ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

105 / 788
久しぶりのダイ・アナザー・デイの前日談です。


第四百三十話「ダイ・アナザー・デイ前の状況10」

――大決戦、ダイ・アナザー・デイで存在感を示したスーパーロボット。その威力は怪異が有象無象の如し。その力を生身で行使できる者が部内にいた事を知った山下奉文大将は妙案を1944年に思いついた。それが『七勇士の第一線への返り咲き』であった。ロンメルもそれを歓迎し、翌年の501の配置転換の際に赴任させたのだが……――

 

 

 

 

――1945年――

 

「中佐、これはどういうことか?」

 

「か、閣下……これはその……」

 

「いいわけはよろしい!!皇帝陛下も事態を重く見られている。貴官は錯乱しているようだ。誰か、中佐を医務室に運べ」

 

「待ってください。これには理由が……」

 

ロンメルは矢継ぎ早に指示を飛ばし、ミーナを『錯乱した』と判断。有無を言わさずに隔離した。

 

「すまんな、ケイ。事態の把握が遅れた」

 

「ガキの癇癪とわがままにつきあってやった以上、相応の見返りは用意してあるだろうな?」

 

「指揮権の移譲の書類はルーデル大佐に偽造させた。表向きは戦傷の療養ということで隔離しろ」

 

「整備班の顰蹙も買ってたから、整備班はあたしらのツテで入れ替えるが、良いな?」

 

「好きな人材を引き抜いてくれ。扶桑でも、例の第二プランが承認されたからな」

 

「64を休眠から解くのか?」

 

「転生者は一箇所で管理したいのが、私達の本音だよ」

 

ロンメルは本音を漏らし、統合戦闘航空団の枠組みそのものを扶桑の一部隊へ統合する計画が実行された事を明言する。それが64Fの誕生した理由だ。既に、のぞみたちの存在は報告されており、ロンメルは『転生者の一括管理』を既存の枠組みで実現させるべく、扶桑の特殊部隊枠に収まっていた『64戦隊』の存在に注目。短時間でおおよその形を作り上げたのである。ミーナの評判に関わるため、穏便な形での組織の改編を強調するには、医務室に隔離する必要があった(軍ぐるみでの偽装工作を行う時間が必要だったのだ)。既に第二の査問は終了していたので、ミーナのヒステリックな一面が外部に漏れるのを懸念した坂本の要請で、軍全体で書類の改竄と記録の改竄が行なわれ、後に、偽装用の写真も撮影されたという。

 

「失礼します」

 

「お前か。お前についての偽装工作も始めている。しばらくの間、妹とは電話口でだけ会話しとけ」

 

「分かりました。中佐はどこに押し込めておきます?」

 

「基地の最奥部にある、第七予備医務室のベットに寝かせろ。暴れたら、鎮静剤を投与させるように指示させろ。医療スタッフには口外させるな」

 

「了解」

 

のぞみの軍人としての最初の仕事は『ミーナを隔離する』事だった。広大な基地の最奥部の予備医務室のベットに寝かせ、当分の間は外に出さない事。その伝達を行ったのである。従って、ミーナが元の人格で目撃されたのは、この日が実質的に最後となった。

 

「でも、いいんですか?」

 

「お前の例が出たから、人格変貌もありえる。考えられるものは周囲に置いとくように、指示する」

 

「すまんな、加東。予想より大袈裟な事に」

 

詫びる坂本。

 

「大事だ。カールスラントの大使館が焼き討ちの一歩手前だったそうだ。警官隊に負傷者多数だから、カールスラントには、それ相応の賠償を負ってもらう」

 

「それしかないか。であ、見回りに行ってくる」

 

坂本は基地の見回りのため、圭子の執務室を後にしていった。

 

「ふう。扶桑の群衆は熱しやすく冷めやすいからな」

 

「日本人の気質ですからね、それ」

 

圭子は扶桑人の群集心理を把握していた事から、自分たちの冷遇へのカールスラント上層部の見解を出させるように取り計らっていたが、その前に報道がなされたので、群集が暴徒化したのだ。

 

「今日にも、皇帝陛下が御自ら、謝罪の声明をラジオで流す事になった。陛下は日本連邦との関係悪化を望んではいないぞ、ケイ」

 

「もっと早く出来なかったのか?」

 

「ゲーリングが難色を示していたんだ。ガランド君が怒鳴り込んで、大人しくなったが、自分のしたことを理解していない」

 

「モルヒネのジャンキーめ。病院でもぶち込めよ」

 

「国内でカールスラント人が迫害されそうですよ、先輩」

 

「大和民族は熱くなるからな…。あたしの名前を出して、国内の飛行戦隊に治安出動をかけろ。お上からの許可は取ってある」

 

扶桑滞在のカールスラント人はダイ・アナザー・デイ直前の時期が最も危険に曝された時期なのだが、圭子が早期に手を打っていた事から、ヘイトクライムは未然に防がれた。のぞみはこの頃は一時的に圭子の預かりであったが、黒江の帰還後は予定通りに黒江の預かりとなる。故に、圭子の副官的な仕事を当座の仕事にしていた。

 

「分かりました。日本が文句言いますよ?」

 

「緊急事態だ。扶桑の法律では、緊急時の武官への指揮の委託は禁止されとらん」

 

扶桑の天皇大権(主に軍事)が縮小された新憲法は扶桑では1947年の発布と施行なので、ダイ・アナザー・デイの時点では、ガバガバと評された在来の扶桑憲法の下での軍隊指揮権の移譲は盛んに行われた。七勇士は皇室の信を得ていたためか、指揮権の移譲を二つ返事で認めるほどだった。この事項は後に廃されたが、緊急時の事後承諾が重要な世界なため、議会の事後承諾が明記されたという。

 

「防衛省にはなんて説明します?」

 

「陛下が大衆の暴動を憂慮して、勅諭を発したんだと言っとけ。扶桑に戦後型のシビリアンコントロールを覚えさせるには、まだまだ時間が必要だ。どんなに早くても、あと数年はいる」

 

圭子はそのような見解であった。実際、戦後日本の『文官優位型のシビリアンコントロール』は『肝心な時に動けない』と軍人から顰蹙を買っており、Y委員会がその手直しに四苦八苦している。その雛形の導入に『クーデター鎮圧後の事後処理』という大義名分が必要であったのを考えると、戦前日本タイプの気質である扶桑の大衆の取り扱いには、進歩的な有志も手を焼いているのがわかる。

 

「どうすんです。陸軍の連中が暴発しますよ?例の素案を通したら」

 

「軍人勅諭の改定を認めてもらうしかない。東條大将には、国外追放前に許可をもらってある」

 

圭子は軍人勅諭の改定の布石を打ったと明言した。そして、当座のマスコミ対策を告げる。

 

「お前には悪いが、お前の転生は大々的に報道させてもらう。問題が日本に知れ渡ったら、日本の左派がとやかく言ってくるだろうから、お前の存在の公表で時間を稼ぐ」

 

夢原のぞみ、即ちキュアドリームの転生を公表し、マスコミを惹きつける餌とする事は、扶桑の統合参謀本部で決まった規定事項である。

 

「規定事項ですか?」

 

「そうだ。悪いが、軍全体の広告塔も兼ねてもらうぞ」

 

しかし、何事も反発はあるもので、この三日後に公表されたキュアドリームの実在はセンセーショナルな話題となった。この頃に『夢原のぞみ』としての軍籍作成も検討されたが、素体が名家であった『中島家の息女』であった事実がそれを阻んでいた。結局、勝手に議論が日本側で盛り上がる内に、シャーロット・E・イェーガーもキュアメロディ/北条響の転生であることが判明。それを契機に、続々とプリキュアや魔法少女の経験者が転生していることも矢継ぎ早に判明。連合軍を困惑させた。その受け皿に64Fが流用されたのが本当のところ。のぞみ自身の意識が変わり、本当の意味で『生気の滾る』戦士に立ち返るのはデザリアム戦役を待つ必要があったが、プリキュア戦士で『最も人気のピンク』である事から、ダイ・アナザー・デイの時点で『日本向けの広告塔に駆り出される』。その一方で、プリキュアの『限界』も同時に示す形となり、南斗鳳凰拳に歯が立たずに倒されるなどの屈辱も味わうのである。(逆に、南斗聖拳の価値が相対的にアップした)

 

「黒江先輩はどこで何をしてるんしょうか」

 

「さーな。あいつの事だ。うまいこと生活して、迎えを待っとるだろう。明日か、明後日には、かすかに探知できた信号の座標にある世界に沙織さん達が着く。連絡があったら、知らせろ。それと、お前の事はキューティーハニーが知っていたぞ?」

 

「え?なんでですか?」

 

「わからん。ただ、お前の仲間の名前を知っていたのは確かだ。キュアミントの名前を出してきたから」

 

と、圭子も不思議そうだったが、このことが大決戦への布石となるのである。キューティーハニーとプリキュア5。繋がりはないようで、実はキュアミントの存在を介する形で、繋がりがあったのだ。

 

「なんで、あたしやこまちさんの事を……?」

 

「お前の学生時代の成績まで知ってたぞ、ハニーは」

 

「なんでなんでぇ~!?」

 

「知るか!!」

 

大いに困惑ののぞみ。彼女が事実を知るのは、それからしばらく後のこと。当時、キューティーハニーはパンサークローとの死闘を展開しており、ダイ・アナザー・デイへの参戦どころではなかったわけだが、なぜ、アンドロイドであるはずの彼女がプリキュア5を記憶していたのか、のぞみの事を懐かしそうに口にしたのか?謎を秘めていること請け合いであった。その謎の根源は彼女を構成しているボディに偶発的に宿ったと如月博士が記録していた『霊魂』にあったが、その判明には長い時間が必要であった。

 

 

「……あたしだ。モンティ。どういう事だ?工作が完了してから隔離しろぉ?」

 

「中佐ほどの人物を、ロンメルの一存で処分はできんよ。正式に協議がされるから、しばらくは勤務させつつ、自室で反省させろ」

 

「扶桑の大衆は怒ってるぞ?」

 

「君たちと言えど、年齢が年齢だ。普通は本気にされんだろ?私が処分される分には構わんが……ロンメルに替わってくれ」

 

「あいよ。詫びとして、補給部品は回せよな」

 

「優先的に回させる。地球連邦からも機材を回せ」

 

と、受話器をロンメルに渡す。ロンメルは不満げだ。 

 

「大変ですね」

 

「あのガキ、公には『501でもっとも政治に慣れている将校』で通ってたからな。それが実際は坂本への恋愛感情で周りが見えねぇってのは不味い。カールスラントも頭が痛いだろうよ」

 

「でも、ユニの報告だと、本当に知らなかったみたいで、慌てて調べた形跡が」

 

「試験の前に、参考書を慌てて読む受験生かよ」

 

ミーナが保身のためか、人事書類を読み返した形跡があると、ユニは報告している。ミーナはシャインスパークを目の当たりにした後に慌てて、人事書類を読み返し、該当の必殺技を持つスーパーロボットの情報……つまりはゲッタードラゴンの情報開示を地球連邦に求めていた。ゲッタードラゴンの資料映像(ある戦いで大海獣へシャインスパークを放つ映像)のデータが送られたということが、ギアナ高地(連邦軍本部)のサーバーに記録されていた。ミーナは圭子の持つ闘技が歴代のゲッターロボの武器を再現したものと気づいた瞬間、膝からその場に崩れ落ちたと、整備班のある整備兵は目撃している。

 

「ストナーサンシャインはアフリカでやったし、サンダーボンバーも事変で撃ったはずだぜ?昔は『北海道の雷神』って呼ばれたこともあるんだがなぁ」

 

圭子はアフリカにいたことで、熱帯の指揮官のイメージがついているが、本人の出身は北海道で、先祖は屯田兵であり、一族にマタギもいたという開拓民の出である。武子と同郷であるので、二人は北海道の誇りと讃えられ、事変当時は国内外で有名人であった。だが、魔女の界隈では、七年もあれば、その時代の記憶は薄れている。上層部の盲点は『記憶の風化の早さ』にあった。

 

「あたしは幼年学校からのルートなんで、先輩達の武勇伝は聞かされてました。最も、同期の八割方はほら話だと思ってましたけど」

 

「なにィ、最近の若いもんは……」

 

「先輩、25歳(当時)のセリフじゃないです」

 

憤慨する圭子だが、魔女の世代交代は早く、数年で引退する者もいるため、事変の七勇士伝説は五年目には『ほら話』扱いにされていた。これは七勇士全体の話であり、記憶があるバルクホルンやハルトマンは501への坂本の参加を喜んだが、ミーナは実力を疑問視していたという報告もされていた。

 

「で、どうだ?」

 

「ユニの調査だと、他の統合戦闘航空団の幹部にも問い合わせたようですね。グンドュラさんが本気で呆れたようです」

 

「あいつに呆れられるんじゃ、いよいよ本物だな」

 

ミーナの罪は唯一つ。無知だ。外交問題や整備士の待遇問題にも延焼しかかったため、連合軍は大いに困っていた。穏便な解決を望む皇帝が『これまでの功に免じて、謹慎処分で収まらんのか?』とケッセルリンク元帥に尋ねたという。

 

「私だ」

 

「モンティ、早いな?」

 

「山下大将を宥めるのに苦労したよ。ドイツにこの事を通達したんだが、隊の運営権をカールスラントから扶桑に譲渡しろと言われた。ケッセルリンク元帥はこれを呑んだよ」

 

「それで矛を収めろと?」

 

「君のところのプリキュア達を広告塔に使いたいと、扶桑の当局が言ってきてるからな。それと、皇帝陛下はゲーリング元帥の罷免と左遷を御自ら決められ、あと数時間以内に扶桑向けの謝罪文を扶桑のマスコミに正式に流すと」

 

「焼き討ちはこちらで抑えるが、整備兵の入れ替えは了承してくれるな?」

 

「配属先はこちらで決める。好きな整備兵を引き抜き給え」

 

モントゴメリーのこの一言が、後世で『64Fが全世界の戦線の精鋭整備士を取っていった』と愚痴られる最大の原因であった。圭子は自らのコネで、各地から未来行きの経験がある、敏腕整備士を引き抜いた。更に、帰還後の黒江が飛行実験部出身の教官級整備士も集めたため、64Fの整備中隊は『扶桑一のエンジニアとメカニックの集団』となったのだ。47Fの整備班長『刈谷中尉』が呼び寄せられたのもこの時期で、前任の整備班長がミーナの行ってきた冷遇に耐えかえ、直属の部下と共に辞表を出し、去っていったことへの対策であった。

 

「ケイさん、大変だ!!整備班長が辞表を出して、直属の部下共々、行方をくらました!」

 

「そうか。シャーリー、綾香が直前にオファーをかけていた整備兵に電話して呼び寄せろ。今すぐだ!あそこは綾香の後輩が隊長だから、あたしが電話の一本もすりゃ、喜んで送り込んでくれる」

 

「わ、わかった!!」

 

と、シャーリーが慌ただしく入っては出ていき……。

 

「ケイさん、今度はペリーヌさんがプリキュアに!」

 

「竹井に確かめさせろ!今は忙しいんだ!」

 

「竹井さんは残務処理で、504基地に戻ってますよ」

 

「何だと?……お前でもいい!確かめろ!」

 

「無茶言わないでくださいよ、あの代(プリンセスプリキュア)とはあまり会ってないんですよ!」

 

「なら、お前も変身して、反応を確かめろ」

 

「無茶ですよぉ」

 

と、今度は芳佳に難題を突きつけられる圭子。対応が雑だが、圭子はテンパってくると、やることが雑になるのである。この日はペリーヌが偶然から、キュアスカーレットに覚醒したようで、芳佳も慌てふためいている。

 

「こんな時に、プリキュアが相次いで覚醒だと……参った」

 

「プリンセスプリキュアは、あたしじゃ確かめようがないですからねぇ」

 

「お前、会ったことはないのか」

 

「現役時代に一度…いや、二回こっきり」

 

「私もそんなもんかなぁ」

 

「おい、なんでだ」

 

「あの辺りの代で、オールスターズが全員集まるって類の戦が終息していったんですよ」

 

「だよね。はるかちゃんやみらいちゃんのあたりで、その区切りがついた感じかなぁ」

 

のぞみと芳佳が共に頷く。オールスター戦の区切りはその世代であると。

 

「仮面ライダーみたいに、全員が共闘することはなくなったのか?」

 

「その時々の現役から二、三代遡る形が取って変わったんですよ」

 

 

オールスターズ全員が集まることが減少したのもその時代であるように、プリキュアはある時から、戦士の全員が集められるような規模の戦は無くなったという。

 

「ミラクルライトもいつしか無くなったようだし…寂しいなぁ」

 

「うん。時代かねぇ」

 

「疫病が流行って、映画館でミラクルライト振れなくなったからな、メタ的に言うと」

 

圭子が思いっきりメタな発言をするが、はーちゃんから2020年のプリキュア映画の事を聞いていたからである。

 

「お前ら、2020年に行けば、理由が分かるぞ」

 

「へ?なんでですか?」

 

「はーちゃんとは連絡のホットライン引いてるから、聞いてみたらいい。今度来る、大人のび太の時代は2010年代の後半頃だと思うが、お前らの存在はニュースになってるってよ」

 

圭子はデスクに設置しているラップトップPCで、2010年代後半の日本のニュースを開く。日付は2016年。のび太が28歳の頃にあたる。季節は冬で、アニメでキュアフェリーチェがデビュー済みの頃だ。

 

「何々……謎の美少女戦士はプリキュアだった!本誌は扶桑の当局の許可を頂き、噂のキュアフェリーチェにインタビューを……は、はーちゃん!?」

 

のぞみはその場でずっこけそうになった。あるホテルの一角でキュアフェリーチェがインタビューを受けている記事が検索サイトのニュース欄のトップを飾っていたからだ。

 

「お前も直にそうなると思うから、心の準備はしとけよ?ましてや、お前ははーちゃんと違って、中心格たる『ピンクの戦士』なんだし。それも三代目の」

 

「ち、ちょ……頭の理解が……」

 

のぞみも困惑するが、ことはは2011年から2016年までの間に、その出自をカミングアウト。正式にプリキュアとしての活動を開始した。2011年には現地の大学を出ていたので、それ以降にカミングアウトした事になる。アニメ通りなのは外見だけで、能力は変質していることは公にしており、その証として、マジンガーブレードやダブルトマホークを手に持つ姿を公開している。

 

「理解しなくてもいい。感じればいいのよ」

 

「智子か。珍しいな。今日は軍服で戦ったのか?」

 

「寝起きだったのよ、朝の定期哨戒を忘れてて」

 

「だから、カイザースクランダーを?」

 

「あたしはマジンガーの化身でもあるのよ?」

 

「……智子先輩はマジンガーなんですね……」

 

「まぁ、カイザーやZの特性持ちって感じ。グレートマジンガー系は綾香が持ってる。できないわけじゃないけど、不得意なのよね」

 

マジンガーの力は二人で分担して持つらしく、智子はZやカイザー同様に、バランスと爆発力を備え、グレートやエンペラーなどの攻撃的な面は黒江が受け持っていると述べつつ、入ってきた。入ってきた瞬間にカイザースクランダーの翼部を折り畳んだため、『OVA版マジンカイザー』ではなく、オリジナル版マジンカイザーが元になっていることが分かる。

 

「アンバランスですね、それ」

 

「まぁ、軍服姿だし。ミーナ中佐をとりあえずは自室に寝かせたわ。正式な沙汰あるまでは、隔離はできないわね」

 

「どうやって運んだ?」

 

「ロンメルの言いつけで、スクランダー使ったわ。あの子の部屋はここからからの歩きじゃ、日が暮れるし」

 

「先輩、室内でジェット噴射したんですか?」

 

「ロケット噴射よ。宇宙行けるんだから、カイザースクランダーは」

 

妙なところで訂正を入れる智子だが、マジンガーの力の発露の一環として、歴代の翼を人間サイズで背中に作ることが可能なので、一番に最大速力の出るカイザースクランダーを使ったという。

 

「ジェットスクランダーは後期型の形で作れるんだけど、最大高度が20000mくらいだから、高高度性能にあまり余裕が無くてね」

 

ジェットスクランダーはそこそこ高性能だが、超合金Zの外装に傷がつくと、飛行機能に支障を来すという欠点がある。マジンガーZのものはマッハ4.5の速度を出せたが、Z本体に比しての強度の低さが問題になった事がある。現代の戦闘機よりは高い高度を上がれるが、エンジンの推進力でZを上昇させられる限界が存在する。内蔵式と違い、外部装備式の翼は強度は高いが、設計の難易度も高い。弓教授は外部装備式を好む傾向があるのは有名だ。

 

「カイザースクランダーなら、グレートブースター以上の加速が瞬時に出来るから、便利よ?加減もできるけどね」

 

智子は転生を重ねる内に、マジンガーの化身となっていたため、ロボットガールズに半ば近い存在になっている。ギャグ補正や主人公補正があまりに強い者(ゴルゴやのび太など)以外にはそれなりに強いが、それをいまいち発揮しきれない場合が多いので、黒江より総合評価は落ちる。

 

「まぁ、ここは広いからな」

 

「いいんですか?」

 

「お前が変身して運ぶようなもんだ。いずれわかるだろう」

 

後に、自分自身がその力を得るとは、この時は露とも思わないのぞみ。得た後はプリキュアの力と併用する事で、聖闘士にも引けを取らない戦闘が可能になるのだが、それは未来の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――この出来事が、ミーナが隔離に至る経緯の大凡の流れであった。ただし、正式に隔離が決まったのは、モントゴメリーが連合軍の協議にかけたため、実際に事が決まったのは『黒江の帰還後』の事になった。(療養という体裁を整える時間が欲しかったらしい)そして、ミーナはもっともらしい言い訳もひねり出せず、実質的に表舞台から退場する。この事がきっかけで、カールスラントは坂を転がり落ちるが如くの勢いで凋落。その代わりを扶桑が担う事になる。後々にニュース映画用に撮影されたフィルムでは、ロンメル主導のように描かれていたが、実際はモントゴメリーがかなり関わっていたのだ。カールスラントはこの出来事を受け、501の運営の主導権を実質的に放棄。扶桑にそれが移った。しかし、その枠組み自体が撤廃されたため、人員と装備は64Fがそのまま引き継ぐ事になったが、整備員は数割が入れ替わった。とはいえ、各国が引き戻した人員も多岐にわたったため、結局、カールスラントの人員+α程度しか残らなかった。64Fは各国軍に在籍していた転生者を主体に編成された。更に、日本の勘違いで『編成されなかった事にされた』二つの飛行戦隊の人員を取り込んでいく事で拡充され、カールスラント由来の人材も取り込む形で巨大化した。教育部隊の教諭であった者が配属とされたが、教育部隊からのそれ以上の『前線への転属』(志願含む)が禁止されるため、当の教育部隊の教諭から異議が出る有様であった――

 

 

 

 

 

 

 

――これは『特攻』のような強引な施策を防止するためであったが、扶桑では『前線にいかないと、周りに馬鹿にされる』風潮が日本以上に強く、防衛省は困惑する羽目に陥った。そのため、妥協的に、人員育成が実戦部隊の一中隊で行われるようになった。64F内部の『極天隊』はそのための部隊の一つであり、最も大規模に実践的な教育ができる部署の一つだった――

 

 

 

――64Fは他部隊への人員提供に『極天隊で育成した要員』を用いていた。クーデター後は『太平洋戦線』に主要な人員が一点集中されたため、北方戦線などの『比較的平穏な戦線などへの人員供給が滞っていた』ための、上層部からの要請であった。当時は魔女の実戦経験者の五割がMATへ移籍し、残りを64F、50Fなどの『名うての部隊』で分け合う状態であり、北方戦線は左遷先扱いの有様だったからだ。64Fは『転生者の管理所』の側面が強いため、他部隊からの転属者が幹部になるのは狭き門であった。その関係で、他部隊で幹部になる方が『64F内部での立身出世より優しい』と言われるようになっている。仕方がないが、転生者がよってかかって『軍で屈指の腕利き』であるので、実戦経験が少ない部隊の人員がそこで立身出世する事は至難の業である。属せただけでも名誉なことと見做されていった背景には、64Fの戦う戦場は過酷そのものであり、主要メンバー以外の隊員はそれなりに負傷率が高かった事、主要メンバーが負傷するような相手では、一般隊員では壁にもならない有様であったことにも由来する。扶桑軍は(日本の政治家の強い意向もあり)数的に不利な状況での戦闘を強いられるのが常であったため、兵器の質で『常に相手を上回る』ことが求められた。従って、F-14戦闘機やF-15戦闘機が『1949年』の段階で運用試験段階に入るのも、当然の流れであった。それらは精鋭部隊に優先配備されたため、一般部隊が使用できるようになるには、数年の歳月を必要とした。これは鹵獲を恐れての措置であったが、史実よりも通常の軍事技術全般が遅れ気味であったのに、1970年代の技術で設計されたジェット戦闘機が作れるはずはない。カールスラントが胴体内蔵エンジン式の端緒について間もなかった上、本来、その技術研究は最高機密に属していたのだから、ターボジェットよりも燃費の良い『ターボファンエンジン』を双発で積むというのは、当時のウィッチ世界の国々には荷が重いのが現実なのだ――

 

 

 

 

――クーデター後は扶桑外務省の勢力図も様変わりし、カールスラントとオラーシャの近代化で優勢になりつつあった(史実で言う)親露派、親独派が(21世紀日本での歴史を鑑み)衰退。二カ国は外交ルートの多くが無効化させられた事に狼狽え、対策を講じたが、オラーシャは同位国が日本国と対立した関係で、カールスラントは史実の日独伊三国同盟の実態の情報が原因で、一気に扶桑国内での思慕が萎んだおかげで、日本連邦との関係が冷却化していく事には抗えなかった。この二カ国の衰退で『その代わり』を演ずる事を強いられた扶桑皇国は『必要上の理由』で、軍事大国であり続けるしかなかった。その一方で、日本の軍縮への圧力も凄く、戦闘艦艇や戦闘車両の増勢にも苦労を強いられる有様であった。M粒子の軍事利用により、21世紀型無人機は物の役に立たないガラクタになった一方で、23世紀のゴーストはBC兵器と同義の非人道兵器扱いなために輸出はされていないのも、扶桑が兵器の質にこだわる事が増えた原因である。その代わりに、地球連邦軍の兵器の大半は輸入が個人単位で可能であるため、通常兵器から人型兵器に至るまでが導入された。その関係上、日本製兵器は小銃や戦闘車両などに留まった。(時代遅れの烙印を押された多くの国産兵器の再利用に困る事になったのは言うまでもないが)――

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイ開始寸前のある日――

 

「零式も満足にないだぁ!?この馬鹿者が!!今から増産しろ!!どうせ、この作戦でしか使わんのだから、旧式機は!!」

 

と、扶桑の担当者は怒鳴られっぱなしであったが、当時の新鋭機『紫電改』と『烈風』も精鋭部隊にしか配備されていなかったのに、その次を要求されるのは予想外であった。零式の扶桑での最終型はアグレッサー任務用の四三型であったが、それを実戦機に再改造する手間も強いられる事になった。その関係で、金星エンジンを積む『六四型』が文字通りの最終型として生産されていったわけだが、あくまで後発機までの繋ぎとされたため、生産機の大半はダイ・アナザー・デイで消耗されていった。

 

「しかし、烈風や紫電改がある以上、零式にこだわる必要は……」

 

「おたくの雲龍型で、それらの多数運用が可能とでも?我々は不可能でしたよ」

 

雲龍型航空母艦はこの時点で既に、『時代遅れの空母』と認識されていたが、近代化が間に合わないため、多くが原型通りで運用された。史実と違い、油圧式カタパルトを備えていたからだが、それでも『流星や天山の多数運用はおぼつかない』と判定された事に、同艦型の悲劇があった。

 

「改蒼龍型であれば……」

 

「翔鶴型でしょう!!」

 

このような『理不尽な』叱責も多数見受けられたため、扶桑は『友軍との連携のため』という名目で蒼龍型航空母艦に分類されていた『翔鶴』と『瑞鶴』を『翔鶴型航空母艦』として正式に独立させ、増産が頓挫した『大鳳』を翔鶴型に組み込んだ。頓挫した大鳳の同型艦の代替は『より大型の戦後型空母の建造』とされるが、艦名などで紆余曲折があり、結局は『1950年代半ば以降の戦力化の見込み』にまで予定が遅延。64Fが宇宙空母を揃える必要が出たのは、そのような事情が絡んでいる。宇宙空母であれば、空軍の予算を都合つければ購入できるからだ。ただし、パイロットは海軍からも徴用されたため、肝心の海軍の技量乙以上のパイロットが極度に不足。ダイ・アナザー・デイの空母艦載機のパイロットの半数以上が義勇兵となったのは、空軍の徴用による減少も関係している。九七式艦攻や九九式艦爆が新鋭機であったところに、いきなり天山や流星、更にはスカイレイダーでは、搭乗員のほうがパニックであった。

 

「今から訓練は間に合いませんが……」

 

「こうなれば、各所に援助を乞うしかないか……軍需産業には、烈風の次を指示しましたからな」

 

レシプロ時代のアメリカが得意としたのが、開発速度の早さで、実際に、F6Fが量産されだした時には、既にF8Fの開発が指示されていた。だが、人手も開発のリソース力もそこまでではない扶桑には、『完成したばかりの機体の更に次をすぐに計画しろ』というのは無理難題であった。彼の言う通り、地球連邦が3000馬力エンジンとターボプロップエンジンの資材などを提供したため、時間短縮のために『モックアップが出来ていた計画機をベースにする』事になり、名前も『陣風』が流用される。紫電と別系統だが、パーツの互換性が効くようにされたため、見かけはそれほど変化はなかった。この陣風が『扶桑海軍系レシプロ戦闘機』の掉尾を飾る事になり、F8FやF2Gに伍して戦える機体と評価されるのだ…。

 

「大げさでは…」

 

「いや、米国は現用機の二世代は先までを用意していましたから、手を打つに越したことはありません」

 

日本側の心配性というべき、この念には念の入れようは正しく、ダイ・アナザー・デイの途中からは、ジェット戦闘機すら飛び交うようになる。カールスラントはこの開発競争に置いてけぼりを食う形になり、自慢のMe262戦闘機(ジェット戦闘機)すらも、登場からわずか数週間で旧式の烙印を押される事になったのだ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。