――扶桑皇国はジェット機を高速爆撃機として使うつもりであった。これはジェット機の機動力がレシプロ機より低い事が伝わっていたからだが、カールスラントの試験研究を鑑みて『重爆邀撃機』としての研究も始まっていた。それが未来技術情報で一気に情勢が変わったのである。F-86にショックを受けた航空技官らが一斉に進退伺いを提出し、空技廠と陸軍航空総監部は大パニックとなった。日本側は空技廠系の技官を他分野の発展のために使い、その他の技官で航空分野を支えようとしたが、色々と史実と異なる事情もあり、思惑通りにはいかなかった。また、史実より国力がありながら、四発機である連山の戦術爆撃機としての量産に積極的でなかった海軍の航空関係者が理不尽に怒鳴られるのも、ダイ・アナザー・デイ中に起こっており、結果、旧式と見做された一式陸攻や銀河、飛龍を差し置いて、連山がレシプロ四発爆撃機として優先生産機に選定されたり、旧式機と見做された多くの機種の補給パーツが前線で枯渇してしまう事態も発生していた。(比較的に新しいか、有力な機種のみは後にパーツ供給は再開)次世代の新兵器の普及に1948年以降までの長い時間が想定されているのも、この混乱が落ち着く時間の予測範囲だからである。64Fは戦線で最も装備が充実しているため、中隊規模で分割されて運用されており、陸上と海上の双方で重宝されている。この戦いで証明された事は何よりも『対人戦でウィッチは必ずしも、有効な戦力となるとは限らない』事であった――
――サボタージュはあまりに大規模に行われた。それが前線でのウィッチ達が『タダ飯ぐらい』と揶揄されるようになる理由である。怪異との戦闘が主目的でない戦ではあるが、運用次第では有効な兵力たり得たはずであった。だが、多くのウィッチがボイコットしたために予想外に戦線は泥沼化してしまい、64Fに属していないウィッチの多くは周りに白眼視されだした。彼女達が大義名分に使った怪異は未来世界の誇るスーパーロボットが巣ごと倒すことで次第に掃討されつつあり、本来の存在意義すら危うくなってしまった――
『お前らが飛ばんなら戦地の空は我々の物だ、飛ばないなら軍を去れ』
これは圭子がサボタージュしている部隊宛に送った文章で、あからさまな挑発だが、64が戦線を支えているのは紛れもない事実であり、反論の余地はない。また、64Fの発揮する戦闘力に加算される『一人あたりの戦闘単位があまりに桁外れすぎた』事もあり、他のウィッチ部隊、特に航空部隊は『無理に投入しても、通常航空機と代わり映えしないんじゃないか?』という先入観が上層部に生じ、結果として、通常航空ウィッチ部隊で稼働状態の部隊を探すほうが難しいとさえ言われるようになっていた。また、バダンの送り込む部隊に対しては『のび太、ゴルゴ』を中心にした
――陸上――
黒江がドリーム、ピーチ、メロディの『プリキュア三羽烏』を中心にした何名かを連れて、海戦に臨んだため、陸上の守りはキュアエース、キュアラブリー、キュアフォーチュン、キュアミューズ、キュアブロッサムが柱となっている。そして、黒江の弟子になっていた篠ノ之箒、月詠調の二名も陸上での守りについており、のび太達の支援で陸戦を戦っていた。
『プリキュア・ピンクフォルテウェェイブ!!』
『ラブリービィィム!!』
二人のプリキュア(ピンク)の必殺技が戦線を突撃してくるリベリオン兵を吹き飛ばす。キュアブロッサムはアリシア・テスタロッサに転生した都合、あまり戦闘に参加しないが、自衛目的と称し、偶に戦闘に参加はしていた。素体がアリシア・テスタロッサであるため、魔法の才能はあまりないが、プリキュアとしては充分な戦闘能力は持つので、戦闘ではプリキュアへの変身を行うからだ。立場としては研究員なため、積極的な参加はできないため、戦闘参加回数は歴代プリキュア(ピンク)では最も少ない。
「今だよ、調!!」
『エクスカリバーァァァ……フランベルク!!』
調はこの時、聖衣を纏って戦闘していた。現在の彼女にとってのフルポテンシャルである聖闘士としてのフルパワーは先史文明期の人物たちが運用していた兵器の欠片を媒介にするシンフォギアでは出せないからだ。(黒江が試した結果、ギアが湧き上がる小宇宙に耐えられずに自壊する危険がある上、いきなりセブンセンシズにまで高めれば、ギアに異常が起こる事が判明している)調は霊格としてのエクスカリバーと自身が用いるシュルシャガナを組み合わせて編み出した『エクスカリバーフランベルク』を放った。これは炎の聖剣であり、シュルシャガナの『万海を灼き祓う』特性とその上位の宝具であり、霊格を持つ聖剣『
「これにふりがなつけるなら、万海を灼き祓う勝利の剣ってところかな?」
「あの子はようやく落ち着いたみたいだけど、この宝具見たら、泡吹くかもね」
「受け入れてもらいますよ、響さんには。この剣は私のベルカでの10年と、のび太との日々で手に入れたものですから。あの人には恨みはないけど、ベルカでの10年の事は悪く言わせませんよ。私は主を守れなかったけど、あの10年は何物にも変えがたい時間である事には変わりはないですから」
調はベルカでの10年を何物にも変えがたい経験であるとし、その間に培った騎士としての誇りへの侮辱を許さないと明言する。そこは黒江に似たらしい。立花響の最大にして唯一のミスは異世界生活で培われた騎士としての誇りを否定的に捉え、元の世界に帰ってからも、敵と見なした相手に容赦しない事を『相手への礼儀』とするベルカ騎士道を貫いている調を侮辱する一言を言ってしまった(当人に相手の誇りを傷つけている事への自覚がないのが腹立たしかったと、調は出奔する日に小日向未来に述懐している)事だろう。それ故に、しこりがある感は否めない。だが、響も風鳴翼の奔走、自分自身に宿っていた『
「あの子を許すの?」
「許すも何も、分かってくれればいいんですよ。人は誰しも、泣きもすれば、怒りもする。でも、愛は不滅です。ハートに愛があるからこそ、戦う事ができる。昔、どこぞの美少女仮面も言ってたように」
キュアラブリーにそう答える調。愛こそが人をヒトたらしめる最大の要素であると。ベルカでの日々でそれを強く自覚したからこそ、見いだせた一つの回答。同時に、数多のスーパーヒーローをスーパーヒーローたらしめる最大の要因。それを司るプリキュアたる、キュアラブリーもその一人だ。(先輩のハートと二代続けて、愛を司るピンクのプリキュアという事になる)
「昔すぎない?調ちゃん、その頃は生まれてないよね?」
「のび太の従兄弟の五郎さんにDVDを見せてもらった事があって」
「あ、ああー…。なるほど~」
「でも、この前は参りましたよ、ラブリーさん。別の自分にも喧嘩腰な態度取られちゃって…。もちろん。ギャフンと言わせましたけど」
「だいたい想像ついたよ」
調は相手が『自分の別個体』であっても、戦いについては手加減はしないので、アトミックサンダーボルトを当てて吹き飛ばす形で模擬戦に勝っている。そのあたりの思想回路は黒江に似ていると言えよう。もっとも、装者としては元来、響、翼、クリスの三人より格落ちである&『切歌と組み合わせる事が前提条件』であったため、独力で歴代プリキュアと対等に戦える事に関しては羨望の眼差しを浴びたのだが。
「のび太のところに行ったのは自由意志だし、別に、みんなを捨てたわけでもないんだけど…。切ちゃんとセット扱いをこっちの都合も聞かずに押しつけるってのは迷惑なんですけどね」
「異世界に行って戻る事情ってのは理解されないからね、なかなか」
ラブリーも出身世界特有の事情を持つ。その関係で、のぞみ達『プリキュア三羽烏』を慕っているが、この場合は悪くないことであるため、この場合は三人はそれを受け入れている。特にのぞみは後輩から慕われるというより、むしろ心配されていた側かつ、黒江達に最近は子分扱いされている側(ウィッチとしては後輩なので、当然だが)なので、特に嬉しがっている。
「それはそうですよ、ラブリー。私がプリキュアに戻った時、妹にパニクられたんですから」
「ブロッサム、どういいわけしたの?フェイトちゃんに」
「それがですね……今の体の素体になったアリシア・テスタロッサはフェイトが歴史改変したから生き長らえたようなものだし、歴史改変の帳尻合わせか、子供の頃は病弱で…。参りましたよ」
フェイトは今回の転生をした後に歴史改変を行った。アリシア・テスタロッサを存命させ、自身の存在を『アリシア・テスタロッサの出来損ない、マガイモノ』(元の歴史でのプレシアの言)から『プレシア・テスタロッサの第二子・アリシア・テスタロッサの年の離れた実妹』という形に書き換えた。その帳尻合わせで『PT事件』は『病弱な長子の体質改善のために第二子を駒にして起こした』(実際は『自分の全てを受け継いだ後継者』が欲しかったが、『頭脳と魔力』が長女と次女に別れてしまったから、その融合を企んだという。親の傲慢だが、プレシアは何かかしらの形で『狂う』事は確定路線であった。だが、完全に愛情が失われてはおらず、最終的に自首し、収監された。二人の親権は裁判の判決を受け、正式に放棄した)という形になり、事件後は姉妹でリンディ・ハラオウンに引き取られるという結末となった。そのため、プリキュアへの覚醒で体質が改善したと言っても信じてくれないのである(プリキュア化は『身体強化』もセットなので、アリシア・テスタロッサの病弱さはキュアブロッサムに戻ったことで解消されている)。
「で、今の仕事は研究員なんだよね?」
「母さんの後を継いだから。魔導師としてはペケのようなもんでしたし、私」
花咲つぼみの記憶とプリキュア化能力の覚醒は就職後であったため、本職は研究員である。母親の魔導師としての才覚を自分は受け継いでいないと明言(フェイトはその才覚を受け継いでいたために完全再現を願ったプレシア・テスタロッサの意に沿わない存在と見做されたのが史実である)する。そのため、大魔導師の発言力が強かった時空管理局では、M動乱以前は日陰者扱いであった。だが、実の妹が時空管理局のエース魔導師として頭角を現した事、義兄のクロノが改革派のホープとなったこと、自身にプレシアの研究者としての才覚があった事と動乱を要因に、時空管理局に残された若手研究者のエースと祭り上げられた。プリキュア能力はそのおまけのようなものと思っているとも述べる。
「そう言えば、つぼみちゃん、前世だと植物学者になったっけ」
「ええ。今じゃ時空管理局のプロパガンダで祭り上げられてますけどね」
「何を研究してるの」
「今は地球製兵器の時空管理局での保有の方便を研究させられてます。いくら地球連邦の実質的な傘下に組み込まれたといっても、建前上の問題があるので」
「建前上?」
「つまり、本音は地球製兵器を使わないと、弱体化した組織が維持できないくらいだけど、次元世界にいきがった方針を押し付けていたぶん、政治的に苦しいんですよ。要は上の政治的判断ですよ」
「あってないようなもんなんですけどね、今の管理局なんて」
調にもそう言われるほど、時空管理局は形骸化していた。M動乱という動乱を利用して離反した世界に艦艇が接収されるという事態も起こったため、最盛期に数千隻ともされた時空管理局次元航行部隊はM動乱後にはわずかばかりの艦隊を(改革派の息がかかっていた艦隊の所属艦艇)残すのみ。本局に送り込まれた改造人間部隊(デルザー軍団)に多数の待機艦のほとんどをスクラップにされたからである。もちろん、そこに数千隻の全てがいたわけではないが、かなりの数が失われたことは事実だ。ラ級戦艦『ソビエツキー・ソユーズ』が顔見世程度であるが、時空管理局の艦隊を中央突破した光景がバダンの強烈なプロパガンダに使われた事から、それまでの権威が崩壊。管理局の秩序から離反する世界が続出したため、『管理局は名ばかり』という状況に堕ちたわけだ。秩序が失われる事がはばかられたため、『看板はそのまま、実質はより巨大な組織の傘下へ』を地で行く経緯となった。時空管理局はM動乱を契機に、地球連邦の一組織扱いになることで名前は存続したが、次元世界を統括・管理する地位からはものの見事に転落したのだ。それほどにOTMなどのオーバーテクノロジーの優位性は大きく、時空管理局の自信を木っ端微塵に打ち砕いたのである。
「今じゃ、内部分裂で人員不足が顕著になって、地球連邦軍が不用品扱いで放出したモビルドールを買い込んでる始末ですからね、あそこ」
「それだけ、人員不足が深刻って事ですよ、調さん」
時空管理局の窮状はなりふりかまわずに『地球連邦軍製の兵器』を買い込むほどで、なのはが大きいやらかしにも関わず、一佐までの出世が確約されている一因でもある。
「時空管理局は動乱で質量兵器への戦略的劣位が明らかになりましたからね。戦術的には優位でも、数がないんじゃ、集中投入もままならないし」
「戦力の逐次投入は愚策っていうからね。今の問題は他の戦線がうるさい事だけど」
「スーパーロボットが抑え込んでるんだから、いいじゃないですか。怪異の事は。遊軍化した人材を活用してるんだから」
「他の戦線の人は空母部隊のウィッチや戦況が落ち着いた戦線のウィッチから引き抜けとか言うけどさ、練度がないと、戦闘爆撃機にやられるのがオチだよね」
「アメリカのヤーボは手強いですからね」
プリキュアや調にとっても、P-47やF4Uはうるさい存在である事が語られる。米軍系戦闘爆撃機は戦線で流通する高角機銃では撃退もままならないため、防空部隊を恐れさせているからだ。(扶桑では、ボフォースの普及が艦艇優先であった都合もあり、未だに九六式25ミリ高角機銃が防空部隊で使われているのもあり余計に恐れられている。)
「ジェットストライカーの使用はどうするの、隊長は」
「物量が常軌を逸したレベルだから、使用許可が出ました。連中、こっちが100落としても、1000機出してくるんだから」
「バケモンだね、アメリカって」
「国家総力戦だと、この時代の他の全部より強いんじゃないんですか。日本ががんばって10000機の飛行機作る間に10万や20万造れるし、石油も本土でジャブジャブ取れるんだし」
「この戦い、どうやって勝つつもりなのかな、上の連中」
「政治屋連中や銃後は無理難題言ってますからね。富嶽でのリベリオン爆撃を大規模にするそうです。ニューヨーク空襲の第一陣が今日、ブリタニアから出るはずです」
「ニューヨーク空襲か。日本から文句出ない?」
「扶桑が行う攻撃だから、一応は法的問題はないそうです。それに誘導爆弾と巡航ミサイルを投入するそうなので」
「巡航ミサイル?この時代じゃオーバーテクノロジーじゃない?」
「原始的なのは(V1ロケット)、もう出てますよ。ウィッチに従来どおりの絨毯爆撃に反対意見が多いとかで、誘導爆弾と巡航ミサイルを搭載した冷戦型のジェット戦略爆撃機が大規模に集められてるそうな」
ランカスターや連山などのレシプロ四発機は戦術支援に回され、飛天やバルカン、ヴィクターなど、新鋭のジェット戦略爆撃機が矢継ぎ早に生産され、ブリタニアに集結。誘導爆弾と巡航ミサイルを多数搭載し、リベリオン爆撃の主役をレシプロ戦略爆撃機から引き継いだ。そのため、敵がせっかく縮めた戦略爆撃機と要撃機の性能差がまたも逆転した事になる。
「ジェット機で爆撃を?」
「ここの世界の技術屋は『反則だ』とか言ってますけど、仕方ないじゃないですか、ラブリー。史実じゃ、日本がやられてる時期なんですから」
「技術屋はすぐそれだね。悠長にテストできる事態じゃないのに」
「ドイツの技術屋はうるさすぎます。自分達が造った戦闘機や爆撃機がコケたからって」
「あの国はカタイですからね」
「ドイツ人はカタブツ多いお国柄って本当だなぁ」
ウルスラ・ハルトマンはGウィッチながらも、技術者としてのプライドや技術発展の健全さの見地から、日本が進める技術面のチートに反対したが、一部の超人に依存する体制の異常さを解消する近道だと言い返され、論破されてしまう事が増加し、最近は疲労感を隠さなくなった。Gウィッチながら、行動が尽く裏目に出ている人物の筆頭に挙げられている。日本連邦が連合国の主導権を握りつつある時代において、カールスラントの軍事技術のライセンス料ボッタクリは完全に悪手であった。発覚後、その報復として、日本が後世の技術を大っぴらに使い始めたために、技術での外貨獲得手段を尽く潰されたのだ。
「ウルスラさんを智子さんはどうするんですかね?」
「日本と米国に留学させるそうですよ。今回のことで相当に本国につつかれたみたいで、慌てて教本を読みふけってます」
「もう遅い気が…」
「ほとぼりが冷めるまで、日・米に滞在させるって、エーリカさんが言ってます」
「それがいいですね」
「天誅組も送ることが考えられてますけど、どうなるんですかね」
「のぞみちゃんは『天誅組の連中は練度がまだなぁ…』って言ってたから、見送られるんじゃ?極天隊が発足したっていっても…」
――天誅組の動員に前線は否定的であった。人員の入れ替えと引き抜きがまた必要となる上、45年までの半年、エイラ・イルマタル・ユーティライネンの取り扱いに本国が困るという事態も起こっていたため、天誅組の全動員は国防会議で否決された。ただし、志願者は維新隊の第三小隊の交代要員として送り込むという条件での採択である。魔弾隊は基本、新選組と維新隊の交代要員供給としての役目が主要任務だが、44戦闘団の精鋭をまるごと得たので、事務手続きに手間取っており、天誅組からの供出は押し通された。ラブリー達の予測と裏腹に、維新隊の交代という形で志願者が派遣され、幹部達は維新隊を前線での訓練所として運用し始めるのであった。
「で、どうします、あの隊列」
「そうだねぇ。一発でかいのかますよ。あたしにやらせて。剣使いとして、いっぺん真似したかった技あるんだ」
「?」
「ラブリーライジングソード!」
ラブリーはあいも変わらず突撃してくる歩兵の群れを一瞥し、エネルギーの剣『ラブリーライジングソード』を召喚すると、刀身を炎で熱し、エネルギーに炎属性を加える。そして、それを円月殺法か何かのように両腕で剣を持ちながら、弧を描く。
「ラブリーフレイム!!」
ライジングソードから火球を打ち出し、数千人単位の兵士達を拘束する。
『ラブリーサンダァァ…フラァァッシュ!!』
エネルギーを最大にまで増大させ、巨大な刀身を作り、それをエネルギー刃として大上段から振り下ろす。雷も纏っており、ラブリーが何を見たのか、ブロッサムと調は合点がいった。
「元祖勇者ロボですか、あなたは」
「いやぁ~、太陽の勇者は使われてるし、伝説の勇者はでっかいビーム砲だしさ…」
「矢にすれば?」
「それじゃ、ハートとかぶるじゃん」
ラブリーはロボアニメ好きらしく、意外にそこは考えていたようだ。のぞみと違い、現役時代にソードを多用していたため、剣技が手慣れている。そこが歴代随一の武闘派と謳われた理由だろう。
「これで数千人くらいは後方に逆戻りでしょう。エールが見たら、なんか言いそうですけど」
「ま、のぞみちゃんの事があるからね。はなちゃんは優しすぎたんだよ。話し合いが通用しない相手だっているんだから」
めぐみはのぞみを慕う関係か、キュアエールが前世でキュアドリームと意見が対立した時にはドリーム側についた事を明確にする。ただし、野乃はなの顔も一応は『立てている』ため、心情としてはのぞみ側であるが、はなの優しさを否定はしないらしい。
「殴り倒さなきゃ、まず話を聞かないバカも多いからな」
「ケイさん」
「広報に回すフィルムの受け渡しが終わったんでな。ラブリー、よく一発でわかったな?エレンに似てるって言われんだけど」
「なんか声にヤサグレ感あるし、トーンも低いんで」
「やっぱそこか」
『話だけで解決するなら戦争なんて起きないさ、ニュータイプだって戦争がなきゃ見向きもされなかったさ』
「あれ、少佐。一緒だったんですか?」
『時空管理局向けのMSのデモンストレーションをやらされていてね。途中で合流した』
ハイνガンダムをデモンストレーションに使うあたり、地球連邦軍の売り込みへの期待度は相当であるのがわかる。
『装甲車両は任せてくれ。戦車駆逐車程度は天蓋に60ミリバルカン砲を打ち込めばお釣りがくる』
「え、ミサイルじゃないんですか」
『バルカンで充分にお釣りがくるさ』
アムロはハイνの頭部バルカン砲を使い、ラブリー達に狙いを定めつつあった戦車駆逐車『M36ジャクソン』などを掃討する。チハ以上の大口径砲をガトリング砲で叩き込むことは真面目に考えると恐ろしいことだ。
「うーん。オーバーキルですね」
『MS相手には牽制程度のものだが、戦車駆逐車程度なら、一発で木っ端微塵にできるさ』
「いいんですか、少佐」
『歩兵には撃てんが、装甲車両相手なら問題はないさ』
「うわぁ、大きい薬莢ですね」
『示威になるから、回収はしなくていい』
νガンダム系のバルカン砲は薬莢式であるため、薬莢が転がる。アムロは敵への示威のため、回収はしないという。
『どうせ落ちた衝撃で歪んで使い回せん。これで敵はガンダムの存在に怯えたはずだ。当分はこのルートでは襲撃はしないだろう』
「いいんですか?」
『撃退できれば、こちらの目的は達せたからね。だが、攻める側になると話が違う。防御が優位だから、攻撃側は数倍の力が必要になる。これが軍事的な鉄則だよ』
アムロは長年の経験で戦場の鉄則を知っていた。攻撃する側と守る側の立場では必要になる兵力がまるで違うのである。その論理に従う形でジオンのモビルアーマー群は生まれ、地球連邦軍もデンドロビウムを開発し、ディープストライカーを開発したからだ。
『幸い、敵は地上では信頼性のある実弾を好む。その分、宇宙じゃ増槽代わりって言われるフルアーマーの有効性が生きるがね』
増加装甲はビーム兵器の普及後は効果が疑問視されるが、地上では未だに多用されている。アムロは機体胸部の増加装甲は排熱の関係で地上では装着しない事があるが、これはそもそも被弾率が低いためもあるし、Iフィールドがあるからだ。
『破壊された残骸は陸軍に回収させよう。空間騎兵が到着次第、帰投する』
「了解」
戦車駆逐車の残骸はかなりある。ほとんどが原型を留めていないが、至近弾か何かで横転したものもあった。兵士達は先程の必殺技の応酬で数千人単位でけが人続出であり、もはや降伏するしか道はない。アムロが五体満足な敵兵と交渉し、ラブリー、ブロッサム、調、圭子は兵士らの武装解除を行う。回収した武装はM1ガーランドやカービンなど。カービンは扶桑軍垂涎の的の逸品であるため、鹵獲が推奨されているほどだ。
『降伏するなら武装解除して、両手を上げて整列しろ、そうでないものは近づいて来るならその進路をバルカンで耕してやる!』
アムロが機体の外部スピーカーで促すと五体満足な兵士や将校が白旗を上げ、武装解除に応じた。四人は検分を行い、武装を集める。
「第二次世界大戦のアメリカって、日本と違ってさ、もう自動小銃持ってたんだー」
『正確には半自動だ。それに黎明期のものだからね、自動小銃の。アサルトライフルではないよ』
集められた武装は空間騎兵が到着次第、空間騎兵が武器庫に持っていき、自由リベリオン四軍に供給される見込みである。降伏した敵は比較的に装備が恵まれた歩兵部隊のようで、BARも配備されていた。
『ん、BARがあるじゃないか。シャーリーにもってってやれば、喜ぶぞ』
「だな。お前ら、誰かもってってやれよ」
「へー、これが…」
「メロディがよく使ってますよね」
『使いやすいからね、それは』
「ま、欠点もあるけどな。古い設計だし」
シャーリーがBARを好むということをアムロは知っていたので、一丁を確保させる。欠点もあるが、リベリオン系ウィッチに好まれる火器であった。ラブリーが持ち帰る事になり、後日、銃は整備された後、シャーリーのもとに渡ったという。