結局、P-51Hは機体の規格が微妙に前型と異なる事から、前線の将兵(特に整備兵)には好まれず、敵味方共に、ごく少数が試験的に投入されたにすぎなかった。シャーリーなどのエースが扱えば、従来のマスタングを上回る戦闘能力を得られるが、普段の使い勝手はそれほど変わらず、更に、軽量化=強度低下という先入観から、前線の将兵はP-47を好んだからだ。だが、同機は機動力に欠けており、一部のエースパイロット向けに回される事になったが、ストライカーユニットで実際に使用された記録があるのは、シャーリーだけであった。これはルッキーニを満足させるためであったが、パットンの要請でもあった。宮藤芳佳はプリキュアへの覚醒、横須賀航空隊の固辞で震電を得られなかったため、烈風改で対応したが、烈風改は震電ほどのヒロイック性がない事から(日本に)不評であった。更に、史実で『性能的に活躍できない』ことが半ば見えていた機種のストライカーユニットということで、『殺す気か』とのクレームが舞い込む事態になった。だが、烈風は紫電改と違い、零式の正統後継機であり、元来は艦上ストライカーユニットであったので、航続距離が紫電改より長い。そこは坂本をご機嫌にさせた。とはいえ、芳佳用にチューンされたとはいえ、そもそもの限界性能が低いと見なされたため、統合参謀本部はクレーム処理に追われた。
「設計は手直しされてるはずだし、速度性能も改善されとるのだぞ。ロール性能の多少の差が何だというのだ」
と、坂本は不満を顕にしているが、実際、太平洋戦争では、ロール性能が低かった零戦は後半以降、敵のカモにされるほうが多かったので、その悪癖を継ぐ烈風は不当に低く評価されていた。それは実機、ストライカーユニット共に同じだが、実機は実質的に戦闘爆撃機に転じることで、紫電改より長命を保っているが、ストライカーユニットはそうはいかず、一部のエースパイロットが使うチューンナップ機のベースになるしかなかった。また、雲龍型航空母艦は魔女用の航空母艦として設計されていたらしいが、結局は数合わせに、通常空母へ転用された故に、色々な不備が明らかとなり、その現役期間は殆どの個体がごく短期間に終わり、ダイ・アナザー・デイで鹵獲した敵大型空母(近代化改装を施して、だが)がその後の扶桑海軍を支えていくという皮肉がある。
「そもそも、烈風の基礎設計は古いんだ。紫電系と比べられるのは当然だが、日本が求めるのは、爆撃機が飛ぶ高高度まで飛べる万能性だ。魔女にそこまでの万能性を求めるのは、本来は酷だ。だが、魔女も一万メートルを飛べんと、役立たずの烙印を押される」
「だから、あれほど震電を……。鶴見め!」
ダイ・アナザー・デイで超重爆が現れると、横須賀航空隊はますます責められる事になったが、当時、ストライカーユニットの震電は(宮藤博士の理論が理解できなかった事から)テスト未了の状態であり、エンジニアたちの反対もあったために供出しなかったのだが、B-29の登場に『それ見たことか』と世論からの猛批判にさらされた。震電の開発チームの一人の鶴野大尉は後日、坂本に自らの不明を詫びる『詫び状』を出し、自刃を試みる。坂本はそれを止め、震電改の開発チームに誘う。結果的に、鶴野大尉はそれを詫びとする形で、業務に勤しみ、数年後にそれを完遂することとなった。震電が生き長らえたのは、開発チームの死力を尽くしての国家への献身があったのも理由であった。とはいえ、超重爆迎撃はキ100Ⅱ(排気タービン装備型)や雷電三三型(こちらは、史実では失敗した排気タービンと高高度適応型エンジンの組み合わせ)があるので、現場では、史実ほどの苦戦はなかった。程なくして、根本的に次世代のジェット機が投入されたからでもある。ドラえもんとのび太が『サーブ 35 ドラケン』を持ち込んだ事による。
「坂本、喜べ。ドラえもん達が『ドラケン』を持ち込んでくれたぞ」
「何、スウェーデンのあれか?どうやって持ってきたんだ?」
のび太(青年)とドラえもんは野比財団の力を使い、『サーブ 35 ドラケン』を持ち込ませた。対・超重爆対策としてで、ある。のび太とドラえもんの使用機は近代化されており、操縦系統もフライ・バイ・ワイヤ以降の技術に一新されている。無論、扶桑向けの量産機では省かれるのが内定していたが、日本側の意向でそれは撤回され、そのまま増産された。これは『折角の便利なものはそのままにしろ(フライ・バイ・ワイヤ以前の機体の整備法は失伝してるから)』という言い分であった。結局、このゴタゴタから、ドラケンの増産は太平洋戦争の二年前にまでずれ込むことになるが、この時に持ち込まれた機体群は無事に、ダイ・アナザー・デイ後に扶桑軍に移管され、クーデター鎮圧に貢献することになる。
「野比財団で保管していた機体を近代化した上で持ち込んだんだそうだ。それをドラえもんの道具で増やした。サーブ社は統合戦争の後にハービック社に吸収されて、更にアナハイム・エレクトロニクス社の航空部門になったそうでな。それで確保できたそうだ」
未来世界では、航空業界も大きく様変わりしたものの、野比財団の庇護で保管に至った名機は多く、そのうちの一つを自分とドラえもんの専用機に仕立てたのである。これは軍縮時代に、博物館の兵器もかなりが破壊されたからで、結局、宇宙開拓の流れによる防衛力の必要性が認識されたことで、野比財団によって、極秘裏に保管されていた兵器をリバースエンジニアリングすることで復活させざるを得なくなった兵器も多く、リリーナ・ドーリアン(ピースクラフト)外務次官は高く評価されてはいても、ピースクラフト家の主義主張そのものは彼女自身も『一種の理想であって、現実はそうではない』と理解している。故に、政権を辞した後には、義父の性に戻ったのである。
「未来世界だと、いい加減に、人類同士の戦争はないだろうと思ったら、今度は大宇宙の荒海に、いかだで放り出されたようなものと理解してな。だから、連邦軍は解体を免れた。民間軍事会社が、際限無く肥大化することが恐れられたからだ。その関係で、野比財団はアナハイム・エレクトロニクス社を手中に収めることで、コントロールを図ってる。のび太とそのカミさんの意向でな」
「なぜだ?」
「SFでよくある話だが、影響力が衰えた国家に企業が取って代わるって話を、カミさんはそれを嫌ってな。それで、ありとあらゆる手段でその考えを持つ連中を潰した。多分、移民星を一個潰すのも躊躇せんだろう。あいつのカミさんは地球連邦政府の樹立に生涯を捧げたからな。その意向はカミさんの一族が引き継いでる」
アナハイム・エレクトロニクス社にも、ビスト財団の力を利用し、月面世界を独立させようとする者はいたが、源一族の手で、一族ごと暗殺されたらしい。また、宇宙戦争では、植民星は破壊される事も多いので、結局は(後のセイレーン連邦のように)独立するにしても、複数の星系単位での版図が必要となり、23世紀時点では割に合わず、波動砲クラスの兵器を持たないと、自衛もままならないという実情の判明により、静香の思惑は達成されたと言っていい。
「いいのか?そんな……」
「しずかは、果てのない宗教と民族戦争を嫌っていたんだ。故に、統一政府を望んだ。のび太とは別のやり方で。ビスト財団よりも遥か前から、な。故に、地球人としての民族意識で、人類を一つにしたかった。また、冒険の経験から、自衛の術を否定はしなかった」
「それが未来世界の姿か」
それは完全平和は机上の空論であることの傍証であったが、かのリリーナ・ドーリアンも(宇宙開拓時代の到来で)自衛の術の保有は否定していなかったが、サンクキングダムの理想との板挟みで公にできなかった。そこに出自故の悲劇がある。また、軍や軍需産業で生活する者達の食い扶持の確保などの問題の根本的な解決策が見つからなかったこと、移民船団の自衛のために、民間軍事会社を認めるにしろ、どの程度が必要なのか。彼女を担ぎ上げた者たちはその算出さえしなかったため、あっさりと政権を見捨てた。だが、理想を抱くのは必要だとの擁護者も多かったので、脅威への現実的対応として、軍部の存続が土壇場でなされた。その影響で、地球連邦軍は新旧の装備が入り混じる状態に陥り、結局は工廠の復活などで、兵器の数の確保に躍起になっている。結局、脅威は(地球人が生きていく限り)あり続けることの判明、軍縮時代と、直後のガトランティス戦役の影響による連邦軍の形骸化もあり、ロンド・ベルのような独立艦隊がかつての軌道艦隊以上の戦力を持つことが許容されているのである。これはかなりの人材を銀河中心殴り込み艦隊に組み込んでしまった故の弊害であり、地球連邦を再建するにも、軍の抑止力は必須。そう考えた者たちの手に握られた地球連邦軍は、ガンダムタイプの平時における運用を解禁。地球連邦軍の象徴としてのガンダムタイプの存在を復活させた。そんなわけで、ガンダムタイプは『人類の守護者』としての強さを求められる存在に変遷したわけだ。
「ヤマトやガンダム、マジンガーとかは、地球人が宇宙っていう大海原で生きていくための自衛の術なのさ。中央政府は平和になると、急速に腐敗と退廃が進むのがお約束だから、現場が頑張らんとならん。のび太の時代の日本が停滞と衰退の道に入りかけてたみたいにな。昭和の終わる頃には、21世紀からは、定期的に大地震が起きるのも想像していなかったからな」
圭子は昭和末期の日本が大規模災害が起きることにも楽観的であった事、平成を迎えた後に大規模災害が頻発するようになったのを教えた。その傾向は22世紀以降でも変わらず、日本はいち早く地下都市計画を進め、それで宇宙戦争時代を生き延びてきたことも。結局、他の地域の地下都市は場当たり的なものも多く、ガミラス戦役での汚染で滅んだ都市も多いという。戦後は浄化されたものの、21世紀時点の国のすべてが存続しているわけではない。
「あたしらに直接的な関係はないが、お前は今後、向こうに駐在する事も多くなるだろうから、覚えとけ」
「わ、分かった」
それは今後の扶桑にも通ずる問題であった。扶桑軍も強引な軍縮の直後に大戦争に巻き込まれ、否応なしに一部のエースパイロットに前線の防衛を依存するように陥る。魔女では更に顕著となるのである。太平洋戦争の長期化の伏線は、この時点で既に存在していたのである。
プリキュア達は現役時代と違い、敵が明確に意思を持つ存在である事、縁もゆかりも無い世界に集められつつある事からか、否応なしに扶桑の軍略に組み込まれるのに反感を持つ者もいたが、のぞみやことは、マナのように、『現役時代は現役時代』と割り切った上で戦う者もいるのも事実であった。
「ただいま~」
「うわっ、かなりボコられたね」
「まいったよ、ハート。敵の艦長が元ボクサーのアマチュアチャンプ上がりでさ」
「それでかなり?」
「こっちはまともな対人訓練は受けてないんだよ?で、向こうはボクサーのテクニックを未だに持ってる。普通に押されてさ。マジで焦った……。当たらないのなんの……」
「お前も少しはモハメド・アリを勉強しとけ」
「先輩。来たんですか」
「ヴェネチアに潜り込ませた、中野学校の知り合いから、緊急電があってな。それを伝えるついでだ。連中も奇天烈なもんを使いやがった」
「なんですか?」
「地上空母だ」
「……なんですか、それ」
「俺も一瞬、漫画かと思ったが、ティターンズの技術なら可能だ」
地上空母の登場である。ティターンズにしてみれば『技術的には困難ではないので、試しに造ってみた』的なものだった。
「お前らの親が子供の頃くらいに、アメリカとロシアが、ロケットをやたらと打ち上げてただろ?技術の発達で不要になった、ロケット運搬用の車両を流用し、動力を核融合炉に変えた上で合体させていったんだろうよ。おそらく、ティターンズの所領だったアメリカで保管されてたものを使ったんだろう」
地上空母はそうして生まれた兵器である。飛行甲板のレイアウトこそ、二次大戦当時の空母と変わらないが、インパクトは充分だし、存在しているだけで、威圧感たっぷりである。
「まさか、市街地で使うとは思わんだ……。ある意味、ナチの遺産だが……」
地上空母というアイデアは、ドラえもんの世界での二次大戦の際、ナチス・ドイツでヒトラーに出された荒唐無稽なアイデアを発端にする。さすがのヒトラーもまともに取り合わなかったらしいアイデアだが、戦後の技術発展がそれを可能としてしまった。そして、超戦車と違い、重量は(一定程度は)軽い。そして、この時代の飛行機は(後の世の高性能機よりは)軽い。
「後で改めて説明するが、ハートは戦車隊の指揮を取れ。経験者だろ?」
「そりゃ、現在進行系ですけど、武道であって、実戦は」
「連合軍の指揮経験者が減ってんだ。ドイツ系の車両を指揮できる奴は誰でもいい。ロンメル直々のお達しだ」
この作戦中でも行われた『粛清』と義勇兵などのリンチ行為で、連合軍は現場の将校と下士官に深刻な人材不足を来たした。その弊害により、プリキュア達が高位の階級が充てられる流れが醸成されていく。特に、連合軍が泣いたのは『実戦経験豊富な』将校と下士官を病院送りにされることで、日本義勇兵は『すぐキレる』者も多かった(戦後にやさぐれていた者もいるため)ため、喧嘩にやたら強く、そこらの(対人訓練不足の)将校では相手にならず、黒江たちが仲裁する事も常態であった。連合軍は義勇兵らの教育制度を明確に定めるように求め、扶桑は乗り気であったが、日本側が政局を盾に、強く難色を示すなど、連合軍は文民統制を武器にする日本に泣かされた。結局、連合軍に一連の事件の賠償金が支払われ、謝罪がなされたのは、作戦の後であった。自衛隊はこの不祥事を利用する形で、Gフォースの正式な『日本連邦評議会直属の精鋭部隊』化を合意させるのである。
「回収したレーヴェ重戦車をお前に使わせる。お前のいた世界のカーボンで改修してあるから、安全性は確保してある。乗員はお前の指令を聞くように言い聞かせてある」
「この世界線だと、完成してたんですか」
「ラーテの護衛として造られてたものだ。ラーテ計画が中止になった煽りで、生産中止が検討されてたが、敵方にM26戦車が確認されてたから、そのまま増産が決まった。この作戦が終わるまでに、どのくらい造れるかが勝負だそうだ」
レーヴェ重戦車。本来、計画中止が確実視されていたが、M26の存在発覚により、計画が完遂された経緯がある。第一次生産分はすべて欧州派遣軍に配備されていたが、欧州派遣軍の解散で宙に浮いてしまった。重戦車不足の扶桑軍に備蓄弾薬と燃料ごと引き取られ、日本連邦の重戦車として運用されることになったのである。第一次生産分の200両あまりは精鋭中の精鋭である戦車兵に回されていったわけだが、キュアハートも(転生の素体の関係で)与えられたのである。
「うちは重戦車なんて、見る影もなかったしな。工場をフル稼働させているが、内戦が近いカールスラントで、何両が追加できるか。たとえ、内戦が収まっても、ナチス・ドイツ時代の設計の戦車を戦後ドイツが増産させはせんだろうし」
黒江はそう予測していた。だが、この時点では、ブリタニアの誇るセンチュリオンは試作車の試験中。日本連邦は戦後型への切り替えの検討中。結局、カールスラントは内戦勃発までに蓄えた軍事的資産のことごとくを日本連邦に(安く)買い叩かれた末に没落することとなった。とはいえ、レーヴェ重戦車のパテントはすぐに売却されたため、日本連邦が(戦後型までの繋ぎの意味で)増産することになる。カールスラントの一連の悲運は文民統制の悪例として語り継がれることになり、日本は結局、扶桑軍の統制を次第にY委員会へ丸投げしていく。扶桑は議会より皇室が強かったため、皇室の役目を少しづつ、Y委員会に置き換える方法でしか、軍統制の近代化は成らなかった。それすら、山本五十六の政治力あってのことであった。
「ドイツ戦車最初で最後の華だ。活躍させてやれ。パーシングの想定はあくまでも、ティーガーの初期型だ。ケーニッヒやそれ以上の重戦車は想定外だからな。それに、連中は高速徹甲弾も満足にないはずだ。こっちは装弾筒付徹甲弾に切り替え始めてんから、正面装甲も貫ける。それに、ジャクソンやシャーマンのほうが多いから、補給もそうだが、足回りの負担には気をつけろ。改良させはしたが、この時代の製造精度だ。限界もある」
「わかりました」
レーヴェ重戦車もそうだが、この時代のドイツの新鋭戦車の弱点は足回りにあった。重量に対し、アンダーパワーな機関に無理をさせるための宿命で、場当たり的な改修はしてあるが、時代相応の技術では限界がある。理想的なのは、隠蔽をしつつのアウトレンジだが、そうはいかないのが世の常。
「大変だね」
「そっちと違って、こっちは泥臭い陸戦だからね。転生先での武道って形で、戦車は触れてるけど……」
「何、この世界線、お前より技量のいい戦車長はそういない。史実のドイツ最強のオットー・カリウスやヴィットマンも魔女だから、上層部も普通の戦車戦では打つ手がない。お前が頼みの綱だ。黒森峰の次期首席だろ?」
「そんなにいないんですか」
「そうだ。戦車戦なんぞ、この世界線じゃ、まともに起こってないからな」
ダイ・アナザー・デイ当時、戦車戦に熟練した戦車兵は連合軍にはごく少数しかおらず、M動乱の生き残りは優先的に教官に回され、前線残留者はさほど多くない。武道(戦車道)という形でだが、熟達した相田マナ(素体は逸見エリカ)にすがるほどの有様であった。
「遅いぞ、ロンメル」
「すまんすまん。書類仕事が多くてな」
一同のもとに着陸したシュトルヒ連絡機。エルヴィン・ロンメル将軍自らが操縦していた。事変直後の時期より、黒江、圭子、智子の後ろ盾であったが、ドイツ連邦共和国の意向により、この戦役を終えた後に予備役編入が通達されている。
「あの、御本人で…?」
「ハハハッ、ロンメルは私しかおらんよ」
と、鷹揚な物言いで登場のロンメル。歴史書にあるエルヴィン・ロンメルその人である。史実通りに元帥位にあったが、ドイツ連邦共和国は彼を(史実の晩年の失敗を理由に)退役させるつもりであった。この世界では、総統閣下のお気に入りというわけではないが、史実での立身に『総統』が絡んでいることから、軍中央からの排除が決まっていた。だが、世界的名声から、迂闊に退役に追い込めず、ダイ・アナザー・デイを最後の華とさせるつもりであった。この頃から、扶桑皇国は機甲師団の顧問にしたいと、水面下で交渉を重ねており、内諾を得ていた。この時点で、カールスラント軍は悲劇が確定していた。結局、実戦経験者の大半を日本連邦に引き抜かれ、カールスラント軍は内乱もあり、数年で形骸化。ドイツ連邦共和国も『ここまでするつもりはなかった』との言い訳をするまでに至るのである。また、扶桑で近世以来、確立されていた『女性優位社会』も大きく揺らいでしまう。第二世代理論で、ある程度は巻き返せはしたものの、結局、魔女の社会的地位の低下そのものは覆すこと叶わず、名実ともに、異能者の『下位の存在』として扱われるようになってしまう。仕方がないが、民の存亡の危機の時代に国家機関の意向に逆らったことが、社会的な白眼視に繋がったわけで、扶桑は森蘭丸の功績で大国になれた歴史を持つ分、魔女に寛容であった。その扶桑でさえ、惰性で兵役期間を終えるのが許されなくなってしまった点に、この時点で『16~18歳であった』世代の彼女らの罪があった。
「アヤカ、うるさ方は私が説得する。今は指揮技能持ちが枯渇している。この子らに負担をかけるが、後顧の憂いは断っておく」
「頼む。ところで、本当に完成してたのか、レーヴェ重戦車」
「うむ。軍需省は反対したが、M26の情報が伝わって、顔面蒼白でな。ラーテの護衛用という名目で完成したのだ。最も、ティーガーの後継も企図していたがね」
最も、カールスラント軍需省はこの時期には、有名無実化していたため、形式的な許可が出ただけであった。要は生産のお墨付きのためであった。レーヴェ重戦車こそ、カールスラント重戦車の最後の輝きと言える(ケーニッヒティーガーよりも攻防に優れていた)。
「エンジンは1300馬力以上のエンジンに変えてある。27キロでは、いくらなんでも、ドンガメに過ぎたからね。足回りは私の指示で改良させてあるが……」
レーヴェ重戦車は戦線の切り札の一つであるが、熟練兵が使わなければ、折角の高性能も『豚に真珠』である。その事から、熟練兵にしか配備されなかった。この世界線では、一次大戦すら(史実通りの形で)起こってはいない故に、戦車戦のなんたるかは机上の理論でしかない。M動乱も『特殊なケース』と捉えられているくらいなのだ。そのために、電撃戦による勝利が求められていた。結局、参謀の『粛清』で、指揮官が作戦を一から十まで通達せねばならぬ状況が生まれたため、日本連邦は『軍事音痴』と責められた。これは参謀の役目を理解していないためで、結局、幕僚への言い換えが進められ、参謀から栄達した大物は源田実が最後になった。M動乱以降に、現場指揮官の戦死率が一気に跳ね上がったのは、この『指揮官を矢面に立たせる』という、日本の一方的な政治の都合であった。