ベルが魔王の義息なのは間違っているだろうか?   作:クロウド、

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ベルVSフィン

 フィンさん達に連れられてこさせられたのは【ロキ・ファミリア】にあるおそらく訓練場と思わしき場所。的とか、訓練用の剣の入った籠みたいなものもあるし。

 

「丁度いい、今日は誰もいないみたいだ」

 

 フィンさんは槍を一本取り出して僕に向かってこういった。

 

「さぁ、それじゃあ始めようか?」

 

「いや、何を?」

 

 思わず、敬語を忘れてしまった僕は悪くはないと思う。ほら、リヴェリアさんも呆れてるし。

 

「すまないな、コイツは強い者を前にすると親指が疼くんだ。お前からそれを感じたというから、実力を試すために来てもらった」

 

 マジか。わざわざ闘気の隠し方覚えたのにこんなところで露呈するなんて。敵になったら色々不味そうだから、ホントにここのファミリアに入ったほうがいい気がしてきた。

 

 まあ、とりあえず無難な結果が残るように戦うしかないか……。

 

「ああ、そうそうこれは君の入団試験でもある、僕に勝てなければさっきの話はなしだ」

 

「はいぃ!!?」

 

 フィンさんの言葉に悲鳴に似た声が飛び出る。そんなあんまりな。

 

 リヴェリアさんとガレスさんにメディアヘルプサインを送るが、目を逸らされた。なんでだよッ!

 

 最後の希望を乗せてロキ様を見ると、こちら側にグッとサムズアップした。おおっ、助けてくれるのか?

 

「フィン、思う存分やったれ!そっちの方が面白そうや!」

 

 だから、なんでだよ!

 

 もう逃げ場ないじゃん。……やるしか、ないか。

 

 僕が覚悟を決めて顔を上げると、フィンさんは用意ができたと判断したらしく、

 

「武器はどうする? 剣や槍なら予備のものがあるけど?」

 

「いえ、自前のものがあるので大丈夫です」

 

 僕はそう言って右手の中指に嵌めてある指輪型のアーティファクト、"宝物庫"から僕専用の武器"黒傘"を召喚した。

 

「「「なっ!?」」」

 

 その光景に観戦していた三人が驚きの声を上げる。おお、凄いデジャブ。じいちゃんのときもこんな反応だったなぁ。目の前のフィンさんも声こそ上げていないが目を見開いて驚いている。

 

「……面白い手品だね、その指輪から取り出したように見えたけど?」

 

「さて、どうでしょうかね?」

 

 彼からの笑顔の質問をこちらも笑顔ではぐらかした。

 

「それにしても、傘が武器とは変わってるね」

 

「特性の傘です。下手な鈍ら以上に切れ味はあるし、振りぬけば骨くらい簡単に折れるので気をつけてください」

 

「それは本当に傘なのかい?」

 

 まあ、正確にはアーティファクトであって傘じゃない気がするけどちゃんと雨よけには使えるし傘の定義はなしてあると思う。

 

「まあ、いいか……。さて、胸を借りるつもりでいかせてもらおうか」

 

 フィンさんの発言に再び観戦席がざわつく、それはそうだろう"胸を借りる"という言葉は本来、相手が自分より強い場合使う言葉。

 

 団長ってことはおそらくフィンさんが【ロキ・ファミリア】では最強なのだろう、その彼が僕みたいな子供に胸を借りると言ったのだ驚かないほうがおかしい。

 

「先手はそちらからどうぞ」

 

「いいのかい?なら、お言葉に甘えさせてもらおうかっ!」

 

 言うが早いかフィンさんは身を屈めて足に力をため、地を蹴って僕に突っ込んで来た。横薙に振るわれる槍を黒傘で受け止める。そこから二撃、三撃と連撃を繰り出してくるが黒傘で全て払い落とす。

 

 蹴りなどを交え、不意打ちを狙ってくるが逆に発勁で弾き飛ばした。

 

「クッ!」

 

 フィンさんは槍を地面に突き立てて威力を相殺し、着地する。あの身のこなし槍だけではなさそうだ。

 

「やるね、ここまで遊ばれたのは久しぶりだよ」

 

「僕としては遊んでるつもりはあまりないんですが……この試験ってどうやれば終わりなんですか?」

 

「ンー、そうだね僕に『参った』と言わせられたらかな?」

 

 わかりやすい挑発だ、要するに自分に負けを認めさせる実力を主神と幹部達に見せたいわけだ。

 

「そうですか、なら……。」

 

 僕は隠していた魔力の一部を解放した。それと同時に空気が張り詰めるのを感じる。

 

 もう宝物庫まで見せたんだ。どうせバレるなら、見せてやる。

 

 一度ポンっと地面を蹴ったあと足に力を込め、【縮地】を使用して一気にフィンさんとの距離を詰めた。

 

「ッ!」

 

 彼の目には一瞬で僕が目の前に現れたように見えただろうが、僕はただ早く動いただけだ。

 

 そして、その状態から防御の遅れたフィンさんの槍を上空に弾き飛ばす、フィンさんは後ろに飛ぼうとしたが足に力を入れた瞬間足元が崩れ、浅い小さな穴ができ足を取られる。

 

「何っ!?」

 

 体制を立て直そうとしたスキに黒傘の鋒を首元に突きつけた。

 

「チェックメイト、ってやつですかね?」

 

「……ハハハ、『参った』ね。これは」

 

 唖然としながら笑みを崩さないフィンさん。取り敢えず、降参宣言は受けたので黒傘を宝物庫にしまう。

 

 ふと、観戦していたロキ様達の方を見てみると皆驚愕とか唖然と言う言葉がよく似合う顔をしていた。

 

 ……やっべ、やっちまった。

 

 いやいや、でもアーティファクト殆ど使わずに戦ってるんだしかなり加減したと思うんだ。やっぱり、向こうで肉体スペックを上げすぎたのが原因か?それとも、黒傘の身体強化が強すぎたのか?

 

 チクショウ、これじゃ父さん達が悪ふざけで考えた『バクウサギ二世』っていうあだ名もあながち否定できないじゃないか!

 

 そもそもバクウサギ二世ってなんだよ!?僕はシア母さんほどバグってないぞ!?あの人ドンナーの弾丸は普通にキャッチするし、父さんが改良したシュラーゲンでも避けられるようになってるし、天在使っても勘だけで目の前に現れるし、言ってて思ったけどやっぱあの人とんでもねぇ!

 

 そんなズレたことを考えていると背後から誰かに肩を掴まれた。恐る恐る振り返ってみると、さっきまで糸目だった目を見開いた赤髪のトリックスター様が……。

 

「そんじゃ、キリキリ吐いてもらおか?」

 

「…………はい」

 

 流石、神様。僕はその言葉に頷くしかありませんでした。


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