ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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四十六話の続編です。


第四十八話「ダイ・アナザー・デイの重要局面前の状況二」

――シンフォギア装者のポテンシャルはおおよそ、経験がそこそこあるプリキュアと同程度と見なされた(おおよそ、第二期プリキュアの中間フォームと同程度)。それは充分に凄いのだが、黒江達はその次元を更に超えた領域にあるため、地力に差があった。また、百戦錬磨の第一期プリキュア勢も第二期以降のプリキュアを経験で上回るため、互いの力関係は流動的だが、おおよそ、第二期以降のプリキュアは力が浄化に特化された者も多いため、シンフォギア装者に通常フォームでは及ばないという計測結果が出た。(戦闘向けの能力を持つ者は第一期に匹敵するポテンシャルを持つが)シンフォギアはフルポテンシャルの発揮の条件が厳しい上、ガングニールの能力が制限されている(グングニルはロンギヌスと同一の存在ではないため、シンフォギア世界と繋がりが無い他世界の存在には神殺しの力は発動しない)も同然であるため、それが立花響の精神不安定化を招いたのも事実である。その計測結果は大人切歌の口から装者らへ伝えられた――

 

「リコから話は聞きましたね?」

 

「お、おう…。お前が大人になった切歌なのか……?」

 

「ええ。だいたい、五、六年くらい成長した姿と思ってくださいデス」

 

成長した切歌は背丈と聖衣以外は15歳当時とさほど変わっていないようだが、その身に剣を宿すまでに強さを増している。聖衣は小山羊座のものであり、イガリマを鎌から斬山剣へ変化させているなどの変化を遂げている。

 

「嘘……これがアタシなのデスか……」

 

「そうだよ。19か、20くらいかな?」

 

「その格好は……」

 

「アタシ、聖闘士になったのデス。修行をしたので、ある程度は加齢してしまったけど」

 

「修行だと?噂に聞く…」

 

「ええ。他の候補性との選抜戦も勝ち抜いて、叙任されたのデス。昔は女聖闘士は仮面をかぶるのがお約束だったのですが、アテナの意向で有名無実化が進んだので」

 

かつて、聖域には聖闘少女(セインティア)という特別枠もあったが、アテナの代替わりの際に聖域にいる資格を失うこと、サガの乱で事実上壊滅した事から、アテナは聖闘少女を廃止し、通常の聖闘士と統廃合した。そのため、魔鈴とシャイナ以外に仮面を被る女性聖闘士はいなくなった。調と切歌も仮面非着用であるため、魔鈴とシャイナは昔気質と言われるようになったという。

 

「これが暁の聖衣だと……。見かけはタダのプロテクターのように見えるが?」

 

「シンフォギアを凌ぐ防御力デスよ、翼さん。神々の戦いで使うものなので、当然といえば当然デスけど」

 

小山羊座の聖衣は新規に生まれたもので、調の纏う聖衣から派生して生まれたもので、所謂、『既存の壊れた聖衣を蘇らせたら、二つに分裂した』初の事例であった。白銀聖衣に分類されるが、防御力は他のシルバークロスを凌ぐ。聖衣は基本的に小宇宙の増幅器としての役目も果たすため、シルバークロスはその標準的なものとされる。概ね、シンフォギアの標準的な攻撃に耐える防御力を持つ。(所謂、完全聖遺物であるので当然だが)黄金聖衣はそれを超越した強度を持つが、それを更に超える神聖衣、それすらも超える『真・聖衣』も存在するという。(真・聖衣は星矢たちのように『青銅聖闘士の力と黄金聖闘士の力を両立させた場合』に発現するという特殊な進化であるので、イレギュラーである)

 

「ワタシは黄金聖闘士に近い力を持つ白銀聖闘士デス。今なら、パンチは極超音速デス」

 

「極超音速だとッ!?」

 

「はいデス。たぶん、皆さんは認識した瞬間には倒れてるくらいの速さデス。綾香さんは光速かそれを超えるので、見えた瞬間に動いても、なんら意味がありませんが」

 

「改めて聞くと、桁違いの速さだな…。しかし、それでも中級とは」

 

「黄金聖闘士になれる条件はセブンセンシズに到達しているか。それだけですよ。私はまだ新参者なので、マッハ5は安定して出せますけど、光速は修行しないと」

 

「……どうやって、そんな事になるんデス!?今のアタシは調の隣に並びだつ事もできやしない!それがなんで……」

 

「これから未来世界で、ある人に出会うんだよ。それがアナタの運命を変える」

 

「え、未来の世界に……」

 

「うん。綾香さんの薦めでね」

 

大人切歌は過去の自分に『これから自分に待ち受ける運命』を教える。黒江の勧めで修行の旅へ出て、出先で未来世界の『赤いバルキリーに乗るロックシンガー』と出会うことを。彼との出会いが切歌を吹っ切れさせ、今度は聖域に赴き、聖闘士候補生となった。数年の修行を経て、小山羊座の聖闘士に叙任されるのだ。ダイ・アナザー・デイで切歌が挙げたとされる功績の半分くらいは大人になった彼女が挙げている。

 

――可能性がある限り、諦めない事が力になる、時間は夢を裏切らない、だから夢も時間を裏切ってはいけない、()を得るのは自身の(意思)の力だ――

 

これは切歌が黒江や言い方を変えて、熱気バサラにも言われた一言だが、この一言が彼女を聖闘士への道に導いたのだ。調と同じ場所に立つために。

 

 

「でもよ、あたしらは勲章とかもらってもなぁ。元の世界で有効なわけでもねぇし…、もらうのは気がひけるぜ」

 

「もらえるなら、もらっといた方が特ですよ。綾香さんが『俺が迷惑をかけた詫び』も兼ねて、日本連邦に色々用意させるそうデスし、修行つけてもらえますよ」

 

「それならば、断る道理はない。黒江女史には振り回されたが、神々の闘士である女史が修行をつけてくださるのなら、防人としてこれ以上の喜びはない」

 

「……と、なんとかいってさ、ばーちゃんが使ってる『約束された勝利の剣』を触ってみたいだけなんだろ?」

 

「ち、違う!断じて違うぞ、雪音!?」

 

「そのはんのーみると、図星だな」

 

「分かりやすいデスねぇ」

 

「べ、別にいいではないか!アーサー王物語の聖剣なのだぞ、防人としてだな……」

 

「へいへい」

 

翼は天羽奏の死後は自分を律しているが、妙に子供のような一面を持っており、黒江が使った『約束された勝利の剣』がアーサー王物語の聖剣と同一性を持つものと判明すると、子供のように『アーサー王物語の聖剣なら、それを持ってみたい!』と密かに考えていた。それをクリスに見透かされたようだ。補足すると、約束された勝利の剣は山羊座の歴代の聖闘士がたどり着く一つの境地のようなものであり、発動ルーティンは代によって異なる。黒江は先々代の山羊座の黄金聖闘士『山羊座の以蔵』と同じく、手刀で放つ時は『日本刀を鞘から抜くような』ルーティンから放つが、大抵はアルトリアと同様の西洋型のブレードのイメージを実体化させているのもややこしい要因だ。

 

「ばーちゃんが言ってたけど、『約束された勝利の剣』はばーちゃんが継いだ星座の聖闘士なら、修行で一定の領域に到達すれば、精度の差はあれど、誰でも発現するってよ」

 

「な、なにぃぃ――ッ!?」

 

「ばーちゃん曰く、山羊座か、それに関連する星座の聖闘士は神話の頃に聖剣や神剣の霊格を授かってて、世代を経ると、その時々に在任中のアテナ、あるいは教皇が授けるんだと。ばーちゃんはその中でも稀な『二拳二刀』っていう例で、両腕に違う剣の霊格を持つそうだ」

 

「ええ。綾香さんは約束された勝利の剣の他に、エヌマ・エリシュを宿しています。シュメール神話の天地開闢を起こしたともされ、乖離剣エアとも呼ばれる神剣です」

 

「……女史はなぜそれを?」

 

「それを使ったら、世界そのものを切り裂いちまうからだよ、先輩。ばーちゃんも元の持ち主と長いことネゴシエーションした末に、封印を解いてもらったそうだしよ」

 

「女史は数度ほど、死んだ経験があると言っていた。まさか、まさか、まさか!その時間をネゴシエーションに!?」

 

「ええ。英雄王ギルガメッシュ。綾香さん曰く、『尊大で慢心しきってるけど、どこか筋を通してるような感じも受けた』そうデス」

 

黒江が乖離剣エアを使える理由の一つは元の持ち主である英雄王『ギルガメッシュ』を相手に、転生するまでの時間を冥府でネゴシエーションに費やし、彼が最終的に使用権を認めたためである事が、大人切歌から語られた。それに比べれば、『約束された勝利の剣』は使用の敷居が比較的低い聖剣と言える。

 

「エヌマ・エリシュの事は調べた。世界を切り拓いたと言われる伝説だ。その力を剣って形に集約させたのが乖離剣エア。ばーちゃんが隠してた『世界も斬れる最後の切り札』だよ」

 

クリスは黒江からその事を聞き出し、自分でも調べ、その裏付けを取っていた。黒江がシンフォギア世界で左の手刀を使わなかった真の理由が乖離剣エアにある事を独自に突き止めたのである。エクスカリバーの時点で最高位に近い宝具であるが、それをも凌ぐ神剣を持っていた。仕方がないが、それほどの代物はかなり威力を抑えないと使用できない。

 

「女史は手加減していたのか?」

 

「仕方がないデス。エクスカリバーの時点で、ほぼ最高位の宝具なのデスよ?現に、綾香さんが撃った時、響さんがエネルギーを散らそうとしても、ほとんどできなかった事があったように」

 

「ああ、あの時の事か…。あの時は数日ほど昏睡状態に陥ったからな、立花は。あの時の表情は今でも思い出せる。エネルギーの制御ができない事が信じられないという……」

 

「あいつがおかしくなる要因の一つだったな。あいつの特性で干渉できないものがあったのは、そこで思い知ったよ」

 

「それと、事故とは言え、綾香さんがワタシ達に迷惑をかけた一面があるのも事実なので、ワタシが聖闘士になる時、アテナに推薦してくれたのデス。あの人なりの償いデスよ」

 

「それじゃ……?」

 

「安心するデス。ここに未来の結果がある以上は」

 

子供切歌はこの一言で、一筋の希望を見出した。自分も調と同じ領域に立てるという未来が示された以上、悲観する道理はない。

 

「待ってくれ。あいつはどうなる?」

 

「響さんには、また別の結果がありますよ。別の…ね」

 

言葉を濁す大人切歌。キュアコスモの調査で、立花響にはプリキュア化を起こすだけの因子が充分に備わっている事が判明していたからだ。その因子とは、キュアスターの次代のピンクのプリキュアである『キュアグレース』のものである。『立花響』個人の魂はキュアグレース/花寺のどかの因子を持つのだ。これはキュアコスモの調査で判明し、大人切歌が本来過ごす時間軸では、その因子が『覚醒』した事を示唆した。

 

「なんだよ、言葉を濁しやがって」

 

「響さんの将来に関わる事なんで…。あ、それと、ワタシも元の世界には滅多に帰りません。元の世界に戻っても、老師・童虎があらかたのトラブルを潰した以上、シンフォギアを纏う機会もないですし」

 

「確かに。あのお方があらかたのトラブルのもとになる要因を絶った以上、我らは国連の駒として利用されるだけだからな」

 

天秤座の童虎がシンフォギア世界のトラブルとなり得る要因をその力でねじ伏せたため、シンフォギア世界は真に平和となった。(シンフォギア世界の元凶である『アナンヌキ』であるシェム・ハも復活する前に封印ごと消し飛ばされた上、オリンポス十二神がシンフォギア世界に干渉し、存在を無かった事にされた。その時に『アナンヌキは恒星間航行が可能な文明を持つ異星人であり、文明レベル以外は人間とほぼ同等の存在である』事も判明した)従って、S.O.N.G.Sは国連の走狗として使われるしかない(童虎が光明結社を叩き潰した事もあり、国連が都合よく行使する外交手段とされる可能性が大であった)。救難任務などはいいが、国連が自分らに反抗する小国をねじ伏せるための手軽な『自分たちの手を汚さない』手段とされてしまうのは目に見えている。それを懸念した風鳴弦十郎は黒江の誘いに乗ったわけである。

 

「叔父様も言っていた。『光明結社も、封印されたアナンヌキも倒された以上、我々に残された役目はそう多くはない。その上、国連に従わぬ国を手軽に制圧するための都合のいい道具にされる可能性が大きい。それを防止するため、俺は彼女の誘いに乗った』と」

 

「おっさんの奴、ばーちゃんとそんな取引してたのか」

 

「我々はそもそもの存在意義が消え失せれば、国連に都合のいい道具でしかない。組織を維持する理由も消えている以上、最悪、今度は日本政府に弾圧されかねないからな。それで我々は女史のところへ送り込まれたのだ」

 

「とは言え、周回遅れ気味の戦場に置かれて、ヒーヒー言ってるけどな…。シンフォギアのフルポテンシャルはあいつがいないと無理だし、他の次元みたいに、復活したキャロルがフォニックゲインを高めてくれるわけでもないからな」

 

「イガリマの絶唱特性が通じない奴がこの世にいるなんて、思ってもみなかった…。物理的に刃が通らないだけでなく、霊的にも通じないなんて…」

 

「それが次元世界なんデス」

 

子供切歌は第一に、絶対の自信を持っていたイガリマの特性が黄金聖衣の超常的防御力の前に破られた事が強い精神的ショックであった。戦士としての自信の拠り所が主にイガリマという(響には『誰かと手を繋ぐ』という確固たる信念があるため、ガングニールはそれを実現するためのものという位置づけだ)得物という点は恥ずかしいが、得物が強力だった故に起こった悲劇であった。

 

「お前、あの人があんな事して、どう思ってんだ、その姿だと?」

 

「あの人(なのは)は独りよがりで、押し付けがましいところがありますし、自分が才能に溢れてたから、凡人の思考が理解できないところがあるんですよ。綾香さんもそれが重度な事に気がついて怒って、あの人も教導隊をやめようとしたんですが、精神的教えはともかくも、実技は優秀なので、そちらに絞ることで妥協デス。時空管理局も人手不足ですから」

 

大人切歌はなのはは『実技を教えるにはいいが、天才肌だったため、心構えを教えるには全く向いていない』と断じた。実際、黒江も人選ミスを自覚したが、教諭経験者でもあるのぞみの覚醒が確定する前の出来事であったため、なのはしか該当者がいなかったのも悲劇であった。

 

「せめて、のぞみさんと仕事を分散できれば、もうちょっとマシになったかもしれませんが、あいにく、彼女の覚醒より前でしたからね」

 

「あの人、教導隊にいたってのに、凡人の思考が理解できねぇだと?ハッ、それじゃ単に他人を自然と見下してるんじゃねぇのか?」

 

「まぁまぁ。あの人も堪えてるし、のび太さんとドラえもんさんが厳しく叱ってるから」

 

なのはの人物評は散々だ。クリスに『凡人の思考が理解できない』とまで断じられたが、実際、なのはは家庭環境も凡人と程遠い家族に囲まれ、その中では比較的に『凡人』であるが、一般人に比べれば『天才肌』である。黒江がそこに気がついたのは事後になってからで、『時、既に遅し』であった。のぞみに『お前と役割を分散させるべきだった』と漏らしたという。のぞみは才能が開花した後も『自分は凡人である』とし、それなりの努力をし続けたため、精神的教えを行うという点では遥かに適任であった。そのため、のぞみは教諭の経験者であることもあり、生徒会長経験者のマナと共に精神面のフォロー担当となるのだった。

 

 

 

 

 

 

――のび太は二十三世紀の月に赴いた。フェリーチェの護衛を受け、フォン・ブラウン市のアナハイム・エレクトロニクス社の工場をノビタダの名義で視察した。格納庫には、そのプランの機体が完成していた。無人MSとして制作された『ガンダムスローネアイン』と『ガンダムスローネツヴァイ』も連邦軍に予算を通す関係上、コックピット付きで制作されている。アルケーガンダムは進捗率70%であり、ファングの代替品として、ファンネルミサイルが搭載予定らしい――

 

「凄いですね。ここまで形になってるとは」

 

「詳細な情報はありますから、それを如何に既存の素材で再現するか、です」

 

「プランは如何でしたか?」

 

「こちらとしても願ったり叶ったりですよ。技術者に働き口を与えられますからな」

 

「ネルガルを絡ませたのは正解ですな」

 

「女帝も手は出せませんからな。間引きされるのはゴメンです」

 

マーサ・ビスト・カーバインはUC計画の機密保持を理由に技術者の間引きを行い始めたが、それを察知した骨川家が保護し、ネルガル重工に転職させるなどの保護策を実行していた。表向きはネルガルとの技術交流である。ビスト家は皮肉な事に、この行為がもとでアナハイム・エレクトロニクスからの信頼を失い、以後の時代での衰退を決定づける事となる。

 

「プラン機の納入はいつでしょうか?」

 

「あと一週間はかかります。第二プラン機の計画も承認されましたので」

 

「ええ。あのプランは奇抜ですが、頼みます」

 

のび太は第二プランの存在を示唆した。そのプランは何であろうか。その第二プランは『戦略兵器を有する』という大まかな構想メモが技術者に手渡されていたが、それはアナザーガンダムのバスターライフルに匹敵する兵器の開発が必須とされていた。また、かつて、ペガサス級『アルビオン』で試験された『レーザー推進機構』用に建設されたが、閉鎖されたレーザー発振施設をその兵器のエネルギープラントへ改造する事も添えられている。コードネーム『月は出ているか』。のび太が発案した第二プランであり、最終到達点も決まっている。その内の一機であるコードネーム『GX』はシャイニングブレイクに次ぐ、のぞみの乗機となり、ウイングガンダムに匹敵する破壊力から、ジオン残党を震え上がらせる事になる。

 

「でも、のび太。あのプラン、どうやって思いついたのです?」

 

「なーに、簡単な発想さ。GとWがいるんなら、あれがいてもいいじゃないか」

 

フェリーチェにのび太は言う。そのガンダムはのび太が子供の頃に始めて作ったガンプラでもあり、何かしらの思い入れがあるらしい。

 

「丁度いいエネルギー伝送システムとか有ったしね。最大火力のサプライの外部化は機体の軽量化もできるし、いざと言う時のエネルギー補給の迅速化にも使えるでしょ?」

 

「後継機まで作るんですか」

 

「もちろん」

 

「相方の二機も用意しないと」

 

「うん。それもガンダリウムエプシロンを使って製作中だって」

 

当時、ガンダリウム合金の世代交代も始まり、ガンダリウムエプシロンが実用化された。本来は『エプシィガンダム』用に開発されていたが、グリプス戦役当時の技術では、核パルス推進機として耐えられる強度をガンダリウムに与えられずに頓挫していた。その後にガンダリウムの精製技術の向上、より純度の高いレアメタルが使用可能となったなどの理由でついに実用化された。核パルスは開発中止されたものの、純粋に装甲材としてガンダリウムγより高性能なことから、プラン機に採用されている。(ガンダニュウム合金に迫る強度であり、ガンダリウムγとは一年戦争時のスチール合金とガンダリウムαほどの差がある)

 

「贅沢ですね」

 

「試験機名目なので、そこは自由なのですよ。新システムに耐えるように排熱を強化したので、量産機よりステルスですよ」

 

ちなみに、その第一号のガイアはフェイズシフト装甲を外され、ガンダリウムエプシロンの試験代わりに同装甲材を使用して軽量化している。内部機構を全て取っ替えたために費用がかかったため、新システムに転用されたわけだ。スローネドライは新造段階から適応されているが、外見が華奢であるため、ガンダムらしい耐弾性は同合金のおかげで確保された面もある。

 

「システムのデータ収集はどうですか?」

 

「ギアナ高地でかなり取りましたが、欧州や日本などでのデータが欲しいのです。ですので…」

 

「ガイアの四足獣形態にロックをかけた理由は?」

 

「人型でのホバークラフト移動が実用化されてますので、四足獣形態を取る必要があります?」

 

ドムの頃からホバークラフト移動が実用化されている世界では、四足獣形態になんら有効性は見いだせないため、ガイアの変形機構はロックされた状態である。ドム系統は地上では地球連邦軍の強敵扱いであり、陸軍はこの時代でも『スカート付き』と恐れているほどなので、四足獣形態は有効性はないと判断されたのだ。

 

「日本と欧州の気候はテストに丁度いい。質のいいデータを期待しています。それと、四足獣形態は車両としては使える、だから、ザフトのバクゥなどは主力戦車の代替に成りうるが機動兵器としてより、建機等に転用するのがより有用かもしれませんな」

 

と、担当者は言う。キュアサンシャインとキュアエースはテストのため、ガンダムと一体化した生活をしばらく送ることになることを意味していたが、キュアエースにとっては『ネーナ・トリニティの罪を償ういい機会』であるため、キュアサンシャインより乗り気だったりする。

 

「あ、そうだ。この子用の機体を工面してくれますか」

 

「いいでしょう。ちょうど、エゥーゴ時代に造られた『ガンダムマークⅢ』が何機か保管されていますので、フルアーマー形態で回します」

 

フェリーチェにガンダムマークⅢが回されることになったが、アナハイム・エレクトロニクスは連邦軍の意向もあり、現存するガンダムは全て保存している。プロパガンダ政策の意向もあるが、ガンダムマークⅢは数日中にフルアーマー形態で近代化改修され、ダイ・アナザー・デイに投入される事になる。ティターンズが試作機として同名のモノを採用し、実機もあったため、エゥーゴは採用せず、テスト用に予備も含めての8機のみが造られ、その内の数機が現存し、最後発の製造機が近代化改修の末にキュアフェリーチェに与えられたのである。なお、ティターンズ崩壊後はティターンズ製の同機がキリマンジャロで焼失した(残骸は発掘されたが)ため、アナハイム・エレクトロニクス製の『MSF-007』こそが正統なガンダムマークⅢ扱いになっているのだが。

 

「のび太、いいんですか?」

 

「何、アナハイム・エレクトロニクスの在庫を整理してくれと要請されててね。向こうもオミクロンの計画を独自に再開したいんで、予算を得たいんだって」

 

「ああ、ペーネロペーとクスィーガンダムの統合型というペーパープラン…」

 

「第五世代機の集大成としてガイア・ギアなんてのも計画してるから、アナハイム・エレクトロニクスは我が道を行く事を選んだのさ」

 

「第五世代はサナリィから時代錯誤とバカにされていましたが、今では逆にマン・マシーンの素体になり得る素地があると評価されています」

 

「第五世代は大型だけど、仕方ないよ。ミノフスキークラフト機能を持つエンジンを乗せると、グレートマジンガーくらいの大きさになっちゃうんだから」

 

「そう考えると、グレートマジンガーは大型化したマジンガーなんですね」

 

「まーね。小型MSはVFと競合したのが不幸だけど、状況次第では使い勝手が良い機体は生き残ってるさ。ただ、本体の耐弾性能と火力を考えると、グレートマジンガーくらいのサイズが妥協点なんだよ」

 

「25m前後ですね。グレンダイザーはスペイザーとのセットが前提なので仕方ありませんがね」

 

「あれ?それじゃゲッターは?」

 

「マシンの状態だね。あれなら、戦闘機用の格納庫で済む」

 

「我がアナハイム・エレクトロニクスを指名してくださって、ありがとうございます。このままでは女帝にUC計画の機密保持の名目で間引きされるところでした」

 

「グラナダは女帝の庭ですからな。ここフォン・ブラウンなら、ジョン・バウアー議員の息がかかっているので、安心ですよ」

 

「同じ会社でやってることをお互いに把握していないのですか?」

 

「グラナダは元がジオンのグラナダ基地と工廠なので、こことは別経営なのです。ここフォン・ブラウンは戦前から連邦系の工廠があった上、我社の本社でもありますから」

 

実はZガンダムなどはグラナダ支社製だったが、その後の経営方針転換でガンダムタイプのパテントはフォン・ブラウンに回されたため、フォン・ブラウン本社が権利をこの時代では持つ。これはZ系の需要が大きく増した昨今、『元々、ジオン時代からの施設が多いため、グラナダは大規模生産に向かないから、大規模生産に向くフォン・ブラウンに造らせたほうがいい』とし、エース用カスタム機以外はフォン・ブラウン工場が受け持つことになったからだ。最も、νガンダム系は例外として、元からフォン・ブラウンだが。

 

「ナイチンゲールは向こうがジオン系の粋を集めたと豪語しておりますが」

 

「ハッハッハ。ナイチンゲールは半モビルアーマー。地上での運用は考慮してませんよ」

 

のび太が情報をもたらしたおかげだが、ナイチンゲールの製造はフォン・ブラウンにも知れ渡っていた。ナイチンゲールはサザビーの傾向を更に進めたモビルアーマーに近い機体であり、名目上はサザビーの後続機扱いだが、αアジール系のMAを転用したとさえ囁かれる『ズングリムックリ』な風体である。一方のハイニューガンダムは素直にνガンダムを『完成させた』完全版であり、改修が進んだ事もあり、総合的に『大型MS最強のガンダムタイプ』とされる。開発開始は同時期だが、νガンダムを発展させればいいだけなので、ハイニューガンダムのほうが早く完成している。ナイチンゲールは隠し腕の内蔵や武装の新造の手間がかかったため、シナンジュ・スタインよりも完成は遅れている。

 

「パイロットは互角だから、後は機体の特性の違いがどの程度…」

 

「しかし、なぜサザビーは第四世代機寄りの設計に?」

 

「シャア・アズナブルがサイコガンダムやジ・オと戦った悔しさから要請したそうですが、組織の懐事情が本当のところでしょうな」

 

「νガンダムが基本的にシンプルなのは?」

 

「アムロ少佐がRX-78の純粋な後継機を志向し、プランの私的提出はしてもらってましたが、それがジョン・バウアー議員の目に止まり、正式に製造に至ったのです。フレームはZ系に使用されるものを基本的に使ってますが、その分、頑強です」

 

「なるほど」

 

「サザビーのスタッフにはシャア・アズナブルお抱えのエンジニア『アルレット・アルマージュ』という人がおりまして。彼女、シャア・アズナブルに研究機関から拾われた後はシャア・アズナブルのお抱えエンジニアをしていたといい、ララア・スンを殺したアムロ少佐を憎んでいるといいます」

 

「もう10年以上経った上、あれはララアが庇ったためでしょうに」

 

ジオンはアムロ・レイを倒すために莫大な資金と人材、技術を費やしてきた。特にシャア・アズナブルが総帥をしている時代からは、シャア個人の執着心、エンジニアの怨念などが顕著になり、第四世代機の傾向を強く持つサザビーが生み出されたが、急ごしらえのνガンダムに敢えなく敗北したのは周知の事実だ。アムロ曰く、この裏事情を『結局奴らも俺もララァに甘えたいだけなのかもしれないな』と述懐しているが、青春時代の憧憬から抜け出せないシャアを『器量の小さい!』と罵倒しているあたり、大人になったアムロと『大人ぶりつつも、幼少期に別れたまま、会えなかった実母のアストライア・トア・ダイクンの面影を追い続ける』シャアの差であった。

 

「あのロリコン、シスコン、マザコンの三重苦をこじらせたオールドバック男のことだ。君なんか危ないよ、フェリーチェ」

 

「へ、変な事言わないでくださいよ!お、悪寒が……」

 

フェリーチェはなんとなく悪寒が走るが、実際にシャアが求めているのは母性であり、口でそれらしく装っていても、本質的には母親のぬくもりに囚われた哀れな男である。カリスマ性などに天性のものがありながら、それをアムロとの個人的因縁の決着にしか用いない点から、支持層からも見放され始めており、シャアもネオ・ジオンに見切りをつけている。だが、行き場をまた失うことを恐れるティターンズ、OZ過激派、ホワイトファング、ギガノス帝国、ザンスカール帝国、クロスボーン・バンガードなどの出身者が元ザビ家派出身者を煽っており、ネオ・ジオンの内部状態はかなり混乱している。タウ・リンはまんまとネオ・ジオンの混乱を利用するわけで、内部崩壊を始めていたネオ・ジオンは彼に利用され、ザビ派に主導権を取られた状態でデザリアム戦役の頃に蜂起する。それがジオン最後の『戦争』となるのだ。

 

「まぁ、それはそれとして、ジオンは内部崩壊を始めたらしいからね。ヌーベルエゥーゴに共鳴して蜂起する論調が優勢になってる」

 

「何故ですか!?次の戦争が起きれば、連邦は共和国を解体するし、残党は完全に行き場を……!」

 

「昔の日本軍みたいな滅びの美学だろうね。ジオンは旧枢軸軍の特徴を変に受け継いだ国だから、滅びの美学にも抵抗がない。それも旧日本軍みたいな玉砕も躊躇なくやるくらいに、ね」

 

「残党の一部、それもザビ派は『公国』の再興しか見ていませんよ、共和国はヤツらにとって裏切り者です。私の両親はジオンに壊滅させられたルウムの出でしてね。親父はそれを引き合いに出して、一時はティターンズに出資してたくらいですよ」

 

ジオン残党はこの時代にはスペースノイドにも蔑視されているのが分かる。フェリーチェはジオン残党の盲信とも言える『ジオン公国再興』への夢想に絶句する。そして、それにのっかる形で組織の維持をするティターンズも『連邦から生まれたジオン』と見なされるに充分な理由がある。ティターンズ将兵の多くは純粋にティターンズの大義を信じた選良的な者であったが、戦後の処分を恐れたり、政府の自分達への裏切りを糾弾するためにその後は『ジオン軍に与した』者も多数に登る。その経緯は、本来は地球連邦が夢物語とされていた21世紀で活動しているのび太や歴代プリキュアの憤激を買うには充分である。また、ティターンズはバダンに情報を提供し、魔法つかいプリキュアを一度は崩壊寸前の窮状に追いやった要因を作った事が判明したため、のぞみ、シャーリー、エレン、ラブの四者には特に義憤を買っている。

 

「ティターンズか……。今頃、ドリーム達、情け容赦なく戦ってるでしょうね。ケイさんが鎧武とディケイドから聞いた話として、情報提供をしたのが、彼らティターンズ残党という事がわかりましたから」

 

「シャーリーさんなんて、理性のタガが外れて、おっそろしい事になってたからね。ありゃ、拷問でメルトダウナー撃ちそうだね」

 

シャーリーが一番に激昂した事がのび太の口から語られる。口調も麦野沈利のそれになり、一言で言えば、捕虜の兵士を殺しかねない勢いだったとし、バルクホルンも怯えたほどに恐しさを見せたという。

 

「闇落ち属性をまさか、メロディも…」

 

「前世を思えば、仕方ないさ。それに、紅月カレンとしての勝気さ、アネモネ、麦野沈利の両者の闇落ち属性を併せ持つようになったから、意外に理性飛びやすくなったよ」

 

シャーリーは激昂すると、理性が吹っ飛びやすくなったとのび太が明言する。また、みらいとリコを一度は死に追いやった元凶がティターンズの情報提供なら、のぞみとシャーリーの激昂ぶりも理解できる。

 

「そう言えば、あの二人を『絶対にゆるさない!』コンビとして売り出そうか、綾香さんが考えてるって」

 

「奏が聞いたら腰抜かしますよ、それ」

 

南野奏/キュアリズムの行方はまだわかっていないが、相方がのぞみと悪友関係になっているのは流石に想像つかないだろう。キュアフェリーチェはのび太が語る黒江の売り出し構想に乾いた笑いをするしかなかった。

 

 

 

 

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