のび太の学園黙示録   作:ネスカフェ・ドルチェ

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ACT.1 始まり

世界が終ってしまった日の前日。僕は夜更かしをしていた。

 

「野比!おいっ!野比!聞いているのか!?」

 

珍しく夜更かしをしていたせいか、僕は授業中に居眠りをしていたようだ。

 

「そんなに眠いのなら廊下に立ってなさい!」

 

周囲からクスクスと笑い声が聞こえてくる。高校生になったのに廊下に立たされるなんて前時代的な対応がおかしいのだろう。

・・・僕は頭を整理したかったので素直に廊下に向かった。

廊下に立たされたのは小学校以来だ。

 

6年前。・・・僕にとってはトラウマだ。

6年前のあの日、僕らはドラえもんの道具で3日間のバカンスに出かけていた。

家に帰ってから僕は宿題のことを考えるのが嫌で昼寝をしていたのだが、・・・目が覚めたらそこには地獄が広がっていた。変わりはててしまったママ。映画の世界のような現実離れした状況。

・・・あの時のことは今でも夢であってほしいと思っている。

現実は理不尽で残酷だ。僕はジャイアンやスネ夫にいじめられてはいつもドラえもんに頼っていたけど、その時はドラえもんは僕の隣にはいなかった。

・・・僕の力だけであの悪夢から抜け出さなきゃいけなかった。

 

スネ夫やジャイアン達とと協力して、脱出路を探している最中に色んなことがわかった。この惨劇を造りだしたのは世界的に有名な製薬企業アンブレラであること。そして出木杉や静香ちゃん、ドラえもんがアンブレラの人間だった。ドラえもんには別の思惑があったらしいが・・・。

正直なところ今でも信じられない。ドラえもん。君のことを僕はまだ親友だと思ってもいいんだよね?

 

街から脱出した僕ら一旦政府の人間に保護された。その時につらい思い出ばかりだからと、皆とはバラバラに離されてしまった。僕はそのあと親戚のおじさんに引き取られ、よくしてもらっていたが、転校先の学校ではよくいじめられた。僕がドジでノロマだからか、もしかしたら、どこかで僕がススキヶ原から来たことがばれたのかもしれない。原因は今となってはわからないが、ジャイアンやスネ夫のいびりが優しいと感じる程いじめは陰湿だった。でも、もうドラえもんはいない。心の友もいない。今度こそ僕だけの力で道を切り開いていかなければならなかった。そのために昼寝を惜しんでまで勉強もしたし、運動も積極的に行った。・・・努力に結果がついていったかは微妙だったけど。

 

そんな僕も今はおじさんのところから離れて一人暮らしをしている。おじさんが宝石商でおばさんがファッションデザイナーということもあってか、お金の面では心配しなくてもいいと言ってくれたことは心強かったが、ただでさえ頼りっぱなしだったので、なるべくバイトで生活費を稼いだ。

・・・ドラえもん、君は今どこで何をしているのだろうか?ジャイアンやスネ夫、聖菜さんに太郎はどうしているだろうか・・・。

 

そんなことをぼんやりと考えていたら授業をさぼることで有名な不良生徒の小室が慌てた様子で教室へ飛び込んでいった。「いいから言うことを聞け!」なんて痴話喧嘩でもしているのかと言いたくなるようなことを声を荒げながら叫んでいる。すると小室だけでなく、宮本や井豪も教室から出てきてどこかへ向かってしまった。間もなく校内放送が流れ始めた。なんでも暴力事件が発生したから教室から職員」の誘導に従って非難するよう指示する内容だった。クラスメートも「マジィ?」と退屈な授業に飽き飽きしていたところへあらわれた余興のように捉えていた。

・・・そんな余裕も最初の内だけだったが・・・

 

「やめてっ!来ないで!痛い!痛い!痛い!痛い!い、嫌っ!助けt、あああああああぁあぁあぁぁぁあああっ!」

 

しーんと辺りは静まり返っていた。僕も嫌な汗を搔いていた。ついさっきまで6年前のことを考えていたからか、どうしてもあの悪夢が頭から離れなかったからだ。

しばらく動けなかった僕だったが、ガララと教室のドアが開く音がした。開けた犯人は学園一の才媛で、トランジスタグラマーとして一部の男子から熱狂的な人気がある高城沙耶さんだった。

聡明な彼女が動き出していることに僕は危機感を抱いていたが、現実を認めたくない僕の体は動くことを拒んでいた。かろうじて口だけが動く。

 

「・・・高城さん」

 

「しっ! いいから逃げるわよ」

 

小声で素早く囁いたあと足早に特別棟へ走り去っていった。

僕の体もようやく動き出して慌てて彼女の後を追っていく。こうして僕にとっての素晴らしき日々はあっさりと終わり混沌が顔を覗かせていた・・・。

 

 

 

 

 

「おらっ!どけよっ!」

 

「くそがっ! ぶっ殺すぞ!?」

 

僕らが動き出した後、他の生徒たちも動き始めていたが、控えめにいってもその様は暴徒化していた。他の生徒を押しのけて誰よりも早く助かろうと急いでいた。

・・・無理もないだろう。人間が人間を襲っている現場を間近に見せられて、冷静でいられるばずがないのだから。

 

「いやっ!来ないでっ!」

 

「嘘だよね?こんなの嘘だよね?ねぇ、ママ?そうでしょう!?」

 

直視したくない光景だが、まぎれもなくあの時の地獄が蘇っていた。

 

「高城さんはどこへ逃げているんですか!?」

 

僕は気になって前を走っている高城さんに声をかけるも質問には質問で返されてしまう。

 

「あんたはどうするつもりだったの?」

 

「・・・まずは技術工作室へ行きます。必要な工具を回収したら職員室で車のキーを拝借してドライブに繰り出さそうかと」

 

「あんた免許もないのに運転出来るわけ?でも悪くないわ。やるじゃない」

 

驚きながらも、どこか釈然としない様子で高城さんは呟いた。

暴徒化した生徒や、変わり果ててしまった彼らに注意しつつ、技術工作室へなんとかたどり着いた。

 

「どうやら、この部屋にはいないようですね」

 

「確認をしたらすぐにドアを閉める!鍵も掛けて!」

 

鍵を閉め終わると工具を物色し終えた高城さんが僕の目の前に工具を並べ始めた。

 

「どうせあんたって軍ヲタとか、(ガン)ヲタとかそういった生命体なのでしょ?だったら、リーサルウェポン2って映画とか観たことはあるわよね?これが何かわかる?」

 

「ガス式の釘打ち機ですね。・・・もしかして映画とか好きなのですか?」

 

「バカ言ってるんじゃないわよ!あたしは天才なんだから何でも知ってて・・・!!」

 

予備のボンベは一本。釘のは量は十分だな・・・。

 

「の、野比?何呑気に構えてるのよ!き、来てる!!廊下に来てる!」

 

重さは4キロ位か、旧式のライフル並。大きさの割に全長が短いからこのままじゃ安定して構えられないなぁ・・・。

 

「ちょっと、あんた、聞いてるの!!?」

 

高城さんが焦った様子で叫んでいた。あいつらは脳のリミッターでも外れているのか筋力がものすごく強い。ドンドンとドアを叩く音が強く鳴ってきた。彼らは音に反応する。このままでは数が増えていきドアも押し切られてしまうだろう。

 

「の、野比~!?」

 

それでも僕は慌てることはない。だってそうじゃないか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。今は頼もしいこいつが傍にいる。

 

カシャーンとひと際大きい音を立てて僕らと彼らを隔てていた境界は崩れ去った。高城さんは思わず悲鳴を出してその場にしゃがみ込んでしまっていた。極上のご馳走を見逃す彼らではない。手を伸ばして駆け寄ろうとするも、それ以上近づけさせることを僕は許さなかった。

木材をクラフトして作った即席のストックを装着することで安定性を上昇させた釘打機(ネイルガン)によって彼らは二度目の眠りについたからだ。

 

「高城さん?大丈夫でしたか?」

 

彼らを一掃した後で尻もちをついていた高城さんへと手を伸ばす。

 

「あ、あんたね~・・!!もう少し早く動けなかったの!!?」

 

どうやらお気に召さなかったらしい。僕の手を無視して立ち上がり、制服についていた汚れを払っていた。手早く工具を袋に突っ込んで部屋から脱出しようとすると、辺り一帯から火災警報器が鳴り響き、上の階から水が窓をつたっていた。

 

「火事とか信じられない!早く逃げるわよ!」

 

走り出す高城さんの後を僕は追いかけていった。

夢なら早く覚めてほしい。

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