろう未来。ま、結果はこれだけどね」

 

そう言った途端、左手の本があっという間に燃えて灰となった。

 

「惚れられる努力すらせずに、自分のヤリたい時だけヒロイン()を利用して放置。力に甘んじて天狗になり、食って、寝て、ヤッて、アンチ対象を殴るだけの1日。君の設定はどこにいってしまったんだい?勤勉、運動万能、人に優しく、誰も差別せず、まるで女性の理想を形にしたようなイケメンのはずなのにさぁ?」

 

ため息をつきながら、やれやれと首を振る。

 

「自分の気に入らないものを徹底して攻撃し、自分に都合がいいものだけを優遇する。でも、それだって絶対的なものじゃない。気分一つで真逆になる。『愛してる』という言葉だって、嬉しい/疎ましいと思うことだってあるわけだもの」

 

空いた左手には、愛人とハーレムたちとのあられもない写真の束。どこかの雑誌や新聞に渡せば、一気に愛人やハーレムたち、IS学園の名誉が地に落ちるスキャンダラスな姿が写っていた。

 

「君のような性格だったら、好き嫌いなんて簡単に変わるだろうしね。まるで風見鶏のように。なら最後は、全てを気に入らないものとして排除するだろうってことは予想できてしまったよ」

 

その写真を放り投げれば、それらは風に乗って飛んでいく。

 

「彼女たちを殺しちゃったことも、愛してやってる自分を攻撃することに腹が立ったわけだしね。しかしまぁ、君の引き金って相当軽いよね、下半身についてる『それ』みたいに」

 

ピッとそれを指差す。

 

「私は君に尋ねた。今までの行いを反省して、全てなかったことにするか、反省せずにおちるか。そして君は選んだ。私を殺すことを」

 

女の口は、まるで細い三日月のように、その端が目に届きそうなまでに歪んだ。

 

「その結果、君は堕ちた。人としてどうしようもない存在に。まったくもって嘆かわしいね!楽ばかりを選んでいれば、最後は楽に堕ちていく!おめでとう!君は選び取ったんだ!破滅という未来をね!」

 

そういうと、女は愛人に右手に持っていた本を手渡した。

 

「これで君の物語の名前がきまった。タイトルは…そうだね。『インフィニット・ストラトス~新たな道を歩むもの~』ってね」

 

そうして彼に背を向け、女は去っていく。

 

「踏み台もなく、ヒロインもなく、敵もなく、守るべき存在もなく、偉大なる功績もなく、あるのはこの世界では畏怖される力と君が殺した死体と張りぼてになった偉業と今までの罪科。ま、がんばりなさいな。君の物語は始まったばかりなんだから!」

 

 

全てを無くした主人公の新たな始まりを、彼女は激励をするのだった。

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