ダイ・アナザー・デイのちょうど半年近く前、扶桑の呉軍港は奇襲攻撃で壊滅した。幸い、連合艦隊の主力は演習などで留守にしていたが、日本からは連合艦隊は『無力化されたに等しい』とされ、公然と嘲笑されてしまった。扶桑海軍は横須賀軍港を未来世界の力で拡充し、佐世保に加え、史実では存在していない大神と室蘭工廠もあったのだが、日本は『大神と室蘭は拡充に限界がある』とされ、確実性のある横須賀工廠の拡充に傾斜した。呉軍港は復興はされるが、工廠機能は(機能分散で)失う事になった。結局、連合艦隊の拠点が横須賀に変更された影響により、呉は以前の賑わいと多数の雇用を失うこととなった。また、それを補うために、南洋などに拠点を分散させるつもりであったが、外地に海軍の拠点を置くことに日本側が強く反対したことから、工作艦を配することで妥協された泊地も多かった。だが、電子装備の発達で、旧来式の工作艦では修理不能では?という問題もあったので、結局は電子装備の修理が可能な設備を持つ泊地が設けられるというグダグダであった。これは怪異との戦いの都合で、どこの国も『外地を放棄できない』環境にあったからで、日本なりの誠意と謝罪であった。結局、日本は『時代の差による優越感』で大失敗をやらかすことが多く、扶桑人から懐疑的に思われることが多かったわけだ。その延長線上にのぞみの一件があった。
大問題になったのは、日本で既に『キュアフェリーチェが活動している』のに、『プリキュアの実在』を関知していなかったことも含まれていた。とはいえ、キュアフェリーチェの誕生は公式には『2016年』であり、それ以前の時代では『プリキュアという存在の知名度』の問題があったし、2011年でも、『プリキュアチームの一員』と認識されていても、『どのチームにいるのかは謎とされている』扱いであったので、責めるのは酷であったが、のぞみは2010年代時点で既に、『歴代随一の人気を誇る三代目主人公』であったので、日本の官庁は世間に『世間知らず』と見なされたのであった。日本政府は世論を鎮めるために、官庁から高級官僚と当事者などの『生贄』を捧げさせたが、戦後日本の人々の『軍人を(公然と)チンピラやゴロツキ同然に見下す』悪癖の最悪の形での露呈は扶桑の怒りを買い、一歩間違えれば、東京の沿岸部が戦艦大和の46cm砲で火の海にされていたのは間違いなかった。日本政府は命がけで、自らの監督不行などを詫びたが、反軍意識の強い民間団体の強い圧力で、バリバリの職業軍人であったのぞみの教職への転職は断念させる形になり、扶桑の予備軍人制度を大いに揺るがしてしまった。結局、政治的理由で転職を潰す形になった詫びと、プリキュア変身者であったという事実を鑑みての『大佐までの早期昇進』は合意せざるを得なくなった。また、軍籍の名義変更もこの時に(日本側の泣きつきで)実行された。また、他のプリキュアたちにも、正式に(日付を遡っての)入隊手続きがされた他、日本が潰した『ダイ・アナザー・デイ中の64Fの人員補充』は『彼女らがそうであった』という風に取り繕られた。東二号作戦が『なかった』事にされ、予定人員を強引に軟禁させた事の埋め合わせであった。結局、ダイ・アナザー・デイ周りの褒賞のまずさも、クーデターを煽った感は否めなかった。歴代のプリキュア戦士を抱え込めた事は僥倖とされたものの、その後のクーデターで『せっかく育成がうまくいきかけていた中堅層の魔女が反逆を起こした』事は軍や世論に強い衝撃をもたらし、以後、魔女の立場は(第二世代理論の普及による軍事的貢献度の回復まで)しばらくは非常に危うくなってしまうことになった。更に、サボタージュの発覚が追い打ちになったため、異能者たち以外の魔女らは『従軍記章』を免罪符代わりに掲げないと、軍服で街を出歩けないほどであった。
また、プリキュアたちの『変身姿での勤務』も、魔女の世界の人々の『魔女への嫉妬や敵愾心の噴出から守る』ためであった。また、プリキュアであれば、軍人の狼藉も軽く止められるからでもある。また、Gフォースの中核と位置づけられたのも大きい。過去に存在していた『イーグル』や『地球守備隊』などの『国連内の秘密部隊』の系譜を継ぐとされたGフォースは『日本独自の特殊部隊』であったが、既に往時のような『スーパー戦隊を結成できる』余裕がない時代を日本が迎えていたため、プリキュアたちを事実上の『代わり』とすることで妥協された。また、ダイ・アナザー・デイ当時、ミーナが更迭されたのは、厚意で提供された未来機材の活用に失敗したからでもあり、M4カービン(アサルトライフル)の使用すらも、使用弾数の増加を理由に、持ち出しを禁ずる始末であったからだ。流石にグンドュラも『奴はどうかしとる』と呆れ返る始末であったという。ミーナは補給の間隔を懸念していたが、物資の問題はミデアやガルダ級の投入で既に解決されており、逆に『コンテナがハンガーに置ききれない』ほどに溜まる始末であった。結局、ミーナの残した問題が山積していたが、地球連邦軍からの補給が始まったため、武器は惜しげもなく使用する事になり、ダイ・アナザー・デイの激戦で消費された。ダイ・アナザー・デイはまさに、自動小銃の普及を促した戦と言えたわけだが、ミーナが(上層部不信で)やらかしていたことが短期間の間に多かった事から、その隠蔽工作が(バルクホルンらの要請で)なされ、方面軍の司令級の将官に押し付けた責任もかなりに上る。本来はミーナ自身を裁くべきであったが、かのバッハの血統のほぼ唯一の末裔という名家の出自と、カールスラント軍の士官教育の失敗、更には人格変貌という要素が助命に味方した。かなり無理のある擁護だが、ブリタニアの将官による『いびり』がすべての元凶であった事から、ブリタニア空軍に道義的な全責任を負わせたほうが丸く収まるし、異世界でも知名度があるなら、無理やりにでも、悲劇の主人公に仕立てたほうが、以後の予算が多く得られる。それがドワイト・アイゼンハワー総司令の判断であった。
実際、この判断により、カールスラントの影響力は大きく薄まり、日本連邦が事実上の屋台骨となった。その兼ね合いで、扶桑は軍の規模維持が厳命されたが、日本はその要請を撥ねつけ、財政上の理由での軍縮を無理に進めさせた。その歪みが太平洋戦争という最悪の有事で噴出したわけだ。日本は有事に対応する術を知らず、扶桑に丸投げであった。扶桑は義勇兵を各国から受け入れているが、扶桑の本国部隊の出征が日本側に否決されつづけているからであった。だが、ついに南洋軍の損耗率が限界を超えた事から、妥協的に出征が始められた。練度や武器の質が一定程度に達したと判断されたからだが、末端にまで21世紀の主力戦車想定の対戦車火器が配られている時点で、1940年代の水準はとうに超えている。扶桑兵は多くがボルトアクションライフルにこだわっていたが、敵はM1ガーランドなどの自動小銃を当たり前に持ち、既に機関銃兵だけに弾幕を張らせる時代は終わっていた。それを自らの血で以て、存分に思い知らされたわけだ。結局、扶桑歩兵はダイ・アナザー・デイの激戦での戦死率と負傷率が高かったため、この事への恨みが魔女への白眼視に繋がった。『怪異専任だ』との言い訳は(怪異自体の出現率の低下で)通じず、64Fがいなければ、歩兵戦で負けが決まっていただろうとされるほどの有様であったからだ。ボルトアクションライフルは練度で連射速度が決まるが、自動小銃は引き金を引けば、一定程度の速度で弾丸を吐き出し続ける。隙は弾倉交換時のみ。幸い、M1ガーランドはクリップ式であったので、弾切れのタイミングが(知っていれば)わかった。結局、扶桑皇国軍の保守派はM動乱とダイ・アナザー・デイでの『戦場の変容』に腰を抜かし、失策の責任追求からの家族への塁を恐れ、自決する者が相次いだ。この『思い込みからの集団自決』も扶桑皇国軍の統制がガタガタに追い込まれた理由であり、ある意味、安土時代初期に、豊臣秀吉が史実ほどの規模でないにしろ、連座制の処刑を行った事に由来する恐怖の記憶による衝動的行動であった。
そんな状況を憂いた昭和天皇は64F(ダイ・アナザー・デイ当時は再結成間もなかった)に独自行動権を国家元首の名において与えた。これは軍中央の混乱を憂いてのもので、軍部は日本からの人事介入と、保守派の集団自決で大混乱に陥っていたので、昭和天皇の勅に反対意見を述べられる状態ではなかった。扶桑軍に大規模な近代戦のノウハウがまともになかったことも、64Fの遊撃行動に説得力を与えた。
「国家元首たる私が許したのだ。反論がある者は私の前に出よ!」
昭和天皇は史実より行動的であり、ダイ・アナザー・デイの時期は(権限を伴う国家元首として)積極的に動いていた。ある意味、史実の『お飾り、神輿』よりは(軍部の統制の面でいい効果をもたらしているので)マシだと、日本も妥協的に容認した。64Fは扶桑海事変以来の英雄部隊であり、その時の若手が再結成後の幹部層であったため、昭和天皇の信頼も厚かった。めぼしい熟練者を引き抜いて、各方面を弱体化させたとの批判が強かったが、地球連邦軍の加勢でその心配は消えた。更に、メンバーの多くが転生者と判明したため、『一箇所で集中的に管理したほうが害がない』と、保守派の重鎮も判断し、昭和天皇の判断に同意した。これは『国家を本気で乗っ取れるほどの武力をもっている』なら、前線でとにかく戦わせ、政治的な意見を表明させないほうが(自分らの保身に)いいとの保守派の判断も関係していた。転生者は『どの部署も扱いきれない』のは目に見えていたからだ。
かくして、プリキュアたちの変身姿での勤務は扶桑皇国のみならず、連合国の全加盟国の総意となった。プリキュア達にも形式的に銃が支給されたわけだが、芳佳は覚醒後は気質に変化があり、銃の携帯に抵抗感が無くなっていた。これは角谷杏としての割り切りも関係していると思われ、重要な変化であった。そんな時に支給されたのが烈風改であったのだが。
「うーん……いくら親父の残した設計図から造ったからって、烈風はなぁ……」
「文句は横須賀航空隊に言ってくれ、芳佳」
「鶴野大尉に苦情入れといて。限界性能は大丈夫なん?」
「エンジンは換装してある。君の魔力にも対応できるはずだ」
「とはいえ、プリキュアになったから、あまり必要でも無くなったしなぁ…。実機みたいに、重火力を運べるわけでもないし」
烈風改ストライカーユニットはこの言われようであった。横須賀航空隊が震電の手配を拒んだ事の詫び代わりに手配した(ダイ・アナザー・デイ当時の)新式であったものの、宮藤一郎技師の遺していた『1942年以前の基礎設計』をベースに造ったため、零式の悪癖である『横転速度に改善が無く、高速での操縦性に問題あり』がほとんど改善されていない可能性が高かったからだが、開発中に設計年度がより新しい機体の紫電系が台頭してしまい、ストライカーユニットとしての将来が閉ざされかけたため、慌てて、局地戦闘脚への転用ができるよう、細かな改良が続けられた。だが、魔女の軍事的な意味での価値の急速な低下が懸念されたため、改善途上で送られたと言っていい。吾朗技師は改良を続けていたのだが。
「仕方ない。紫電より重量があるし、元が低空から中高度の空戦を第一に設計されていたから、高高度での迎撃戦は本当は想定外なんだ。だが、その性能がないと、昨今は開発資金も融通してもらえんしな」
と、元が艦上機であるが故に、排気タービンを組み込んでも、高高度迎撃戦に不向きでは?と考えていた吾朗技師だが、史実での日本軍の惨状を知っている故に、『できなくはない』程度の性能は備えたほうが軍からの予算を得やすいと考え、排気タービンを組み込んだ。
「まぁ、できなくないけど、その任務に適する陣風は本土の部隊に優先配備だそうでね」
「これで我慢するしかないかぁ。馬力の余裕ある?」
「2400馬力にしてあるから、中低高度での上昇速度は紫電改よりいいはずだ」
「ならいい」
陣風はストライカーユニットとしては、3000馬力のタイプが量産されたが、程なくして、F-86ジェットストライカーが開発されるため、初期型の紫電を代替する程度の数しか生産されず、その使用期間も短かったので、後世には『幻のストライカーユニット』と渾名された。ただし、陣風の量産用に用意されていた多くの『魔導触媒』はさらなる次世代のF-86の生産や、それ以降の世代のストライカーユニットの生産などに使われたという。そんな流れで生まれた『烈風改』は(本来の歴史における)『震電』と比べての性能の劣位が問題視されたが、迎撃戦一本槍の震電よりも、汎用性を持つ烈風改はダイ・アナザー・デイの時局に適合していた。故に、芳佳は父の腹心であった曽根嘉年技師(烈風を形にした技師)の恩に報いるため、同ストライカーユニットをしばしの間、使用する事になった。とはいえ、二足のわらじを履く事になった都合、芳佳(元々は医学生志望)は『空の宮本武蔵』としての勇名を魔女として得るが、プリキュアとしては『その他大勢』感が否めなくなる。仕方がないが、先輩が大勢いる故の宿命であった。
――アイオワ級戦艦の拿捕後――
「先輩、船は一隻拿捕しましたけど、予想外がありまして……」
「ああ。長門から聞いた。ご苦労だったな。プリキュア化してても、打撲はするから、血が出てるとこは赤チンでも塗っとけ。ダスマダーはRXが引き受けてくれたんだろ?」
「え、ええ…。それにしても、赤チンかぁ…。あたしの若い時(前世)には、もう見なくなってましたよ?」
「21世紀には見なくなったもんだし、お前のばあさんが90年代に買って、そのまま持ってたんじゃね?」
「そうかも。うち、親子揃って、おっちょこちょいだったから」
アイオワ級戦艦を拿捕してきたキュアドリームであったが、予想外に艦長が強敵で、普通に殴り合いになり、スウェーなどの回避テクニックを使われ、攻撃をなかなか当てられず、逆にダメージを喰らう始末だったとボヤく。更に、クライシス帝国のダスマダーにもダメージを負わせられたため、RXの判断で、後方に下がってきたのである。
「お前らはド素人だしな、喧嘩の。兄弟喧嘩の経験もないだろ」
「昔は一人っ子でしたから。今回は真ん中だし、姉貴は離れてるし、妹はのんびり屋ですから、喧嘩してないし」
「それじゃ仕方ない、戦いで磨け」
「先輩はその格好を通すんですね」
「調にあれこれの雑務を覚えさせてるが、ギアを遊ばせてもおけない状況だしな。まぁ、今はコピー品を使ってる。俺たちの能力なら、元素組成の段階からコピーできる。聖衣はよほどの事態でないと、着用の許可は出んのよ」
と、ダイ・アナザー・デイ中も、黒江はシュルシャガナのギアをそんな理由で多用していた。コピーを使っているのは、切歌(子供)が黒江に強く反発していて、勝手な行動をするからであった。
「それと、ついさっき、敵幹部(南斗紅鶴拳の使い手)に、調の友だちが喧嘩を売って、返り討ちにされたってんで、野戦病院に運んできたよ。初見で南斗紅鶴拳に挑むなんて……馬鹿なことを」
「南斗紅鶴拳って……確か……」
「そう。漫画だと、ユダが使ってたものだ。たぶん、『伝衝裂波』でギアごと斬られたんだな。俺の聖剣もだが、一定以上の攻撃的な衝撃波は防げんようだからな、シンフォギアは」
「南斗六聖拳相手に、よく五体満足でいられましたね、その子……」
「ギアを使ってたおかげだろう。普通なら、五体を切り刻まれるのがオチだからな。あいつは鎌を使うが、南斗の最高位の連中にとっては、そんなものは『おもちゃ』も同然だ。だから、俺もギアの機能は殆ど使っとらん。戦い慣れしている人間にとっては、お前らの技も『小細工』に過ぎんしな」
「う、うぅ。堪えますって」
「仕方ない。聖闘士なり、南斗、北斗、元斗、華山、泰山とかの使い手なり……。闘技を極めた人間にとっちゃ、プリキュアの技なり、シンフォギアなりの機能頼りの奴は赤子同然だよ。二人も戦線離脱させちまったから、先方に詫びてきたよ」
この時期、立花響は『P因子』の活性化を強引に押さえつけ、シンフォギアを使おうとした弊害で『ギアを纏っても、39°以上の高熱を起こし、まともな戦闘ができない』状態に追い込まれていた。しかも、機能異常でギアの解除もままならないという状況であった。これは『小日向未来を戦わせないために』と(ダイ・アナザー・デイ時は研究中であったので)、本人が『P因子を拒んでいた』ための不調でもあった。そのため、子供切歌の戦線離脱は痛手であった。
「連中と戦うのには、かなり手慣れてないといかんが、お前らも、あいつらも、まともな格闘技の経験はないのがほとんどだ。我流程度では、連中には通じん」
この時点では、南斗六聖拳に対抗できるだけの格闘技を持つ者は64Fでも限られていた。プリキュアでは、転生先で護身術を身につけており、プリキュアとしても高位の実力者であった相田マナ(キュアハート)と、20年近くの特訓で鍛えられた、花海ことは(キュアフェリーチェ)の二人がこの時点での期待株であった。
「けっこう自信あったんだけどなぁ」
「お前は長く戦ってたそうだな。はーちゃんから聞いたが」
「ええ。二年近くかな。プリキュアになってたから、色々と不思議なことがあって」
(後に、のぞみらが『二年近く』も現役を張っていたことの『からくり』にドラえもん達の過去の冒険の余波が絡んでいることが判明する。鉄人兵団との死闘は、他の世界線の『時空の流れ』にも影響を及ぼしていたのである)
「普通は一年だろ?その間、齢食わなかったってことになるぞ。二年も戦ってたのに」
「い、言われてみれば……」
「後で、ドラえもんに調べてもらう。タイムパトロール周りの資料が『次元融合現象』で失われたそうだから、そのあたりに鍵がありそうだ」
のぞみがなぜ、二年も戦っていながら、進級もせずにいたのか?かれんたちはその間、なぜ高校に進学しなかったのか?そのあたりの謎も絡むため、調査は意外と大がかりになるのである。そのあたりの矛盾が噴出した世界線が『オトナ~』世界なのだろう。
「ついてこい。念のために、医者に傷のチェックをさせる。それと、シンフォギアのガキ(響)の見舞いだ」
と、黒江はキュアドリームの傷のチェックを見舞いのついでにさせるのだった。