ベルが魔王の義息なのは間違っているだろうか? 作:クロウド、
リヴェリアさんに案内された部屋は誰かの執務室らしく、事務方用の机が一つ置かれておりその席には所謂、ゲンドウポーズ状態の金髪の少年、確か小人族とか言う種族だっけ。
そして、隣に用意された椅子にはどっしりとした体付きの男性ドワーフ。二人共、中々見事な闘気を纏っている。
なにより、机の上に腰掛けて据わっている赤髪の女性、彼女から感じる気配は他の二人とは全く違う。
なるほど、
この世界も思ったより面白そうだと顔には出さずに内心ほくそ笑んでいると部屋の扉が開け放たれあの少女を部屋に運んでいったリヴェリアさんが執務室に入ってくる。
「アイズの容態は?」
「……いつものやつだ、丸1日は寝込むことになるだろうな」
「相変わらずじゃのう……。」
「まあ、アイズたんらしいんやけどな」
「ンー、やっぱり僕等以外と潜らせたのはまだ早かったかな」
リヴェリアさんの言葉に小人族の少年は困ったように笑い、ドワーフの男性も同じく困ったように顎髭を撫で、赤髪のエセ関西弁の女性は何が面白いのか笑みを零している。その女性の様子にリヴェリアさんは頭を抑えた。
「あの、いつものというのは?」
「ああ、すまない。彼女色々事情があってね、ダンジョンに潜ってはあんなふうに倒れるまで戦ってしまうんだ。今回も似たようなものだろう」
遠慮がちに挙手して聞くと、小人族の少年が答えてくれた。
「さて、待たせて済まなかったね。僕は、【ロキ・ファミリア】団長、フィン・ディムナ。そして、そこの二人が」
「幹部のガレス・ランドロックじゃ」
「改めて、副団長リヴェリア・リヨス・アールヴだ。そして、そこの赤髪が」
「【ロキ・ファミリア】の主神、天界のトリックスターロキっちゅうわけや。よろしくな!」
「ベル・クラネルです。ついさっきオラリオに来たばかりでこちらの事情をよく知らないので不適切な発言をするかもしれませんが、ご容赦ください」
自己紹介をされたので同じようにな乗り換えして一礼すると、ロキ様を含めた全員が驚いたような顔をしている。
「なにか?」
「いや、しっかりしてると思ってなぁ〜。見たところ、ベルたん十歳くらいやろ?」
「十二歳です、というかベルたんって……。」
「すまない、この馬鹿のことは無視してくれ」
「ちょ、
「誰が
疲れたように息を吐くリヴェリアさん。ああ、なるほどこの人達の構図をそんな感じなのね。
「まずは団員を助けてもらったことに礼を言わせて貰いたい。ありがとう」
「いえ、それよりさっきの子アイズちゃんと言いましたっけ、あの子僕を『お父さん』って呼んだんですけど」
フィンさんは僕の言葉を聞くとロキ様の方を向く、それに合わせてロキ様が一つ頷き返すと話し始めた。
「あの子、アイズ・ヴァレンシュタインは半年ほど前に両親を亡くしていてね……多分、君の容姿が彼女の父親とよく似ていたんだろう」
「そうだったんですか……あの子も……。」
「あの子"も"というのはどういう意味だ?」
「僕も実の両親はもういないんです、だから、数年前まで爺ちゃんに育ててもらったんですけど……。」
「なんや、何かあるんかいな?」
「えっと、あまり人に話すことじゃないというか……。」
「ええって、ええって、ウチ人やないし」
「おい、ロキッ!」
軽薄な自分の主神を叱りつけるように怒鳴るリヴェリアさん。確かにママっぽいと思ってしまった。
「実は僕、昔人身売買の組織に捕まったことがあって……その時助けてもらった人の息子としてその人の故郷でつい最近まで生きてきたんです」
「それはまた……災難だったのう……。」
「いえ、そのお陰で父さんたちとも出会えましたし、今ではそれに感謝しているんです」
「……そうか、勝手なことを言ってすまんかったな」
僕が真っ直ぐな目でガレスさんに言うと、彼は同情的な目を辞めて謝罪してくれた。
「アイズちゃんについてはこれ以上お礼はいりません。僕も同じくらいの歳の妹がいるので放っておけなかった、ただの自己満足みたいなものですので」
「ホンマにしっかりしとるなぁ〜。なぁなぁ、ベルたんウチのファミリアに入らへん?」
「ロキ」
「勧誘くらいいいやないか。そもそもリヴェリアもそれを考えてベルたんを招いたんやないんか、あの子が少しでもダンジョン以外に興味を持ってもらいたいから」
「それはそうだが」
「で、どや?」
ハッキリ言って願ってもいない申し出だ。見た限りロキ様は軽薄そうに見えてもかなりのキレ者のように思える。
地球の北欧神話に出てくる遊戯神ロキは邪悪な気質があると聞いたが
早速、その申し出を受けようと思ったが。
「ちょっと待ってくれ、ロキ」
「なんや、フィン。ええとこなのに」
それを遮ったのは団長、フィンさんだった。
「ベル・クラネル、君に一つ聞いてもいいかい?」
「はい、なんでしょうか?」
「
フィンさんの質問に僕だけでなく、ロキ様達も目をパチクリさせた。
「フィン、どいうことや?」
「いや、さっきから彼を前にしていると
「「「!!!?」」」
フィンさんの言葉にロキ様達は一斉に僕の方を向く。え、なに?親指が疼く?何かの隠語か?
「……マジなんか?」
「信じられんのう」
「冗談、ではなさそうだな……。」
僕のことをジロジロと見る【ロキ・ファミリア】の皆さん、え、ホントに何?なんなの?
「まあ、"百聞は一見にしかず"というし。実際に見せてもらおうか。少し付き合ってもらえるかい?」
「はい?」
僕は状況がよくわからないまま笑顔で尋ねるフィンさんに頷くしかなかった。