「やった!やったぞ!これで未来が変わる!これで何もかもが元通りだ!」
足元でもはや人間の原形がとどめてないほどに破壊された怨敵の姿に、俺は叫ばずにいられなかった。
神様転生って知ってるか?ようはそれ。俺の場合、5歳になった時に記憶が蘇ったから、前世帰りってのが正しいのかな?どーでもいっか。俺は意識を持ったまま、別の世界で生まれ変わったってこと。
しかし神様転生って本当にあったんだなって感じ。正直、陰キャ等の現実逃避って思ってたんだけどな?人生ガチャ大爆死でワンチャンダイブする負け犬の遠吠えみたいにさ~。ただ目の前の邪魔だった餓鬼を押し退けた結果がこうなるんて、誰も予想がつかないだろうね。ま、周りの屑どもとは違って、俺は平和主義で優しい日本人だからな。神様もちゃんと見てくれてるってもんだ。
しかし悔しいなぁ。どこの塵か知らないが、真面目で善良な俺を殺しやがってよ。もしも俺が生きてたら、相手から賠償金をむしりとって、悪評をネットにばらまいて制裁してやったんだけどなぁ。人畜無害で善良な俺に、理不尽な怪我をさせた報いはちゃんと受けなきゃ不公平ってもんだ。いくら温厚な自分でも怒るときは怒るんだよ。他人を平気で傷つける奴を俺は許さないからね!そんな危険な奴等を制裁するのは社会の正義で国民の義務なんだからな。
一方で、泣いて感動する転生神様を見て、案外神様はちょろいんだなって思ったのが正直な感想。俺を助けてくれなかったら、神様は無能な穀潰しどもと思ってたけど、案外役には立つんだなってね。
ただまぁ、その無能なバカ神様お陰で(↑)?俺は特典を貰ってこの世界、俺の前世ではライトノベルとして有名だった『インフィニット・ストラトス』に転生したってわけさ。遊び相手の陰キャが持ってたのを、面白半分に読んだだけで詳しくは知らないけどな。
記憶が蘇ったあとは、適当に女の子をつまみ食いしながら原作が始まるのを待った。いやーモテモテで大変だったよ!どいつもこいつも勝手に惚れてくるからまいった。時には彼女に捨てられた男()が、彼女を奪いやがって!と言い掛かりをつけてきたが、勘違いに困ったもんさ。捨てられた自分の不甲斐なさを、俺のせいにするんだからな!ま、俺は被害者だから、きっちりそいつに正義の制裁をしてやったよ。勘違い野郎の血を後世に残さない方が社会にとっていいだろうしな。玉無し野郎にしてやったぜ。
で、原作主人公様が見つかり、俺が見つかり、晴れて学園生活の始まりってわけ。あとは、類い稀なる俺の力と話術で学園の生徒や先生を食べながら、主人公さま()に世間の厳しさを教えてやったわけだ。まったく困ったもんだぜ。俺は仕方なく彼女らを抱いてやったのにさぁ?勘違い野郎の嫉妬は醜いったらありゃしない。現実を教えてやるために、わざわざ目の前で抱いて喘ぎぐ姿をを見せつけ、彼女らから手酷い罵声を浴びせられて漸く黙ったから参ったもんだ。
でも俺に迷惑をかけたんだから、正義のお仕置きをしてやったぜ。おかげで学園内から爪弾きにされた主人公様()の姿!馬鹿の末路過ぎて笑いが止まらなかった!ああいった勘違い正義野郎に、わざわざ社会の正義を教えてあげた俺は、まさに善人の鏡と言える。
でもかわいそうになぁ。いつものように保健室に行った際、謎の爆発に巻き込まれるなんてさ。いやぁ、
とまぁ、偶然にも邪魔する奴がいなくなり、真面目で善人な俺のハッピーライフが続く………筈だった。突如として俺の薔薇色ハッピーライフは踏みにじられた!
切っ掛けは、学園内に不審者が入ってきたこと。そいつは右半分が白く、左半分が黒い服を着ていた。警備員と教師等がそいつの下に行き、あとは叩き出されて無事解決って流れだった。しかし、不審者が指を向けた瞬間、彼女らが叫びだして蹲った。それを皮切りに、不審者が指を向けた生徒等は発狂。まさに地獄絵図。
口から泡を吹いて倒れる、頭を壁に叩きつけだす、頭を抱えて『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい………』と泣き出す、『違う!違うのたっくん!私が好きなのはたっくんで…あれ?あ、あ………あ?あああぁぁぁあぁぁぁあ!?汚い汚い汚い汚い!』と身体を掻きむしりながら叫ぶ、『あははははははアハはあはああははははははははあああはははははは』と笑いだし、そこらじゅうで嘔吐、自傷、流血する生徒等で学園はパニック。
そんな危険人物に対して、俺はすぐに逃げようとした。だって明らかにヤバイ奴なんだから、立ち向かう奴はバカぐらいなもんだし。こういう時の警備員や教師なのに、彼等の無能さに舌打ちしたくらいだ。しかし、逃げようと踵を返した瞬間に俺が見たのは、遠くにいた筈の不審者の姿と俺へ伸びた雪のように真っ白な手だった。
結論を言うなら、不審者は事故で勘違い主人公様と死んだ筈の保険医だった。まるで別人のように、くさい演者のような言動をしていた姿は、頭のいかれた狂人みたいだった。あいつは好き放題した後、俺に一冊の本を渡して去っていった。
許せなかった!ムカついた!勝手な理屈で俺の世界を踏みにじっておいて、あろうことか滅茶苦茶になったのは俺の自業自得と責任転嫁してきたこと!
そして俺の女等を洗脳して殺そうとまでしてきた。そのせいで俺は全員を………!
事件後、IS学園は実質閉校。各国は独自の教育機関を設立し、全世界がその繋がりを絶ってしまった。俺は唯一の男性操縦者というわけで、日本の所有物として至れり尽くせりな扱いだった。だが俺の中にある、糞女への怒りは収まることがなかった。
なにせ、手前勝手に俺の人生を滅茶苦茶にしたんだからな。
俺はその後はずっと、こうなった元凶のくそ女を追いかけた。唯一の男性操縦者の立場と力を使い、国の権力や秘密裏に接触してきた亡国企業とのコネを使い、時には情報屋まで利用した。情報屋に関しては、憂いを絶つためにきっちりと全員の口を封じた。まあ、下手に生かしてたら脅迫されたかもしれないしな。俺は正義のために甘さを捨てたんだ。
けれどもいくら探しても見つからず、新たなハーレムを作りながらも気づけば何十年も時が過ぎてしまった。もはや諦めかけた俺の前に現れたのが、俺の恋人である束だった。曰く、ずっと俺のためにタイムマシンを作り続けて漸く完成したと。過去を変えることで、死んでしまったちーちゃん等を助けてほしいと。
もちろん、俺はいの一番で返事をした。俺は女の涙に弱いからね。それに、未来を取り戻すという目的があるんだからな。準備をしてすぐに過去へとび、無事に元凶を殺したというわけだ。時代は十年前、俺が記憶を取り戻すだろう時期だった。
「ざまぁ見やがれくそったれが!お前のせいで!お前のせいで!俺は酷い目に合ったんだ!何が君の選択だぁ!?これが俺の選択だよ!まさか未来から過去へ来るとは思わなかっただろ!」
これまでの恨みと辛さぶつける様に、俺はミンチになった怨敵を更に潰す。あの時とは違い、この糞女はただ何も出来ずに泣き顔を晒したが、容赦なく俺は自分の手を汚した。俺はお前のせいで甘さを捨てたんでね。ざまぁみろ!何もさせずに轢き殺してやった。
知るはずもないが、あの時《不意打ち》に為すすべなく停止されられた俺のISは、未来の技術と束等の協力で、
怨敵を殺し、俺の奪われた未来を妨げるものがないことに俺は有頂天だった。そんな気分に水を指すように、誰かの息を飲む音が聞こえた。おそらく誰かに見られたようで。
「せっかくの気分を害しやがってよ」
俺はため息をついた。無駄なことはしたくないんだが、
「もうこれはいらないな」
そういうと、俺は糞女から渡された本を燃やす。本当はさっさと燃やしたかったが、下手に何かして問題が起きても困っていたので、ただ秘密裏に俺が隠し持っていたわけだ。だがこうして糞女の痕跡を全て潰せば、もう俺の怖いものはない!けっ!何が俺の物語だ!驚かせやがって!
「さぁて!俺の輝かしい未来へ帰るとするかな!」
おそらく、生きているだろうヒロインと新たな俺のハーレムたちとの交合や、俺に首を垂れる会社の役員どもの間抜けな姿。強くなった俺のISでごみ屑どもを成敗する気分転換。
そんな約束された俺の幸せな未来を想像しながら、俺はタイムマシンを起動したのだった。
『あーあ』
世乃愛人が未来へ帰った後、凄惨な殺人が起きた現場に人の影が差した。その出で立ちは奇妙で、半分が白く半分が黒い服を着ていた。そしてその顔は、ただただ真っ黒の闇に覆われていた。白黒女は、手に持ったタピオカドリンクのストローを、自身の口に当たる部分に入れて一口のみ、ため息をついた。
目の前のもはや原型がない肉塊を見ながら飲むタピオカは、また格別だった……な訳がない。
『偶々みつけた身元不明の死体を使ったけど、まさかこうだったなんてね。まさに事実は奇なり、だ』
まさか殺人犯が未来から来た、なんて誰が想像つけるだろうか?いや無理だろう。おそらく、本来は別の人間に殺されたのだろうが、愛人が現れたことでこうなったんだろう。これは修正力なのかもしれないね。かわいそうだが、どのみちこの女性は殺されてしまう運命だったのだろう。ただただ憐れと思うしかない。
白黒女はミンチになった遺体をかき集め、その肉塊を咀嚼する。タピオカドリンクで肉を胃に流しながら、大体20分くらいかけて全部飲み込んだ。
「あー食べた食べた!もう無理!」
その顔は真っ黒な闇ではなく、死んだはずの女性の顔であった。
「そして君の選択だけど……詰めが甘かったとしか言えないよ。うーん……零点!」
燃えて灰となった本の残骸を見ながら、白黒女=もがみあやめは胸元から新聞紙を取り出すと、そこには大きな見出しが書かれていた。
『白昼の通り魔殺人の悲劇!』
そこには、5歳児だった
さてここで問題です。過去の自分を殺した自分が未来へ帰ったらどうなるでしょうか?答え=お前が存在する未来なんてないんだよ。
「早くみんなに会いたいなー!」
もがみあやめは輝かしい笑顔で、来るべき未来に思いをはせるのだった。