――扶桑皇国と日本国は足並みが揃わず、結局はロマーニャが望んだ短期決戦を放棄せざるを得なくなり、ロマーニャからの猛抗議に困惑する羽目になった。日本側の政治的都合で攻勢作戦から防衛作戦に急遽、変更されたからだろう。また、ドイツ領邦連邦が軍縮で部隊をどんどん撤兵させた弊害で自らが矢面に立つ必要が大きくなると、日本防衛省背広組や防衛装備庁は現場に責任を一方的に押し付けた。だが、現実問題として、防衛装備庁が望むような21世紀型装備は生産ペースが大戦期から考えれば、目も当てられないほどゆっくりなため、早期の増産は物理的に不可能であったのも事実であった。16式機動戦闘車の奮わない戦績は同車の運用面での伝達ミスと勘違いもあったが、防衛装備庁は調達中止を検討しだす始末であった――
――情勢としては、ドイツの軍縮に困惑した日本連邦では、自衛隊の10式戦車の大隊規模での派遣が協議されるに至った。カールスラントの最新重戦車『レーヴェ』はドイツの技術で足回りの弱さなどを克服したものの、避弾経始などを取り入れたのに関わず、現場の要請で装甲厚を強化せざるを得なくなったため、重量は65トンを超えており、第二次世界大戦当時の欧州のインフラでは運用に困難が生じるのは目に見えていた。センチュリオンとコンカラーも52~66トン程度だが、日本は架橋戦車を有しており、さほど問題視されていなかったが、カールスラント陸軍にはドイツ連邦軍のような架橋戦車は存在していない。必要なしと見做され、開発が止まっていたからだ。だが、戦車の高性能化に伴う重量増加が急激に進み、インフラ整備をしなければ橋もまともに渡れない重量の装甲戦闘車両が主流になるに至り、カールスラント陸軍は今になって大慌てであり、日本連邦に頭を垂れて、架橋戦車の派遣を懇願する屈辱に甘んじた。(軍縮で本国に多用途転用目的で保管されていたⅢ号戦車の少なからずが廃棄処分されたため、突撃砲の製造だけで精一杯となっていた)また、派遣部隊が小規模になったため、ドイツ陸軍が自分達の架橋戦車の派遣を出し渋ったのも不運であり、カールスラント軍は架橋戦車の新規開発に追われてしまい、派遣部隊の再建は二の次とされた。そこもカールスラントの不幸であった。対する日本連邦もロマーニャの北部の陥落と主戦場の移動で独善的な防衛計画が崩壊したショックと、事実上、現地軍の判断で自衛隊の部隊が動かされているという部隊の統制で批判が生じたものの、ロマーニャの猛抗議でその批判が萎むなど、色々な問題を抱えた日本。疫病が流行りだした日本は『それどころではない』と派遣部隊の統制を黒江に一任する形で丸投げし、黒江はそれを良いことに、F-35や10式戦車の配備にこぎつけるのであった――
――戦艦『富士』――
「長官、偵察写真の解析が終了いたしました」
「敵の陣容は」
「前衛にヴェネツィアのリットリオ級戦艦がおります。所謂、弾除けでしょう」
「リットリオは脆いからな。連中の造艦能力ではあの程度がせいぜいだろう。MS隊は?」
「洋上戦ですので、Z系を動員しております。制圧にも使えるので」
「うむ」
この時、Zガンダム系の機体はウェーブライダー形態を取れる利点が連合艦隊に注目され、多くが投入される運びとなった。当時最新のZ系量産機の一つであったリゼルも、数合わせと言わんばかりに多数がウイング装備で用意され、艦艇の鹵獲も視野に入れている戦略が構想されていた。なお、SFSでの通常MSの投入が控えられたのは、サブフライトシステムの被弾への脆弱性が理由である。
「64Fに揃えさせて正解だったな」
「敵にアッシマーを使われては、こちらのレシプロ機では為す術もないですからな」
ティターンズは様々なMSを短期間に開発したが、空戦において、正規軍から主導権を奪う形で領収していたアッシマーが大気圏内での空戦主力の一つであった。対抗馬と目されたギャプランは邀撃用であったので、実は大気圏内の航続距離は度外視されているため、非ムーバブル・フレームタイプながらもアッシマーが名機と言われるのである。
「64Fの未来派遣経験者はTMSを操縦できるのかね」
「黒江くん曰く、あらかたの機種の訓練はさせているそうですので」
64Fの隊員はその多くがメカトピア戦役とその後のジオン残党狩りを最前線で戦った猛者であったため、ひかりと静夏の異端ぶりが際立っている。ちなみにMSの操縦技能はプリキュア勢では、シャーリー(北条響)が最初に習得したが、この頃になると、手慣れたナイトメアフレームに機種変更していたため、キュアハート/相田マナが最初に操縦技能持ちになった。(航空機の基礎はあったが)
――メネシス 格納庫――
「おい、シャーリー。今回はどうするんだよ」
「久しぶりに紅蓮で戦うよ。こういう時は手慣れたのでやりたいしね」
「可翔式でなく、聖天八極式をコピーしたのか?」
「最後に使った特式でもいいけど、あれは燃費悪いんだよ」
シャーリーは自我意識がうまく溶け合ったせいか実質は人当たりがいい紅月カレンの体裁を強めていた。また、シャーリーとしての容姿と北条響としての容姿にあまり違いがなかった事もあり、この頃になると、紅月カレンの勝気な性格を持つ北条響といったほうが正しかったが、戸籍は自由リベリオン籍のままだ。
「でもよ、いいのか?日本とブリタニアのキメラになった機体にアメリカ人のお前が乗るって」
「あの世界、アメリカ無いよ」
「おっと、そうだったな」
「それに、プリキュア化してれば、マシンマキシマムの領域で戦闘ができるしな。そこがいいとこだよ」
「お前、ネタにされる要素多すぎだろ」
「好きでこうなったんじゃないって」
シャーリーは機体の最大ポテンシャルを引き出すため、肉体の全てのスペックが飛躍的に上がるキュアメロディの姿で操縦する事を明言した。彼女単独ではプリキュアとしての自らのフルポテンシャルを引き出せない場合が多いため、プリキュアの中では機動兵器戦を好む傾向がある。(なお、キュアメロディは現役時代、キュアピーチとよく組んでいたため、単独戦闘にはあまり向いていない代のプリキュアとも言える)
「それと、お前。ピンで戦った事はあまりなくね?」
「しかたねーよ。現役時代は奏がいないと変身できなかったし、単独での大技は最強形態になっても、全然なかったし。クソぉ、ピーチやドリームみてーな大技欲しかったよぉ!」
ドリームとピーチは単独で大技を放てたため、そこを羨ましがっているシャーリー。もっとも、現在は輻射波動が事実上の必殺技であるが。
「お前、ラブリーを助ける時にスターライトソリューション撃ったんだろ?のぞみがぶーたれてたぞ」
「仕方ねーよ。あたしには、あいつみてーなピンの大技ないんだもん。とっさに技を借りただけだよ」
と、プリキュアとしての必殺技が無いことを地味に気にしている事を明確にするシャーリー。北条響の姿であるが、言動は紅月カレン寄りの粗野な口調である。
「でもさ、黒江さん。アンタ、はーちゃんを鍛えすぎだろ。ストナーサンシャインやシャインスパークを撃てるようになってるなんて」
「ZERの力で本人から、『マザーラパパの後継になる』って因果が切り離されてな。ただの『強力な防御魔法が使えるプリキュア』にされた事に、はーちゃんはすごく負い目を持ったんだ。それで俺たちが見かねて、色々な人に紹介して、とにかく鍛えた。そうしたら、20年のうちにゲッター線や光子力に選ばれちまってな」
「なんだよそれー!!!」
「元が神様の後継だったから、失った力を光子力とゲッター線で補おうとする本能が働いたんだろうさ。本人もラブリーやドリームみたいな強さを持ちたいんだって、フェリーチェの姿で泣きながら、俺に懇願した事があってな。もう20年近くも前のことだけど」
「強さ、か。ZEROのヤローにみらいたちを倒されたショックが大きかったんだな。それで、揺るぎない力を持つ『可能性の光』を求めたわけか…」
「そうだ。俺たちが時間をかけて鍛えたから、多分、今だったら、『現役時代の初代』なら越えてるかもしれないな」
黒江達があらゆる武術を叩き込んだため、2010年代末時点のキュアフェリーチェの強さは現役時代当時のキュアブラックとキュアホワイトならば越えているだろうとした。ブラックとホワイトは『女の子でも暴れたい』という願いが生み出した存在であるため、ファイトスタイルも素人のケンカ殺法そのもの。しかしながら、パワーは後輩達を素で凌駕している事は同世代ののぞみとラブが認めている。
「なぎささんとほのかさんはおいしーとこをいつも持ってくんだよなぁ。たまには、後輩のあたしらにも見せ場を譲ってほしいぜ」
後輩としての愚痴を零すシャーリー。プリキュアは必ず、ブラックとホワイトが美味しい場面を掻っさらう事はお約束であるので、後輩から『見せ場を譲ってほしい』という愚痴が出るのである。
「いいだろ、お前。今回は紅蓮聖天八極式的意味で見せ場あるんだし」
「そりゃそーだけどさー。あんた、今回は何で出んだ?」
「プルトニウスで出る。ガキどもはまだ訓練が始まったばかりだからな。ハートくらいだな、今すぐの動員が出来んの」
この時期、機動兵器のパイロットとしての技能持ちのプリキュアはキュアメロディとキュアハートのみであった(ピンクで言えば)。
「あ、六花に聞いてみてくれ。素体が婚后光子なら、家の関係で技能があるはずだ」
「そうか、航空業界の名門の出だったな」
黒江は格納庫の艦内電話で菱川六花/キュアダイヤモンドに問い合わせる。婚后光子を素体に転生したのであれば、少なくとも航空機の操縦技能は備えているはずである。
「……わかった。そうか、ありがとう」
「どうだった?」
「出てくれるそうだ。マナの護衛をやってくれる。操縦が簡単なリゼルに乗せるよ」
「C型でいいんじゃね?」
「ウイングユニット装備でな。」
リゼルは宇宙用MSに近い『ゼッツー』の量産機の側面があるため、オプション装備をつけないと大気圏内でのウェーブライダーの飛行は不可能である。そこが運用上の難点と言えた。当時最新のRGZシリーズであったため、このダイ・アナザー・デイの時点では、リゼルの配備数は全軍を見渡しても300機もなく、その内の20機前後が駆り出されているのは『大盤振る舞い』であると言えよう。
「でも、リ・ガズィでなくて、リゼルが制式量産されたのはなんでなんだ?」
「BWSがダメダメなシステムだからさ。あれだったら、コスモタイガーを使ったほうがいいってなったんだよ」
「確かに。でも、機体自体は増産されたんだろ?」
「初期のZプラスが老朽化し始めたから、当初はその代替目的だったらしいが、試作機がダメダメだったから、大量量産は見送られたらしい。それで第二世代のZプラスを作る話になったんだと」
黒江が聞いた話によれば、リ・ガズィはグリプス戦役当時のZガンダムとほぼ同等のカタログスペックはあったとされるが、実際はそれより一割は差っ引いての性能しか戦場で発揮できなかったのでは、という推測もある通り、アムロの卓越した操縦技量がなければ、ヤクト・ドーガにも太刀打ちできないという戦訓もあり、一応の制式化はされたが、予定された大量生産は見送られたという。その改良機『リ・ガズィ・カスタム』はエースパイロット用の少数生産の上位機種と割り切っての大改良であるため、当初からTMS(可変MS)として、ZプロンストとZプルトニウスが別個に開発されたという。
「なるほどなぁ」
「Zは稀代の名機だけど、ある意味、一点物のフォーミュラカーみたいな存在だから、そのまま大量生産は不可能だった。だから、あれこれしたけど、結局はZプラスの『中身』を取っ替えての新規生産の再開、新規開発に踏み切ったってこった」
星間戦争の時代になると、耐弾性が劣る小型MSは廃れていき、一度は廃れつつあった『大型MS』が再興していく。その兼ね合いで『徒花』とさえ揶揄されていたはずのTMSが花形と見なされる風潮が復活した。MSそのものの進化形である次世代機動兵器『マン・マシーン』化への過程では、ビーム・シールドの『副次武装化』、『Iフィールドの世代交代による進化』などの技術革新が連鎖的に起こっていき、運用形態そのものが革新し、別の名を正式に与えられたのだ。
「で、敵艦隊は?」
「一両日中には捕捉できる。そうなったら、ミサイル持ちの全艦のVLSから対艦ミサイルがありったけ撃ち込まれる。この時代の海軍関係者の多くは度肝抜くぞ。ジープ空母くらいなら、下手すりゃ轟沈だ」
「空母の兵員室は余裕でぶち抜くから、多分、サボタージュしてる阿呆共の思ってるような空戦は稀にしか起きねぇだろうさ。マッハ4くらいの速さで突入してくるロケットに耐えられる装甲持ってんの戦艦くらいなもんだろ」
「非重要部は破壊できる。問題はミサイル持ちの艦艇は従来艦みたいな耐弾装甲がないものが大半だってことだ。自衛隊の護衛艦は前に出せんから、超甲巡の魚雷と水上機装備を撤廃して、ミサイル装備とヘリを乗せた。あれなら、ある程度の耐弾性があるからな」
「超甲巡って何さ」
「お前んとこの海軍がアラスカ級大巡を作ったろ。あれへの対抗馬だ。アラスカはお前んとこの勘違いから生まれたが、こっちのは戦艦構造で作った巡洋艦だから、アラスカよりは運用性がいい」
「アラスカは中途半端って批判でてたけど、そっちの水雷戦隊にブルってたのは本当だからな、うちの海軍」
シャーリーが言うように、アラスカ級はリベリオンの勘違いから生まれ、史実では戦争の終わりとともにスクラップにされた。だが、超甲巡は金剛型戦艦の代替として機能する水雷戦隊旗艦として構想がされた面があるため、構造は戦艦と同様であり、アラスカ級を上回る性能を持つ。従って、お互いにドイッチュラント級装甲艦の多大な影響で構想されたが、実際の性能はだいぶ異なるのだ。もっとも、超甲巡の運用も変化し、これからは大和型戦艦の護衛艦的運用が増加していくのも事実である。
「ま、日本の財務を納得させるためには、大和型戦艦の弾除けとして充分な効果があるかどうかだ。航空攻撃のな。水雷装備をやめさせて、近代防空装備を持たせた真価が問われるな」
「相手の機数は?」
「軽く、1000機はくだらんだろうな。敵は10隻以上のエセックスと二隻のミッドウェイ級を繰り出している。その上、ジープ空母だ。ミサイルで混乱させて、艦娘と俺たちの攻撃で打撃を与えてからの打撃艦隊での乱戦に持ち込む戦略だ。あ号作戦みたいなアウトレンジ攻撃は効果がない事を逆手に取るそうだ。向こうはアウトレンジ攻撃をすると高を括ってるだろうし」
「つまり、多少の犠牲は?」
「やむを得ん。日本のお偉方は俺たちに一騎当千を求めてるからな。友軍の潜水艦や艦艇の屍を踏み越えてでも、敵艦隊を撃滅せよだとさ。日本海海戦の夢を追ってやがる」
「一航戦のウィッチ連中がそんな凄惨な戦に耐えられるかね?」
「三割はシェルショックになるだろうし、義勇兵は特攻も辞さない覚悟だ。そうなれば、ウィッチは敵味方問わずにシェルショックに罹患する。俺らと違って、この戦に駆り出されたウィッチには『今回が初陣』ってのが少なからずいるからな」
「それがネックだな」
「幹部級は大戦初期までの経験者だが、末端には殻が取れてねぇようなガキも多い。何人が戦い抜けるか」
「あたしらが無双しなけりゃ、そいつらは生きて帰れねぇ…。参ったな、こりゃ骨だぜ」
「しかたねーさ。のび太もダブルスペイザーで出てくれるし、鉄也さんを欧州に呼び戻した。敵がグリプス戦役末期に試作してた超兵器を持ち出したら、俺たちと鉄也さんで対処する。スーパー戦隊も動いてくれているから、安心しろ」
「了解」
ティターンズがグリプス戦役末期に試作した超兵器。それはガンダムTR-6シリーズの事である。それを有する事は前史でも明らかであるため、今回の歴史においては予めの対策を講じていた。ティターンズは決戦兵器『インレ』をネオ・ジオンの援助で完成させていた。グリプス戦役当時のエゥーゴの象徴であるZガンダムを倒すために妄執を形にしたのだ。ZZガンダムやF91、νガンダムなどの『より次世代のガンダム』が既に現れていた現状でも『グリプス戦役当時のモビルアーマーとしてはキチガイ』的な戦闘能力を備えており、スーパーロボットで圧倒して倒すしかないというのが連合軍の結論であった。もっとも、素体のガンダムTR-6そのものはFシリーズ登場後の世の中では『旧世代MS』であり、優位性は既に喪失していたが、オプション装備を用いれば、次世代機に対抗できるとティターンズは見込んでいた。グリプス戦役当時の最高技術をつぎ込んでいたからだ。ただし、あくまで第一次ネオ・ジオン戦争までの流れに則った『強化』なので、地球連邦軍にとっては旧態依然とした思想と化していたし、スーパーロボットの前には『小手先の強化策』の粋を出ない。
「でも、いくら奴らがインレやガンダムTR-6[クィンリィ]を出したところで、最強の魔神皇帝の更に最新モデルのマジンエンペラーGと組み合えるか?」
「時間稼ぎがせいぜいだろうよ。エンペラーの攻防速は真ゲッターや真ゲッタードラゴンと比べるくらいのものだ。それに『普通のガンダムが重装フルアーマーを纏った』域を出ねぇモビルアーマーが出たところで、グレートブラスターでお陀仏だ」
型落ちとは言え、『ティターンズが技術の粋を結集して作った決戦兵器』を軽んじる黒江とシャーリー。魔神皇帝を名乗るスーパーロボットの前では、ありきたりな軍開発の『ガンダム』が重装フルアーマーを纏ったところで、太刀打ちできるものではない。ましてや、エンペラーはZEROを倒すために開発された最新鋭のマジンガー。その性能差は見るからに明らかである。
「いくらティターンズが決戦兵器と吹いてたガンダムだろーと、所詮はグリプス戦役の頃から何の改良もされてない型落ちモデルだ、あたしの紅蓮の相手にはお誂え向きじゃねーか。鉄也さんの手を煩わせるまでもない、あたしが輻射波動で沸騰させてやるよ」
息巻くシャーリー。前世での愛機であるナイトメアフレーム『紅蓮シリーズ』として最高クラスの性能と汎用性を持つ紅蓮聖天八極式をコピーして作っていたからだろう。ただし、最後の紅蓮『紅蓮特式』ではないのは、エネルギー消費効率の悪化が大規模戦闘では看破できないレベルであったからだ。
「特式は補給が受けられる事が前提の機体だから、こうしたゲリラ戦には使えないんだ。こういう時は聖天八極式で充分だ。久しぶりに血が騒ぐぜ、デヴァイサーとしてのなぁ!」
「ノリノリだな、お前」
「いいじゃん、紅蓮聖天八極式で戦った時期は本当に短かったし、最近はプリキュアの仕事が忙しかったしな。本当なら、昔のパイロットスーツでやりたいくらいだぜ、この戦い」
「有名なバニー姿でしたらどうだ」
「あのさ、それいうと殴るよ?」
「おう。殴れるもんならな。それに使い魔はうさぎじゃんか、お前」
「…アンタには負けるよ…」
シャーリーは前世で気にしていた事であるバニー姿に触れると、相手が黒江でも怒るが、今の自分の使い魔はうさぎである事を突かれ、タジタジになる。黒江はのび太から『自分の紅月カレンとしての前世』を知らされている上、軍の先輩であるために、なんだかんだで頭があがらない様子が見て取れる。一方で、ナイトメアフレームのデヴァイサーとしての自分に未だに誇りがあるらしく、血が騒ぐと口にする好戦性は健在であるようだ。
「先輩後輩にドヤ顔できるチャンスだし、バシッと決めてこい」
「プリキュアとしては、ピーチの相棒ポジが似合うとか言われてきたし、前世じゃ、ルルーシュの手の中で踊らされてきたんだ、そのムカつきをぶっ飛ばすよ。でも、転生しても紅蓮に乗るのは因果かな…?」
「そういう運命だったと思え。もし、今後にC.Cやルルーシュに会える機会あれば、一発ぶん殴れ。その権利はあるだろ」
「できれば、スザクを殴りたい。自白剤使おうとしやがって……。アンニャロ、今度会ったら、ナニを蹴り上げてやる!」
枢木スザクに対しての悪環境は形式上の和解後も持ち続けていたようで、大事なところを不意打ちしたいと愚痴る。
「お前、意外に根に持つな…」
「自白剤を打とうとした挙句、それをぬけぬけと謝罪してきやがったからね。ユーフェミア…、『ユフィ』のことは同情するけど、それ以外は総じて許せないとこ多いから」
スザクのカレンへの行為は一種の外道であり、カレンが転生しても根に持つほど、二人の間に修復できない精神面の溝を作った。また、スザクは『権力に取り入る事で日本人に安寧をもたらす』という目的で動き、最終的にはルルーシュと秘密を共有してブリタニアを破壊したが、その動きから蚊帳の外に置かれた事は未だに納得できない一方、スザクが仕えていたユーフェミア・リ・ブリタニアのことはルルーシュのミスによる悲劇でもあるので、そこは同情しているなど、思い切り複雑な葛藤を見せた。
「ただ、あいつのしようとしてた事は今になって理解できたから、あいつをガキみたいに否定するのは止めたよ」
Gウィッチとして『体制に組み入れられること』を目的に生きるようになったことで枢木スザクのしようとしていた行為の真意を理解したらしく、割り切った事を示すシャーリー。『紅月カレン』としての心境を気兼ねなく吐露できる点で、黒江はシャーリーの親友の一人であった。