――日独は結局、ウィッチ世界の軍縮を進めようとして、現地の国際社会そのものにNOを突きつけられるという結果に終わったが、副次効果として、軍ウィッチ組織の軍閥化は阻止されたが、軍ウィッチのなり手が減った事で兵科の近い招来の消滅の道筋が立ち、一部の聡明な者達は資格の習得に走った。扶桑はウィッチの輩出人数は多いが、軍志願数が減ったため、兵科を20年と維持できる見通しが立たなくなったのだ。これは日本側にとっては『志願年齢を高齢化させただけなのに』という認識だが、ウィッチは一般的に10代半ばほどが絶頂期に当たるため、日本側に猛抗議が行く始末になった。結局、妥協的にRウィッチ化を前提にしての福利厚生を構築しなければならないため、この数年間の志願数の減少は兵科の命運を決めることとなった。Gウィッチは強力であるが、数は限られる上、一部隊での集中運用が方針であるので、異動もさせられない。部隊間の平均練度に差がつくことに困った軍部は、64に有望なウィッチを出向させ、そこで鍛え上げた後で原隊に戻すことで前線の要望との兼ね合いを取る事にした。この任務に充てられたのが、64Fの第二中隊の『維新隊』であった。適度なスクランブル任務をこなしつつ、高度な教導が受けられるという事で、維新隊は急速に陣容を整えつつあり、激戦に次ぐ激戦に酷使される新選組より部内での人気は実は上であった。広報用部隊の側面もあり、ストライカーと装備は当時の既成品の最新型で占められている。そこも人気の理由であり、出向という形で夏木りんと氷川いおなは属する事になった。これは新選組がより激戦区に送られる事になり、もはや悠長に新人(プリキュアとは言え)を育成する暇が新選組では取れなくなったからで、孝美の発案で、実戦での飛行経験が少なめ(いおなはりんよりは経験が多いが、空中機動で新選組に求められる水準には届いていない)の二人のプリキュアは孝美が中隊長に就任した維新隊に孝美の護衛を兼ねて、出向となった。
――新選組の隊舎――
「黒江さん、のぞみの面倒はあたしが全面的に?」
「いや、俺も手伝うよ。お前にはクロやイリヤの面倒もあるしな。孝美の発案なんだよ、今回の人事」
「あのガキが?」
「そうだ。あいつがプロパガンダ目的もあって、維新隊の中隊長を拝命したから、維新隊の方が比較的に時間が取れるとか言ってな」
孝美は当時、年齢は17才。シャーリーと同年輩だが、軍歴は比較的浅く、13才当時にリバウ攻防戦に動員されたのが初陣である。Gウィッチかつ聖闘士だが、立場的には若輩者扱いである。しかしながら、通常ウィッチとしては『ベテラン』と呼ばれる年齢であるため、同位体の事もあり、維新隊の中隊長を拝命したわけだ。シャーリーから『ガキ』扱いされているのは、シャーリーにはプリキュアとしての戦歴と紅月カレンとしての戦歴が加味されているためである。
「少佐の部下らしいな」
「坂本も元々、新人を短期間に大規模で投入することを反対してたからな。孝美もその影響が大だ。だが、大戦になると、急速に交代要員を供給せにゃならん。その兼ね合いもある」
坂本や孝美は充分に育成されていない新人の投入には反対というのが公の見解である。しかし、『前時代的な名人教育でしかない』と日本から疎んじられているのも事実であるので、孝美に中隊長経験を積ませるという事で、維新隊を束ねさすのである。武子の維新隊への人材供給の方針とも合致したためもあるが。
「あたしらはますます最前線かよ」
「仕方ねぇだろ。俺らが戦局を左右するっていうのを証明せんことには、周りから疎んじられる。上層部のお気に入りってのは周りから妬まれるもんだからな」
軍事的に不可解とされつつ、史実の二次大戦で最後の輝きとされる『エース部隊』。新選組はその看板を一心に背負うため、酷使されるのも仕方ないことであった。作戦は現在進行形で続いてるからだ。
「安易にストナーサンシャインやカイザーノヴァを撃って、大規模破壊を起こすわけにもいかんが、日本が望んでるのはフリーダムガンダムやデスティニーガンダムのような、一騎当千の戦闘だ。戦闘経験値が多いプリキュアをこっちに残したのは、そういう事だ」
「めんどくさいぜ。政治屋に配慮ってのは」
「世の中、そういうもんだ。ハルトマンとマルセイユがドイツから『扱いにくいから予備役に』なんて画策されるように、政治屋連中のご機嫌は定期的に伺う必要があるんだよ。軍隊の手綱を握ってるのは、政治屋と財務の連中だしな」
「で、敵の物量そのものが囮だって?」
「リバティとフリードリヒ・デア・グロッセの完成と調整が敵の真の目的だよ。あの物量はラ級の完成のための生贄だ。言い方は悪いが。最悪、味方の木っ端兵士は敵の北斗琉拳や南斗五聖拳の前の肉壁になるしかないだろうし」
「敵には勝算があるってわけか」
「そうだ。お前らには、最低でも南斗水鳥拳のレイと同程度の強さを持ってもらう」
「無茶言うぜ」
「それを達成してもらわんと、この戦場で苦杯をなめるぞ」
「まっ、あたしは不知火流を使えば、なんとか行けるだろうけど、のぞみはどうすんだ?」
「あいつ、錦の先祖に草薙流古武術の使い手がいたみたいでな」
「ま、マジかよ!?」
「その資質が目覚めたみたいだ。その関係でりんがぶーたれたけど」
「あいつは炎属性だからな。で、アラモードのガキ共は?」
「炊事担当で同行させる。マカロンこと、北郷さんしか、今んとこは正面戦闘には耐えられんからな」
「北郷さんも大変だよな。ウチの中での二番目の古株でも、プリキュアとしては若輩者だし」
「軍隊階級は大佐だから、お前らよりは偉いがな」
「インフレしてるよな、あたしらの軍隊階級」
「俺は自衛隊でも『将』だから仕方ねぇが、普通に佐官が使いっぱしりになるのがウチだ。ウィッチの最低は曹だが、パイロットを下士官扱いってのはどうかって事で少尉に引き上げられる。坂本は反対したが、押し切られたとか愚痴ってた」
ウィッチのスタートラインは扶桑では下士官だが、パイロット扱いであるため、少尉に引き上げる決定がなされた。坂本は士官への任官を『相応の経験をしてから任官すべきだ』と反対したが、自衛隊に合わせるという事で意見を退けられている。坂本は下士官として実戦を経験した後に少尉へ任官された世代なので、未熟な者が少尉を名乗るのを反対したが、事変後は兵学校さえ出れば、誰でも少尉にはなれるので、坂本はその点で昔気質と小馬鹿にされている。(坂本が兵学校に行ったのは、一定の勤務実績がある頃である)
「少佐は昔気質だからなぁ」
「だから、若い連中の人望がないんだよ。模擬戦で敬服した奴じゃないと、ついていかないし。あいつは口下手だからな」
「昔から?」
「察しろって奴だよ。海外勤務経験が長いのに、これだよ」
黒江は坂本の口下手をそう評する。前史では自分が当事者だからだろう。
「あいつ、モロにステレオタイプの武士像に被れてやがるんだよ。あれで転生で改善されたほーだ」
坂本は根本的にステレオタイプな武士像に被れている。家の愛国教育が悪い方に出ている表れで、ミーハーな気質な黒江と違い、頑固な一面を持つ坂本の悪いところでもある。
「沈黙は金なりは海外じゃ通じんと教えてるんだがな」
「少佐って頑固だよな」
「それが転生前の芳佳に影響を与えてたからな。今はあいつのほうが狸だぜ」
「言えてる」
「目下の問題は日本だよ。日本の政治屋連中は自分達の政治ショーのために国防予算を減らしてる。いくら扶桑の金を使えるったって言ったって、限度はあるんだがな」
「地球連邦軍の援助で持たしてるとこあるだろ、今は」
「日本は前線の在来型扶桑戦車を廃棄させたから、装甲戦闘車両が不足してる。あと数百両は最低でも欲しいくらいだ」
「チヌまで廃棄ってのはやりすぎじゃね」
「本当はチリとチトの配備までのストップギャップなんだがな。本土に残った車両も博物館送りにされたから、61式相当のチト改、チリ改を74までの繋ぎで緊急生産してるが、月の生産数は40両行けば良いほうだ」
「それで現地でセンチュリオンが購入されてるんだな」
「そうだ。戦車閥は憤慨してるし、腰を抜かしてるよ」
黒江が語る『扶桑陸軍機甲兵器の不足』と扶桑陸軍の戦車閥の喧々諤々ぶり。扶桑陸軍は現有技術での旋回砲塔搭載可能な砲の限度を75ミリ砲と見込んでいたが、第二次世界大戦中の重戦車と同口径の砲を備え、機動力の伴う第一世代MBTが現れる事で、その認識が木っ端微塵にぶっ飛ばされて猫も杓子も大パニックなのである。日本によって機甲本部の大規模リストラすらも公言され、陸軍機甲本部の面子は丸潰れであった。緊急でミッドチルダ動乱で試験された車両を正式に制式化して対応したものの、日本側が陸軍の純然たる機甲戦力の縮小と機械化歩兵の増大を目論んだため、ダイ・アナザー・デイに送り込まれた機甲戦力の多くは装甲戦闘車両の近代化が進んでいたM動乱帰りの部隊で、当初配置の師団と交代した部隊もM動乱の経験はあるが、戦力の均一性では一歩遅れている状況であり、Gフォース陸上部門と一体化しての運用で弱点を補っている。また、Gフォース所有の74式戦車は第二次世界大戦型の機動戦闘には向かない特性のMBTであるため、21世紀現在の最新式たる『10式戦車』の配備が始められているという状況だ。
「そりゃ10式とか、74式をみりゃな」
「実はMS相手でも、10式以降は充分な支援さえあれば、量産型の正面装甲は充分に撃ち抜けるからな。ジオンがマゼラ・アタックで一応の機甲戦力を持ったのはそういう事だ」
「M1戦車も?」
「そうだ。地球連邦陸軍も61式が普及するまでは、旧国連主要国の戦車の改良型を地域ごとに使ってたらしいし、火力じゃ未だに一線級だ」
「でも、量産に時間かかるだろ?」
「今、扶桑用74式の量産を進めてるが、前線に本格的に出回るには年単位の時間がいる。だから、現地指揮官の裁量で、他国戦車の購入が認められてんだ」
「センチュリオンとコンカラーが大量に購入されたのって、それ?」
「そう。緊急で陸軍機甲本部が追認したよ。俺がモンティに頼みこんで、チャーチルのおっちゃんを口説き落とした。コンカラーが特に受けが良い。近代化してるから、この時期の陸戦じゃ無敵さ」
「ソ連のIS-3を倒すための重戦車なんだから、戦中式のタイガーやパンターは敵じゃねぇだろ」
「M4を一発でオシャカにできるからな。おまけに近代化で高分子ライナー貼付や戦車道用カーボンの取り付けもしてるから、M4はゴミだよ。パーシングも目じゃねぇ」
「どうすんの?M26が」
「あれも90ミリだ。正面からなら大丈夫だよ」
コンカラーは近代化で戦後式120ミリ砲に強化されているため、第二次世界大戦水準の装甲しかない敵戦車に無敵と言っていい強さを誇っており、カールスラント装甲戦闘車両のすべてを時代遅れにしてしまった。ティーガーⅡすら一撃で行動不能にできる砲を持つため、M4中戦車が主力であるリベリオン機甲戦力にキルレートで圧倒的に優位にあり、配備された部隊は火消しとしての運用が主であったが、大活躍していた。皮肉なことに史実の友軍相手に重戦車としての活躍を見せ、再評価された重戦車の第一号となった。米軍も自由リベリオン軍へM103重戦車の設計図と実物を提供したため、戦車の開発合戦は連合軍が優位にあった。また、日本が勝手に名付けた『Fighting Monster』がウィッチ世界に逆輸入され、正式にM103重戦車の愛称になるなど、珍事も続出した。リベリオン本国軍の地上軍管理本部はM4至上主義に凝り固まっていたが、三週間の間に失われた同戦車の数があまりに膨大なことに流石に目を回し(四桁の数が失われた)、制式採用間もない『M26』の量産の本格化を決定する。それを見越している連合軍はM26も容易に撃破できる装甲戦闘車両の配備を急ぎ、対戦車ミサイルなどの対戦車火器の普及を急いだ。地球連邦軍で戦車が再評価され、新戦車の本格配備に弾みをつけるなどの成果を23世紀にも与えた事から、ダイ・アナザー・デイは処方面に軍事的影響を及ぼしたと言える。
「パーシングの輸送や生産を妨害する。あれに物量作戦を取られると、ウチはともかく、他が崩壊しちまう」
「例によって、富嶽で?」
「試験的に富嶽から撃つ巡航ミサイルを使うそうだ。絨毯爆撃は人道に対する罪って声があるから、巡航ミサイルで代替したそうだ」
扶桑は爆撃機からの巡航ミサイルによる戦略爆撃を試験的に始めている。絨毯爆撃が政治的に出来ない日本連邦の取った手が巡航ミサイルの投入であった。ドックへの打撃に使われ、一定の成果を挙げている。
「絨毯爆撃が出来ないからって、オーバーテクノロジーの精密爆撃をな。ウルスラが文句言うぞ」
「その時は技術書でも渡しとくさ。俺たちはそれどころじゃないからな」
「あたしもヒロインに戻ったわけだけど、敵もインフレしてきてるからなぁ」
「キュアムーンライトはパートナーの妖精がムーンライトをかばって戦死してるからなぁ。のぞみはりんを失う事を内心で恐れてるが、たぶん、その事があるからだろう」
「昔、ゆりさんが言ってたな…。あたしらにも起こり得る話だしなぁ、それ」
「のぞみは娘との事も遭って、それに匹敵する事態を恐れてる。その時は…」
「…分かった」
黒江はこの頃、のぞみの思考傾向が危うい方向に流れ始めている事を悟っており、シャーリー/北条響にその支えになるように頼み込む。成人した後ののぞみの精神は大人の社会に揉まれたためか、『大人としての弱さ』を持ってしまっており、現在でも、完全には現役時代の精神状態に戻っていない。心の何処かで『失う事の怖さ』、『約束を破ってしまう罪悪感』に囚われている。黒江はそれをキュアメロディに伝えたのだ。
「のぞみはキュアエールとの約束を破った自分が許せないし、前世でりんが先に逝っちまった事でトラウマを持ってる。口には出さんが、昔の自分であるかのように振る舞ってるが、裏ではそんな気持ちが渦巻いてる。心配だから、この戦が終わったら、のび太んとこにしばらく住まわせてみるわ」
「それが良いな。あいつも前世を相当に引きずってんだな…それも戦友のあたしらにも言えないほどの…」
「あいつは前世でキュアエールの応援に応えようと努力した、いや、頑張りすぎた。それがあいつの上のガキにはわからなかったんだろうよ。下のガキがあいつの力を継いで、次代のキュアドリームになった事で殺し合いになった事は容易に想像できる。若い頃の英雄的行為に見合わない、報われない人生すぎた。少なくとも、数多くの世界でもバットエンディングの世界だろうな。だから、過度に若い頃の振る舞いをしようと無理してるんだろう。りんもそれに気づいてるが、出身世界が違うから、手出しがしにくいようでな。あいつのカバーを頼む」
「昔から、あいつは世話を焼かせるからな。ラブやマナにも話しとくよ」
「頼む。」
「待てよ、それ、誰から聞いたんだよ」
「はーちゃんからだよ。はーちゃんには本音をぶちまけたみたいでな、あいつ」
「はーちゃんはある意味、無邪気だからなぁ。それであいつも零したんだろうなぁ」
「分かってると思うけど、あいつにはオフレコな、これ」
「はいはい、わーってるよ。あいつ、昔から妙に強がりなとこあるしな」
この会話が出現済のプリキュア・ピンクチームの以後の体制を決定づけた。のぞみが抱えてしまった弱さを克服させるため、北条響、桃園ラブ、相田マナ、愛乃めぐみの四人が結束して、のぞみを支える事になる。めぐみは出身世界でのぞみ達に喝を入れられ、共に最終決戦を戦ったという経緯から、特に乗り気であったという。花咲つぼみはアリシア・テスタロッサとして転生し、時空管理局の研究員であることから、あまり関与できないと侘びているため、実質、この四人でのぞみ/ドリームを支えていく事になる。ある意味、のぞみがかつての現役時代に望んだ、『ピンクチームの構成員によるプリキュア5』の結成は黒江が持ちかけた相談で具現化したと言える。(のぞみ自身、プリキュア・ピンクカルテットに関われなかった事を悔しがっていたため、ある意味ではこの時点で夢が叶っていた)
――そんなピンクチームの状況を黒江に伝えたのは、キュアフェリーチェこと、花海ことはである。のぞみが数週間ほど塞ぎ込んで寝込んでいた時、ことはにだけ、これまで隠していた弱音と本音をぶちまけたため、ことははそれを黒江に報告したわけだ。シャーリー/北条響はりんの出向に伴う代理で、のぞみの面倒を見る事になったため、黒江はシャーリーにその事を伝えたのだ――
「さて、あたしは次の駐屯地行きの便が出るまで、荷造りしてくるよ」
「俺はのび太の報告を待つよ。今日はダブルスペイザーで強行偵察に出てくれてるからな」
黒江はシャーリーと別れ、自室の荷造りを始めつつ、のび太からの報告を待つ。のび太が強行偵察するのは、ニューヨーク海軍工廠で建艦途中のラ級戦艦『リバティ』の威容。艦載すると思われる『50口径45.7cm砲』も試作されているという分析を確かめるため、のび太はダブルスペイザーで敵の懐に飛び込んでいった。コーラの栓を開けたところで、のび太の定時報告が入る。
「敵は50口径45.7cm砲を量産しだしてる。改モンタナに積む気だ」
「おい、ちょっと待て。それじゃ、リバティの砲は」
「48cmから50cmまでののいずれかだろうね。超兵器として位置づけるには、そのくらいの口径は必要だし」
「海軍に播磨の長砲身化を具申するっちゃないか?」
「敷島は当分は完成しないし、轟天は船体の製造途中。三笠を回航させると、本土が危ないから、大和型と播磨型の長砲身化を行わせたほうが急場凌ぎではあるけど、効果はあるね」
「ますます、大艦巨砲主義の宴だな」
「核兵器の打ち合いより、よほど平和的でいいじゃない。古風ではあるけど、海の戦の姿だよ」
「正確に言えば、古式のやり方に従った……だな。日本は腰抜かすな」
「ユトランド以来の大海戦をリアルタイムで見れる絶好の機会だから、喜ぶと思うよ?」
「ま、ある種の先祖返りとみなすだろうな」
「原子力潜水艦より安上がりだよ、ある意味」
日本の世論に訴えるような劇的な戦。それが戦艦がメインで起きる古式の海戦。黒江は先祖返りと評するだろうと言ったが、ダイ・アナザー・デイをある意味で、ショーのように見ている21世紀日本の大衆が好むような『古式な大海戦』。戦艦が海の王者であった頃を懐かしむ心理は現場の自衛官よりも大衆のほうが強い。
「やれやれ。俺たちはショーウィンドウの中でのデモンストレーションか?」
「ガンダムファイトみたいなものだよ、たぶん。戦艦が海の王者だった時代は第二次大戦で完全に終わった。そう認識されてるからこそ、この世界での戦艦のファイトを楽しんでるのさ」
「ゲートの守護の現場の自衛官はハラハラなんだぞ?アイオワ級の主砲が夾叉した護衛艦の連中は生きた心地しないって言ってるのに」
「大衆はそんな事、どうでもいいのさ。東方不敗が歪んだのもそんな大衆に絶望したからだし」
「……東方不敗の気持ち、ちょっとわかるなぁ…」
定時報告での会話は日本の大衆がダイ・アナザー・デイを『ショー』感覚で見ている事の示唆であった。東方不敗マスター・アジア(シュウジ・クロス)が絶望して歪んでしまった事の理由をなんとなく掴んだのか、黒江はちょっと憂鬱っぽい声でのび太に言うのだった。