ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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ダイ・アナザー・デイ補完編の続きです。


第四百五十一話「ダイ・アナザー・デイ前の状況11」

――黒江らが1945年当時に苦労したのが『実力の証明』であった。ミーナが事の重大さを悟る過程は既に語っているが、では、ミーナのミスがどういう問題を引き起こしたのか。俯瞰的に振り返ってみよう――

 

 

 

――1945年。黒江の実力証明はリーネとペリーヌ(当時は覚醒前)の救援でなされた。ペリーヌが目覚めるより一週間ほど前の事であった――

 

「ケイの奴がロンメルと話し合いを始めたようだが、今回は緊急だ。許せよ」

 

黒江はストライカーユニットを履かず、この時は自前で『マッハウイング』を作り、飛行した。圭子はマフラーをゲッターウイングの媒介にするが、黒江はドラゴンタイプのマッハウイングを好む。それで飛んでいったので、バルクホルンとハルトマンはミーナへの説明に難儀する羽目となった。とはいえ、既に圭子がやらかした後であったので、ミーナは書類を手当たり次第に漁っており、それどころではなかったが。

 

「あちゃ~。マッハウイングで飛ぶなんてね」

 

「説明が大変だぞ…」

 

「説明に困る?コレは『背負うタイプの箒』だ、そう報告書に書いとけ!なんて言うよ?ケイさんがやらかした後だから、ミーナには事後報告で良いって。どうせ勝つし、ペリーヌは知ってるみたいだったよ」

 

「七勇士をか?」

 

「うん。ミーナ、たぶん降格間違いないよ、これ」

 

「七勇士を知らなかったと?」

 

「と、いうよりは、おとぎ話のプロパガンダとしか見てなかったって奴。扶桑でも最高級の軍機だし、プロパガンダ色濃かったし、えとー大佐は個人戦果を公表するの嫌いだしさ」

 

「大佐のミスだな」

 

江藤のミスは一度目の引退までに人事部にスコアの精査を依頼していなかった点で、復帰時に、今回の問題で呼び出された際、天皇の前であれこれ弁解する羽目になった理由でもあった。艦娘・陸奥の執り成しで許されたものの、一歩間違えれば厳罰まっしぐらであった。

 

「艦娘・陸奥嬢が助け舟を出してくれたそうだが、陛下はお冠だったそうだ。陸軍参謀本部の人事部は今頃、蒼白で過去の書類を漁ってるだろう」

 

「うわー、カンヅメにされそう」

 

「艦娘は日本連邦に集めるそうだ。ビスマルクも日本連邦に行かせるそうでな。リンデマン艦長と折り合い悪いしなぁ、ビスマルク」

 

ビスマルクは実艦の艦長であった『エルンスト・リンデマン大佐』と(彼は軍艦を男性と見ろと公言していたので)折り合いが悪く、それが彼女の移籍を『カール・デーニッツ』が了承した理由であった。バルクホルンのような、空軍の一将校にも噂が届くほどの不仲であるらしく、バルクホルンはため息だ。

 

「だから、ドイツに反論しようとしないんだよなぁ、うちの政府の官僚。金が欲しいのかねぇ?」

 

「日本連邦の二匹目のドジョウだろ」

 

ハルトマンは辛辣であった。すでに祖国への忠誠心はなく、日本連邦に忠義を果たすと公言しているためだろう。

 

「なぜ、我が国は上手くいかなかったんだろうな」

 

「ドイツの連中は先入観と色眼鏡でうちらを見てるからさ。日本連邦みたいに、ハッキリした違いがあるわけでないから。ビスマルク帝国の健在だけじゃね」

 

ハルトマンは既に南洋に土地を買っているようで、別宅の鍵を指にかけて、振り回していた。

 

「おい、鍵を粗末に扱うな。別宅買ったのだろう?」

 

「戦前からの軍人は疎んじられそうだしね。そういえば、救出されたフーベルタの格好、見た?」

 

「ティターンズの捕虜収容所の趣味か?眼帯メイドなど」

 

「なんか所長に気に入られて、プロレスもやらされてたみたいで、本人は相当にダメージ来てる。ありゃ、当分は出せないね」

 

「奴は当分は戦力にできんか……」

 

「私なら出られるが?」

 

「前世が日本人だからと、学園都市の学生服のコスプレか?グンドュラ」

 

グンドュラ・ラルが現れた。元502の司令官であるが、この時点では一将校の扱いだ。カールスラントの空軍総監の有力候補になったが、服装が学園都市の常盤台中学の制服であった。グンドュラ個人はかなりグラマーな体型なので、制服はパツンパツンの有様だ。

 

「記憶に馴染んでるから、適当に出したらこうなっただけ。それに、この服なら危険だって自衛隊にも伝わるでしょ?」

 

「みこっちゃんさぁ、いきなり言葉づかいを変えないでよー」

 

茶化すハルトマン。グンドュラが御坂美琴の生まれ変わりということを知っているからである。

 

「いーじゃない。記憶は目覚めたけど、正式にはドイツ人なのは変わんないから、気分変えたいのよ。閣下に後継ぎになれっていわれたしさ…」

 

「ご愁傷様」

 

「それに、報告は聞いた?」

 

「ああ。大佐らが始めたプロジェクトは進みそうだな。……宮藤とシャーリーは?」

 

「部屋で待機させてる。のび太君に問い合わせたけど、やっぱりプリキュアよ」

 

「宮藤だけなら、実にかわいいんだがな。何故にリベリアンまで……」

 

「あ、本音が出た。シャーリーはどう?」

 

「他の記憶も目覚めた上、勢いで変身して、解除できないのにパニクってるわよ」

 

「軽く見積もって、一週間はだめだね」

 

「それと、ルッキーニが胸に文句あるそうな」

 

「キュアメロディは胸がないからなぁ。ルッキーニは不満だろなぁ」

 

この日、芳佳とシャーリーもプリキュアの転生であると確認されたわけだが、二人は変身が何故か解けないため、部屋で待機を言い渡されていたが、シャーリーは胸のことで、ルッキーニに文句を言われたそうで、そのことでふてくされたらしい。

 

「……ルッキーニらしい。中島と竹井少佐もだろう?」

 

「そう。中島は大物よ。プリキュアの中じゃ」

 

「何?」

 

「プリキュア5」

 

「プリキュア…ファイブ?」

 

この時に、のぞみの存在も伝えられた。中島錦が素体だが、中島錦の自我意識は夢原のぞみの自我意識に取り込まれた事、中島家の立場などの問題でてんやわんやだと。

 

「三代目かつ、チームとしてのプリキュアの祖となったチームのリーダーだと?」

 

「本人は謙遜してるけど、実質的にそうだから。扶桑がてんやわんやよ。中島家は名家だから、隠蔽工作がね」

 

プリキュア5のリーダーであった夢原のぞみは錦の自我意識を上書きする形で転生した。変身後の姿は最終時のへそ出しなし(初期はへそ出しだった)コスチュームに準じており、能力もその時点のものであった。これはキュアフェリーチェの確認で確証が得られている。自我意識の上書きは初のケースであるので、対応が大変である事が伝えられる。

 

「自我意識までプリキュアになったか……そうなると、扶桑の実家には」

 

「戻れないわね。のび太くんと対応を協議するわ。それと、例のあの子を引き合わせるのを早めるわ」

 

「いいのか?」

 

「なんか、この先も増えそうだし。上は今いる連中だけでも働いてくれるのを期待してるのよ」

 

プリキュア達の参戦はのぞみの登場時点で『確定事項』と扱われている事、キュアフェリーチェの存在を連合軍は早くに知らされていた事。これがプリキュア達がスムーズにダイ・アナザー・デイに参戦できた理由の一つだった。

 

「お膳立ては済んでいたのか」

 

「そういう事。多分、今回は苦労しそうだし、魔女の連中が仕事するとは思えないし。連中は『人同士の殺し合い』って事象に拒否反応起こすと思うから。三割動いてくれれば、御の字ね」

 

グンドュラは悲観的であった。自身は一方通行との出来事の記憶、木原一族の悍ましさの記憶のおかげで抵抗感はない(御坂美琴は一方通行からは妹達の『加害者』として見られていたので、そのあたりの記憶によるものか、年下に優しくなった)からだ。

 

「だから、プリキュアを?」

 

「世界の危機なのよ?動いてもらなきゃ困るってヤツ。大佐みたいな『異能』は使うに限る。もちろん、このあたしも…ね」

 

「次期総監に内定した奴が中学の制服で戦うのか?」

 

「制服のほうが大っぴらに能力使えるじゃない。軍服だと、お硬い連中が文句言うもの」

 

「カールスラントは指揮官率先の文化があるんだがなぁ」

 

「日本のほうが強いわよ。将軍や提督に前線で指揮を取れって書き立てるし。だから、連合艦隊も地上からの指揮を諦めたのよ」

 

「それを自由リベリオンにまで強制するのか?」

 

「ポーズよ、ポーズ。戦艦メインを前線に置いて、ニミッツ提督がいるってアピール。実際は例の未来基地から執るのよ」

 

「ポーズのために、貴重な大戦艦を?」

 

「アイオワじゃ、大和に見劣りするからって、メンツの問題よ。超大和型戦艦があるのに、張り合うって問題とも思えないけど」

 

「65000トンもある時点で、あたしらからすりゃ、途方もない大戦艦だよ。ビスマルクはせいぜい、40000トンだしさ」

 

ハルトマンもそこはツッコむ。カールスラント最大のビスマルクも40000トン台に収まるのだが、大和やモンタナは満載排水量で70000トン以上に達する巨艦だからだ。超大和型戦艦に至っては、量産タイプでも15万トン級という化け物だ。

 

「艦娘の大和も凹んだとか?56cm砲持ちのバケモノが生まれたから」

 

「彼女は宇宙戦艦モードあるんだから、気にせんでいいのに」

 

「大和は51cmは載せられないからねぇ、艤装を変えないと」

 

艦娘・大和は清楚そうな外見だが、史実が史実だけに『ウォーモンガー』化してしまった一面があり、51cm砲との交換を要請しだし、実艦の歴代艦長に諌められたという話が魔女達の耳にも届いていた。とはいえ、大和型は史実でも『超大和型戦艦の竣工後は主砲の格上げを予定していた』という記録があるので、大和型でも、51cm砲は『投射重量の低下を大目に見るなら』載せられるのである。扶桑は大口径化による命中率向上よりも『長砲身による威力の増加』を選んだため、戦艦艦娘の艤装の根本的交換には消極的という一面が見えてきた。艦娘は実艦の火力を人間サイズで行使できるという利点があるため、既存の艦娘用の装備が流用できない新規格品を作るのに、扶桑は意外に消極的であった。

 

「そうだな。だが、艦娘の艤装は意外に高コストだと聞く」

 

「これからは値段が下がると思うけどね。自動工場になるし」

 

ハルトマンらがそんな話をする中、黒江はというと……。

 

「ガキのお守りとはいえ、本気でいくか!」

 

黒江はリーネとペリーヌを窮地に追い込んだ怪異の前に現れると、ダブルトマホークで解体ショーに打って出た。これが現在の容姿での初仕事であった。

 

「ダァブルトマホォォク!!」

 

ダブルトマホークを縦横無尽に奮い、怪異の外殻を瞬く間に削り取る。リーネのライフルやペリーヌの機関銃を寄せ付けなかった外殻を黒江は薄紙のように削り取る。しかもビームが撃たれる前に、その箇所を削り取るという早業だった。

 

「すごい……斧で怪異を削るなんて」

 

「しかし、コアをやらなければ、意味が……」

 

「そんな事は先刻承知だ。ダブルトマォォォク・ダァーーースネス!」

 

ダブルトマホークの石突を連結させ、一対のポールアックスにすると、超スピードで怪異の懐に飛び込み、一刀両断。怪異を見事に粉砕する。

 

「銃撃が効かなけりゃ、直接打撃が一番だ。まぁ、普通の刀や斧じゃ無理だな」

 

通常の魔女の力では『装甲を叩き割る』という棍棒のような形で倒すしかないため、黒江の行った事が『如何にすごいこと』かを悟る二人。欧州では『刃物の一撃で怪異を倒した事例はなかった』ので、二人は目を白黒させている。坂本の例は好事家的な例だと思っていたようだ。

 

「坂本の特権だと思ったか?生憎だが、扶桑の古株はみんなができることだ。侍の出でなくてもな。坂本から話を聞いとらんのか?」

 

「は、はい……」

 

リーネはショックが大きいようだ。

 

「まったく。あいつはガキの頃から変わらんな」

 

「た、大佐(当時)……あなた達はなんなんですの…?」

 

「扶桑は銃の普及は早かったが、近接武器での退治の方がありがたがられたからな。その名残りで、俺らの代は刀剣での戦闘術は必須科目だった。坂本の世代がその最後だ。近頃は簡略化されてるからな」

 

黒江は淡々と説明する。黒江は戦前に任官された世代であるので、近接格闘術の正規訓練を受けた世代。1941年以降は徐々に簡略化されていったので、来る『大作戦』での魔女全体の戦力実効性は意外に低く見積もられている。(実際、通常の魔女はダイ・アナザー・デイ作戦では『サボタージュ』のせいもあり、戦力としては殆ど機能しなかった)

 

「今度の作戦には、お前らのような若い連中は出せんかもしれん。相手が人だからな」

 

「ほ、本当なんですか……?」

 

「ああ。人に銃は向けられないだろ、お前達の世代は。上もそれをある程度は想定して、計画を進めている。後ろめたいだろうが、情勢が情勢だ」

 

と、リーネを気づかう。戦争の現実を見てきた(親類縁者が全滅した)ペリーヌと違い、豪商の令嬢という立場であり、本質的に戦士ではない気質のリーネ(リネット・ビショップ)には、人同士の戦争は無理だろうと、幹部たちの間では共通した認識であった。リーネは図星のようだったが、ここからしばらくした後、『芳佳が前世からの宿命を背負わされたのに、自分は無力である』事への後ろめたさが『美遊・エーデルフェルト』としての人格と記憶を呼び覚まし、結果的にビショップ家の息女という立場を脇に置き、戦場に居続ける事になる。当時、魔女の多くは『対人戦争に駆り出される』事に強い忌避感を持っており、坂本の直後の世代が事実上の分水嶺となる形で『サボタージュ』が起こってしまう。501(後、64F)の補助として置いたはずの部隊がまったく役目を放棄し、孤立無援の有様となったので、連合軍も欧州戦線の敗北を覚悟したのだ。

 

「その時のための手は打った。時間がないから、俺の知り合いに片っ端から連絡を入れた。後は神のみぞ知るって奴だな」

 

黒江はそう言ったが、『魔女の世界で存在感を示す機会』ということで、地球連邦政府はダイ・アナザー・デイを全面的にバックアップ。『ティターンズ残党の討伐』を題目に、温存していた虎の子の超兵器を投入。それが21世紀世界の参戦を促す形になり、一気に魔女の多数派は立場を失う事になる。

 

「あなた、どうやって……」

 

「司令部も了承済みだ。どうせ、魔女の空戦部隊の支援は得られまい。陸戦はエイラの姉貴の線で確約を得た。彼女らが今回の要だからな」

 

ダイ・アナザー・デイは陸上戦が要であったので、陸戦魔女が要と見なされていた。空戦は通常兵器が要なのだから。

 

(とはいえ、M4の群れは止められまい。F6FとF4Uが用意されてれば、零戦と隼じゃ戦力にならん。紫電改や雷電、烈風が間に合えばいいが)

 

黒江は独白するが、扶桑は機種更新のペースを早めたものの、固定脚から次世代の高速機にいきなり更新するのは無茶に過ぎるという楽観論が扶桑のパイロット達に根強く、性急な機種変更に反対であった。その楽観論が結局、彼らの見せ場を奪う形となり、ダイ・アナザー・デイに参戦したレシプロ戦闘機のパイロットの多くは旧日本軍出身の義勇兵で賄われた。さらにいえば、日本側は『紫電改や烈風じゃ、ベアキャットに勝てねぇよ!!』とそれらの優位性に疑義を呈したため、扶桑は日本系最後にして最強のレシプロ艦戦『陣風』の開発に取り掛かるのだ。その開発を急ぐため、紫電改と同時期にモックアップまでは進んでいた『十八試甲戦闘機』の開発資産の多くが流用された(ただし、後世の電探を装備する点が異なる)。紫電改や烈風にも任務の必要上、電探が搭載される事になったので、史実と違い、敵味方の電子装備に差はない。また、史実で『通信で敵に見つかりやすくなる、トップヘビーになって、船が旋回しにくい』といい、電探の運用を阻害した海軍の参謀たちが、多数の駆逐艦を喪失したM動乱からの流れで、根こそぎ左遷させられたため、連合艦隊司令長官や連合艦隊参謀長は必然的に多忙な職務となっている。そのため、コンピュータ装備が大急ぎで備えられ、改装された大和型戦艦、その上位艦は21世紀世界の現用艦艇と遜色ない水準の電子化がなされていた。史実が史実なので、日本側は力を入れ、搭載を推奨。対人戦での有効性を実感していた連合艦隊はこれ幸いに、23世紀世界の現用品を取り寄せ、装備。ダイ・アナザー・デイ時点ではそのような改装は戦艦と空母が優先されていた。――

 

 

 

――その過程で、『不燃対策』として、艦長の判断で艦内の家具や調度品を取っ払っていた艦はとんだ災難に遭った。その最たる例が戦艦武蔵であった。M動乱をくぐり抜けた後の修理のための寄港の際、日本の政治家が視察した際に『兵は毛布一枚でデッキにごろ寝をし、食事は麻布を敷いてその上に食器を置いている』様が展開されていたため、それが非難された。当時の艦長であった『猪口敏平』大佐が非難の槍玉に挙げられてしまったわけだが、その決定は彼の前任者が不燃対策として出していたものであり、M動乱で艦長に選ばれたばかりの彼を責めるのは酷であった。扶桑海軍は『艦独自の不燃対策の一環で撤去したのであって、兵を粗雑に扱うものではない』と表明したものの、非難轟々であった。結局は日本の政治圧力もあり、マスメディアによるネガティブ記事の防止のため、23世紀世界最新の不燃素材による家具一式が全艦に普及する事になった。武蔵はこの『不祥事』もあり、以後、純粋な戦艦として連合艦隊の艦籍に戻る事は正式に見送られる事になった。その代艦として、大和型の正式な最終艦『三河』が建造される流れとなり、武蔵は航空戦艦の実験艦としての生涯を辿ることとなる。(武蔵の当時の乗員は『艦に衆目への負い目を負わせた』事に終生苦しみ、禊として、最前線で死ぬまで戦うことを望み、最前線で戦う大和や信濃への転属を望むことになる)三河は実質的に『戦艦としての武蔵の代わり』として作られた事になり、遥か後年、そのM動乱題材の映画の撮影の際に、武蔵として出演する事になるなど、数奇な運命を辿る。以後、連合艦隊は不燃塗料や不燃家具の開発・普及に多額の予算を費やす事になる――

 

 

 

 

――黒江の鮮やかな手並みは、圭子のシャインスパークにより情緒不安定となったミーナの精神を更にかき乱し、坂本すら『職務遂行は不可能』と見なすほどに荒れ狂った。芳佳は圭子の指示で、ミーナに鎮静剤を定期的に投与する事になり、ロンメルの指令で、基地の奥深くにある『第三予備医務室』にしばらく隔離した。これにより、階級がミーナより上位かつ、先任である圭子が臨時代行となり、武子の着任による、64Fへの組織の完全移行までの間、部隊を臨時で指揮した。この時に、64Fへの移行後も残る事になった各統合戦闘航空団のメンバーに『扶桑海七勇士の実在』が通告され、同時に『プリキュアとなった者達は転生者である』ことも伝えられた。64Fへの組織移行後も、隊に残った者は当初予定の半数以下になったが、のぞみ、ラブ、マナ、めぐみ、ことはなどの加入で戦力は却って向上。ダイ・アナザー・デイを戦い抜く力となるわけだが、そこに至るまでに、カールスラントの上層部は大揺れであった。ミーナの不祥事の発覚がグレーテ・M・ゴロプの離反の発覚と同時になってしまい、連合軍で針の筵になったからだ。ミーナの処分が異例の早さで決まったのは、事態の早期収拾を図りたいハインツ・グデーリアンの意向も働いたからだ。だが、グデーリアンの思いと裏腹に、カールスラント政府はドイツからの横槍に抵抗する胆力を持たなかったため、最後は彼自身が『史実でナチスの蛮行に無関心だった』ために、本国での立場が悪化。ついには扶桑に移住する結果になってしまう。その原因の一端となった形のミーナが『国に帰れない』となるのも無理からぬことであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――カールスラント軍/皇室親衛隊はナチス・ドイツと同じ軍服を採用していたことも、ドイツ連邦共和国による追求が厳しくなった理由だが、内政干渉レベルで物申した結果、カールスラント国家そのものが崩壊寸前に陥った。このカールスラントの実質的な無政府状態化を重く見た日本が扶桑への干渉を自制するようになったため、扶桑は忍耐した事が吉と出た事になる。とはいえ、『近衛師団の連隊への縮小と危険思想者の国からの追放』などの出血は強いられた。扶桑は内部の魔女至上主義閥の掃除を『それ以外の異能を持つ者』たちの活躍を使う形で始めようとしたのである。そのためにも、ダイ・アナザー・デイはなんとしても勝利せねばならない戦であった。だが、最大の問題があった。空・海軍はかき集めればいいが、陸軍の戦闘車両が決定的に不足してしまった。日本が強引に三式中戦車以前の車両を廃棄させたためで、その補償は認められ、カールスラントが放出した戦闘車両のみならず、ブリタニア最新鋭の『センチュリオン』重巡航戦車を大量購入する羽目となる。それを独自改修で投入し、途中からは重戦車『コンカラー』も加わる。そこに21世紀の自衛隊の装甲戦闘車両も加わるため、『雑多な構成』とならざるを得ない扶桑陸軍。同時に、数を揃えられるということで重視していた『軽戦車』というカテゴリーそのものが陳腐な代物となったことに狼狽し、汎用性に優れた『人型兵器』の導入を志向するようになる。陸軍予算が減らされるようになる事は目に見えていたからで、この危惧が扶桑陸軍を万能選手に近い特性の人型兵器の導入に邁進させることになった――

 

 

 

 

 

 

――64Fも主力メンバーや交代要員の予定が思いっきり狂わされたため、プリキュア達を主力要員に押し上げることになった。これは統合戦闘航空団のメンバーの多くが人員の供給元の国の都合で転出させられた穴を埋めるためで、ことは、調の召集はその決定が通知された日に決定された。そのため、64Fへの移行後も隊に残った統合戦闘航空団出身者は多くない。とはいえ、各統合戦闘航空団から数名づつは残留したため、『国際連盟への義理立て』で残したといういいわけを各国は使った。だが、それらの面々に限って『転生者』であるという事実が判明。厄介払いも兼ね、それらの人員を扶桑の手に委ねた。メタ情報で新人を呼び寄せる事も行われた。服部静夏と雁淵ひかりの二名である。その実は『マスコミへのアピール要員』としてであったが、その当時の若手の中では最有力株であったのも事実である。1945年当時の若手の魔女で、ダイ・アナザー・デイに参戦した記録がある者のうち、後に『大成した』と後世に記録されることとなる『扶桑の魔女』はその二人のみであった。なお、後に64Fの幹部に食い込む逸材『広瀬世羅・バルナック』大佐はダイ・アナザー・デイ当時は紅海戦線の要と見なされており、64Fへの供出が反対されていた。実際に64Fへの援軍候補には上がったが、その当時は存命だった陸軍高官の父の強固な反対で潰えていた。(彼女の着任は父親の戦死後になる)服部静夏と雁淵ひかりはその代打要員を兼ねた出征となった――

 

 

――501 ロマーニャ基地――

 

「新人を候補の代打で送り込むから、勘弁だぁ?紅海戦線の司令はアホなのか?」

 

「落ち着きなよ、子どもたちがブルるよ」

 

服部静夏と雁淵ひかりの派兵を通知された圭子は開口一番にこの有様である。キュアミューズに諌められる。

 

「確かに有望だがよ、士官学校や訓練校出たてのペーペーのガキをまっさらな状態でウチに送り込むなんぞ、正気か?最前線の最前線だぞ」

 

「まぁ、美緒の教え子だったり、孝美の妹だから、司令部もそんじょそこらの新人は送り込んじゃいない。ただ、今度の戦の最前線にはとてもねぇ……彩雲ストライカーを用意する?」

 

「司令部に要請を出しとく。はぁ……ガキのお守りはうんざりだっての」

 

圭子は愚痴りまくるが、仕事はきちんとするため、5日後に偵察ストライカー『彩雲』が輸送されてきた。そこまでは良かったが、統合参謀本部の機材補給部の担当者の嫌がらせにより、精度の悪い個体が送りつけられてしまう。これに激昂した圭子は64Fの最上位編成に位置する『第三航空軍』司令部に文句を言い、それを聞きつけた山本五十六国防大臣が『なんたることか!!』と同担当者を叱責する事態に発展する。不良品の彩雲は後日、自由リベリオンの厚意で、当時の最新鋭機『RF-86F』ジェットストライカーユニットで代替され、服部静夏や雁淵ひかりはそのユニットで研鑽を重ねることになる、。

 

「ところで、通常部隊に何の戦闘機を回すか。会議の結果は聞いたかい?」

 

「ああ。サンダーストリークあたりが出たら、エンジンを史実より強化した『ハチロク』(F-86戦闘機)に機種更新するっていうロードマップは決まったようだが、当面は既存のキ100や紫電改、烈風で持たせるそうだ。零戦と隼は史実の後期型に切り替えだ」

 

「零戦の後期型って、評判良くなくない?いい話聞かないよ?」

 

「固定脚の九六式で、最強の艦戦の一つのベアキャットとやるよりはマシだろ?ヘルキャットまでになら食らいつけるだけのバランスは維持してるからな。今頃、扶桑の全土の航空機工場は有人も無人も関係なしに不眠不休で作るだろうし、既存機も改修されてるはずだ。雲龍型を輸送艦代わりにして運ぶそうだ」

 

「完成してる個体を全部?」

 

「航空戦隊が置かれてた個体以外は輸送任務に回されるそうだ。だが、零戦や隼でも、一回で運べる量はせいぜい60機。未来世界の輸送機で運んだほうがまだいいぜ」

 

「数合わせになるかなぁ?」

 

「日本軍の軍歴を持ってるパイロット経験者をあらゆる手段で集めてるから、扶桑の未熟な生え抜きパイロットを逐次の投入で散らすよりは役に立つはずだ。実戦経験がある分な」

 

圭子は雲龍型航空母艦について辛辣な評価であった。とはいえ、ダイ・アナザー・デイ時点で『使い潰しが効く艦隊型空母は同艦級のみ』なのも事実であり、雲龍型は輸送任務完了後は艦隊空母としての任につくことになる。日本側は『飛龍の焼き直しだから、雲龍型程度は惜しくない』という認識であったが、軽空母が戦力外となった扶桑にとっては『貴重な艦隊航空戦力』であった。そのため、零戦は数合わせという認識ながらも、五二型系統へ生産ラインが緊急で切り替えられていった。既存の個体も改修され、前線に送られるわけで、その中には、ウィッチのアグレッサー任務用に制作された魔女用の『四三型』から史実での戦闘機型としての最終生産型である『六四型』へ改修を受けたモノもあったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――こうして、零式艦上戦闘機はその最後の見せ場となった『ダイ・アナザー・デイ』で活躍するものの、『場繋ぎの旧式装備』といった扱いである事には変わりはなかった。金星エンジンと『史実より良好な精度の艤装』を以てしても『F6FやF4Uが相手でも、一方的に負けない』程度の性能向上に留まったため、日本側からは早々に見切りをつけられていたのは言うまでもないが、実績がある紫電改はともかく、史実で実績がない烈風の性急な大量生産に待ったがかかっていた。その穴埋めで増産された機種は『雷電』であるので、奇妙な運命のめぐり合わせであった。陣風はそんな日本側を安心させるのも。開発目標となった飛行機であった。海軍航空系の機体で起こった予定の『つまづき』は陸軍航空でも発生したが、こちらは五式戦闘機という名機が存在していたため、海軍よりはスムーズに後継ぎが決まった。こうして、ダイ・アナザー・デイ開始までに揃えられる中ではだが、当時としては良好な性能の機材が続々と生産され、矢継ぎ早に投入されていった。零戦と隼はM動乱の時点で二線級扱いであったが、史実での最終型として戦場を飛んだ。それが両機種の『扶桑での現役期間』では最後となる戦場の空であり、日本のマスコミも欧州へ運ばれていく零戦や隼の様子をよく撮影し、報じていくのである――

 

 

 

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