ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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第50話の続きです。


第五十四話「ダイ・アナザー・デイの戦いその10」

――IS学園世界では、織斑千冬が協力者に分類されていた。彼女自身の同位体がキュアビート/黒川エレンであったため、何かと彼女に『帳尻合わせ』を要請され、気苦労が増えていた。――

 

「弟がそちらにご迷惑をかけた件ですが、私どものほうでも猛省させておりますので……。ええ。引き続き、ボーデヴィッヒ、オルコットとデュノア、篠ノ之についてはそちらで」

 

千冬は黒江に個人的に協力しており、代表候補生と箒を黒江のもとに送り込み、ISのデータ収集という旨味をIS世界の各国にちらつかせる事で派遣を了承させていた。イギリスは試作ISの二号機を奪われ、あまつさえ改造された(束に作り直された)事で不祥事が明るみに出る事を恐れており、セシリアのブルーティアーズを改造するという案を了承した。表向きはIS学園での改良だが、実際は地球連邦軍による改良であった。

 

「うむ。こちらでもデータ取りはしている。それがまとまったら、稼働データをそちらへ送る」

 

「よろしくお願いいたします」

 

千冬との電話を終えた圭子。箒の赤椿(黒江が接触した世界ではこの表記である)はもはや半聖衣と化しているため、正確にはISと言えなくなった。その関係で、『原型を比較的に保っている』二機はデータ収集の対象とされており、ススキヶ原で稼動テスト中であった。

 

――ススキヶ原――

 

 

「~~!私が『ポンコツ』扱いとはどういう事なのです、ラウラさん?」

 

「事実だろう?お前は射撃以外は見るべきものはあまりないし、未来世界の技術を入れなくては、端末を操作中はその場から動けなかった。私達『プリキュア』にとっては格好の標的だ」

 

キュアマーチはそう断言する。セシリアは攻撃端末を操作中はその場から動けないという弱点が存在し、プリキュアにとっては『格好の標的』であった。実際にラウラが『覚醒』直後に模擬戦を行ったところ、ブルーティアーズの弾幕をあっさりと抜けられ、『プリキュア・マーチシュート』を決められている事実もセシリアには屈辱であった。

 

「プリキュアとしては比較的に若輩である私でも容易に隙を突ける以上、先輩方では尚更だ」

 

「そうね。私達は実戦の経験があるから、あのくらいのオールレンジ攻撃はどうという事はないわ」

 

キュアサンシャインにもこう言われ、立つ瀬がないセシリア。射撃に特化しすぎたため、接近戦に持ち込まれると無力に等しい彼女はキュアマーチのみならず、より接近戦寄りの能力を持つキュアサンシャインにも赤子の手を捻るようにノックアウトされた。『ガビ~ン』という擬音を出しそうな勢いで落ち込むセシリア。装甲部が小型化され、人間サイズになったため、『見た目の露出箇所が多めのコンバットスーツ』にしか見えなくなったIS姿でガックリと肩を落とす。

 

「うぅ。偏向射撃も覚えたというのに…」

 

「あの程度の出力じゃ火力不足よ。サンフラワーイージスで軽く防げるもの。それに偏向射撃には限界があるし、未来世界のファンネルより機械的挙動だから、タイミングも読めたわ」

 

サンシャインに『軽く防げる』と言われ、更にショックを受けるセシリア。仕方ないが、射撃が通じない相手には彼女は相性が悪い。曲がりなりにも代表候補生の自分が連戦連敗なのに相当に堪えたか、最近はISの状態での生活に一番力を入れている。

 

「ところで、なんで君たちは自分の世界と違う世界を守ろうとするの?」

 

「私達は元々、誰かの笑顔を守りたい気持ちで力を得たの。世界を守るのはもののついでみたいなものだった。誰に強制されたわけでもない。物好きって陰口もあるけれど、私達はそんな気持ちで戦ってきたわ」

 

サンシャインは質問したシャルにそう返した。歴代のプリキュアはそういった気持ちで世界を守ってきたということを教える。

 

「私達は平成の中期から代々、世界を守ってきたが、そういった意味では結果論になるな。だが、そういった小さな気持ちが世界を守るための光になるのも事実だぞ、シャル」

 

「私達は古株って言われてるほうだけど、仮面ライダーみたいな厳格な上下関係はないんだ」

 

「あの方達は昭和時代以前の体育会系のノリだからな」

 

昭和ライダーは多くが同じ大学の先輩後輩である関係もあり、体育会系的上下関係がある社会である。一方、プリキュアは平成期以降の世代の者が中心であるため、昭和仮面ライダーに比べると遥かに緩めの空気があるコミュニティである。職業軍人であるラウラ(キュアマーチ)から見ても、昭和ライダーのコミュニティについてはそういった認識であるあたり、昭和ライダーの縦社会は『昭和時代以前の名残り』と見られているのが分かる。

 

「あの方達はサイボーグと言っておられましたが、いったいいつ頃に?」

 

「最初の仮面ライダーとなった本郷猛氏は昭和46年頃に20代半ばだったというからな。1970年代に超技術で改造され、そこから長い時を生きてきた。そうとしか言えん」

 

「ええ。彼らは自分達が必要とされない世界を願い、眠りについていたけれど、22世紀の終わりに彼らの存在が必要とされて、彼らは戦いの場に舞い戻った。私達は彼らに助けられた。だから、その恩返しも兼ねてるのよ」

 

プリキュアオールスターズには、ライダー達の介入で敗北を免れた戦いがある。そのことをサンシャインは知っていた。また、ステラ・ルーシェとしての自分の肉体を治療した技術は昭和仮面ライダーが現役時代に残した技術をもとに構築された医療技術である事も聞かされていたため、昭和仮面ライダーに恩義を感じていることを示唆した。

 

「彼らはいったい…」

 

「一夏は嫌っていたが、世界を守れる資格のある方たちだ、セシリア。あいつは英雄と呼ばれる存在に反発するが、教官がある種のヒーロー視されていること、あいつ自身がそういう行動をすることを考えれば矛盾でしかない。それを自覚して欲しいものだ」

 

プリキュア覚醒で一夏と折り合いが悪くなってしまったラウラ。以前と違い、お互いに距離を置くしかなくなったことへの寂しさも覗かせる。

 

「確かにね。織斑先生にこっぴどく怒られて、最近は箒が何をしているのかも詳しくは知らされてないからね。鈴の話だと、ふさぎ込んでるみたい」

 

「なんだかかわいそうですわね…」

 

「一夏は教官に憧れていた。その教官に不干渉を命じられれば、自暴自棄になっていても不思議ではない。だが、教官としても、あの時、我が身を顧みずに戦ってくれたRXさんらを侮辱する言動をする弟を見過ごすわけにもいかない。それに、何かかしらの懲罰は必要だからな…」

 

キュアマーチ(ラウラ・ボーデヴィッヒ)とシャルから、織斑一夏は姉に強く叱責された事、ラウラに『自分が英雄的行動を取っている』ことを指摘され、そのことを自覚したことで自己矛盾に気が付き、塞ぎ込んでいる事が語られた。そんな一夏を千冬は『不肖の弟』と称し、その同位体の転生であるキュアビート/黒川エレンも同様の発言をしている。

 

「鈴から聞いたけど、今、君達の仲間が関わってる戦争って宇宙戦争なの?」

 

「宇宙戦争をしていた世界で負けた軍隊の残党が転移した先の世界でのアメリカ軍をけしかけて起こした戦争よ。私達はその世界での日本軍に与して戦ってるから、誹謗中傷多いのよね。史実と立場は真逆というのに」

 

扶桑皇国に与して戦う歴代プリキュア達にはその種の誹謗中傷すら存在していたが、リベリオン合衆国こそが史実の『枢軸国』の立場である事の周知が図られ、一応は沈静化した。だが、扶桑皇国の体制を破壊し、史実戦後型の体制への変革を戦争を利用して行おうとする勢力は確かに存在し、リベリオン合衆国に裏で与する者もいる。その者たちこそが日本連邦の獅子身中の虫であり、内なる敵といえる。

 

「つまり、そいつらがその世界で起きるはずのない太平洋戦争を起こしたと?」

 

「政治中枢を抑えた上でね。その世界だと、早期に日本が太平洋に進出していたから、史実ほど米国は台頭してきていなかった。それと日英同盟があるから、太平洋戦争が起きる要素はフランクリン・ルーズベルトの野望くらいしかなかった。連中は『フランクリン・ルーズベルトの遺志』を大義名分に、向こうの議会を傀儡にして、起こした。第二次世界大戦当時の米国は全世界を敵に回しても戦える力が文字通りにあるから、日本側は『日英同盟があったって、死に体の英国と組んでも意味ない』って喚いてるわ。仮にも1945年以前の英国は経済が死にそうでも、軍事的には世界二位なのだけど」

 

サンシャインも呆れているが、英国は戦後は急速に落ちぶれたとは言え、1945年当時は世界有数の海軍が未だ健在であった時代である。日本が問題視しているのは『空母があまりいない』ことだが、ウィッチ世界では『連合国体制があるから、本格的な空母機動部隊は他国に任せる』方針をブリタニアは取っていたため、連合国体制が綻んだ事そのものが想定外だったのだ。

 

「そうですわ。いくらアメリカが拡張したと言っても、45年なら、ロイヤルネイビーが昔年の規模のはず。日本の方々が悲観的になられる必要はないはず」

 

「いくらアメリカが軍事力を史実第二次世界大戦後期の水準にしようとしても、最低でも2年から3年はいるはず。日本はなんで悲観的なの?」

 

「史実のトラウマだろうな。なまじっか史実で優勢だった時期があったから、そこから奈落へ突き落とされたトラウマが強いのだろう。だから、現地の日本軍に史実の戦後水準の兵器への近代化を強いて、混乱を引き起こしているのだ。史実より開発速度が遅い世界に、史実の論理を持ち出したところで、意味はないんだがな」

 

「モビルスーツだって、一度開発すれば、10年位は使い回す時代を迎えてるっていうのに、日本の官僚はうるさいのよ。自分達だって、50年落ちの戦闘機を使ってるのに」

 

サンシャインの言う通り、潤沢な予算がある地球連邦軍も数的主力はジェガンのままであり、ジャベリンもジェガンに比して少数であり、ジェイブスもミッションパックが不評であり、ジェガンのさらなる改修がダイ・アナザー・デイ途中から構想される始末である。ジェガンはかつてのリーオーやザクⅡと同列に語っていいほどのバランスの良い機体であるが、小型機が現れる時勢に配備されたため、新鋭機時代から『技術的に旧式』と言われているが、結果的に主力であり続けている。61式戦車が未だに使われているのと同じ理屈だ。

 

「でも、これは消耗戦だよね」

 

「第二次世界大戦の頃は武器の生産数が多いから。レシプロ機は車感覚で作ってるから、こうやって馬鹿みたいな数を出してくるのよね」

 

「二昔前くらいのシューティングゲームのような数ですわね」

 

「敵味方合わせて1000機以上が使われてるし、ジェットの殆どは未来世界から持ち込まれた機体だ。この時期はMe262が最新鋭と言われていたから、そこに戦後世代のジェット機を持ち出せば、ミサイルを使うまでもない」

 

キュアマーチの言う通り、Me262が最新鋭機と言われた時代に戦後世代の戦闘機を持ち出せば一方的なキルレートを記録できる。とは言え、戦後第四世代機は機銃のみによる空戦はあまり想定していないため、バルカン砲の発射可能回数は多くない。そのため、機銃の弾数制限が事実上存在しないパルスレーザーにする改造も黙認されている。例えば、黒江はパルスレーザーの出力確保のため、乗機とするジェット戦闘機をVF規格の熱核タービン搭載に改造している。正確には22世紀末期水準の戦闘機対策であるが、基本的に数がある第二次世界大戦水準のレシプロ機と初期ジェットしか出ない戦いには多少のオーバースペックであるが、それが認められるほどの数だ。

 

「古式の海戦というものを日本側は理解しておらんよ。超甲巡を『戦争にしか使えない無用の長物』というが、軽巡のほうが戦争にしか使えん代物なんだがな」

 

ウィッチ世界では大砲が怪異に有力な兵器である事から、軽巡の整備は低調になり、重巡以上の艦が整備されてきたため、人同士の戦争を前提にした理論は当てはめるには無理がある。また、超甲巡はあくまで『戦艦サイズの重巡より強い巡洋艦』がコンセプトであるため、史実のアラスカの実績だけで評価するのは間違っているのだ。

 

「巡洋艦は安い、使いやすい、数を揃えられるか?そんな事は米軍が勝ったから言えるものだ。他国はそんな余裕はないのだぞ」

 

「アメリカを基準に考えると、感覚がおかしくなるよ。他の国はそんな事できないってのに」

 

日本海軍の個艦優越主義は皮肉な事に、後世の日本人よりも外国人に理解されやすいドクトリンとなった。正確に言えば、海自も予算と政治的都合でそのドクトリンを継承しているのだが。

 

「日本海軍は外征海軍化したのは1910年代以降だが、艦艇の航続距離は我がドイツのそれより遥かに長いのだぞ?沿岸海軍というのは、外洋に出れない海軍の事を言うのだ」

 

キュアマーチはドイツ海軍に外征能力がないことを指して、不満を漏らす。第一次世界大戦で帝国海軍が滅んだ後は二流海軍の誹りを受ける身であるため、カールスラントが外征海軍の夢を追いかける事に理解があった。扶桑皇国は全てを自国で対応できるため、世界第二位の質を持つ外征海軍であると言えるが、日本の知識人からは『装備だけ立派な沿岸海軍』とする誹りがある。

 

「ラウラ、凄く不満が…」

 

「我が国を『潜水艦だけ作っていればいい』とバカにされればな。第一次世界大戦では世界二位だったのだぞ?まったく」

 

カールスラントはドイツからも『フリゲート艦や潜水艦だけ持っていればいいだろう?』と言われるほどだが、旧オーストリア・ハンガリー帝国(オストマルク)領もカールスラント領となったため、ある一定の量の海軍は再整備する必要があるため、そこもドイツを困惑させた点である。その兼ね合い上、Z計画はある程度は再開させる必要が生じ、カールスラント海軍総司令『カール・デーニッツ』大将を困惑させている。ドイツからは『ビスマルク』と『ティルピッツ』を解体すべしという声もあるが、その代替になり得るものをドイツ側が用意できないため、戦艦を五隻は再整備する事がなし崩し的に認められた。当時、既にビスマルク級戦艦は性能が陳腐化していたため、その代替艦としての戦艦の整備は造船所の雇用維持のためもあり、ドイツ側が折れた。カールスラントは一からの新造で46cm砲の搭載を目指したが、当時、既にバダンから鹵獲した『H41級戦艦』がノイエ・カールスラント沿岸に係留されていたため、その艦の再整備が堅実と判断されるに至る。日本連邦が超大和型戦艦をも多数保有する時代にあっては『力不足』だが、40cm砲の搭載すら稀である欧州艦勢では比較的有力であるため、ガリアが軍備再建すら覚束ないことを考慮すれば、欧州随一の戦力と言えた。

 

「でも、僕のところの同位国なんて、軍隊の維持も覚束ないんだよ、ラウラ。それを考えると羨ましいよ。」

 

「それは言える。だが、日本の政治勢力はミスを犯している。扶桑の軍事費を削らせて、疫病の経済対策費に当てさせたことだ。扶桑の軍人などにかなり不満が溜まっている。日本は経済対策を全員給付にしないつもりだったのを、扶桑の厚意で資金が確保できたようなものだというのに、扶桑の軍人の福利厚生費を削ったからな。いずれ不満が爆発するかもしれん」

 

「でも、クーデターはもれなく鎮圧されるよ?」

 

「今後、彼らは新規雇用の確保が厳しくなるだろうな。その分は義勇兵の雇用で補うだろうが、戦時しか使えん。幸い、現地が戦時だから良かったようなもの…」

 

「現地はどうなってるのですか?」

 

「日本がアジア唯一の列強である事は変わらんが、中国が滅び、世界秩序は第一次世界大戦前の状態だ。それを第二次世界大戦後の状態に強引にしようとしたから、現地で混乱が生じているのだ」

 

ウィッチ世界の混乱は21世紀世界がウィッチ世界の世界秩序の時計の針を史実第二次世界大戦後の状態にまで進めようとしたのが最大の混乱のもとであり、扶桑は利益も大きいが、軍隊は不利益を少なからず被ったと言える。(新規雇用の確保が至難になった代わりに、戦線の穴埋めのために義勇兵を多数雇わざるを得なくなったため)

 

 

 

 

 

――そんな雑談の通り、ダイ・アナザー・デイも三週目に入ると、64Fと第一航空艦隊、グローリアスウィッチーズ以外の航空ウィッチ部隊は哨戒以外に役に立たないと見なされ、戦線の要は陸戦ウィッチ部隊と陸上組のプリキュアであった。その間隙を埋めるのが箒や調などであった。二人はこの時期には既に聖闘士に叙任済みであり、箒は星矢までの繋ぎ目的で射手座の黄金聖闘士となり、調は馭者座の白銀聖闘士であった。調はシンフォギア装者と、箒はIS操縦者と掛け持ちであったが、聖闘士の力はそれぞれの元の技能と両立可能であるため、調はシンフォギア姿で、箒は半聖衣化したIS姿で闘技を使用し、戦線を支えている――

 

「ケイロンズライトインパルス!!」

 

箒はこの時点で射手座の黄金聖闘士であるため、代々の射手座の継承技の他、黒江が二度の転生で復活させた闘技を伝承しており、これもその一つである。当然ながら、その暴風は後に現れるキュアイーグレット(キュアウィンディ)の起こせるそれを凌駕しており、機体の元の武装を用いるよりも敵に効果絶大であった。

 

「姉さんには悪いが、機体の元々の武器を使うまでもないな。それにこの機体には色々と仕込んでいたそうだが、無効にした。愚痴ってそうだが、そもそもあの人はやりすぎた。その報いは受けてもらおう」

 

箒は聖闘士叙任後は姉との力関係を逆転させる事に成功した。束はこの時期にはゼウスが生き返らせた先代黄金聖闘士たちの監視のもと、IS学園に滞在して働いており、『細胞単位でオーバースペック』を自負する彼女も流石にセブンセンシズに目覚めた者達相手では赤子同然であるのは否めず、愚痴りつつも仕事をこなす日々である。箒は『自らは凡人である』」という自覚が強くあったため、文字通りの超人である姉に強いコンプレックスがあった。それを振り切ったのは自分も超人になったからであるなど、意外と姉へのコンプレックスが強い。その一方で世界を好き勝手できると思っている姉に何かかしらの制裁を加えたいため、先代黄金聖闘士たちに監視を頼んだ。それが箒なりの自分の世界への篠ノ之家の人間としての償いと言えた。

 

『アトミックサンダーボルト!!』

 

独白を終えると、アトミックサンダーボルトを放ち、敵歩兵師団の中央を吹き飛ばし、打撃を受け、撤退する味方陸戦ウィッチ部隊の援護を行う。

 

「こちら箒。味方のウィッチ部隊を支援中。調、そちらはどうだ?」

 

「私も味方の後退を支援中。敵はM26重戦車とM36ジャクソン戦車駆逐車を本格投入してきたのは間違いないです。味方の47mm/ L40戦車砲じゃ豆鉄砲ですよ」

 

「陸戦ウィッチは軽めの砲を好むというからな。側面から狙わすしかないな。アハト・アハト以上の砲を積むと、ISのようなパワードスーツ状にならざるを得んからな。この時代の技術では」

 

「扶桑の陸戦ウィッチは武装の強化が遅れてますしね。殆どいないです」

 

「リベリオンも有志しかいないからな。ヒーロー達はバダンの抑え込みに忙しい。東郷が敵の兵站を混乱させている隙に私達は味方の再編を補助しなければならんぞ」

 

「やれやれ。味方の航空ウィッチはなんのためにいるんですか?」

 

「愚痴を言っても詮無きことだ。連中は宛に出来ん。装者達も休息は必要だ。我々もだがな」

 

「イベリア半島は世界遺産も多いから、迂闊にバスターランチャーも使えないし、面倒ですよ」

 

「まぁ、あれは対艦/対要塞用だし、破壊範囲も大きすぎる。最悪、空間が歪むからな。クリスのような射撃での広範囲制圧を考えるんだな。手軽だし」

 

「宝具はいざという時まで温存したいですしね。どうしよう」

 

「ビームマグナムやヴェスバーを作って、使ってみろ。クリスの領分は犯しくはなかろう?」

 

「確かに」

 

箒は調に『空中元素固定』でガンダムタイプの武器を作ってみろとアドバイスする。雪音クリスの領分を侵さない武器の使用を教える。

 

「さて、私も…」

 

箒も広範囲制圧用の武装として、Wガンダムの使うバスターライフルを使う。ハッタリも効くため、開けたところでは心理的効果も挙がるのがバスターライフルである。

 

「さて、最後の仕上げだ!」

 

バスターライフルは見栄え的意味でも『ハッタリが効く』ため、黒江、箒の両名はよく使用していた。通常のバスターライフルでも、半径150mに及ぶ激烈なプラズマ渦流と数十kmの灼熱の奔流を分かりやすい形で巻き起こすという特徴を持つため、サイズが人間サイズになっていようと、オリジナルのそれと同等の破壊を起こす。地上部隊に向けて撃った場合も『隊列を大きく崩せる』利点があるため、黒江と箒は『敵を撤退させるか、自身が離脱するための時間稼ぎに使う』武器として使用している。

 

「これでよし。引き揚げるか。調、そちらも仕事が終わったら離脱しろ。Gフォースの部隊に後は任せる」

 

「了解」

 

この頃の連合軍は『攻勢』を正式に起こすための陸軍の再編を急いでいるが、航空ウィッチ戦力が64Fと他の数部隊以外は殆ど『形だけ存在する』に等しいほどサボタージュしていたために大きく予定が狂い、敵の新鋭装甲戦闘車両の投入もあり、攻勢どころでない箇所も生じ、大きな躓きを余儀なくされている。特に扶桑とロマーニャの陸戦ウィッチ部隊は携行武装が当時の新鋭戦車に比して貧弱である事もあり、度々窮地に陥る。64Fの維新隊はそうした『綻び』が生じた箇所の火消しに駆り出され、キュアラブリーとフォーチュンらはそうして経験を積んでいく。ダイ・アナザー・デイは転生組や転移組のプリキュアにとって初の本格的な実戦となったわけだが、課題も多く生じ、ダイ・アナザー・デイ以降に『顔役』としての活動が義務付けられたキュアドリーム/夢原のぞみに少なからずの負担となったのも事実である。

 

 

―彼女は前世の後半生での薄幸ぶりからか、『プリキュアとして自分が必要にされ、敵と戦う』事にある種の充足感を感じるようになっているなど、のび太やキュアフェリーチェに危惧される『前世で生じた精神面の歪み』が次第に表面化し始める。ダイ・アナザー・デイではその歪みは表面化しなかったが、キュアルージュ/夏木りんを失う事を異常に恐れる、怒りが頂点に達すると『中島錦の持っていた攻撃性が表層化する』などの兆候は生じており、黒江達はドラえもんの協力でその要因を探っていく。彼女が持ってしまった歪みの原点は何であるのか。キュアブロッサム/花咲つぼみも気にかけるように、のぞみ自身が『前世』で負った心の傷が深いことを公言しているとは言え、根本原因は何であるのかは、ダイ・アナザー・デイの時点では正確には掴めていない。また、出身世界で『野乃はなと何らかの理由でかちあった』事を示唆した事、桃園ラブ、北条響もその際にのぞみに与したという事実は『本来は世代が違う第一世代プリキュアと第三世代以降のプリキュアとの間にあったジェネレーションギャップが何らかの形で表面化し、一悶着あったらしい』世界線が存在する証明と言えた――

 

 

 

 


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