ダイ・アナザー・デイの後半に差しかかる当時、魔女達の政治的・実務面の失態が続き、連合軍の補給線は完全に機能不全の状態であった。結局、完全に地球連邦軍の指揮下に入るしか手がなかった。ミーナの『暴走』はかつての剣鉄也が陥ったように、『せっかく築いた、部隊内の関係をよそ者に壊される』事への恐怖心と、予てからの上層部不信が上層部の構想(転生者を各地に配置し、部隊の教官として配する)を木っ端微塵に粉砕してしまう結果を生み、結果的に統合戦闘航空団という枠組みそのものも『政治的』と見なされ、一方的に凍結されてしまう。64Fは扶桑がその代替として生み出した部隊であった。未来世界から得られた戦訓により、真の意味での精鋭が必要になったため、当初は統合戦闘航空団の増強という体を取っていたが、ミーナが既存メンバーしか用いないという問題が発覚。ミーナは三人の年齢を盾に抗弁したが、三人が『魔女から生まれた、魔女を超えた存在』だと発覚。むしろ、戦力増強のために『厚意』で送り込まれたことが判明すると、ミーナは『扶桑の参謀本部の書類に不備が多々あった』、『上層部の情報秘匿のせい』と取り繕おうとした。だが、その意図は既に見抜かれており、堪忍袋の切れたロンメル将軍の意向により、圭子の秘書として働いていた『キュアコスモ』がその取り繕いを否定する報告書を提出。あまりに『失点が多すぎた』からで、それはバルクホルンやエーリカも(軍人としては)見限るほどであった。結局、統合戦闘航空団の枠組み自体が凍結され、せっかく集められた人員も瞬く間に四散させられた。扶桑が『かつての英雄部隊である、64Fを今一度、再結成する』方向に動いたのは当然の流れであった。
結成当初の予定では、黒江達以外は若手中心の編成が志向されていたが、上層部の意向、行き場を無くした菅野たちの引受問題もあったため、図らずも『金鵄勲章部隊』と渾名されるほどの陣容となった。また、のぞみらの登場で『転生者の身元引受所』という側面を持たせられたため、プリキュアたちは必然的に『中尉』以上の階級を持たせられた。のぞみの素体になった魔女が『中尉』であったからで、それを基準にしたからだ。また、転生先で戦車に触れていた者もいたので、戦車兵の補充になると、上層部も歓喜した。魔女として存在する『史実で勇名を馳せた戦車兵』が多かったからで、結局、その者達も(ストライカーユニット不足で)戦車に乗る事になるほど、連合軍の補給線は地球連邦軍無しには維持不能に追い込まれていた。64Fは情報も物資もせき止められていたが、地球連邦軍からそれらを受け取っており、途中からは義勇兵らの部隊も合流し、偵察体制が整えられた。彩雲、一〇〇式司令部偵察機などの旧来型偵察機が前線で組織だって(想定通りに)運用されたのは、このダイ・アナザー・デイが『最初で最後』であった。扶桑海軍は大型空母用に生産していたが、ダイ・アナザー・デイでは陸上にも配置されていた。だが、64Fに回された『彩雲』は不良個体であり、結局、山本五十六が担当者を『詰める』に至り、一〇〇式司令部偵察機が代わりに回され、活躍していた。黒江の釣り仲間であった老人の中に同機の経験者がおり、ダイ・アナザー・デイに従軍してくれたからである。
「おーい」
「お、おっちゃん。どだった?」
「敵の戦車部隊が転進していったのを確認した。この方面は一週間は安心だろう」
黒江に話しかけた、飛行兵がその人物であった。若き日に日本陸軍航空隊に従軍、戦後は空自にも在籍していた経験を持ち、一〇〇式司令部偵察機の搭乗経験を持つ。
「どうだい。うちが独自に誂えた『四型』は」
「エンジンが一発でかかるのは最高だよ。俺の若い頃は、一発じゃかからんかったからな」
彼の記憶にある同機は(標準的な練度の整備兵が整備していたらしく)エンジンが一発でかかるのは稀なことだったと語る。扶桑は本来、一〇〇式司令部偵察機を早期に後継機に切り替えるはずであったが、旧来の偵察機の新開発の意義が瞬く間に薄れてしまったこと、根本的に次世代の推進器を持つジェット機などの登場でレシプロ偵察機の意義が失われたが、偵察機の存在は欠かせないため、扶桑陸軍は同機種を改良し続けることを選んだ。空軍への再編後も多数が使用され続け、ジェット機への改編まで、偵察部隊を支えた。まさに功労者である。扶桑での『四型』は史実と諸元が違うものであるが、後継機の計画が吹き飛んだための応急処置的に、三型からさらなるエンジンの換装などが行われたという。結果的に、これが日本型偵察機の最後の華であった。結果的にだが、航空産業も以後は(トップエンジニアの業界離脱などで)独自開発力が衰えてしまい、結局は自由リベリオンの企業の下請けの立場に落ちる事になった企業も続出。史実通りというべきか、扶桑の航空産業の勢いは以後の時代には衰えることになる。とはいえ、史実より強力な国力を背景に、富嶽を実用段階へ持っていったことは高く評価されたという。
「昔の日本より工業力がだいぶ上だから。まぁ、これ以降は日本の意向で軍需工場が閉められるから、結局は史実通りに、旅客機も造れんようになるかもね」
「笑えないが、他の産業の育成のための犠牲だな」
結局は太平洋戦争の勃発により、航空産業の一定の温存は成功し、間接的に、この時期の扶桑向けの事業の利益で鉄鋼・造船業から航空産業に進出した新興の日本企業が南部重工業。ヤマトの乗員の南部康雄の一族(先祖)にあたる。
「この戦争で大儲けした南部重工業に孫が就職したって連絡来たよ」
「いいところに入った。100年先もあるよ、そこ。宇宙戦艦ヤマト造ったから」
「そりゃよかった」
南部重工業はこの時期に勃興し、23世紀には、地球連邦軍の軍需生産の何割かを占める大企業にまで成長する。宇宙戦艦ヤマトを造った(正確には改造)企業としてのネームバリューは南部重工業を確固たる地位へ押し上げたわけである。
「報告しに行ってくる。こっちの戦車は?」
「74式を出させたけど、パーシングが多いからな。不意打ちに気をつけろと行ってある」
「上空援護の命令出されそうだぞ」
「命令が出たら、F-20で出るよ」
「よく採用させたな」
「うちの上が一機種だけに依存するのを嫌うもんでね」
当時の時点で、F-20は(旧西側諸国の機体であるのをいいことに)扶桑軍に好評であり、評価試験名目で使用されていた。黒江が主導して採用させたとされるが、実際には、源田実などの意向が働いている。日本からは『基礎設計は古い』と文句が出たが、魔女の世界では(突起物などの少ない、21世紀中までのステルス機は)怪異との誤認が懸念されたため、第四世代戦闘機までの機体が好まれ、意図して採用された。第四世代戦闘機であれば、この当時に、魔女の世界で現れ始めていた『第一世代ジェット戦闘機』の多くに対して、圧倒的に有利である。扶桑も、Me262のコピーを放棄し、それよりも圧倒的に性能の高いF-86Fを次期主力に選んでいる。史実では搭載されていない『アフターバーナー』も搭載させた上で。カールスラントの航空技術陣はこの急激なリベリオン合衆国系戦闘機の台頭に危機感を抱いたが、移転した国土の荒廃、軍需工場の壊滅等で『試作段階にあった新兵器の増産』が不可能となり、カールスラントのサポートも期待できなくなったとして、自由リベリオン系の機体が次々と採用された。F-86Fはその第一弾であった。結局、カールスラントは東西系の住民の相互不信が煽られた事に由来する内乱で、備蓄戦力を尽く浪費。海軍も『まともな水上戦力』が一隻たりともなくなるという悲運に見舞われる。朽ち果てかけた『ビスマルク』と『ティルピッツ』の惨状こそ、軍事大国としてのカールスラントの没落を示す絶好の材料とされ、盛んに報じられる。一時は世界二位にまで登りつめた海軍の結末として、あまりに悲惨なものであった。結局、民族存亡の危機にまで事態が悪化してしまい、カールスラントはNATOの軍政下に入る。NATOも相当に迷ったが、『共和制に強い不信のある世界線』を鑑みた結果、『完全な立憲君主制』としての再建で妥協された。ゲルマン民族の滅亡は望まれていない故の妥協であった。
扶桑はカールスラントが従来担った『連合軍の中核』的地位をいきなり背負わせられた形になったが、魔女の世代交代期の最中であった故に、苦難の連続となった。結局、みらいとリコ、ことはの三人の『魔法つかい』や、なのはやフェイトを始めとする『魔導師』などと比較しての劣位を官僚に指摘される事になった。彼女らに匹敵しうる才能を持つとされた『黒江たち』は部内で多数派に迫害されてきており、日本政府の手による『人事的粛清』が『ダイ・アナザー・デイの苦戦』を大義名分に断行され、反・Gウィッチ(後の『異能者』となる者ら)閥の解体を進めた。その間のことだが、グンドュラ・ラルはカールスラント空軍の次期総監に選ばれた。ガランドが退役を電撃的に発表したことを受けての次善の策であった。また、日本側のミスで防げなかった事件もあるが、異能者らも万能ではないので、『全部を防げ』と責めるのは酷である。また、彼女らやヒーローユニオンの『忠告』を日本警察が嫉妬心で無視したら、元の総理をむざむざ暗殺されるという失態を起こすなど、警察そのものの『平和ボケ』を疑われるような事態も起こってしまうので、日本の治安組織の質が問われていくが、日本警察の英雄とさえ言われた『正木俊介』(特警ウインスペクターなどの生みの親)がいなくなり、その彼を疎んじていた保守派が彼の退官後の警察庁を掌握したことは扶桑に知られており、半分は『元から宛にされてもいなかった』のだが。
――こちらは圭子――
「閣下。なぜ、グンドュラが総監に?」
「次善の策だ。メルダースが推薦されていたが、メルダースは事故で重傷を負ったし、経歴が引っかかった」
「まさか」
「ああ。コンドル軍団の在籍経験者なんで、ドイツが即座に却下してきたそうだ。後で『誤解だった』とか抜かしやがったが、時既に遅しだ。それで妥協的に、グンドュラが選ばれた。過去の悪事を闇に葬る代わりに、軍政で働けってとこだろうが、そうもいかなくなった」
「なぜです」
「ノイエ・カールスラントで内乱が起こった。東西の元住民同士での殺し合いがエスカレートして、国そのものを壊し始めたんだ。だから、戻ったとしても、あいつにできることはない。臨時政府の首班として、NATO軍に鎮圧を要請することくらいだろうな」
「なぜNATOなのです」
「今回の地球連邦軍への指揮権の委託に、日本の左派や後々の反統合同盟の構成諸国の連中から抗議が来たんだよ。連邦軍は常設の国連軍のようなもんなんだぞ、言わば。いちゃもんだぜ。だから、負けるんだよ」
圭子は執務室でバルクホルンに愚痴りまくる。結局、地球連邦軍を訝しんだ諸国が『魔女の世界での旨味』を欲したが、面倒ごとは避けたらしいことを語る。疎開した地域がペルーにあたる領域で、ドイツは面倒ごとを避けるべく、そこから追い出そうとしたが、結局は民族の内紛を招くだけに終わった事から、面倒ごとは避けたいが、旨味は欲しい。日本のように。結局、扶桑と日本、ブリタニアと英国は『皇室、ないしは王室』のおかげで一つになれたが、他は共和制などが原因でうまくいかず、却って破滅を招くだけに終わった。
「全く。史実のような多くの民族の自決など、この世界線では不可能だというのに」
「リベリオン合衆国の台頭が遅れた理由も、移民の作った国で、土地との結びつきが弱いから、魔女が出ないってことだが、連中は理解しねぇのよ」
リベリオン合衆国は物量のゴリ押しを得意とするが、史実のアメリカ合衆国の1946年前後の人口は20世紀後半の日本国と大差ない数値であるので、当時最高の医療体制がそれを下支えした点も大きい。また、高等教育を受けた人間の多さも(1940年代では)強みであった。だが、近世に作られた国家故に、魔女を輩出する家系は少ない。さらに、黒人に門戸が開かれたとはいい難い時代なので、魔女の絶対数が足りない。だが、名だたる魔女大国を通常兵器だけで窮地に追い込める力を持つため、魔女の権威は急速に衰退している。
「魔女という人種の生き残りは、あたしらの活躍如何にかかっている。とはいえ、ルガーP08はやめとけ。イメージが悪い。せめて、P38をもっとけ」
「しかし、P38はあまりいい個体が」
「骨川コンツェルンに連絡して、別の世界線の個体を手に入れろ。のび太に調べてもらったが、口径や寸法は変わらん」
この世界線では、カールスラント本土が早期に陥落した影響で、ワルサーP38はあまり出回ることはなかったようであるが、圭子は骨川コンツェルンのツテで、史実の個体を手に入れられるので、気にしていないようだ。
「綾香は拳銃にはこだわってねえから、テキトーに選んどるがな」
「黒江閣下は国産以外なら…と仰っておいでです」
「うちの国は拳銃と機関砲に不良品が多いしな」
と、扶桑皇国の『名うての士官』はこぞって、赴任先で拳銃を護身用に買うことを行う。それが一種のステイタスであった。その解消のため、九四式拳銃が採用されたが、結果はこの有様である。圭子の愛銃は公には『ベレッタM1934』とされているが、実際にはそれよりも後の世代のM92である。
「ケイ先輩。ガリアを移動中の歩兵連隊から上空援護の要請です」
「F-8のエンジンを回しとけと、整備版に伝えろ。バルクホルンはどうする?」
「お供します」
「だそうだ」
「了解」
報告しに来た黒田にそう告げ、圭子とバルクホルンは戦闘機での出動準備を進める。これはカールスラント製のストライカーユニットの予備部品の温存のためで、501から引き継いだストライカーユニットの少なからずがカールスラント製であった故、補給の目処が立たなくなった部材は温存するしか無く、野比財団提供の戦闘機(史実で活躍した機種を模したレプリカ機に、現用機のコスモタイガーIIに準じた実戦装備を施したもの)を用いるのがダイ・アナザー・デイでの通例になっていた。その時代の機種であれば、操縦自体はバルクホルンでも可能(連邦軍の人材不足で、小学生でもできるようになっているため)である
「あ、バルクホルンさん。大丈夫ですか?」
「コスモタイガーIIと同じようにアレンジされているのだろう?それならば簡単だろ」
バルクホルンはカメラなどはできるものの、PCなどは苦手であるため、エーリカにネタにされている。プリキュアたちは最低でも、スマホを使いこなせるからだ。
「わかりました。あ、黒江先輩に伝えておいてください。うちの実家が面倒な事になったって」
「何、お前の実家が?」
「はい。もしかしたら、この作戦が終わったら、本国で家を継ぐ羽目になりそうです」
と、黒田は伝言を残す。これが黒田の軍歴に事実上の終わりを告げる鐘であり、以後の時代では『黒田侯爵家を立て直す実業家』として活躍していく。七勇士の最年少かつ、黒江の懐刀を長年務めてきたという、華々しい軍歴が社会的信用になったからである(とはいえ、扶桑の士官は終身官であったので、軍籍は残る)。また、黒田侯爵家のお家騒動は嫡男(おそらくは史実でいう、黒田長礼か、黒田長久のどちらかであろうとされる)の廃嫡、那佳の当主就任で終結するが、那佳から職業を奪った負い目を抱いた前当主の意向から、黒田家は64Fの扶桑での後ろ盾の一つとなる。この流れは後年、華族制度自体の廃止を阻止するために、前当主が皇室をも巻き込んで起こした策謀であったのでは?と囁かれるが、その前当主はすべてを見届けた1949年頃に死去するため、真相は闇の中である。つまりは『真相を墓まで持っていった』のである。
「大変だな」
「本家筋の女の子が魔女になれなかったんで、その代わりに、今の立場になったようなものなんで、軍に執着はないんですが、先輩たちと長い付き合いなんで。後継ぎがいれば、その子にこの斬艦刀を託しますよ」
黒田は数年後に本格化する、黒田本家のお家騒動という、本人ではどうしようもない事情で隊を去る。黒田のポジションを開けるのは不味いため、結果的にだが、黒江と(デザリアム戦役後には)気安い関係になったのぞみ(キュアドリーム)がその後釜に任ぜられ、斬艦刀を受け継ぐ。その独自性がのぞみ自身が自分の平行同位体(主に『B』)の嫉妬を買ってしまう事になってしまうわけである。(そもそも、転生した時に『鍛え上げられた職業軍人の肉体を丸ごと乗っ取った』経緯を持つAと、プリキュアとして現役途上のBでは、差が大きいのだが)
「いいのか?」
「親父や母さんが泣いてるんで。本当は規定通りに退役させたら、どこかの良家に嫁入りさせたいそうなんですけど、私の軍歴じゃ、貰い手が無いんですよ、却って」
「七勇士だものな、君は……」
黒田は分家出身なので、その両親は(時代相応に)良家に嫁入りさせたいと口にしていたが、実際には(軍歴が華々しすぎて)不可能に近かった。それを理解していた本家当主(この当時)は本家を継がせることで、間接的に華族制度を守る思惑があった。華族自体の是非が日本側に問われていた当時、『扶桑の独自性を守る』手法が模索されていたのは事実。那佳のその軍歴が華族制度を『形骸化したとしても』残るための盾にされたのは否めないが、日本としても『完全に扶桑を取り込む』つもりはなかったため、政府と与党にとっては『現地の華族制度の是非は扶桑の国民の判断すべきこと』と定めていたが、左派は『時代錯誤の華族制度は自分たちが廃して、連中の財産はすべて国庫に入れるべし』という共産国家まがいの強引な施策の実施を喚き散らす有様で、扶桑の政治家などから、大いに顰蹙を買っている。彼らは『自分たちが戦後に味わった辛苦を同じように味わせる』という思考で喚いているのだろうが、連邦構成諸国だからと、統一の中央政府があるわけではない日本連邦の実状を顧みない荒唐無稽な主張であった。
「それに、日本の一部は華族を廃したがってるけど、フランス革命やロシア革命のことを知らないと見える。
「要は財産や秘宝の維持のために?」
「ええ。元の小姓や足軽出身の家柄の老人たちに勝手にパニックになられても困りますからね。史実でも、戦時中にそうしたことがありますからね」
日本政府が扶桑の秘宝を穏便な形で回収しようとしているのは、史実の空襲で多くの国宝や文化財が失われたが、扶桑では現存するからだが、当主に長年仕えている上、親世代以前の武士としての教育を引きずる老人たちが暴動を起こし、日本側の役人を(癇癪を起こして)家伝の秘宝で殺害してしまう悲劇も起こってしまっていたためで、扶桑の華族当主(旧諸侯の層)も秘宝の国家への献上の障壁となる家人の扱いに困る時代を迎えていたのである。また、黒田自身も、国宝の日本号(扶桑号)を実戦で使ったために、日本側から『鬼の首を取ったように』抗議が来まくる事態にも見舞われている。扶桑の魔女は家伝の武器を代々、実戦で使う風潮があったが、日本連邦化で憚れるようになってしまった。結局、扶桑の刀は秘伝で斬れ味を保つように加工されていたものの、外殻が強固な怪異相手では棍棒のように使うしかなく、刃が通ることは普通はないという事実の判明、黒江らは『未来の技術由来の特殊・超合金製の武器、あるいは自らの異能で手持ちの武器を強化する』方法を使っているという事項の通達もあり、秘伝の維持のため、扶桑軍部は44年の末頃に地球連邦軍に協力を懇願。その数ヶ月後に量産され、黒江がこの時点で使っている軍刀はその量産試作段階の一つにあたる。
「しかし、扶桑はまだいいほうだ。私たちなど、国が無くなる瀬戸際だ」
「共和制にしようと仕向けるでしょうが、失敗しますよ。それで、たぶん放置ですよ。戦後の欧州人の高慢と偏見ですね」
「全く……ナチと我々は『似て非なる存在』だというのに」
「日本のスーパーヒーローたちが駆けつけてくれてるってのに、内輪揉めですよ、うちの連合軍は」
「恥もいいところだな……」
この頃には、連合軍の『有名無実化』が始まっていたが、日本から駆けつけた歴代のスーパーヒーローらの奮戦で、連合軍は持ちこたえていた。バルクホルンをして、恥もいいところだとの嘆息の有様は、シャルル・ド・ゴールの『サボタージュの黙認』などが原因であったため、結局は日本連邦の覇権が確定していく。
「大尉、報告します。たった今、宇宙刑事ギャバン(初代)、宇宙刑事シャリバン、宇宙刑事シャイダーがイタリア半島戦線の敵兵力を殲滅したとのことです!」
「そうか、隊の名義で祝電を打て。それと、彼らに食べ物を用意してやるよう、ロマーニャ公国に通告しろ」
「ハッ!!」
501時代から勤務する、古参の伝令兵が重要事を伝える。ロマーニャ公国が国土陥落のピンチを脱したと。ギャバンらの武力により、かなりの兵力が倒されたことが語られる。ロマーニャ公国はこの時点で陸軍が無力化されており、抵抗の手立てが無くなっていたが、ギャバンらの活躍で、危機から救われたという。
「それと、悪い知らせが。ロマーニャのタラント軍港は空襲と爆破工作で使い物にならないと」
「少なくとも、数年は使えんか……。連合艦隊はブリタニアか、浮ドックで修理するしか無いな」
「大尉、ブリタニアには、大和型を入れられるドックがありません」
「なにぃ!?」
ブリタニアはこの時期、50000トン以上の排水量の軍艦を想定したドックを持っていなかった。ポーツマスはもちろん、グラスゴーにも、大和型ほどの体躯の大戦艦をドック入りさせられる設備はない。浮ドックを地球連邦軍が用意したのは、当初よりそれを想定してのことだったのだ。
「ブリタニアめ、作戦前に言っとけ!」
思わず悪態をつくバルクホルン。以前に比べると、だいぶコミカルさが増しているが、自分より上位の者が多くなり、以前ほどの重責を担う必要が無くなったからである。(バルクホルンはこのダイ・アナザー・デイでの功績で少佐に昇進することになり、数年の居住の後に、妹共々、日本連邦へ帰化する事になる。また、転生者である事から、64Fにそのまま在籍し、教官も兼任することになる(バルクホルンは妹の懸案が解決された後であれば、意外に他人に優しいのだ。転生の成果で、史実より温厚な気質である)
「連合艦隊の戦況を逐一、私に報告しろ。それと、各海軍に今一度、各基地のドックの寸法を確認しておくように。戦艦はともかく、中型以下なら寄港できるだろ?」
「ハッ」
バルクホルンはこの時期からは『縁の下の力持ち』的な仕事もこなしていく。妹バカも大っぴらにするようになり、堅物のイメージは捨てている。また、他人に車の運転は任すことは減っている。前世での老年期、甥の運転する車の事故で、重めの後遺症を負ってしまった事の記憶によるものであるが、エーリカには任せている。また、のぞみやマナなどのプリキュア勢のことは名字で呼んでいる。これは芳佳や坂本の場合と同じである。
また、この伝令兵、普通に有能であることから、この後も隊に居残り、太平洋戦争でも64F付きの伝令兵として、引き継き勤務。制服の善行章の多さと、その当時としては大柄の180cm近い体格から、魔女たちからも一目置かれる、叩き上げの古参の下士官であったという。