ベルが魔王の義息なのは間違っているだろうか?   作:クロウド、

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ダンジョン探索

「さあ、これからダンジョンに潜るが準備はいいか?」

 

「はいっ!」

 

「…………。」

 

 無事に恩恵を与えられた僕はフィンさん達幹部陣の監修のもとダンジョンに潜ることを許された。下手にアーティファクトを使って戦われるのを、危惧されたのだろう。

 

 こちらの世界では初のダンジョン探索になる。

 

 昨日の夜、ほぼ徹夜でアーティファクトの点検を行った。まあ、朝迎えに来たリヴェリアさんに見つかってゲンコツ喰らったけど……なんであの人使徒並の体得た僕の防御突き破ってあれほどの衝撃を与えられんだよ。

 

 んで、まあ予想はついてたけどその探索にアイズちゃんがついてきた。

 

 なんというか、こうしてみると刃物みたいな娘だな。まるで斬るものを自ら探す飢えた妖刀……ってのがしっくりくる。

 

『ベルたんにはアイズたんとパーティを組んでもらう、ええか?これは決定事項や』

 

 いくら僕の容姿が彼女の親に似ているとはいえなにかあるのだろうということはすぐにわかった。

 

 だが、込み入った事情に思えたので今は深く聞こうとしなかった。

 

 取り敢えず仲良くなることから始めようと挨拶を試みたが、

 

『僕は、ベル。よろしくね』

 

『…………(プイッ)。』

 

 そっぽを向かれてしまった。あのときの僕の心の傷は結構深い。なにせ、その場で人の目も気にせず四つん這いになったほどだ。

 

 今も視線を合わせようとすると逃げられるし……。

 

 僕はティオ母さんみたいに幼女に冷たくあしらわれても興奮しないっていうのに……。

 

「先は遠そうだな」

 

 リヴェリアさんが耳元で囁く。

 

「僕、彼女に嫌われるようなことしましたかね?」

 

「さあ、なにせ昨日初対面の相手だからな」

 

 参ったなぁという気持ちで頭をかく。

 

「さあ、出発するぞ……!」

 

 先を行くリヴェリアさんの後を追い、僕達はダンジョンに潜った。

 

 ……の、だが。

 

「僕がやることがない……。」

 

 アイズちゃんが現れるモンスター片っ端からたたっ切ってるから僕のやることがない。お陰で既に七階層まで潜るは目になった。

 

「『戦車の正位置』、但しブレーキがぶっ壊れてるな」

 

「なんだ、それは?」

 

「見てのとおり、タロットカードですよ。勿論、アーティファクトなのでカードによって役割が違いますが」

 

 シア母さんみたいに天職による占いはできないが、何故か僕の占いはよく当たる。尋ねできたリヴェリアさんにそう答えるが、答え終わる前に視線が前に向いた。

 

「ベル、そろそろ準備をしろ」

 

「ああ……来ましたね」

 

 僕の【気配感知】に反応が出た。結構な数だな。

 

 現れたのは群れをなして現れた巨大な赤い蟻のようなモンスター。

 

「アレは確か……キラーアント?」

 

「知っているのか?」

 

「じいちゃんが残してあったファミリアの資料を記憶してるだけですよ」

 

 確か甲殻が硬くて、ピンチになると仲間を呼ぶ厄介なモンスターだった気が……。

 

「アイズちゃん、ここはリヴェリアさんの魔法で一気に……。」

 

「ッ!」

 

「って聞くわけないよね……。」

 

 さっきと同じように無策に突っ込んでいく少女。流石にあの数を捌ききれるわけがない、僕は腰のホルスターに収めてあったそれを抜く。

 

 そして、ドパンッという破裂音とともに胸を貫かれたキラーアントが消滅する。

 

「向こう見ずにも程ってものがあるだろ」

 

 僕の右手に握られた無骨な形のリボルバー式拳銃の銃口から白煙が上がる。

 

「ベル、それは……。」

 

「父さんの武器を僕がトレースした代物です。少なくとも矢より早く、ノーモーションで放てて威力があります」

 

 父さんが初めて作ったアーティファクト、電撃を纏わせることで電磁加速砲の役目を果たすその銃の名はドンナー。

 

「あの子が捌ききれない分は僕がやります」

 

「……任せたぞ」

 

 隣に立つリヴェリアさんに僕は頷き返す。あの女の子が僕らの静止を聞くような子じゃない。

 

 リヴェリアさんは、高火力の魔法を使う魔道士だ。あのこのように前線で戦う彼女がタイミングを合わせなければ魔法を使うことができない。いや、使っても巻き込まれるだけだ。

 

 なら、直線以外で確実に狙えるこれが一番彼女のサポートに向いている。

 

 そこから僕達はなんとかあの子を止めようとしたが、静止を全く聞かず突っ込むだけの彼女に必死についていった。

 

「どうします?もう十階層ですよ」

 

 僕は狭い通路の中で空中から攻撃を仕掛けているバッドバットを撃ち落としながら、リヴェリアさんに尋ねる。

 

「ああ、そろそろ戻るべきだろう。アイズ、今日はここまでだ」

 

「……まだ、いける」

 

 インプを切り裂いて被った血塗れの姿で肩で息をして、しかし、戦意はかけらも失っていない目で僕らに言うアイズちゃん。

 

「どうみても、キャパシティオーバーだ。今やめなきゃ明日に響くだけだよ?」

 

「……関係っ、ない!」

 

 ダメだ、こりゃ……。

 

 仕方ない、気が向かないけど闇属性の魔法で意識を刈り取るしか……。

 

『ガアァァォァォォァァァ!!!』

 

 その時、モンスターの叫び声がダンジョンに響いた。

 

 しまった、この娘に気を取られて【気配感知】を怠った。

 

 先を見るとその声の主が暗闇から現れてくる。

 

 現れたのは豚の顔と人の体を持つ巨体のモンスター。オーク。確か、十階層では強い部類に入る筈だが……。

 

 僕がドンナーを構え直すとそれより先にアイズちゃんがオークに向かって突っ込んでいった。

 

「なっ!」

 

「戻れ、アイズッ!」

 

 今のあの子にアレと戦う力が残っているとは思えない。

 

「チッ!射線に入ってて狙えない……!」

 

 この狭い通路であの巨体に真っ直ぐ向かっているんだ。狙うのは簡単だが、あのチョコマカ動いているアイズちゃんを巻き込みかねない。

 

 ドンナーをホルスターに戻し宝物庫から黒傘を取り出す。が、その間にアイズちゃんは案の定オークの反撃をくらい首を捕まれ持ち上げられていた。

 

「世話が焼ける子だなっ!」

 

 僕は黒傘を展開し、オークに向ける。すると、傘が一瞬光ると凄まじい暴風がオークを吹き飛ばした。

 

 ーーーアーティファクト 黒傘六式 大嵐

 

「おいっ、これではアイズまで……!」

 

「リヴェリアさん、キャッチお願いします」

 

「なにっ?」

 

 彼女の視線の先にはいつの間にかダンジョンの地面から生えていた鎖がアイズちゃんに巻き付き吹き飛ぶのを止めていた。

 

 ーーーアーティファクト 錬鎖

 

 本来、触れていなければ使えない【錬成魔法】を感応石を通じてピンポイントで錬成ができたり、遠隔操作できたりする代物だ。

 

 僕が黒傘の持ち手に繋がった鎖を引っ張ると地面に埋まっていた鎖が浮かび上がり空中で静止したアイズちゃんを引っ張りリヴェリアさんのところで落ちるよう操作した。

 

 ポスっと言う音とともにリヴェリアさんの胸にとアイズちゃんが落ちてきた。どうやら、気絶してしまったらしい。

 

「いつの間に鎖を張っていた?」

 

「大嵐を使ったときには仕込んでありましたよ、あの暴風で僕の足元に注意を払える魔物なんていませんから」

 

「オークはどうした?」

 

「黒傘の大嵐は敵の錯乱用の魔法、死んではいないのでもうそろそろ……。」

 

『ガアァァォァァァァ……!』

 

 ダンジョンにオークの咆哮が響く。吹き飛ばされた怒りか、はたまた本能的にコケにされたことに気づいているのか。

 

 まあ、どっちでもいい。

 

「悪いが、遊んでやるつもりはねぇんだ」

 

 黒傘で地面を叩くと凄まじい勢いでヒビが入っていく。錬鎖を通して高速でこのあたりの地盤を弱くしていた。思ったより階層の厚みがあったので下の階層にまでは届かなかったがアレがスッポリ落ちる程度の深さは作れたはずだ。

 

「ダンジョンから生まれて、ダンジョンに飲まれて死ぬんだ……本望だろう?」

 

『ガァァァァァァ……!!!?』

 

 そのまま蟻地獄のような足場に吸い込まれ絶叫を上げるオークを見下ろして、

 

「【錬成】」

 

 再び地面を元の強度に戻し、蓋をした。

 

 先程の耳を裂くような咆哮が嘘のように静けさがあたりを支配する。

 

「……リヴェリアさん、今日はもう帰りましょう。アイズちゃんが気絶してしまったら、これ以上の探索は意味がない」

 

 その静けさを破ってリヴェリアさんに話しかけると彼女は唖然としていた顔から何がおかしいのか口元を抑えてクスッと笑った。

 

「なんですか、急に……。」

 

「いや、お前は思っていたより激情家だったのだなと驚いていただけだ」

 

「激情家?」

 

 失礼な、僕はかなり理性的で通ってるはずだ。父さん達に比べたら……。

 

「気づいてないのか?お前、戦闘中口調が変わっていたぞ?」

 

「口調、が……?」

 

 リヴェリアさんの言葉に僕は口元を抑える。

 

 あまり実感はない、戦闘中は手先の作業にばかり集中力が行っていて言葉遣いなんてものもほとんど気にしてないというのが本音だ。イチイチ何を言ったかなんて覚えてない。

 

「まあ、いい。帰るぞ」

 

 リヴェリアさんの言葉にモヤモヤしたものを感じながら僕はその後ろに付いていった。

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