ベルが魔王の義息なのは間違っているだろうか? 作:クロウド、
「んじゃ、早速恩恵刻むとしよか」
「はい、お願いします」
入団を認めてもらえた僕は、
恩恵とは、言わばこの世界における成長の起爆剤だ。モンスターを倒すことで得る
「そう固くならんでええって。取り敢えず、上脱いで背中向けてや」
ロキ様に言われたとおりコートを脱いでその下のシャツも脱ぐ。
「こりゃすごいな……。」
「あはは……やっぱりそうですかね?」
僕の上半身を見ての第一声にロキ様が顔を引つらせながら声を漏らした。ロキ様が見ているのは僕の上半身全体に出来た無数の傷、中には胸を貫通したあとの傷まである。
「これって、例の【大迷宮】でか?」
「そうです。勿論、内側は【再生魔法】で修復してあるので生活に負担は全くありませんが、やっぱりこれは僕が【大迷宮】に挑戦した数少ない証明の一つですから簡単には消さないんです。
それに、自分が強さに溺れないように戒めも兼ねて」
「……そうか」
ロキ様は優しい手付きで背中に出来た傷跡を撫でる。
「こうして見ると、改めて思うわ。……頑張ったんやなぁ」
優しいロキ様の言葉にちょっと泣きそうになった。
この傷は僕が最後の大迷宮、【オルクス大迷宮】に挑戦した際油断して最下層のボス、ヒュドラによって胸を貫かれた際の傷跡だ。
あのときは【再生魔法】で内側だけ応急処置して表面はそのままだったので残しておいた。あのときのような失態を二度と起こさない為にこの傷は一生の恥として残しておくと決めた。
ロキ様の前の椅子に腰を下ろし背を向ける。
「そんじゃ、これから恩恵刻むけど後悔はせんか?後戻りはできんで?」
「僕は既に貴方に力を預けると誓った身後悔はしません。それに、後戻りできないことなんて僕にとっては今更ですよ」
そう、僕の力のように。
「そやな……野暮なこと聞いたわ。今度こそ、いくで」
そう言うとロキ様は再び僕の背中に触れた。彼女の指から流れる熱い感覚。神の血によるステイタスが刻まれていっている証拠だ。
【
「うわぁ……。」
「え、何かありましたか?」
「いや、予想はしとったけどこれは……。」
思わせぶりなことを言うとロキ様は近くにあった紙に僕の【ステイタス】の写しを走り書きしていく。
……。
………。
……………。
「……長くありません?」
「しゃあないやろ!ウチかてこんな疲れる【ステイタス】の写し始めてや!」
若干キレ気味にそう言われた。そんなにヤバいの僕の背中の文字?
「はあはあ、出来たで……。」
少し息が上がっているロキ様から【ステイタス】の写しを受け取る。
ベル・クラネル
Lv.1
力:I 0 耐久:I 0 器用:I 0 敏捷:I 0 魔力:I 0
《魔法》
【錬成(+鉱物系鑑定)(+精密錬成)(+鉱物系探査)(+鉱物分離)(+鉱物融合)(+複製錬成)(+圧縮錬成)(+高速錬成)(+自動錬成)(+イメージ補強力上昇)(+消費魔力減少)(+鉱物分解)】、【全属性適正(+雷属性効果上昇)(+雷属性耐性)】、【複合魔法】、【生成魔法】、【重力魔法】、【空間魔法】、【再生魔法】、【魂魄魔法】、【昇華魔法】、【変成魔法】
《スキル》
【魔力操作(+魔力放射)(+魔力圧縮)(+遠隔操作)(+身体強化)】、【気配感知(+特定感知)】、【魔力感知(+特定感知)】、【気配遮断(+幻踏)】、【高速魔力回復】、【剣術(+斬撃速度上昇)(+抜刀速度上昇)】、【縮地(+爆縮地)(+重縮地)(+震脚)】、【先読(+投影)】、【限界突破】、【言語理解】、【使徒化】、【英雄憧憬】
「うわあ……。」
紙にビッシリとかかれた自分の【ステイタス】にロキ様と全く同じ反応をしてしまった。
「トータス版の僕の【ステイタス】の丸写しじゃん……。」
「やっぱそうなん?普通魔法って多くても三つだけのはずなんや……。だけど、さっきの話からしてベルたんって、多分……。」
「有に百を超える魔法が使えるでしょうね」
「ああ!聞きたくなかった!」
ロキ様が両耳を抑えてベッドに転がってしまった。
「アレ、でも……。」
「……どうかしたん?」
「いや、見たことないスキルが増えてて」
「どれや?」
ロキ様がガバッと起き上がって僕の隣から【ステイタス】の写しを見る。ちょっと近い。
「この【英雄憧憬】っていうのなんですけど……。」
「どれどれ」
ロキ様が再び僕の【ステイタス】を調べる。
「なになに……【英雄憧憬】、『自身が英雄と思う人物を思って戦うとき成長値アップ』。間違いない!こっちで発現したレアスキルや!」
「マジですか!?」
いや、ありがたいけど……僕の体はこれ以上の進化を求めているっていうのか?
「いやあ、まさかここまでヤバイ【ステイタス】だったとは……。こら、他んとこにやらんで良かったわ。でも、不思議やなぁなんでこっちの世界の人間であるはずのベルたんがこっちの【ステイタス】よりトータスの【ステイタス】に引っ張られるんや?」
ロキ様の疑問に僕は写しから顔を上げて答えた。
「……これは、僕の推測なんですけど。僕は偶然トータスに迷い込んだんじゃなくてあの狂った神、エヒトに召喚されたんじゃないかって思ってます」
「そんなことしてソイツになんの意味があんねん?」
「多分、僕の体はトータスの【ステイタス】に適応できる素質があった。だから、新しい駒として戦わせるつもりだったけど、父さん達というもっと面白い駒を見つけたらから用済みになった……いかにもあの糞野郎が考えそうなことですよ」
「聞けば聞くほど、同じ神として胸糞が悪くなる奴やなぁ」
ベッドの上で胡坐をかきながら憤慨したように腕を組むロキ様。激しく同感なので僕も頷く。
「そういや、【英雄憧憬】にあるベルたんの憧れる英雄って誰や?さっきの話からして、やっぱ父親の『魔王』っちゅうやつか?」
「勿論、父さんや母さん達、僕を生んでくれた両親も僕の英雄ですが。同じくらい尊敬してる人達がいるんです」
ロキ様は顎に手を当てう〜ん、とうなると閃いたように僕に指差して答えた。
「ああ、あの時言ってた七人の英雄のことか?」
「はい、【大迷宮】を作った"解放者"の皆さんです」
"解放者"。エヒトの策略により世界を滅ぼそうとした反逆者の汚名を着せられ戦うこともできずに敗北をきすことになった者達。
だが、彼等が残した【神代魔法】によって父さんはエヒトを打ち破ることができ、地球にも帰還することができた。勿論、僕もだ。
「【生成魔法】のオスカー・オルクス。
【空間魔法】のナイズ・グリューエン。
【再生魔法】のメイル・メルジーネ。
【魂魄魔法】のラウス・バーン。
【昇華魔法】のリュースティス・ハルツィナ。
【変成魔法】のヴァンドル・シュネー。
そして、そのリーダー。ゴーレムに魂を宿してまで戦いの結末を見届けようとした【重力魔法】のミレディ・ライセン。
全員が僕にとって憧れで、英雄なんです」
だからこそ、僕は彼らの試練を真っ向から受けると決めた。父さんのアーティファクトがあればもっと楽に攻略できただろうが僕はそれをしなかった。
使徒の力を得たのも【羅針盤】を動かすのに魔力が足りなかったのが一番の理由だったし。
「宝物庫や黒傘も元々、オスカーさん達が作ったものですし。この眼鏡もオスカーさんに憧れて作ったんです」
「え?その眼鏡アーティファクトだったん?」
「ああ、はい。戦闘中には光って目くらましになりますし、暗闇でもよく見えるし、それに、他のアーティファクトと連動し遠くの映像も見ることが出来る代物です」
「それだけで、一財産やな……。ん?それってつまり使いようによってはどこでも覗けるってことか?」
「使いませんからね、そんなことに!オスカーさんへの冒涜ですよっ!」
ロキ様の心外な言い方に僕は眼鏡を庇うようにロキ様から一歩距離をとった。
「はぁ〜ん。まあ、ベルたんも男の子やしとやかくはいわんわ。でも偶にウチも誘ってな?」
「だからしないって言ってんだろうが!」
ロキ様のわかってる、わかってるみたいな態度に流石にキレ気味に言うが、ロキ様はどこ吹く風だ。
「ああ、そうそう。ベルたん【変成魔法】って何処まで肉体に干渉できるん?出来たら、その……ウチの胸を大きくしてですね……。」
「アンタ人の英雄をどんだけ冒涜する気だ!?」
「お願いや〜!もう宴の度に無乳神って言われるのは懲り懲りなんや〜!そもそもジブン、ウチに力預けるって言ってくれたやん!」
「意味が違うわっ!自分の都合のいいように解釈してんじゃねぇ!」
やらないと言っているのに人の足にしがみつくロキ様をなんとか振りほどこうとするが全く離れない。なんだ、このパワーは?地上じゃ神の力は使えないんじゃなかったのか!?
それから、戻るのが遅い僕達の様子を見に来たリヴェリアさんのゲンコツが落ちるまで僕達の攻防は続いた。