鬼滅の大剣豪   作:もりも

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回復

俺は・・・俺はあいつの分まで強くなってやる!世界一強い大剣豪になって天国まで俺の名前が届けるんだ!!

 

・・・・・。

 

「こ、此処は?」

 

見覚えのはない天井を見渡す。如何せん首を回す力もないので見える範囲が限られているが、知らない場所だということだけはハッキリ分かった。

懐かしい夢を見たとゾロは意識を覚醒しながら、なぜ自分が今寝床に収まっているか思い出すも、抜け出た記憶を思い返せる訳も無い。しかし僅かでも体を動かすと迸る激痛が記憶が途切れた以前の事を思い出させた。

 

「・・・・・・・・。」

 

何で生き永らえているのか。あの状況で生きていることはあの鬼に生かされたという証明だ。

沸々と湧き出た感情を抑え込むことができず「クソォ!!」と怒鳴り声をあげた。

 

「ヒャアア!!?」

 

ゾロの声に驚いたような叫声が彼の死角から聞こえてきた。

 

「じ、じいちゃん!!目!!目ぇ覚ましたよぉーー!!」

 

甲高い声を出す少年らしき男が駆け足で外に走り出していった。

 

 

 

 

 

「・・・ふむ。まだ断定はできんが、重い後遺症もなく良かったわい。初め見たときは助からんと思ったのじゃがな。」

 

ゾロの治療を施してくれたらしい老人が体をグルグルに包んだ包帯を新しく取り替えくれている。その治療は本職ではないにしろ相当慣れているかのように上手い具合に施していた。

 

「悪ぃな爺さん。傷まで縫ってくれてよ。」

 

「構わん構わん。お主ずっと気を失ってたもんだから麻酔も使わず楽に縫合できたからの。しかし本当頑丈じゃのお主。」

 

「まぁな。」

 

「それと善逸の奴にも礼を言っとくれ。アイツがまだ暗い山道の中お主を見つけてくれたんじゃからな。」

 

「・・あの喧しいガキがか?」

 

「死ぬぅううぅうう!!」

 

ゾロはこの小屋の玄関先に見える泣きながら剣を振っている善逸と呼ばれたタンポポ頭の少年を見る。

 

「ああ。善逸は素晴らしく耳が良い。お主の息絶え絶えの呼吸を山の中で聞いてウチまで拾って来たのじゃ!」

 

「へえ・・・。」

 

そりゃ便利そうだと、泣き言ばかりの善逸を見つめ意外と筋はしっかりしてるなと少し感心する。

 

「しかしまぁ、木刀振ってるってことは此処は剣道でも教えてるのか?こんな山奥でよ?」

 

「剣道ではない。教えてるのは真剣での戦い方じゃ。」

 

「へっ・・。廃刀令出てから何年経ってんだよ。」

 

「いや、真剣持ち歩いてる奴に言われる筋合いないじゃろソレは。・・・・・。・・それでじゃ。お主に聞かないといけないことがいくつかある。」

 

「・・何だ?」

 

老人・・桑島慈悟郎は一転変わって神妙な面持ちでゾロに面を合わせた。

 

「お主のその傷誰がつけた?その切傷でわかるわい。途轍もない技量を持った剣士。それこそ廃刀令が出て数十年、この銃器が量産された今の世でそれほどまでに鮮やかに人体を斬れる者などほんの僅かなものじゃ。覚えておるのであれば教えて欲しい。」

 

「・・・言ってもいいが、信じるかどうかわかんねぇぞ。」

 

ゾロは忘れることのない恐らく昨日の戦いを箇条書きのように慈悟郎に話した。

そいつは鬼であったこと。

そして剣士であったこと。

次元の違う技量であったこと。

説明下手なゾロだったが、その荒唐無稽に近い話を食い入るように慈悟郎は聞いている。そして聴けば聴くほどにこの出来事がどれほど衝撃的なのか理解していく。

慈悟郎は腕を組み冷や汗を垂らした。

 

「信じるのか?この話。」

 

あまりにすんなり聴くものだからゾロも少し驚くように聞き返す。

 

「・・・・信じるも何も、鬼の存在は既に周知の事実。ワシらはそれをよぉく知っておる。何しろワシや善逸・・はまだじゃが、鬼を滅する組織・・鬼殺隊の剣士じゃからな。」

 

「鬼殺隊?」

 

「政府非公認の組織じゃ。平安の時代から世に蔓延る鬼を滅することを目的としとる。鬼は特殊な鋼で生成した日輪刀でしか殺すことはできん。これは鬼殺隊の剣士のみが持つことを許されておる。」

 

「・・あん時の雑魚鬼が言ってたのはそのことか。」

 

「ワシが驚いているのはただの剣士であるお主が鬼を圧倒する力量を持っておる事実と、剣を携えた鬼の存在じゃ!」

 

慈悟郎が信じがたいのはその2点であった。

鬼の滅殺は厳しい訓練を経た鬼殺隊の剣士がようやく倒せる行為だ。もちろん鬼の強さもピンキリで剣士もまた然りではあるが、まず日輪刀も持たず勝てる相手ではない。

そして名前は彼らには不明だが黒死牟の存在。

実力の高い鬼であれば特殊能力である血鬼術がある為というのに生前に習得した剣術を主に武器にするという特異性。加えて鬼を圧倒するゾロでさえ感嘆するほどの剣の技量だ。妙に引っかかるものがある鬼だ。慈悟郎はその鬼何か他に特徴がなかったかゾロに尋ねる。

 

「特徴・・・。そうだな顔に妙な痣があったな。・・それと眼だ。六つもあったのもそうだが、瞳の中に文字みたいなのがあったな。上・・とか書いてたな。」

 

「ま、まさか・・・!!?」

 

ゾロが特徴を述べると慈悟郎血の気が引いたように血相を変え押し黙る。

 

「ちょっとちょっと!ジィちゃ〜ん!いつまで素振りやらせんのさぁ!もう一刻以上だよ!?豆も潰れて痛いのよ!?痛すぎてこれ以上やったって成果は伸びないよ!やめさせてよぉ!!!」

 

この空気を破るかのように善逸が泣きついてきた。キャンキャン五月蝿い声に慈悟郎は射殺すような眼を善逸に向けた。

 

「善逸・・!」

 

「や、やだ怖い!?そんな眼弟子に向けないでよ!?やるから!?もう半刻頑張るから!!怖いからやめてよぉ〜〜!!」

 

本気でべそをかく善逸は喚き声を吐き散らして踵を返していった。

 

(ウルセェ・・。)

 

「十二鬼月じゃ・・。それも上弦の!信じられん。この100年・・・誰も討伐はおろか、目撃すらなかった上弦の鬼と対面し、生き残るなどと!!?」

 

「おお!?いきなりどうしたんだよ爺さん?」

 

急に跳び上がった慈悟郎は興奮した様子で小屋を飛び出した。

 

(お館様に知らせねば!!これは何よりも貴重な情報じゃ!!上弦の鬼の情報!そしてそれに対抗しうる可能性を秘めた剣士の出現を!!)

 

 

 

 

 

 

 

慈悟郎たちに救われてから一週間がすぎた。

ゾロはすでに体力回復に訓練をするほどに動けるようになっていた。

 

「・・・早すぎない?」

「・・早過ぎるじゃろ。」

 

善逸と慈悟郎がドン引きするほどに驚異的な回復力を見せるゾロは寝床で伏せている間2人から鬼殺隊の話と呼吸術について聞いていた。常人と一線を画す力を手に入れられるその技法は間違いなくあの剣士の鬼も習得していたものであり、己もそれを習得することは必須だと考えている。

とにかく今はこの一週間でなまった体を戻す作業だ。普段から厳しい訓練をしている善逸でさえ真っ青な密度で体を動かし続けた。

 

「ねぇゾロさん。やりすぎだって・・。怪我明けなんだからもう少し大人しくしなよ。というかして下さい。あんまり隣でソレされると俺が大した訓練してないみたいじゃない?じいちゃん増やしてきそうじゃない!?」

 

相対的にサボってるよう見えるので善逸はもう少しゾロに緩めるように嘆願する。

 

「知るか。てかお前、そんな成りして中々良い身体してんだな。話に聞いた呼吸の型見せてくれよ。手合わせといこうぜ!」

 

「は?何いってんの?嫌に決まってんじゃん。あんたみたいなバケモンと一戦なんかしたら死んでしまうよ。死ぬ自信があるね。」

 

「・・・・お前剣士になるために修行してるんじゃないのかよ。」

 

「だからしてんじゃん?でも結びつかないんだよ努力がさ!!俺なんて雷の呼吸一の型しかできないし、来年には選抜試験受けさせられるんだぜ!?死ぬ死ぬ死ぬよ!!俺は死にたくないから死なないように訓練してんの!俺だって女の子と遊んで結婚して一人前の暮らしして生きていきたいだよ!でもそれが一番幸せじゃない!?」

 

「・・・。」

 

「何その目!?やめてその目!!?塵を見るような顔しないでよぅ!!」

 

冷ややかな目で見下ろすゾロに縋り付くように善逸は泣きベソをかく。

 

「つまりお前は何がしたいんだよ?纏めろ話を。」

 

「ええ・・・だからさ。正直自分に才能なんてないんだから。普通の男と同じように女の子と遊びたいって話。」

 

「・・はぁ・・・・なら修行なんて辞めて、街に帰ればいいじゃねぇか。」

 

「ダメだよ・・。逃げようと思ったらすぐじいちゃんに捕まるし、そんでそうしたらじいちゃん怒ってるけど悲しそうな音出すしさ。・・・そもそも借金じいちゃんが肩代わりしてくれたからあんまり逆らえないし。」

 

ツンツンと人差し指を合わせてポツポツと話す。

 

「お、お前借金なんてしてんのか。その年で・・・。」

 

「うん。美人局に騙された時じいちゃんが・・ってやめてくれよぉお!その顔ぉう!!!」

 

 

なんだかんだゾロの特訓に付き合った善逸。流石未熟ながらも呼吸使いなのか弱気を吐きながらもついていけていたのであった。

素振りをしているゾロの傍、善逸はゴロンと寝転がり小休憩中・・・

 

(こんなガキがここまで耐えれるとは・・呼吸を使えるか使えないかの差はどうやら相当らしいな。・・・・つまり俺にもそれだけの伸びしろがあるってわけだ!)

 

「はぁはぁはぁはぁ・・・・ゾ、ゾロさんはさ・・。なんでそんなに頑張れるの?大剣豪になる事がそんなに叶えたい夢なの?」

 

「まぁな・・。一応約束したからな。」

 

「ヘェ〜!誰と誰と!?女の子!?幼馴染とか!?」

 

「べ、別にそんなんじゃねーよ!!」

 

「まさかの図星かい!!チクショー!嫉妬しか湧いてこねぇ!!!」

 

「バカ!んなもん興味ねえよ!!」

 

「何いってんの!若いもんがさ!女の子の話しないでどうすんだよっ!?・・・・・というか、ゾロさんて何歳?」

 

嫉妬で頭を抱えていた善逸が途端に冷めた感じで質問しだした。

 

「あ?18だよ。」

 

「え?・・・・・・ま、まさかゾロさん。・・・・その年で・・童貞なの?や、やばくない!?」

 

「斬り殺すぞテメェ!!!!」

 

 

 

 

 

さらに三週間後・・・・

 

「お館様にあってもらうぅ?」

 

傷も完全に塞がり本格的な修行を再開し始めた日の晩飯時に慈悟郎はゾロに産屋敷へ向かうよう伝えた。

産屋敷とは鬼殺隊の大元産屋敷一族の邸宅である。

 

「そりゃ前に話した例の当主のことか?」

 

「そうじゃ。お主が戦った上弦の鬼の情報とお主に直接会ってみたいとのことだ。」

 

「めんどくせえな。鬼のことは爺さんに話したこと以上はなんもねぇよ。」

 

「とにかく明日迎えが来る。行って来い。それに柱の紹介もしてくれるやもしれんぞ?この数週間でわかったがお主に雷の呼吸は向かん。他の呼吸の持ち主との交流も深めておくのもええじゃろう。」

 

「へぇ。柱か。」

 

産屋敷では度々全柱が集結する柱合会議が開かれる。それは重要な情報が入手した時に開かれる事が多いが、今回はゾロの上弦の情報がそうだろう。

あまり乗り気ではなかったゾロも鬼殺隊最高戦力である柱と会えるとのことでこの要請に承諾。そもそも正式な鬼殺隊でない者が産屋敷に足を踏み入れるなど前代未聞だ。それだけその情報が重大だということか、それとも他に何か訳があるのだろうか・・・・

 

(・・・惜しいのぉ。雷の呼吸に合っていれば久方の鳴柱就任も確実だったであろうに。まぁそこは善逸に任せるしかないの。ここのところ此奴に付き合って今までにないほど頑張っておったし。)

 

結局ゾロの手合わせに終日付き合わされ続けた善逸は部屋の隅で死にかけていた。

 

 

 

「霜月殿ですね。私鬼殺隊部隊『隠』でございます。産屋敷へお送りいたしますので目隠しをなさって、私の背に負ぶさってもらいます。・・・・って重っ!!??」

 

慈悟郎、善逸と出会い命からがら生き延びたゾロ。柱との会合で最強への道は開けるのであろうか。運命の歯車が回り始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ゾロの頭おかしい修行のおかげで以前より数段修行がキツくなった模様。善逸、ゾロに恨みを覚える。
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