――地球連邦軍はユニコーンガンダムの封印が政治的に決められる見込みだった事から、その代替となる機体を求め、のび太のプランを全力で実行した。だが、有事が起こったため、結局、ユニコーンガンダムが封印される事は無かった。(ユニコーンガンダム以上に『危ない』マシーンがバシバシ生まれた事もある。ジオン強硬派の手でネオ・ジオングが生まれてしまった事から、連邦にジオン穏健派は強く出られなくなった。)ただでさえ、内輪揉めを起こしているジオンは連邦への復讐の妄執に取り憑かれた強硬派がネオ・ジオングを完成させたことで、政治的にも追い詰められる事になる。だが、地球連邦軍の手にはその頃には『真ゲッタードラゴン』という『その時点で最強のゲッターロボ』があり、ネオ・ジオングを倒せる目処は立っていたが。――
――ネオ・ジオンは統制が失われた各地のジオン残党の部隊が散発的なテロ攻撃を行う問題に困った。ジオン残党は公国再興しか眼中にない組織も多く、掃討と内輪揉めで数を年々減らしていた。ダイクン派だった部隊のみがシャアの統制下にあったが、アナベル・ガトーなどの旧ザビ派寄りのエースパイロットも属しているのは、仕方がないことでもあった。そのため、それらエースパイロットに最後の花道を用意し、華々しく散ってもらうのがシャア・アズナブルの抱く構想である。つまり、ジオンと共に『死んでもらう』か、『捕虜になってもらう』のが一番である。ティターンズ残党はその準備のための目眩ましに使われたわけだ。とは言え、そのための犠牲を強いられるウィッチ世界はたまったものではない。リベリオンをティターンズ残党が支配し、世界大戦を引き起こした。それを煽った点でジオンも同罪と言えた。扶桑皇国はそうした事情で増していく通常兵器の需要に応じるためにウィッチ用装備の減産を開始した。ダイ・アナザー・デイでは通常兵器のほうが需要がある故の処置だ。怪異は各種スーパーロボットが巣ごとふっ飛ばしていっている事で部隊を多く維持する必要が薄れた事、MATの設立で怪異の迎撃任務の頻度が下がったなどの理由である。――
――64Fは二つに隊を分けて奮戦していた。当時は本来の航空隊としての任務は二の次となっており、むしろ、各国の軍縮と機能不全で物の役にも立たなくなった連合軍の部隊に代わって、戦線の維持を陸でも行う事が任務となっていた。歴代のプリキュア達はその力で戦線の維持を行い、奮戦していた――
「敵は第一次世界大戦と大差ないドクトリンしか有しておりませんの?いたずらに銃剣突撃など」
「ま、この世界は人同士の近代戦自体が初めてだしね。怪異相手だったから、高度な戦術のやり取り自体が無かったんだよ」
キュアスカーレットは『スカーレット・フレイム』を放ち、キュアミューズを援護する。敵の取る戦術は多くがナポレオン戦争の頃と大差ないもので、中には近代兵器の前には無意味な陣形も含まれていた。プリキュア達も『ありえない。今は西暦何年?』と呆れるレベルであった。
「ひどい時はナポレオン戦争の頃の古典的な戦術だったよ。この世界は怪異と戦う事に慣らされすぎてるからね、陸軍は一部の実戦部隊以外は良くて、一次大戦。悪くて、ナポレオン戦争レベルのドクトリンだね。数だけは多いのか難点だよ」
「地球連邦軍も手を焼いてると言いますが、まさか、ナポレオン戦争レベルの戦術しか取れない部隊がいるとは」
「数だけは多いからね。いくらモビルスーツやスーパーロボットを使っても、数の問題はね。スペインごと吹き飛ばすわけにもいかないだろ?反応兵器使えば簡単だけど、23世紀の対消滅型の反応兵器を乱発したら、スペインがこの世から地殻ごと消えるし、そうなったら、この星の環境に悪影響が出る。スーパーロボットの最強技を連発しても、大量虐殺の謗りが21世紀から出る。難儀な仕事だよ、これは」
ストナーサンシャインやカイザーノヴァなどの超大技を使っても、『大量虐殺』ではないかという謗りが21世紀の日本から起こるため、そこも作戦の長期化を招いている。元々、攻勢による短期決戦が構想だったため、現在の防衛作戦はいたずらに長期化を招いているだけと批判を浴びている。(日本の政治的都合で変更になったため)日本側もこの批判に耐えかねたのと、2020年に入り、本国で疫病が流行り、派遣部隊へ細かく指示できる時勢でなくなったため、Gフォースの指揮権は黒江に事実上、一任された。とは言え、黒江があれこれ動いても、弾薬と機材の部品補給は地球連邦軍と米軍の厚意に半ば依存している。そのため、機材はバラバラである。(ある程度の括りでは統一は成功するが)
「二年後に現れる同位体にこの事をどう説明すれば…」
「ありのままを言えばいいさ。ベルリン奪還より激しい、血みどろの戦いをしてるんだし」
「二年後に現れる宮藤さんの同位体が見たら、どう思われるかも心配ですわ」
「そこもかぁ。ま、いいんじゃない?正義の味方してます、で」
キュアスカーレットはペリーヌ・クロステルマンの同位体への説明に骨が折れるだろうとぼやく。ペリーヌは事実上、一つの肉体を三つの人格が共有している状態であるからだ。
「ペリーヌは政治、トワはプリキュア、モードレッドは英霊。役割分担できてていいじゃないか。ボクなんて、英霊とプリキュアの掛け持ちだからね」
キュアミューズは英霊とプリキュア。二つの立場を行き交うために多忙である。
「なんだったらさ、ドラえもんにコピーロボットでも借りればいいじゃない。それで事実上の分離策は取れる」
「彼、持ってますの?」
「未来デパートじゃ普通に売ってるって。元来はある人気漫画家がパーマンの遺産をもとに発明したらしいけど」
「パーマン……本当にいたなんて」
「のび太が幼少期の頃に活躍してたらしいから、80年代終わりから90年代始めまでらしいよ。あ、鼻が押されると元に戻るから、用途は限られるけどね。安いのも有るけど碌な事に成らないから、真ん中あたりの価格帯のをお勧めするよ」
「ペリーヌも生活が安定してきたようですし、あとでドラえもんさんに頼んでくれます、ミューズ」
「自分で頼みなよ。どら焼きの一つでもつけてね」
「そこはきっちりしてますね、貴方」
「当たり前さ。ぼかぁ忙しいんだよ、スカーレット」
ミューズはロボットガールズとしての力も行使可能であるため、両腕を突き出して『アトミックバーナー』を放ち、兵士を焼き払う。意外と容赦しない思考なのが分かる。
「さあて、この技は目が回るから、あんまやりたくないんだけど。超電磁タ・ツ・マ・キィィィィィ!!」
ミューズはロボットガールズとしての最大技『超電磁スピン』を使う。超電磁の力で相手を拘束し、超高速回転をしながら相手を貫く。コン・バトラーV最大最強の大技である。相手は五両ほどのM26重戦車である。
「超電磁スピィィィン!!」
空中で五両の重戦車を貫くキュアミューズ。目が回るのか、顔色が変わっている。
「フィギュアスケートの練習がこんな所で役立つとはねー。誘われたときに断らなくてよかったー……。うっぷ」
「貴方……」
「だから、あんまやりたくないのよな、この技。グランダッシャーのほーが…」
グランダッシャーのほうがいいらしいが、後輩のキュアトゥインクル/天ノ川きららが転生した場合、ボルテスVの力を持つと推測されているので、そちらのほうが羨ましいらしい。
「のび太が言ってたけど、きららはボルテスVの力を持って転生してるだろうって言ってたしなー。そっちのほーが使い勝手いいじゃんー~…」
「目を回したか!今だ!!」
「酔ってたって、目は回してないんだよー!ツインランサー!!」
ツインランサーを使い、剣のように使うことで敵兵をカウンターで倒す。
「悪いね、一応、シャルルマーニュ十二騎士の端くれなんだ、ただの素人には負けないよー!」
「なら、私は!」
「あら、変身してる状態でクラレントを召喚できんだ」
「ええ。そのついでに……エクレール!!」
キュアスカーレットは燦然と輝く王剣を媒体に、トネールのパワーアップ『エクレール』を放った。フランス語で雷を意味するのがエクレールであり、電撃を意味するトネールの上位魔法だ。やることは黒江やキュアフェリーチェが行う『トールハンマーブレーカー』の後追いであり、二番煎じだが、『エクレール』という魔法そのものはガリアの古い魔術書に電撃系攻撃魔法の上位魔法として書かれているので、失伝技と言える。
「トールハンマーブレーカーやん、それ」
「やることが同じになるのは仕方ないじゃありませんか!そもそも、エクレールのほうが古いのであって」
「はいはい」
ミューズはスカーレットをからかう。エクレールはブルボン王朝より古い時代には伝わっていたらしいが、いつしか失伝した技であり、大まかな資料すら最近になって発掘されたばかりであるため、プロセスは推測の域を出ないからだ。
「ま、そもそも電撃使いだったからって、あーやと張り合うかなー?アーク放電の領域に達してるってのに」
「あの方と比べないでくださいよ、ミューズ…」
黒江はこの時期にはセブンセンシズは愚か、エイトセンシズすら超えており、電撃のパワーは超電子には及ばないが、アーク放電の領域に到達している。この世界においては、『電撃使い』は黒江とグンドュラの二強とされており、発電量は個人としては途方のない出力とされる。ペリーヌ個人の元来の出力は強力な『スタンガン』程度のものであったため、現在はそれでも、数段のパワーアップをしたほうである。
「貴重な電撃使いとは言え、その出力だと対策されるよ。せめて、グレートマジンガーのサンダーブレークくらいのパワーはほしいね」
「元々の能力を鍛えただけですのよ?」
「まだまだだね」
ハードルが高いが、戦闘で使うのなら、『機動兵器の回路を焼き切れるくらいのパワーがいる』と言うことをサンダーブレークという実例で説明するミューズ。何気にドライである。
「ぐぬぬ……」
「君は炎も扱えるんだし、鳳翼天翔でも覚えたら?」
「……そうしますわ。くぅぅ……」
悔しがるスカーレット。得意分野で尽く上位互換がいるため、最近はどうにもしまらない。ミューズはアストルフォの性格が強く反映され、ギャグとシリアスのどちらにも対応可能であるが、戦闘では意外とドライな面を見せる。そこはアストルフォとしての一面だろう。
「シンフォギア装者は悪くないポテンシャルはあるけど、どうにも鎧のもとになったモノの名前に頼ってる感は否めないんだよね、あの子達。さあて、ボクは英霊でもあるんだ。あーやから教わった技を一つ見せよう。」
「なっ!?」
ミューズの体から小宇宙らしき黄金のオーラが迸り、ミューズの右腕を黄金の光が包みこみ……。
『断て、獅子の大鎌!!ライトニングクラウン!!』
ミューズも転生してから、いたずらに時間を過ごしていたわけではなく、黒江から闘技を学んでいたのである。その内の一つが『獅子の大鎌』(ライトニングクラウン)である。これは力の流れを断つ効果も持つため、黒江も暴走状態の立花響を大人しくする時などに使用し、シンフォギアを強制解除させている。もちろん、技の純粋な破壊力も相応のもので、エクスカリバーほどでないが、多くのものを断ち切れる。
「ミューズ、貴方……」
「シャルルマーニュ十二騎士のバカなやつだの、非力だの後世にまで言われちゃね。それで、ボクも裏でこっそり特訓したのさ。ボクらのプリキュアとしてのスペックはどうせ、まるっと把握されてるんだし、それを超えてやろうってやつさ」
それはアストルフォとしての本心でもある。非力な英霊であった自らを超えてやろうとする向上心を思いだしたのは、黒江の求道的な姿に触発されたからだ。
「ボクもいつまでも、ただの最年少プリキュアじゃないんだからねっ!インフィニティィィィ……ブレイクッッ!!」
キュアミューズはこの時点で少なくとも生前のスペックはとうに超え、いつの間にか、セブンセンシズに到達していたことを示した。射手座の黄金聖闘士の闘技である『インフィニティブレイク』を放ったのだ。右腕から無数の光の矢を螺旋状に全体攻撃として放つ攻撃であり、黒江、箒、調の三者が『使い勝手がいい』と多用する闘技でもあった。これがミューズの秘中の秘の攻撃であった。
「え、えぇぇぇ――ッ!?あ、あ、貴方、どこでセブンセンシズを!?」
「スカーレット、キャラ崩れてるよ」
「そ、それより!!どうやってそれを!?」
「特訓と言ったろ?」
地形を変えるほどの威力を持つ闘技であるので、当然、兵士たちは多くが一蹴される。
「さあて、とどめだよ!スターダストォォォ……レボリューション!!」
ダメ押しの『スターダストレボリューション』。これは牡羊座の闘技だ。黒江が持つ『引き出し』をいくつか、キュアミューズ(アストルフォ)に伝授していたらしい。
「僕たちなら、セブンセンシズにたどり着くのに必要な素地は揃ってるからね。修行すれば比較的容易にたどり着くよ」
ミューズはそう断言する。自分達なら常人より比較的容易にセブンセンシズに至れると。問題はエイトセンシズ、ナインセンシズなどの更に上の領域である。
「曰く、力じゃなくて、あくまでも技だから出来たんだ、体得するのに苦労したんだぞ?だって。問題はその上さ。エイトやナインは修行を相応にしないとね」
蟹座のデスマスクがそうであるように、セブンセンシズに目覚めれば、飛躍的に戦闘能力が強化されるために慢心しやすい。デスマスクが紫龍に屠られた理由もそれだ。エイトセンシズに至る者は当代の乙女座である事が多いのも、だいたいの用事はセブンセンシズで事足りるからだ。
「神のレベルと戦うのなら、エイトセンシズやナインセンシズは必須だよ。ZEROと戦うにも、ね」
「それを会得して、どうしろと?」
「重大だよ?日本の連中がスーパーロボットの必殺技の使用にも口出ししてくるからなぁ……。扶桑はスポーツ選手の兵役でも日本と揉めたからね」
日本は『兵士に後々に映画界で活躍する俳優などが混じっている可能性がある』という事で、スーパーロボットの必殺技などの使用を規制しようとして、連合軍に物笑いの種にされている。(配慮として、厳しい判別作業が捕虜収容所に入れる際になされるが)その対象にならないプリキュアや聖闘士の闘技は重宝されている。これは日本で『芸名が本名とかけ離れていたために、役所の勘違いで徴兵されて戦死した芸能人がいた』という伝説が重く見られたためだが、連合軍としてははた迷惑である。日本は扶桑に『スポーツ選手の兵役免除』を布告させたが、時代的に親が世間体を気にし、親が無理矢理に引退させて、兵役に就かせようとする例も生じるなど、倫理上の問題も多く発生した。そのため、扶桑はこの時期から兵役につく者の人数の確保にも苦慮する羽目になり、一時は志願制への完全移行も視野に入れられていたが、戦時に伴う人員不足に対応するため、形を変えて『徴兵』も継続され、日本連邦軍はその併用体制を確立していく。その混乱は特にこの時期に顕著であり、通常部隊の支援が乏しい状況を乗り切るため、64Fの幹部はどんな形であれ、『一騎当千』が推奨されている。とはいえ……。
「こうなったら、私も!!」
「お、奥義を使うのか」
「クラレント・ブラッドアーサー(我が麗しき父への叛逆)!!」
我が麗しき父への叛逆を発動させるキュアスカーレット。ある意味では、モードレッドとトワは似ているため、メイン人格が変わっていても、モードレッドの宝具の発動に支障はない。もっとも、プリンセスプリキュアであるためか、クラレントの『真価』を発揮できる分、トワが発動させた場合のほうが威力が上がっているが…。
「君、日本で人気上がるかもね」
「見てらっしゃい、私も絶対にセブンセンシズを身につけてみせますわー!」
「お~、燃えてるね」
スカーレットもペリーヌやモードレッドと混じり合いつつあるらしく、現役時代には少なかったコミカルさが増加しつつある。変身した状態でコミカルさを見せるのは珍しい。
「よし、この辺りは制圧した。次の地点に移動するよ」
「火消しというのは、私たちの仕事なのでしょうか」
「仕方ない。ドイツの連中が撤兵しちゃった上、スペイン軍も物の役にも立たないんだ。僕たちが戦線の維持をしないと、イベリア半島は危ういんだ。自衛隊は政治的都合で大規模派兵はできないし、第二次世界大戦型相手だったら、21世紀型の質のいい兵器を少数おけばいいって思い込んでるんだから、質が悪いよ」
キュアミューズが嘆くように、仕方がないが、質は物量を補えきれない事はジオンの例で証明済みだ。だが、日本はそれを全軍に求めるのだから、余計に始末が悪い。要求される戦闘単位の飛躍的向上と求められる基礎知識量の増大が農村の少女層が志願を避けるようになる理由となり、ウィッチ兵科の衰退の原因である。この時代のウィッチは日本で言う中卒であればいい方であったため、日本が最低条件として求める『高卒相当』という条件は相当にハードルが高かった。そこも兵科の維持が太平洋戦争後に諦められ、その後の時代は『特技班扱い』でウィッチ部隊が臨時で組まれ、戦役の度に結成される程度の扱いになり、大戦世代が軍を去った後の時代では『ウィッチが固有の兵科を持っていた』事が若者に与太話扱いされるに至る。また、『戦えないウィッチ』の軍での受け皿が最終的に広報部の『第五広報班』になった事は概ね、受け入れられた。Gウィッチの万能性が皮肉な事に『
――ダイ・アナザー・デイ当時は華々しい歴代プリキュアの戦果が注目されたが、メンバーが虫食いだらけである事が日本側から不満がられた。特に不安視されたのが、初代の不在である。初代とその時々の最新プリキュア以外は十把一絡げに三下扱いなのは、のぞみとシャーリーを大いに憤慨させた。歴代の仮面ライダー達が個別に信を得ているのに対し、プリキュアは初代と時代時代の最新プリキュア以外はお呼びでないという風潮があるからだ――
―― フォン・ブラウンでの出来事からは『後日』にあたる海戦の戦闘中――
「クソ、苛つくぜ!」
「どうしたのさ、戦闘中だよ、シャーリーさん」
「どうのこうのあるか。日本の連中はすぐになぎささんたちのことを引き合いに出しやがる!あたしらだって、プリキュアだぞー!」
シャーリーは海戦の日本側が行っている実況中継のコメントに苛ついていた。なぎさとほのかの不在を嘆くコメントが多いからだ。
「大丈夫だ、大きなお友達がお前らにはついてるから」
「どーいうことですか?」
「2020年にもなれば、そろそろお前らのアニメを見てた世代が親になって、子供をファンに育て始めてるからな。のぞみなんて、当時の子供がもう親になるし、シャーリー、お前も2020年だとアラサー女子だぞ」
「そ、そうでしたっけ…あはは…」
のぞみは1993年前後の生まれ。2010年代前半に成人で、野乃はながプリキュアになる頃には24歳前後になる計算になり、野乃はなの担任教諭でも不思議でない年齢差がある。最後の第一世代プリキュアの北条響/キュアメロディも1997年前後の生まれと推測されるため、2020年では、いずれも成人済みということになる。シャーリーはそのことを引き合いに出されたため、一気に苛つきがトーンダウンする。
「のぞみが前世で苦しんだ理由だが、ジェネレーションギャップだ。例えば、のぞみは93年位の生まれだが、野乃はなは2005年生まれ。普通に一回りも違うのなら、戦いに関しての考えも違う。そこが軋轢になったんだろう」
「だよなー。ドラえもんのアニメだって、のぞみは辛うじて、古いあの声を見れてるが、はなは生まれた時点で甲高い声のほうだし、それしか見てねぇだろうし…」
「俺の実体験だが、一回り違うと、話が合わんよ。上の兄貴がそうだし」
黒江も長兄と一回り以上離れているため、ジェネレーションギャップが身近である。そのため、のぞみが前世で苦しんだものの一つを直感的に当ててみせた。
「俺の推測だが、お前やつぼみと違って、のぞみはぶち切れると、敵に容赦しねぇ。そこが野乃はなとぶつかった理由だと思うぜ」
「はなはどちらかというと、つぼみと気質が似てるからな。のぞみはガチンコしてきた古いプリキュアだ。深層心理じゃ相容れないよ」
はなはソードを浄化特化のロッドへ変化させたように『優しすぎる』性格である。これはいじめられていた経験を経たからだろうが、のぞみは前世で『ある事から意見を対立させた経験がある』と言っており、黒江はその内容を察していた。のぞみは現役時代、鏡の国の戦いの際に自身のコピーであった『ダークドリーム』と和解した直後に、彼女が自分を庇って消滅してしまった経緯があるため、『自分の大切な存在を守るためには、相手をぶちのめすしかない時がある』と思い知った。それがのぞみの後の時間軸での暴走に繋がるのだが、その傾向を黒江は察していた。のぞみがはなと相容れないだろうと言った理由は『大切な存在がこの世から消え失せる』経験の有無でもあるのだ。
「ダークドリームの事か。うららから伝え聞いただけだけど、あいつ、現役時代にハードな経験してっからな。ゆりさんほどじゃないけど」
「何かを失った経験があると、防衛本能が暴走する事はある。昔の俺みたいにな。のぞみはそれで揉めたんだろう」
「想像つくぜ。代が離れた後輩は必ずしも、あたし達の世代の全てに共感はしないからな」
シャーリーは経験上、『何かを失った』事は多いため、その事に関しては『のぞみを擁護する立場』であった。第一世代のプリキュアとしての戦友意識の強さの表れでもある。そこに黒江とのび太は戦いの最中だが、シャーリーの態度から、『のぞみが前世で何をしたのか?』という疑問に察しをつけつつあった。表には出なかったであろう『プリキュアの世代間対立』のきっかけを作ってしまったであろうと。
「シャーリー、お前……」
「あのガキ、今からして思えば、当時は『綺麗事言ってるようにか聞こえなかった』からな。だけど、あいつも自分の過去に答えを出して生きてたと考えてみると、事態を悪化させちまっただけだったかもしれねぇ」
「いや、遅かれ早かれ、何かかしらの形で表れたと思うよ。君達の世代間対立は」
「のび太、気づいたのか」
「君の態度だよ。キュアエールを毛嫌いしてるようだったからね、そこから推測は成り立つ」
「全部を嫌ってるわけじゃないよ。いけすかねぇだけだ、いくら過去の経験があったからって、感情を笑顔で誤魔化すなんて…。はなはそれが最善の生き方と考えてたからな。だけど、仮面を被る事でわからなくなる事もあるっつーに」
シャーリー(北条響)は野乃はなが『笑顔を自分の感情を誤魔化すための仮面としても用いていた』点に反感を抱いているようである。全部は嫌っていないとも言っているあたり、かなり複雑な思いを後輩に抱いているようである。
「人間、悲しみを悟られたくないこともあるさ。僕なんて、親父に何度も『意気地がない』と言われたもんだ。だから、彼女の選択を頭ごなしに否定するのは良くないよ。悪人でもないかぎりは『わかりあえる』からね」
「…すまねぇ。愚痴になっちまった」
「君の気持ちも分かるよ。紅月カレンとして、お兄さんを失って、友達が自分に秘密を抱えたまま死んでいった事への怒り。だけど、残された者たちは前を向くしかない。僕にとってのおばあちゃんのようにね」
のび太は野乃はなを間接的に擁護したが、のぞみやシャーリーの立場にも配慮する粋な所を見せる。のび太は幼少期に親類でもっとも敬愛する祖母が病没し、生まれる前に祖父も亡くなっている事から、のび太は『残された者の悲しみ』と向き合った経験がある。また、現在は仕事の関係で交流が復活したが、大学を出るあたりでドラえもんと別れているので、のび太ははなが『誰にも悟られずに笑顔の仮面を被ることができる』というある種の特徴を持つことも否定はしない。自分もそのような状況になる場面は何度もあった(主に大長編の冒険で出会った友との別れ)ためだろう。
「だけど、人間、時には感情をさらけ出す事も必要さ。カミさんがリルルと別れた時のように」
「……鉄人兵団のスパイだったっていう……」
「ああ。彼女は自分と同胞を歴史から抹殺する代わりに地球を護った。メカトピア戦役での『革命』を起こした彼女はカミさんの知る彼女とは別の存在。僕たちの事は地球への観光旅行で見た程度。僕はそこにある種の感動と寂しさを感じたもんだ」
のび太はリルルの事があるがために、転生に肯定的な面を持ち合わせている。のび太は鉄人兵団との二度の戦闘を経る事で輪廻転生を信じるようになったという経緯があることを黒江たちに思い出させた。
「お前、そうだったな」
「うん。だから、生まれ変わることを僕は悪くは言わないさ。フー子の事もあるからね。カミさんもリルルとバギーの輪廻転生を願ってたしね」
のび太はリルルとバギー、フー子という自己犠牲で世界を守った存在を知る身であるため、輪廻転生を強く信じ、少年時代、黒江達がそれを実証したことを心から喜んだ事がある。それが彼自身の転生を促したのである。
「僕は『何かとの別れ』がどんなに辛いものか分かる。のぞみちゃんはたぶん、失いたくなかったんだよ。自分が何より大事にしてきた仲間や誇り、自分が信じてきた輝きである『思い出』を。だから、後輩とトラブっちゃったんだよ」
「お前……」
「だから、君達には味わせたくないんだよ。会いたいって心から願っても、会えなくなるって辛さを」
のび太はのぞみが前世での『トラブル』の結果、どういう目に遭ったかを悟っているのか、のぞみの気持ちを代弁するかのような一言を口にする。同時に、彼がリルル、フー子(のび太は特に、フー子とのことを引きずっている)と言った『会いたくとも会えなくなった』存在のことを思い出したか、青年時代以降では珍しいくらいに哀しげな声色であった。のび太が『失ってしまった友達』のことを引き合いに出すあたりに本気度が感じられ、シャーリーは押し黙ってしまっていた。のび太自身が転生を選ぶ事の間接的示唆だからだ。
「久しぶりに感傷に浸っちゃったけど、僕の言いたいことはわかるね、シャーリーさん?」
「すまねぇ……あたしが馬鹿だったよ…」
「君の気持ちはわかるよ。シャーリーさん」
「のび太くん……、ありがとう」
「お安い御用さ」
シャイニングドリームは『自分が前世で最終的に抱いていた感情』を代弁してくれたのび太にお礼の言葉をかけると、同時に、彼が青年になっても『フー子』(のび太が少年期の頃、彼らのとある冒険のきっかけを作った『台風の子供』。最終的に自分を犠牲にして世界を救った)の存在を忘れずにいる純真さに感動し、目頭が熱くなる。自分も『ダークドリーム』との一件を味わったため、のび太の抱く気持ちはよく分かる。戦闘中だが、のび太の人間的魅力である『他人の悲しみを自分の悲しみのように感じられる』点を垣間見たキュアドリーム/夢原のぞみは以後、のび太の人間性に惹かれていき、強く慕うようになる。それはのび太が持つ優しさに、かつての『ココ』(小々田コージ)と同じ何かがあることを直感的に見抜き、同時に前世の自分が抱いていた負の感情を前向きな言葉で表してくれたからでもあった。