ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前話の続きです。


第三十四話「ダイ・アナザー・デイの戦いその3」

――結局、前線の混乱はダイ・アナザー・デイの長期化を招いた。質で量を超えるというドクトリンが半ば挫折したため、現地部隊はキングス・ユニオンから装甲戦闘車両を大量に購入し、使用した。ほとんど独断だが、新式車両が間に合わない&最前線で優秀な人員をみすみす死なせられないの二つの現実を大義名分に、扶桑陸軍はセンチュリオンとコンカラーを大量に購入し、それぞれ『百人長型中戦車』、『征服者型重戦車』という名称で使用した。皮肉な事に、空軍に航空部隊を、海軍に船舶部隊を供出した事で余った陸軍予算で機甲戦力の急速な近代化を行えた事になる。(というより、使い道がそれと軍事インフラ整備しかないが…)また、扶桑が主力兵器と見込んでいた牽引砲の多くが廃棄(実際は自走砲へ改造)されたため、自走砲を整備するしかない事もあり、ダイ・アナザー・デイは扶桑陸軍を急速に近代化させた戦でもあった――

 

 

 

――この頃、扶桑空軍の活動が始まったが、問題も山積していた。まず、活動の根拠となる東二号作戦が撤回されたために、二個飛行隊が丸ごと宙に浮いた問題の解決のため、人員を各地への補充要員に割り当てる人事、特に練度の高い者は64Fに送り込む事が国防会議で決められた。予定では、本来は64との交代部隊になるはずであった教導飛行師団の部隊「111F」、「112F」の所属人員を各戦線の補充要員として派遣し、不満を解消させ、更に一部は防空部隊のテコ入れで南洋の防空強化に充てられた。ただし、故郷で盛大に『出征式典』や『出征式』を行った者も多いため、軍への批判を避けるため、ダイ・アナザー・デイ後に一律で作戦の従軍記章の授与をすることが議論された。日本側は新規の従軍記章の授与を露骨に渋ったが、元々、飛行学校から切り離した人員で教導飛行隊は編成されていた事、人員の軟禁状態の解除の要請、その練度から各戦線の欠員補充に使えるという判断から、各戦線への補充、南洋防空増強に供される人員が多数である事、日本国の財政に直接の影響がない事から容認し、『扶桑海事変従軍記章』と共に『ダイ・アナザー・デイ従軍記章』が作られるに至る。なお、『ダイ・アナザー・デイ従軍記章』は現場での俗名で、正式には『欧州・地中海反攻作戦従軍記章』である。扶桑は古参と若手/中堅との世代間対立に悩んでいたため、古参の軍歴に国家公認の箔をつけることで軍内の序列の定着を図った。だが、それまでの『その時々に現役の世代が一番えらい』とするウィッチ間の慣習を根本的に揺るがすため、ウィッチ世界全体を巻き込む騒動となる。扶桑としては、事変世代の引退期にあたる年代に突入していたはずにも関わず、そのシンボルであった七人に箔を与える事は躊躇する事柄である。だが、世代間対立を収めるために必要不可欠と見なされたのが扶桑海事変従軍記章であった。――

 

 

――皇居――

 

「陛下、扶桑海事変従軍記章の創設をご報告いたします」

 

「何故、八年近くもかかったのか、山本?」

 

「小官から申し上げます事は一つ。現場の反対であります」

 

山本五十六は作戦中ながら、従軍記章の創設が認められた事を昭和天皇に上奏した。昭和天皇は寵愛する黒江へのいじめ事件以来、信頼する武官は少なくなっており、この時代では山本五十六に信頼を置いていた。

 

「最近は来年でにも予測される次のクーデターの対策に時間を取られておりまして。それと、前回の事変は公式な終息宣言は出されておりませんので、平にご容赦くださるよう」

 

「うむ。前回のクーデターのゴタゴタで、それどころではなかったからね。黒江くんの問題への対処もあったからな…。」

 

「黒江くんを筆頭に、軍に残留している前回の事変経験者向けに従軍記章を創設しましたが、退役者向けのものは別のもので対処いたします」

 

「今の子供たちは何が不満なのかね?偉大な先達が現場に戻ったというのに?」

 

「現場は自分の実力を過信しておるのです、陛下。現役世代は過去の世代より強いとする迷信ですよ」

 

黒江たちは新兵~若手当時は銀色の旧世代怪異で、現世代怪異への世代交代の当事者である世代なので、現世代のウィッチからは『今の怪異を知らん老いぼれ』と見下される傾向がある。覚醒前のミーナもその先入観に囚われていた感があると坂本は愚痴っている。山本もミーナほどの人物でも先入観に囚われてしまう事をミーナの騒動で実感。ガランドに日本の技術情報を流し、ガランドはカールスラント所管の記録映像を蔵出しすることで取引し、ミーナの査問の際にロンメルのブラフに使わせた。結果、ミーナは覚醒し、副次的に扶桑へ501の管理権が転がり込んだわけである。ダイ・アナザー・デイ前後の時期は扶桑の騒乱の時代の幕開けでもあったことから、後世から『山本元帥の野望』と揶揄されるほど、山本五十六は活躍していた。軍令面では良くて凡人とされる山本五十六だが、軍政面では間違いなしの英傑であり、山本は国防大臣及び『Y委員会委員長』として、この時代における日本連邦のフィクサーとなりつつあった。

 

 

「授与は今次作戦の終了後を予定しております。現憲法下最後の陛下のご公務となりましょうぞ」

 

「うむ。新憲法では気が楽になるよう願うだけだ。日本での私のような最期は迎えたくないよ」

 

自嘲気味の昭和天皇だが、同位体の最期に考えさせられたらしく、生前退位も視野に入れている事も匂わせた。また、『新憲法』では大元帥の実務は儀礼、儀仗的なものに留まる(英国式)ことが予定されているため、期待しているらしい。内閣の責務が増大し、軍部の統制を担うことになる事は軍内にかなりの波紋を呼ぶため、昭和天皇は山本五十六の『Y委員会』を事実上の『円卓会議』として非公然に公認し、表向きは軍の指導にあたる『第三者委員会』とする。これには理由がある。扶桑軍はブリタニア、ガリア、カールスラントの三カ国を手本に発展した軍隊だが、事変からはカールスラントの影響が強まっていた。それを完全にブリタニア式にする事は親カールスラント閥との派閥抗争は避けられない事を意味するからだ。Y委員会はこれから、親カールスラント閥との抗争を経て、扶桑のフィクサー組織の地位を確立してゆくが、その前段階に控えているのが『抗争』というのは派閥抗争の皮肉であった。

 

「事変の生き残り達には軍隊ウィッチの範になってもらいますが、相応の権利を彼女たちに与えてよろしいですな?」

 

「構わん、私が許可する。本来はあの三人には侍従武官になってもらいたかったがね」

 

黒江達『Gウィッチ』の特権が国家元首たる昭和天皇のお墨付きとなった瞬間であった。七勇士とその弟子筋のウィッチは他国でのSウィッチよりも強大な勤務権を認められた存在となり、最終的に子爵位も与えられた。また、日本と違い、『近衛部隊』が存続し、侍従武官の地位も儀仗的意味合いで維持されたため、将官への登竜門へ様変わりしていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――皇国は一気に対外的プロパガンダの必要に迫られたが、扶桑軍の広報部は過去の『失態』もあり、上層部にも信用されていなかった。そのため、自衛隊地方協力本部の広報官が主導して広報任務を行うようになり、卓越した戦果を挙げている黒江たちの戦果の誇示はより強いトーンとなった。これに納得しない海軍ウィッチの中堅層世代がクーデターを画策していく。だが、軍の方針そのものが大転換し、日本と連邦を組んだ後の時代において、それは『死』を意味する。海軍航空隊が『予算と政治と実務の都合だけで存続した』と太平洋戦争で揶揄されていく理由は、そのクーデターにあった。もっとも、対外的な理由で撃墜王の存在を誇示してきた『二枚舌』は批判されるべきだが、クロウズ後の世代に入れ替わりつつあった海軍航空隊なりの大義もあった。もっとも、海軍は43年までに若本、坂本、西沢、孝美などがプロパガンダ映画の出演を務めていたが、あからさまなプロパガンダであること、人々の間の七勇士の記憶が軍の想定より色濃く残っていたため、ヒットはしていない。しかも、三人が空軍へ移籍してしまい、海軍航空は人的にもピンチであった。また、43年は零式のマイナーチェンジと雷電、紫電の登場で機種転換に忙殺されていたり、軍の方針転換の影響で銃後を顧みない風潮が中堅に出来上がった時期でもあったため、海軍ウィッチは『カタブツで面白くない』という集団主義的イメージが根付いた。だが、44年以降に統合戦闘航空団の時代が訪れると、対外的理由で『自己申告戦果を連合軍の合同部隊への派遣人員に限って、公認する』という例外規定が設けられるなど、海軍航空の二枚舌の方針が明確になった。そこが陸軍からは予てから『矛盾点だ!』と指摘された扶桑海軍だが、統合戦闘航空団への派遣がステイタスになる時代の到来の時勢では、政治的に『仕方なし』と海軍航空隊内部でもみなされた――

 

 

――これはレイブンズの後釜とされたクロウズの時代も終わりを告げる時代になり、更に次の世代のウィッチを祀り上げるために必要な経過的措置であったのだと、海軍は公式に弁明している。(要は政治的言い訳)幸い、坂本と竹井が私的に海軍ウィッチの全スコアを記録していたため、45年以降の日本連邦の時代における既存人員のスコアの判断基準に使われた。ちなみに、45年時点での空軍トップエースは赤松であり、黒江達はその下。また、錦の立場を受け継いだのぞみはここ最近はスコアを伸ばしているという。(錦の『大物食い』の気質が受け継がれた事もあり、『重爆キラー』の傾向が表れていた。シャーリーの影響でもある)また、ペリーヌは『紅城トワ』として、扶桑空軍に軍籍を作ったため、そちらでのスコアは重爆が多いという。(ペリーヌとしては露払いの役目も多いため、小型怪異中心のスコアである)なお、芳佳は最近は部隊間、政治的折衝の後方任務が多くなったため、スコアは更新停止中である(医学の勉強もしているため)他、シャーリーはMVSを得物としつつ、輻射波動をプリキュアの姿で撃つことから、自衛隊から『キュアメロディが輻射波動撃ってる~』と茶々を入れられて憤慨中だ。こうしたダイ・アナザー・デイの頃には、史実あ号作戦の戦訓で、空母航空団の育成途上での実戦がはばかられている日本連邦は海軍出身者も多く、既に練度充分な空軍部隊をその『代打』として乗せることで、戦場のニーズを満たした。既に充分な練度を持つ第一航空艦隊のウィッチのみがダイ・アナザー・デイの海戦を戦ったわけだ――

 

 

 

 

 

――キュアフォーチュン/氷川いおなは立場上、大忙しであった。キュアマーメイド/海藤みなみの副官として活動しているが、あちらこちらからヘルプがかかるため、陸上組では一番の多忙を極めている。その助っ人こそは歴代のスーパーヒーロー達であった――

 

 

「レーザーZビィィム!!」

 

宇宙刑事ギャバン/一条寺烈は敵の戦車師団へ猛攻を加えていた。キュアフォーチュンの援護に駆けつけ、その力を奮っていたのである。フォーチュンの着地を狙おうとしたM26重戦車をレーザーZビームで粉砕する。

 

『ギャバン・ダイナミック!!』

 

ギャバン最大の必殺技が唸りを挙げ、大地をえぐり、敵戦車を両断する衝撃波となって、戦場を荒らす。戦車隊はギャバンの力に恐れをなしたか、撤退を始める。

 

「ありがとうございます、ギャバン」

 

「なーに、このくらいはお安いご用だ。俺も直にデスクワークの職務に異動するのが内定してね。俺の性に合わないけど、コム長官の定年が迫ってる以上は仕方ないか」

 

「大変ですね」

 

「まったくだよ」

 

 

愚痴るギャバン。実際に銀河連邦警察はギャバンの実父『ボイザー』の時代からの長期政権であったコム長官の定年退官が迫り、その後継を巡っての内紛が地球での23世紀で起こっていた。その娘婿であるギャバン/一条寺烈がその後継と囁かれているが、烈/ギャバンが現場主義なので、その線は薄いとも言われている。三大刑事は未だにフーマとの戦乱の傷から回復できずに人材不足の銀河連邦警察には貴重な実戦経験者。これからは遠からず後方で『管理職』になるため、『二代目』となる後継者を見出す作業に追われていた。ただし、比較的にまだ若齢のシャリバン/伊賀電は新型コンバットスーツの被験者に選ばれ、『城洋介』という偽名を与えられ、『時空戦士スピルバン』として活動しているため、シャリバンのみは実際は現場を引退しなかった事になる。

 

「あなた達ほどの方が後方に?」

 

「銀河連邦警察はシャイダーが倒した不思議界フーマとの戦いの傷がまだ癒えてないんだ。俺たちのような実戦経験豊富な宇宙刑事は希少な存在でね。シャリバンは若いから、現場が離さなくてね」

 

「それでスピルバンのコードネームを?」

 

「ああ。新型のハイテククリスタルスーツの被験者になってもらった。所謂、特務刑事枠だね」

 

「そのスーツも開発が続いてるんですね」

 

「戦闘用スーツだが、定期的に世代交代が行われるのさ。シャリバンが与えられた新スーツは新世代の一号さ」

 

ハイテククリスタルスーツはコンバットスーツの次世代型であり、その第一号が伊賀電改め、城洋介に与えられたのである。母艦もバビロス系統の『グランナスカ』に刷新されている。なお、80年代の日本で放映されていたヒーローに瓜二つなのは、偶然の一致であるとコム長官の談。(地味に子供向けの回答を用意する茶目っ気がコム長官の度量でもある)

 

「俺のスーツは銀河連邦警察では標準的な性能のものだが、扱いやすい。シャリバンとシャイダーのものは特注品で高性能だが、量産が効かないから、後を継ぐ若者にも使わせるつもりだ」

 

ギャバンのコンバットスーツは量産性や拡張性もあるため、マイナーチェンジ型が『二代目ギャバン』のコンバットスーツになったが、シャリバンとシャイダーはかつての英雄のものを継承させるとギャバン/一条寺烈は言う。フーマとの戦争で従来の量産コンバットスーツが用をなさなかった例が多かったらしく、ギャバンのものと同系統のコンバットスーツを量産する事になったらしい。シャイダーと同期の候補生の多くが大戦争で戦死し、ベテランも多くが倒れ、人材不足に悩む銀河連邦警察の現状は苦しいのである。カリスマであるコム長官の退官後を担うべき人材に困るあたり、コム長官に依存してきた銀河連邦の怠慢でもあった。

 

「銀河連邦って苦しいんですか?」

 

「シャイダーが戦ったフーマとの戦いで大打撃を被って、そこから抜け出せてないんだ。どう考えても、机で書類相手ににらめっこしてるのが駄目な俺が教官の要請ってあたりで察してくれ」

 

「…なるほど」

 

ギャバンはダイ・アナザー・デイの後に現場を引退し、教官職に、シャイダーも後継者を見つけた後に管理職に(パートナーのアニーが退職したため、現場を退いた)、行動派のシャリバンのみは別のコードネームで特務刑事に昇進。時空戦士スピルバンとして活動中である。

 

「君も大変だろう?呼ばれて来てみたら、後輩のほうが上官だろう?」

 

「まぁ、私達は上下関係はあなた方よりは緩いので、気にしていませんよ。みなみ…キュアマーメイドはお嬢さん育ちですから、私がサポートしています」

 

そう明言するキュアフォーチュン。マーメイドは生前でも『竹井醇子』としての今世でも『お嬢さん』であるため、多少なりとも世間知らずな面がある。そこをフォローするのが先輩の自分の役目だとしているようだ。マーメイドも自分が名家の出である事には変化がない事に苦笑しつつも、生前よりはマシだが、世間知らずなところもないわけではない事は気にしていたので、フォーチュンの来訪は渡りに船であったという。

 

「私は昔、キュアプリンセスの事で色々と若気の至りをしてしまったので、自衛隊の方々に色々とネタに、その…」

 

「若気の至りというものは誰でもあるもんさ。もちろん、この俺も昔はパートナーとか、知り合いのルポライターに無心してたから」

 

「そうなんですか」

 

「そう。だから、昔の自分を笑い飛ばせるようになるのが一番だよ、フォーチュン」

 

ギャバンの現役時代の赤裸々な行動の告白に思わずほくそ笑んでしまうキュアフォーチュン。現役時代は堅物な気質の彼女だったが、今では精神的に余裕が生まれたようであった。

 

 

 

 

 

――戦線はこうした労苦で支えられていた。64Fは広報部に持ち上げられているため、戦線の同郷の他部隊の支援を受けられることは蔓延するサボタージュもあり、実に稀であった。64Fへの支援は自衛隊、米英軍、地球連邦軍、銀河連邦警察が行っており、新選組と維新隊の二個中隊が戦い、当時は正式に結成されていないが、実働済みの『魔弾隊』が44JVから改編され、(事実上の移籍)バックアップに回っていた。敵も連合軍へ無策ではなく、M36ジャクソン戦車駆逐車の増産やM26パーシング重戦車の量産本格化で対応してきた。ティーガーⅠはこれでその優位性を喪失し、ティーガーⅡ(ケーニッヒティーガー)のみがカールスラント製装甲戦闘車両で性能的に伍するとされる余波が発生。パンターⅡのさらなる改良、レーヴェ戦車の投入が行われたが、カールスラント軍需産業は軍縮政策の影響で総じて低調であり、新型装甲戦闘車両の配備はスローペースにならざるを得なかった。それを補っていたのが、キングス・ユニオンの陸軍力であった。インフラ整備も含め、当時に世界二位の国は伊達ではなかった。財政難とは言え、外征部隊の使用するインフラの整備は手抜かりなく、イベリア半島という山がちな地域での機甲戦も行ってみせた。だが、物量では完全に敵が上回るため、苦戦は変わりない。ヒーローやヒロインの活躍は全体的には清涼剤の役目を果たしているが、決定打ではない。これに業を煮やした扶桑は日本の反対論を押し切り、戦略爆撃機のリベリオン本土空襲の本格化を選択し、キングス・ユニオンと合同で戦略爆撃機による戦略爆撃を行っていた――

 

 

 

 

 

 

 

――リベリオン大陸上空――

 

リベリオン大陸東海岸に送り込まれる戦略爆撃機は多数であり、東海岸の主要都市とされる『マンチェスター、ボストン、プロビデンス、ブリッジポート、ニューアーク、ニューヨーク』への同時攻撃が行われた。日本連邦とキングス・ユニオンの新鋭ジェット戦略爆撃機群はそれらの街を20機ほどの編隊で空襲した。大規模殺戮の謗りを恐れる日本の政治的意図もあるため、『リベリオン本国の飛行機が到達できない高高度から誘導爆弾を投下するか、遠方からの巡航ミサイル攻撃を加える』という意義のほうが重要視された。当時のリベリオン本国空軍には、14000mもの高高度を飛ぶ戦略爆撃機を迎撃可能な要撃機はレシプロ、ジェットを問わずに存在せず、爆撃隊は悠々と任務を遂行した。本命のニューヨーク海軍工廠攻撃にはもっとも多くの機が投入され、巡航ミサイルもかなりの弾数が発射された。当時のリベリオン軍はB-29レベルの爆撃機の迎撃手段は備えていたが、流石にジェット戦略爆撃機の迎撃手段は無きに等しかった。ニューヨーク海軍工廠の攻撃以外にまともな交戦に入らなかったのが、その証明であった。

 

「各機、護衛機がヨタヨタと上がって来たら歓迎してやれ、どっちみち、12000m以上に上がれるレシプロは存在せんがな」

 

黒田はこの時期、家の相続を終え、原隊復帰の準備中だが、F-20を駆って、爆撃機の護衛隊を率いていた。64FはF-20をコピーして用意しており、好事家的な一部のエースパイロットの乗機としていた。また、秘密として、黒江が独自に熱核タービンにエンジンを交換し、機銃をパルスレーザーに変えたレストア仕様となっており、45年当時の如何な機種も撃ち抜ける火力を持つ。

 

「ウィッチはどうせ上がってこれん。通常は11000も行けば、そこでエンジンがヘタる」

 

黒田のF-20のはるか下方には、やっとの思いで迎撃しに現れたウィッチ隊が悔しがっていた。その内の4人ほどのウィッチが本来、508統合戦闘航空団用として、連合軍が分裂前に配備していたストライカー用ロケットブースターを使い、健気までに必死に上昇してくる。

 

「そんな事をしても、ただの的なんだけどね。こちら、黒田。タリホー、FOX3」

 

黒田は上昇してくる無防備なウィッチ達へAMRAAMを撃った。マッハ4で飛翔するAMRAAMはそのウィッチを4人まとめて吹き飛ばす。速度が早すぎて、相手は攻撃を認識できなかったのである。

 

「スプラッシュ。…悪いね。チートさせてもらったよ」

 

本来、空対空ミサイルはこの時代、カールスラントの『X-4』がカールスラントで試験中の段階であったが、その『危険性と技術の限界』から、前線への投入が見送られてきたため、日本連邦が後世の空対空ミサイルであるAIM-120、AIM-9X、99式空対空誘導弾、ミーティアなどをバンバン投入した事で切歯扼腕する羽目に陥った。空対空ミサイルの有効性が自分たちの手で証明できなかったからだ。そもそも、その母機予定の胴体内蔵式ジェットエンジン搭載機はカールスラントが先鞭をつけていた(扶桑などは主翼下パイロン懸架方式と胴体外配置方式を研究していた)はずが、日本連邦が大々的に胴体内蔵式ジェット機を使用したことで、大家としての立場が逆転していた。扶桑はHe162のライセンス生産を目論んでいたはずが、いつの間にかF-20などを1945年で使う『超技術大国』化していた。

 

「黒田大尉、どう思います?」

 

「フリーガーハマーを打ち込まれたところで、千メーターも射程はない。安心しろ、当たらん」

 

ウィッチ達は既存装備で迎撃しに出たため、ジェット機の軍団には何もできずじまいであった。高度を落とし、目標の海軍工廠の近くで降下した飛天から冷戦型の巡航ミサイルが撃ち出され、主翼を展開、低空まで落下した後、ターボファンエンジンが点火され、高亜音速で目標へ飛翔する。単独での破壊力はそれほどではないが、80%以上の命中率を持ち、アメリカが巡航ミサイルの後継として使う『ACM』ほどではないが、扶桑の示威目的には充分な効果を発揮した。また、敵の邀撃機はよくてP-80であり、黒田率いるF-20とF-5部隊の敵ではない。

 

「各機、行きがけの駄賃だ。P-80をある程度落とす。敵にとっては新鋭機だから、精神的ショックは大きいはずだ」

 

「了解」

 

熱核タービン搭載タイプにレストアされた機体を率いる黒田は敵のP-80に一定時間は付き合った。当時としては傑作機の一つに入る同機だが、いかんせん相手が悪すぎた。熱核タービンに換装されたF-5系統の機体は全てにおいてP-80を問題としなかった。また、従来の空気力学の延長線上で設計されていたにすぎないP-80はパイロットの如何な努力を以ても、太刀打ちする事は不可能であった。辛うじて交差戦でのみ対抗可能ではあったが、当時のリベリオン本国軍にそのような豪胆なパイロットはいない。

 

「ふふーん、このF-20相手に逃げようったって、そうは問屋がおろさないよ~っと」

 

レストアされた際に積まれた二門のパルスレーザーを撃ち、P-80を背後から撃ち、空中爆発させる。もっとも、標準品であるコスモタイガー用のパルスレーザーであるのだが、この時代の戦闘機相手にはオーバーキル気味だが。

 

「大尉、どうしてパルスレーザーを?」

 

「なに、これは先輩の道楽さ。アデンくらいでいいんだよ、この時代の戦闘機に対しては」

 

黒田も黒江の施したレストアは流石にやりすぎとし、『道楽』と評した。BK-27やADEN以上のものという事でパルスレーザーにしてしまうのも『大物食いの黒江』らしい選択ぶりである。もっとも、航続距離の問題を熱核タービンで解決という力技ぶりはシャーリーのアメリカナイズな発想の影響だろう。

 

「先輩は最近、シャーリーの影響出てるからな。いくらアイデアがあったったって、20世紀後半の機体にバルキリーのエンジンを積むなんてね」

 

「どうやったんですかね」

 

「普通に23世紀の好事家向けに売られてるレプリカを使ったんだろうな。20世紀後半の機体に単純に積んだら空中分解するよ」

 

「エンジンパワーが違いすぎるし、フレームも耐えられませんからね」

 

「ま、レストアは方便だろうね、防衛装備庁への」

 

実際、23世紀の世界では好事家向けのレプリカは大量に売られているため、黒江は実際には23世紀にホビープレーンとして流通するレプリカをベースにしたと黒田は推測した。ただし、黒江はVF-9の現用モデルを何機か取り寄せ、解体してそのパーツをF-20に組み込んだとも取れる書類を見せていたため、黒江がかなり入れ込んでレストアしたのは間違いとはいい難い。

 

「閣下はかなり機械好きですね?少なくとも」

 

「そうでなきゃ、20世紀後半の戦闘機や試作機を模したやつに23世紀最新の機材をぶっこまないって。あたしも原隊に帰ったら、少佐だからなー。先輩たちに後で電話入れとこう」

 

「しかし、意外に楽でしたね」

 

「P-80は黎明期の機体だからな。問題はF-84Fだ。あれは機動性以外はセイバーより上だからなぁ。」

 

F-84F。ウィッチ世界ではティターンズ政権がどうにか完成にこぎつけた第一世代ジェット戦闘機として日の目を見た。ティターンズ政権が多少の改善はさせた事は予測されているため、連合軍はF-86の生産ラインをFJ-3相当のものへと改良し、第二生産ロットとして配備を急ぐ。米軍公認で『F-86N』という型式が与えられ、扶桑軍は次世代機までの繋ぎとダイ・アナザー・デイの戦力増強の二つの目的で開発したわけだが、練習用タイプもあり、そちらは複数が日本に譲渡され、初代ブルーインパルスの再現映像の撮影などに使用されたという。(ただし、塗装はともかく、機体の細部が違うため、マニアからはツッコまれたとも)

 

「どうなりますかね?」

 

「生産の主体はフューリータイプに移るはずだよ。戦時中にマイナーチェンジはつきものだしね。帰るよ」

 

この攻撃はティターンズ政権に少なからずの衝撃をもたらす事となり、リベリオン内部に反抗の兆しをもたらす。これが扶桑も日本も予想しない『ミリシャによる群雄割拠』の時代の伏線となるとは、黒田も予想だにしていなかった。もちろん、黒江たちも、である。ティターンズの支配は所詮、『力による支配』でしか無く、それが一度でも揺らげば、実に脆いものだ。だが、当時のリベリオンに潜在的にあった扶桑人/日本人への人種差別意識と瑞穂国への虐殺の歴史がリベリオンを一つにまとめていたとも言える。そのまとまりがティターンズの敗北で揺らいだ時、何が起こるのか?当時の連合国のいかなる人間もその事には考えが及ばなかった。それは黒江たちであっても同じである。ただし、ティターンズの独善に憤る者は二大都市を恫喝目的のためだけに吹き飛ばされた西海岸の人間達に多く、内通者も実は45年時点でかなり存在していた。ダグラス・マッカーサーもその一人である。表向きは要職に起用されたが、実際は彼が一番のスパイなのだ。(家族が身一つでの亡命を嫌がり、ごねたため、脱出に失敗するというチョンボをやらかしたためにスパイになった)

 

「本国の情報提供はだれが?」

 

「ダグラス・マッカーサー元帥だよ。彼が内通者だよ」

 

「本当ですか」

 

「カミさんと息子がゴネてるうちに逃げられなくなったんだとさ」

 

なんとも情けない話だが、ダグラス・マッカーサーは家族を見捨てられず、本国軍の要職についた。だが、実際は自由リベリオンへの内通者である。航空兵達に話の種にされる笑い話だが、マッカーサーとしてはかなり不本意な経緯とのこと。海軍側はキンケイド中将であり、シアトルに最新鋭艦『ケンタッキー』で寄港中に拘束され、そのまま祀り上げられた。ティターンズ側もかなり手を回したが、ニミッツ、スプルーアンス、ハルゼーの三羽烏を取り逃がした事は悔しく、キンケイド中将はなんとも哀れな拘束を受けたのだった。

 

「ま、敵も人材確保に躍起になってるってわけさ。今度の戦争は長くなりそう」

 

黒田は低空まで高度を下げていたおかげで、眼下に見えるニューヨーク海軍工廠、そのドックに鎮座するガスコーニュを目撃し、そうつぶやいたという。艦尾ドリル、前部集中の16インチ砲。フランス戦艦の最高技術の結晶。リベリオン本国で整備を受けていたのだ。フランスの管理のいい加減さの表れでもあるため、日本連邦は後日、ガスコーニュの元・所有国であったフランスと管理元のフランス海軍に猛抗議を加えたという。

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