ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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扶桑で起こるクーデターに触れます。


第四十五話「扶桑のクーデターとキュアドリームの選んだ選択」

――ダイ・アナザー・デイ以降、扶桑海軍は人事制度が刷新され、現場で特務士官が正規の兵科将校より事実上の上位で遇されている事に反発する海軍士官は多かった。だが、日本側の意向で反対する者は職を更迭され、予備役へ編入されたため、反対論は次第に萎んでいった。要は合法的な脅しである。海軍は学閥至上主義的風潮があり、それを否定するために日本側が仕掛けたのだが、『海兵卒』の肩書が海軍士官のアイデンティティに近かったため、ウィッチ出身者も含め、クーデターに発展した。社会そのものの価値観が戦後型になり始めた時代にあって、海軍の持っていた価値観の少なからずが『前時代的』と見なされていく事に耐えられなかったのだ。――

 

 

 

 

 

――1946年。ダイ・アナザー・デイの事後処理が進む頃にそれは起こった。横須賀航空隊、海軍第8艦隊(二線級に格下げされた紀伊型戦艦が所属)、陸軍過激派(近衛師団の一部など)などの各部隊の反G閥が蜂起した。当初の予定よりは縮小したものの、それでも各地部隊の有志が合流したため、それなりの規模であった。だが、Gウィッチとそれを支援する者はすぐに対応した。海軍陸戦隊(組織として独立準備中)部隊の鎮圧にプリキュアを送り込み、出鼻を挫いた。闘志旺盛なものの、海軍陸戦隊の装備は大半が貧弱そのもので、人員の精強さを売りにしていたが、ウィッチ装備も含めて、事変当時と大差ないのもあり、ダイ・アナザー・デイを経て、強さを増したプリキュア、それもピンク単独のチームに悠々と蹴散らされていった。後世に発掘されたクーデター軍の一員が隠し持っていた記録映像には、白黒ながらも、キュアラブリーとキュアドリームに有象無象のごとく蹴散らされていく光景が撮影されていた。(クーデター軍は正当性主張のため、撮影班を編成していた)ダイ・アナザー・デイの過酷な戦場で鍛え上げられた二人には、何の実戦経験もない陸戦隊は壁にすらなれない有様であった。――

 

 

 

 

――扶桑新鋭戦艦『敷島』――

 

三笠のさらなる拡大改良型で、1946年次に竣工した『敷島』は公試運転中の段階であったが、クーデター発生の報に緊急で連合艦隊旗艦を拝命。800mの巨体を以て、横須賀沖に陣取っていた。56cm長砲身砲を備え、MSの運用機能すら備える同艦は大和型戦艦の最終発展型であり、至近距離での大爆発でもビクともしないという防御力を誇る空前絶後の戦艦である。

 

「そうか、バカモノ共がやりおったか…」

 

「小沢長官」

 

「山本さんに連合艦隊司令長官の進退伺いを出してくる。責任は俺が取らなければならんだろう。後事は山口君に任す」

 

小沢治三郎はクーデターの発生の責任を取る形で、この事件の直後に司令長官を辞し、後任に山口多聞が就く。これは一年前から予定されていたが、形式上、現場責任者としての責任を取る形での離任となった。以後、小沢は数ヶ月のクールダウン期間を経て、統合参謀本部議長という要職に取り立てられ、太平洋戦争中はその職に在任する事になる。連合艦隊司令長官の後任は山口多聞が抜擢され、機動部隊司令長官には角田覚治が積極性を理由に選ばれる。クーデターは山口多聞を連合艦隊司令長官に押し上げたものの、クーデター軍参加兵士らに重い十字架を背負わせたと言える。

 

 

「小沢のおっちゃん、まっつぁんが横須賀に来てる五十六のおっちゃんのとこに案内するって」

 

「そうか、頼む」

 

 

小沢はそれだけ黒江に言うと、CICを後にする。わかっていたが、いざ起こると足取りも重いのが現実である。

 

「黒江くん…」

 

「参謀長、俺も出向かんとならない。連中の目標はこの俺だ。近衛師団の若い参謀が宮城事件のように動いてるはずだしな」

 

「君は出世しても、気質は変わらんな」

 

「元々がウィッチだしね。参謀長にも後職を口添えしとくよ」

 

矢野志加三少将。史実では実業家としても成功したと伝えられる高官である。連合艦隊参謀長としては無難に職務をこなしたため、そこそこ評価されている。黒江は統括官として、海自の幹部学校にも通い、艦艇勤務もこなしたために海軍士官のイロハも身についており、元が陸軍軍人かしらぬ万能さを発揮していた。また、昭和天皇の寵愛も深いことから、海軍高官の人事に一定の口出しも許されているなど、扶桑ウィッチとしては初の『軍部中枢を操れる者』であった。これは自衛隊で将官になっていた黒江とその戦友達に与えられた権限であり、カールスラントの衰退に伴って連合軍から求められた『処置』であった。要は提案の形で成されるが、妥当性を考慮するとほぼその提言に乗るしかない状況になっているのが黒江の政治力であるが、本来は畑違いの分野である海軍の人事に口を出す事自体を嫌う海軍ウィッチは山程いた。ただし、いくら艦艇勤務経験があるとは言え、元から専門教育を受けたわけではないため、リバウ三羽烏がブレーンとしてついており、そこを考慮に入れれば、妥当と言える。

 

「わかってるとは言え、まだ休暇は取れねーな。さて、久しぶりに運動してくるか」

 

黒江は久しぶりに戦闘態勢に入り、エンペラーオレオールを生成し、バックパックの要領で装着し、敷島の飛行甲板から飛びだっていった。黒江は剣鉄也に可愛がられている関係もあり、G系統のマジンガーの技や武装を好む。エンペラーオレオールもその一つ。これが事変で黒江の戦果が操作された最大要因であった。

 

 

 

 

 

――クーデター軍は蜂起したはいいが、それを読んでいた各地の部隊の逆襲を受けていた。クーデター軍の航空隊の一つである旧海軍『七二四航空隊』もそうだ。橘花の運用試験部隊であり、ダイ・アナザー・デイ以降は開店休業状態であった航空隊である。彼らは43年以来、橘花の改善に全力を注いでおり、後退翼へ改良し、Me262の小型版という体裁を持った『橘花改』が彼らの装備機であったが、模倣品である事実は変わりなかった。だが、尾輪式の頃の設計をもらったにしては、かなりがんばっており、前輪式と後退翼となった橘花はサイズ以外はコピーと言えた。だが、火龍への対抗という形で戦闘機としての装備を形だけした同機は実際のところ、原型機より落ちると言わざるを得なかった。彼らは意気揚々と出撃し、厚木基地所属であり、訓練中の『銀河』陸攻の編隊を血祭りに挙げたが、そこで彼らは根本的に敵わぬものと出会うこととなった――

 

 

 

 

――厚木基地――

 

「敵機、銀河隊を落としました」

 

「バカどもが。聖上に仇なす不忠者めが…。ドラケン部隊をスクランブルさせろ!」

 

小園大佐は赤松を源田に手渡すバーターとして、新鋭機『ドラケン』(後の扶桑名は竜騎)を手に入れ、スクランブルさせた。ドラケンは元々が欧州の開発した迎撃機であるために、日本列島での運用に不安論が強かったが、扶桑はエンジンの換装などで解決した。史実だと日本では採用されていない同機の制式採用は日本には極秘にしていたが、ここでベールが解かれたわけだ。

 

 

――扶桑仕様のドラケンの初期配備機は制式塗装が決まっていないため、各部隊の出自が由来の塗装に塗られていた。日の丸ドラケンはマニアの夢想などでよくあるが、扶桑が内密に制式採用したというのは、空自を驚かせた。しかも、エンジンがターボファンエンジン化され、燃費が改善されているのは大いなる改善と見なされた。更にグラスコックピット化させていたため、史実より総合戦闘能力は格段に強力であった。その関係上、上昇力と機動力は橘花や火龍の比では無かった――

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

橘花部隊のパイロットは基地の格納庫から現れた未知の機体を目にし、驚く。まるでロケットのような姿をしていたからだ。だが、それは驚くほど短い距離で離陸し、45年当時のジェット機の常識を覆す上昇力を見せ、橘花隊の出鼻を挫いた。基地に在留していた航空自衛官もこれには驚く。

 

「ど、ドラケン!?馬鹿な、なぜ扶桑にドラケンが!?どういうことです、小園大佐!?」

 

「君達に言えば、反対されると思ってね。我が軍は一機種に依存する事は避けたくてね。F-104と同時に採用していたのだよ」

 

ドラケンは凡そ第二世代ジェット戦闘機に分類されるが、センチュリーシリーズより先進的とされる。扶桑は既にF-8で超音速ジェット機を製造可能になっていたが、ドラケンをF-104より容易に扱える邀撃機として独自に採用したのである。史実の設計開始年度そのものは1949年度というから驚きだが、F-4EJ改を『キャデラック』と表現し、複座である事を嫌う声に配慮し、単座邀撃機の一つとして採用された。基地のレーダーに映る光点は30機ほど。橘花改の製造機数の7割であった。だが、ドラケンとは全てが違いすぎた。

 

「なんだ、あのロケット機は!?」

 

「加速も、上昇力もまるで次元が違……うああっ!?」

 

橘花部隊はドラケンの風体から、コメートのようなロケット機と誤解した。だが、ロケット機と違う点が多すぎる事などから、自分達と同じジェットであることはすぐに感づいた。だが、横たわる性能差は圧倒的であった。ドラケンは原始的なジェットである橘花が相手とは言え、赤子の手を捻るかのような圧倒的戦闘を見せた。橘花は殆ど直線番長であり、旋回すれば、たちまちに隙ができる。だが、ドラケンは橘花よりは圧倒的に高速で旋回可能であり、絶対的に有利であった。

 

「ふん。そんな模倣品を制空戦闘に使おうとするからだ。各機、遊んでやれ。全機は落とすな。日本がほしがるからな」

 

「了解」

 

「今頃、百里でも同じような事が…」

 

「あちらはスター・ファイターだが、あちらのほうが驚きだろうな」

 

百里にはF-104Jが配備されていた事も話題に出すパイロット達。橘花のパイロットたちが慌てふためき、禁忌である旋回を行ってしまう。だが、ドラケン部隊はそれを逆に仕返して見せる。もはや完全に橘花は玩具扱いであった。橘花のパイロットたちは進攻戦で勝とうとするが、五式三〇ミリ機銃とリボルバーカノンでは相手にならなかった。敵より先に橘花が火だるまになって落ちていく光景は悪夢でしかないはずで、敵は転進を言い訳に逃げていく。

 

「普通の機銃でリボルバーカノンに勝とうとするとは。蛮勇だな」

 

「隊長、追いますか」

 

「いや、お披露目は果たした。帰還する」

 

日の丸ドラケンの初陣はクーデター航空隊の鎮圧であった。扶桑はこの結果に満足し、要地防空用戦闘機として生産し、プロパガンダ向け制式名を『竜騎』とした。(部内ではドラケンで通る)扶桑では、月光や雷電、鍾馗の後継機種扱いとして配備され、日本列島配備機と南洋配備機とで異なる塗装となり、エースパイロットにも好まれていく。黒江は同機を愛し、邀撃任務の際はかなり使用したという。後日、冗談のつもりで『炎の鬣を持つ一角獣』を尾翼に書いたところ、坂本や竹井は眉をひそめたが、概ね大好評であった事から、以後はプロパガンダ目的もあり、黒江のパーソナルマークの一つとなっていくのだった。なお、黒江はドラケンの他、F-8、クフィールなども入手しており、ダイ・アナザー・デイ中には使用経験がある。だが、彼女特有のパーソナルマークはなかったため、炎の鬣を持つ一角獣はプロパガンダ目的にも合致したため、即座に採用された。冗談めかし、パーソナルマークの誇示を快くは思っていない坂本に『俺も記憶喪失経験者だし、丁度よかんべ?』と大笑しながら言い、坂本も諦め、代理たちも口出しできない聖域となった。基本的に1947年以降の黒江の乗機にそれは描かれ、自衛隊の古参パイロットからは『統括官はエ○ア88帰りか』とネタにされたという。

 

『ウィッチはパーソナルマーク付けてるの多い(JFS参加者は事実上、マークの使用が義務化されている)のに今更どうこう言うなよ。お前だってパーソナルマークあんじゃねぇか』

 

『そ、それはそうだが、子供みたいに触れ回るなと…』

 

『銃後に媚を売ることくらい、いい加減に覚えろよ。来年の予算が増えるかもしれないだろ。それに知られりゃ、今後の慰問の差し入れも増えるぞ』

 

『指揮下の俺たちゃさしずめ、ブルーセクションってところだな、ハハッ。…少佐。曲技飛行隊に行くべきですって』

 

『私がか?』

 

『俺はブルーの所属経験者だ。なんなら、連中のとこに留学すっか?』

 

『駐在武官を勧められたが、政治向けの仕事したくないから、話を通してくれ』

 

『空自のBIは、元々戦技研究がメインって名目で設立した部隊だからな。機体の限界の攻め方をミッチリ仕込まれる、飛行機乗りの基本にして奥義を体得させられる所なんだ。勉強になるぞ』

 

『よく言うよ。始まって以来の天才と言われたくせに』

 

呆れるが、それ自体は納得する坂本。黒江はブルーインパルスに引き抜かれた後、在籍中は天才と言われていたからだ。黒江は文字通りに空自のエリートコースを進んでいたが、幕僚長になる道は断たれている。扶桑出身世界者は『統幕に入れないし、幕僚長になれない』という内規が2009年前後に出来上がったので、幕僚長にはなれなくなった。だが、その代替の名目で『統括官』となった。それでも、自衛官としては異例の若齢で高官扱いである。その事に反感を抱く者は多く、黒江の政治的暗闘が長い理由となっていた。坂本はそんな黒江を『求道的だが、敵も作るのだよ、あいつは』と評し、後世に黒江のストイック説を広めた張本人だったりする。

 

――今回は政治に関わる仕事を避けるため、留学話には積極的で、次元震パニックが起きるまでは、下原を引き連れて、ブルーインパルスに留学する事になる。この1946年は基本的には平和な時期であるため、ダイ・アナザー・デイの事後処理が終われば、黒江たちは暇になるはずだったのだが…。

 

 

 

 

 

 

――クーデターに加担した部隊は基本的に悲惨な目にあった。近江と駿河(紀伊型戦艦)は艦ごとクーデターに加担したわけだが、今回の相手は悲惨だった。全長250mの紀伊型戦艦が笹舟にしか見えないような巨艦が立ち塞がったからだ。――

 

『反乱艦に告げる。こちらは連合艦隊旗艦の敷島である。直ちに降伏せよ。さもなければ、そちらを浮かぶ廃材へ変えなくてはならない』

 

敷島の艦長は名艦長と誉れ高い森下信衛少将で、大和型戦艦の経験者であった。紀伊型の50口径40cm砲が巡洋艦程度の砲にしか見えないほどの大きさを持つ『50口径56cm砲』を備え、大和型戦艦が三倍以上に大きくなったようなバケモノが近江と駿河の前に立ち塞がった。全てが桁違い、まるで浮かべる要塞。そう表現した方がいいバケモノだった。

 

「馬鹿な……こんな、こんなバケモノ、まるで海上要塞ではないか!?」

 

金田中佐が泣いて喜びそうな艦容、20万どころか、50万以上はありそうな排水量の海上要塞。そう表現した方がいい扶桑の海上要塞シリーズ第二弾。その名も敷島型戦艦。当時は一番艦『敷島』のみが完成していたが、かなりハッタリを効かせた寸法であり、浮いてるだけで相手が怯える。抑止力も兼ねての保有であるが、普通は白旗を揚げる。56cm砲は45口径のものがダイ・アナザー・デイで使用されたが、数発でモンタナがグロッキーになるほどであるため、その改良型は想像がつかない。

 

『返答は如何に?』

 

淡々とした森下の声は二隻の艦長と副長を怯えさせた。しかも、敷島は武装を何ら近江らへ向けていない事で『歯牙にもかけていない』事を妙実に示している。近江はここで血気に逸り、主砲と副砲を敷島へ発砲した。主砲と副砲を交互に十数発撃ち込んだ。しかも、10000mもない至近距離で。普通は大損害は免れないはずであった。だが……。

 

「ば、馬鹿な。これほどの至近距離で40サンチと副砲を十数発も撃ち込んだというのに、傷一つつかないというのか……」

 

愕然とする近江の艦長。そしてややあって、敷島の56cm砲塔の内の一基が動き……。

 

「撃……!?」

 

それが『彼』の見た最後の光景であった。近江の船体はわずか数十秒の間に火達磨になった。敷島の榴弾が近江の船体を瞬く間に焼いたのである。56cm砲弾は榴弾を撃っただけで、ポストジュットランドタイプの防御を無視し、船体を焼いたのである。しかも、命中したのは運悪く艦橋であった。僚艦の駿河の全乗員はこの一撃で怖気づいたのである。この近江の無残な惨状に、駿河の乗員は幹部に至るまでが震え上がり、前史と異なり、戦わずして降伏する。近江はこの後、海軍所感のドックまで曳航されるものの、しばらくは修理もされずに放置されるが、その内に海援隊への譲渡が決まるに至って、ようやく修理がなされ、第二の人生(艦生か?)を歩む事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

――クーデターは日本政府の介入をなるべく抑えるために、騒乱の早期鎮圧を狙う軍部良識派の意向もあり、各地で情け容赦なく、瞬く間に鎮圧されていく。その内の海軍陸戦隊の部隊はドリームとラブリーにより、陸戦ウィッチも含めて制圧されていく。この当時のキュアドリームはデザリアム戦役前の状態であるため、ダイ・アナザー・デイ当時より経験が増した程度の状態であったが、陸戦隊のあらゆる戦力を歯牙にもかけない強さは余裕で発揮した――

 

「先輩の読みどおりだね。メタ情報とは言え、ここまでピタリだと、不気味なくらいだよ」

 

「それはあたしたちも同じじゃない?」

 

「確かにね。今はこの場を収めないと。陸戦の連中を黙らせない事には他の連中が折れないよ。連中は無駄に敢闘精神旺盛だしさ」

 

「面倒くさいね、そういうの」

 

「言えてる。さて、ダイ・アナザー・デイで鍛えた拳を見せるとするか!」

 

ドリームはこの頃から徐々に、肉体の素体であった中島錦の持っていた好戦性が表面化していった。その一方で『大切な誰かを失うこと』を異常に恐れてもいるという、ある種の二面性を持つ。それはデザリアム戦役で表面化した。それで自身の闇を自覚した彼女はマジンガーZEROを『取り込む』形で浄化。以後は黒江達と同じ領域に『昇華』し、一気に全プリキュアでも最強クラスの実力に躍り出るわけだが、この時点では『現役時代から毛が生えた程度の実力』であった。それでも、当時の海軍陸戦隊程度は歯牙にもかけない実力である事には変わらない。ティターンズとの激闘で修行の必要を悟ったため、ある意味ではクーデターの鎮圧も修行であった。

 

「はぁ!!」

 

錦が継承していた『草薙流古武術』を使い、陸戦隊の隊員を薙ぎ払うドリームと、こちらは現役時代から通して使用する技に磨きをかけたラブリー。その上空援護を行う64F所属のVF部隊。操縦のオートマチック化が進んだ『VF-171 ナイトメアプラス』ではなく、マニュアル操縦の余地が高い『VF-19 エクスカリバー』を使用している。この頃には維新隊にも配備されており、地球連邦本国で『VF-171 ナイトメアプラス』の需要は完全に無くなり、『VF-19 エクスカリバー』の配備が促進された恩恵でもある。この頃は扶桑製既存兵器の大半が戦後型兵器に駆逐され始めた頃であるためか、クーデター軍がなりふり構わずに、倉庫に眠っていた『試作兵器』も躊躇なく持ち出すため、後々に兵器管理の面で大問題となった。

 

「な、何あれ!?」

 

「嘘ぉ、お、オイ車!?すごくレアな多砲塔戦車だ!!つーか実物あったんだ、あれ!?」

 

二人の度肝を抜く、扶桑陸軍製の多砲塔戦車。21世紀の視点からは、とても奇異な外見の戦車だが、設計当時は重戦車扱いの大型戦闘車両であった。これぞ、クーデター軍が持ち出した多砲塔戦車(超重戦車)『オイ車』。史実日本軍で研究されていた100トン級の多砲塔戦車である。この世界では43年度に試作が完了し、その制式生産を控えていたが、ティターンズの登場で急速に戦闘車両そのものが瞬く間に強大化する『進化の時代』を迎えたために、頼りの性能が陳腐化。(特に装甲防御)その存在意義を失い、量産も見送られて、どこかの兵器倉庫に新品同様の状態で、運用に必要な装備一式ごと放置されていたところをクーデター軍によって発掘され、投入された。この投入がクーデター軍に加担した者が『島流し』に遭う最大要因の一つとされた。ティターンズ将兵並に悲惨だが、ティターンズよりは幸せである。ティターンズは官軍から一日で賊軍扱いにされ、ジオン残党と同列視されたからで、多くは結局、敵であるはずのジオン残党に与して生きる者が多数に登ったからだ。(かのベルナルド・モンシアも結局、ネオ・ジオンに媚びる日々となり、最終的に薬物中毒者に落ちぶれ、23世紀時点では廃人になったという)

 

「連中、あんなの持ち出したら、後で部隊ごと厳罰だってのわかんないの!?」

 

「ど、どうする!?」

 

「履帯を切ろう!!ああいう戦車は履帯さえ切れば無力化するって、相場が決まってるんだ!」

 

「わ、わかった!」

 

意気揚々と進撃してきたオイ車だが、ラブリービームと、ドリームが精霊の力を用いて放った光弾が履帯を叩き切り、二人は瞬時に戦車の車体に飛び乗り、中から乗員を引きずり出し、強引に無力化した。

 

「やれやれ。試作装備まで持ち出すなんて。こりゃ、後でかなりの粛清人事の嵐が吹き荒れるよ」

 

「だよね。日本が手出しすると思う?」

 

「先輩は、間違いなく口出しするって言ってる。あたし達は23世紀の戦いにいかなきゃならないし、休暇くらい取らせてほしいよ~」

 

クーデター軍を意に介さずに蹴散らしつつ、愚痴るドリーム。休暇中であったのを呼び出されたからだが、彼女にとっては『衝撃的な出来事』がこの後すぐに起こったり、プリキュア勢の事実上の顔役として活動せざるを得ない(この時点では、自分の後輩たちしかいないため、知名度と古参という二つの要素からの必然だった)事での精神的プレッシャーが伸し掛かっていた。転生前の経緯故に精神的に闇を抱えてしまったため、夏木りん/キュアルージュの支えでどうにか精神的に持っていたようなものであった。だが、次のデザリアム戦役では、テロ被害に伴ってのりんの記憶喪失という予想外の出来事に遭遇してしまい、それに耐えることができずに精神の均衡を崩してしまうのである。だが、それがきっかけで心の闇を理解したのぞみは最大の懸案であったマジンガーZEROの懐柔に成功し、素体となったマジンガーZからZEROの魂の分離に成功し、行き場を無くした魂がシャイニングドリームと同化する。それに伴い、ドリーム/のぞみ自身が心の光と闇の混在を受け入れた事で、真の意味でGウィッチとしての覚醒を果たすのである。その伏線となる会話は既になされていた。

 

『…待てよ、今のお前なら、ZEROに対抗できるやも知れん。光と闇の双方を経験したのなら!』

 

『え!?ど、どーいう考えですか、先輩!?』

 

『あいつの属性は混沌。お前は光と闇の双方の要素を今は持つ。ZEROを同化できるかもしれん!!』

 

 

――キュアドリームの心の灯火、マジンガーZEROの心の熾火、性質は違うが、二つの火が合わされば世界を照らす大きな炎に出来るはずだ!――

 

このように、黒江が最初にマジンガーZEROを取り込むという選択肢にたどり着いたのだが、その時はドリーム自身も本気にしなかった。だが、彼女は最終的にそれを黒江の想定より早く実行する。アクアが合流したデザリアム戦役中にマジンガーZEROの懐柔を行い、その同化に成功する。以後はZEROとの同化で存在が神域に昇華したため、単独の戦力としては、プリキュアオールスターズでも最強を争う存在として新生する。その保有ポテンシャルは歴代最優のスーパープリキュアの一つに数えられる『キュアハート・パルテノンモード』に比肩するレベルにまで飛躍。浄化がメインであるキュアピーチエンジェルモード、フォーエバーラブリーとは違い、マジンガーの持つ『Z神の権能の再現』の側面を持つ力を得た都合で『光と闇の力を以て、破邪顕正を為す』という攻撃的な側面を司るようになる。

 

 

――この経緯は、かつてのキュアフェリーチェが『あまめく命に祝福を与える』大地母神の化身としての役目を持っていたのに対し、『神を超え、悪魔を倒す』というマジンガーの究極的な目的を司る戦神的な存在となりしキュアドリーム。『正義の味方しすぎてて、人間味が薄いプリキュア』という出身世界で叩かれた陰口が彼女の心の闇(成人後、どこの誰からか叩かれたという、その陰口を気に病んでいた)を生む一因となった事を考えると、どこか皮肉めいた展開になったと言える。だが、自身が抱いていた精神の闇を受け入れた事でむしろ『気が楽になった』とし、第三世代以降のプリキュア達の時代には失われた『キュアブラックとホワイトが背負っていた子供達の原初の願い』を体現する継承者としての役目を担う事を明確に『誇り』とし、自分なりに『プリキュアとしての新しいあり方』を戦いの中で探していく。その『願い』を理解できる戦友たちと共に、偉大な先輩であるなぎさとほのかに課せられた『願い』と『想い』と向き合う。それが出身世界で薄幸な後半生を辿った場合の夢原のぞみが転生というチャンスで見出した希望であり、夢であった――

 

 

 

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