インフィニット・ストラトス<SCARLET BRAVE> 作:蒼天布武
ほぼオリジナルなので少し説明が長いと思います。
「ケイ、忘れてはなりません・・・」
これは母さんの声・・・これは夢か?
「我ら東郷の・・・いえ、薩摩隼人の意思を・・・」
薩摩の意思・・・?
「ケ・・イ・・・」
今度は別の声
「ケイ!」
ふと一瞬、身体が宙に浮いた感覚がし、そのまま地面に落ちた。
「痛っ!?」
「さっさと起きてよ!ケイ!」
どうやら夢から醒めたらしい。さっきの痛みはベッドから落ちた痛みのようだ。そしてそこには、黄色の髪をした、この家の娘であるノエルが立っていた。
「もっと優しい起こし方はなかったのか?」
「残念ながらケイにはこれが最適な起こし方だと思うわ。だっていつまでたっても起きないんだから。」
そう言ってノエルはデジタル時計を顔の近くまで持ってきて指した。
「八時を過ぎてるわよ。七時に起きるんじゃなかったっけ?」
ケイは時計を見た途端すぐさま起きて行動をした。
寝ぼけた頭で床から立ち上がり挨拶を交わし、テーブルへ向かう。台所のテーブルには料理が並び、そこには先に食事を済ませたノエルの父・グレンの姿があった。
「おはよう、ケイ。今日は少し面倒な仕事があるから俺は先に行っている。今更いうのは何だが、あまり遅れるなよ。」
そういってグレンは食事と仕度を終え先に外へ出て行っていた。
「私たちも早くしよ。」
ケイとシエルも食事を始め身支度をする。グレンの仕事は元フランス軍の基地にある破棄された鉄くずや兵器を分解、修理し実用化させるというもので、ケイとシエルもそれを手伝っている。スラム街ともあって仕事も少なく収入は安定しない。そこでスラムの住人は軍基地にある廃材を再利用し、生計を建てることにした。軍基地の廃材は軍が閉鎖した時に廃棄されたものや、一般家庭から出る壊れた家電製品などもある、いわばそこは都市鉱山とでもいえる。
ケイは仕度を終え、外にある大型のバイクにエンジンをかけノエルを待つ。
「それにしても眠い・・・」
過去の夢もそうだが、なにより寝不足の原因が他にあった。昨日の夜中、部屋の窓から見える暗い空に点々と高速で光った複数の存在。双眼鏡で詳しくみようとしてみたが、光の存在は遠く、そしてなによりも早かった。言うなれば、夏の夜に見たホタルのようだった。結局見ているうちにすべての光は消え何事もなかったかのようにいつもの真っ暗な空に戻っていた。
「ゴメン!遅くなっちゃった!」
慌てたノエルは大きなバスケットをバイクの荷台に載せ、ケイの乗っているバイクの後ろに座り、目的地へと発進した。
「ノエル。昨日の夜、窓から小さな光見なかったか?」
やはり何か引っかかったままで落ち着かないケイはノエルに訪ねる。
「うーん、そんなの見なかったかも。そもそも何時まで起きてたの?」
逆に聞き返されたケイは、まるで墓穴を掘ったかのような反応をして言った。
「一時過ぎ・・・」
ケイが到着する前に、基地には数十人もの人が先に作業を進めていた。
「おーい、ケイーっ!ノエルーっ!」
バイクのエンジンを切り降りようとした時、遠くから薄汚れた作業着を着た女性が走って来た。彼女の名前はパスカル。ノエルの幼なじみで、共にこの基地で仕事をする仲間でもある。機械いじりが趣味みたいなもので、汚れ仕事に抵抗がない。そのため並の男性よりも仕事の戦力になっている。
「今日はいつもより遅かったじゃん。またケイが寝坊?」
「うん。ケイったら布団剥がさないと起きないんだもん。あと訳もわからず夜中まで起きてるんだから。」
「仕方ないだろ、昨日は夜空の中に無数の光が__。」
「へぇ以外ね、ケイが天体観測なんて。」
ノエルが皮肉まじりに発言し、ケイは一瞬反論しようとしたが、パスカルに押されて何事もなかったかの様に三人はその場を後にした。
基地の仕事は会社のような団体組織はない。だが同じスラム出身が大半で、顔見知りも多いため少数の気のあった者と作業をするといったことが多い。ケイ、ノエル、パスカルの三人もグレンに雇われて同じ作業を行っている。
「おう、やっと来たか。いきなりで悪いがそこのデカイの直すぞ。」
そうグレンが言った先には戦車と思わしき鉄の塊があった。戦車といってもキャタピラなどではなく四本の脚がついている、いわば多脚戦車といったものだ。グレンが今朝言っていた“面倒な仕事”とはこのことだったのか。
グレンの仕事は基地の中の兵器を修復・修理をおこない実用化させるものだ。今朝ケイとノエルが乗って来たバイクも基地の廃材からグレンが造ったものだ。スラムにいた以前は修理屋を経営していたらしいが訳があって廃業、母も他界し、職も見つからないことからスラムへノエルと二人で移住して来た。
「ここの軍基地やこの戦車だってISが登場するまでは立派に活動していたのにねぇ。」とノエルが口ずさんだ。
ISの登場は世界規模で衝撃を与えた。特に衝撃が大きかったのが軍事産業で、陸軍と空軍の需要は減少し、ここの軍基地を含め世界各地の軍は撤退を余儀なくされた。
「それだけならいいさ。日本にいた頃なんて男が女に歯向かうなんてことがあれば即極刑ものさ。男に厳しい世界になったものだ。」
まるで過去になにかあったかの様な口ぶりでケイがつぶやいた。
「なによ。その割には、私が起こしてもぐっすりな癖に」
愚痴を言うかの様にノエルはケイに言い放つと、二人の間で軽い口喧嘩がおこっていた。
「まぁまぁお二人さん。早くこれ済ませちゃおうよ。あまりに遅いと今日は徹夜で作業になっちゃうかもよ。」
パスカルにいわれ渋々二人は口を閉じ、作業をはじめた。
パスカルは機械をいじるのが得意で、ケイも見よう見まねではあるが修正場所を探しては作業に取り組んでいた。だがノエルは機械に疎く直すはずが爆発させたこともある程鈍感だ。そのためノエルはみんなの作業を補佐するくらいしかできない。
「みんなー!お昼にしよー!」
ノエルのその一言でみんなは作業を一時中断し、ノエルの周りに集まってくる。ここでの作業が苦手なノエルではあるが、料理といった家庭的なスキルは誰よりも得意であるため、みんなの食事はノエルが一人で作っている。
今日の昼食は、おにぎりだ。昼は携帯しやすいパンやサンドイッチが多いが、ケイがフランスに慣れなかった頃におにぎりを作ってから昼食のレパートリーに加わっている。
「そういえば今朝言ってた光だけど、たぶんISじゃない?近くにデュノア社があるし、新型の実験でもしてるとか。」
食事中にパスカルがケイに話しかける。
「そうかぁ・・・じゃあなんでこんなところでやってるんだよ?模擬戦くらいデュノア社のただっ広い敷地でなればいいだろ。夜中でわからなかったけど多分場所はここのあたりだったぞ。」
ケイとパスカルの会話の間にノエルが首を突っ込んできた。
「たまにデュノア社もここに廃材を無断放置してるから、てっきり自分たちの領土とでも思い込んでるんじゃないの?どこまで私たちの居場所に首を突っ込めば気が済むのかしら。」
えらくノエルの機嫌が悪いが、これはISやデュノア社が関わると機嫌を損なう。
「もうこの話はおしまい。そういえばさパスカル__」
そういってノエルは話題を変えて誤魔化した。
昼食を終えケイは外に出て、基地の端にある一本の木の近くに座ってくつろいでいた。ケイにはいつもの習慣みたいなもので、ここがお昼を過ごす最高の場所だった。
「やっぱりいた。」
くつろいでいるケイの頭上にノエルが出てきて隣に座る。これもノエルとしては習慣になっている。
「どうしたの、ケイ?そんなに今朝のこと気にしてるの?」とノエルがケイに話す。
「別に、っていうかいつものことだからもう慣れた。」
「ちょっと!毎回起こしてあげてるのに、こっちの身にもなってよね。」
あきれながらもノエルはケイの隣に座った。ノエルはケイと一緒にいる空間が好きだった。なによりもノエルはケイに好意を抱いているからである。あまりケイからは話してこないし、無愛想だが、いざという時に頼りになるところもある。
ケイが居候して来る前、ノエルとグレンの間には見えない壁ができていた。六年前、母が他界してからはグレンとの二人の生活だったが、修理屋の仕事も手につかず店を閉めた。毎日の様に酒に溺れる日々で、ノエルとの会話がなく、いつの日か二人の間には大きな壁ができていた。
スラムで住むことになった時も必死にノエルは反対したが強引につれてこられた様なもので、新しい家でも部屋から出ない日も少なくはなかった。
それから二年後、親と離ればなれになったと言い、居候してきた日本人の少年が来たが、それがケイとの出会いだった。グレンはケイをみて、親の身元が見つかるまで一緒に面倒をみるといい居候を許可した。
昔からケイは口数が少なく無愛想で今と何も変わっていない。だが、シエルとグレンとの間に何かしらの関係を作ろうとしていたことだけはわかった。
その時からケイはほぼ家族と変わらない関係になっていたのかも知れない。
「休憩も終わったし作業再開としますか。」
そう言ってケイはその場を離れ、作業に戻っていった。
「ここの基盤、カビ生えてて使えないんだけど、代用できるものないかな?」
パスカルが近くにいたケイに訪ねると、ケイは探してくると言って外へ出て行った。パスカルのほうが作業は早いためケイは効率を重視し自分の作業を中断して探しに行く。
「今更だけど基盤って探すもんなのか?新しく買えばいいんじゃ。」
ぶつぶつといいながらケイは基地内の施設を所々見て回った。陸空軍基地だけあって施設面積は相当の広さはあるため、たまに迷子になったりすることもある。
「まぁ基盤くらい適当な場所探せばあるか。」
そういって近くにあった工場の扉を開けて探そうと思ったが、どうやら扉にカギがかかって開かない。別の場所を探そうと考えたが、工場の窓を見ると何か大きな物体が降ってきたかの様な壮大な穴があいているのに気づいて、興味本位でその窓から侵入してみた。
工場内を見渡すと、周りには年月のたった鉄の塊や廃材が
「なんだよこれ・・・」
それを見てケイは唖然とした。しかもその鎧の中心には見知らぬ少女の姿が。それはまるで、火の鳥が傷を負っている雛鳥を介抱しているかのような光景にも見えた。
この少女との出会いがケイの運命を変えて行く__
次回は多分戦闘回です。
ちなみに舞台がフランスなのは、デュノア社の本社がフランスらしいからです。海外を舞台にしようと考えて一番話に繋げやすそうだったからって理由もあります。※wikipedia参照