――ヒロイン達の力関係はどうなっているのかといえば、ISが発揮する戦闘能力を基準とし、シンフォギアはISを上回るが、プリキュアの最大ポテンシャルには及ばず、そのプリキュアもロボットガールズには一歩及ばないという絶妙なパワーバランスであった。ISは通常兵器よりは強力ではあるが、束の匙加減でバランスが変わる要素を備えているため、機体間バランスも不安定である。黒江はダイ・アナザー・デイの前にそれを裏付ける出来事に遭遇し、千冬らと面識を得た。それから順次、代表候補生を『交流』の名目で派遣してもらい、地球連邦軍の技術で各候補生の機体を改良・小型化し、より強化服の体裁を強めたISをススキヶ原で極秘に試験運用させた。これはIS世界としても旨味がある上、箒が聖闘士になり、姉の首根っこを抑えたことと、束の監視に先代黄金聖闘士がついていることで『束が悪巧みするのを防げた』からである。さすがの篠ノ之束も人知を超えた力を誇った黄金聖闘士らに監視されていては、いかなる手段でも逃れられないと悟ったか、最近は大人しかった――
――ある日の新野比家――
「しかし、どうして篠ノ之博士があっさりと箒さんやあの方に下ったのです?」
「簡単なことだ。いくら体質的に常人を超える博士であろうと、素のスペックはシックスセンスに踏み入れたか否かだ。今の箒は射手座の黄金聖闘士だ。本命までの場繋ぎでなったとは言え、セブンセンシズを扱える。いくらISを強化しようと、光速の拳は防げん。それはお前らも味わっただろう?」
「ハイパーセンサーが感知しても、動けるかというと別問題だからね。それに、あの人が使ってたプロテクターはいったい?」
「シンフォギア。別の世界で生み出された代物で、先史文明期の遺物を媒介にするプロテクターだ。当然、ISなど問題外の力を持つ。それを更に超えるのが聖衣なんだが…」
「あの時、一夏は箒の姿を他人が取ってる事に怒ったけど、代理で来たのなら、素直に…」
「あの時は箒がインフルエンザで唸ってたし、教官へ探りを入れる目的もあったのだ。後で聞いたが」
「でも、あの時は驚いたよ。箒が歌い出したと思ったら、ISじゃないプロテクターを纏ってたんだから。あれはなんて名前?」
「アガートラームと便宜的に呼ばれていた遺物を媒介にしたプロテクターだ。あれ一つで並の第三世代ISを数機まとめて相手取れるそうだ。それを戦闘慣れしている閣下が纏えば、この姿の私とタメを張れる」
キュアマーチ(ラウラ・ボーデヴィッヒ)はシンフォギアの戦闘ポテンシャルは第三世代ISを軽く上回ると明言した上で、それを更に超えるのが聖衣であるとした。実際、第三世代ISと対等に戦える性能の無人IS(束の差し金)をアガートラームを起動させた黒江は軽く、それらを一蹴してみせた。総じて、プリキュア化した自分と同等のポテンシャルであると断言する。
「~~……。そんなの反則ですわ、反則ですわ~!」
機体を展開している状態で地団駄を踏むセシリア。黒江の『変装』と気が付かなかった段階でISで模擬戦をしたところ、攻撃は意に介されず、それどころかドミネーションランゲージで動きを封じられた時の光景が蘇ったらしい(これにかかると、体を自由に操られる。調が同位体に使用し、シンフォギアごと動きを完全に封じたように、黒江は響に二回ほどかけ、マリアと切歌に各一回使用したが、セシリアにも一回は使ったのだ。)。
「あの時、機体ごと動けなくされたもんね」
「ええ…。スラスターを何回も緊急噴射しても微動だにしない上、機体の指一本も動かせなくされましたから…。青ざめましたし、泣きたくなりましたわ」
セシリアはその時、半泣き状態に追い込まれた事が本人の口から明確にされる。ISごと動きを封じ込まれ、機体のスラスターをフルパワーで何度も点火しても微動だもしない状態にされたからだ。
「閣下は悪戯好きな面があられるからな。その時に、お前の腕前を把握したと仰られていたぞ」
「こちらの身にもなってくださいまし…。おまけに光速の拳はハイパーセンサーをオーバーフローさせましたのですよ?」
「いくらハイパーセンサーといえど、一秒に億単位の拳が攻撃として振るわれては、処理が追いつかなくなるのは当然だ。光速の速さの攻撃が断続的にされれば、ISの処理能力を超えてしまう。」
それはライトニングプラズマのことだ。ISは宇宙での使用が想定されていたとは言え、最初は戦闘目的で開発されていなかった(束自身、そこは曖昧な表現にしているが…)ため、黒江が試しに撃ったライトニングプラズマにブルー・ティアーズのハイパーセンサーは対応できず、オーバーフローを起こしたという。
「それをどうやって克服させたの?」
「銀河連邦の技術を取り入れてアップデートしたとのことだ。私の機体はカノンがかさばるから、完全な形で使うことはファンサービス以外にないがな」
「持ってはいるんだ」
「ただ、バックアップとしてだが」
「私は射撃特化な上、接近戦に持ち込まれると為す術がないとされましたのよ?悔しいですわ」
「事実だろう。私のプリキュアとしての先輩である雪城ほのかのように格闘に長けているわけではないし、かと言って、オールラウンダーでもなかろう?」
「うぅ……」
ガビーンと落ち込むセシリア。彼女の特技は射撃だが、のび太やゴルゴ、圭子のように『銃で接近戦ができる』ほどではない、攻撃に法則性があるため、遠距離で封殺出来ない場合は突破される事が確実なため、ダイ・アナザー・デイに参加させなかったとマーチはいう。また、この時にセシリアの声色が雪城ほのかと似ている事が明確に示された。
「なら、特訓だな。最低、チンピラくらいは取り押さえられるくらいにならんといかんぞ」
「でも、ISを小型化させて生活させてるとは言え、データは取ってるんだよね?ラウラはどうしてるの?」
「まとまった時間が取れた時に仕事はしているさ。だが、言うまでもないが、今の本業はプリキュアだからな」
「プリキュアは多すぎでは?」
「平成の中頃から令和までの15年あまりで60人は生まれたからな。生年月日も初期は90年代前半だが、最近は2000年代半ばだからな。ジェネレーションギャップはやはりある」
なぎさ~北条響までは明確に90年代組だが、みゆきやマナからは2000年代初頭、野乃はな以降は2000年代半ばに入るなど、比較的にプリキュアは90年代以降生まれに幅広く分布している。同じ平成生まれでも、極初期世代は昭和の名残を多分に残す文化で育ったが、90年代以前の空気を知らない春野はるか以降のプリキュアは『もはや、ガラケー時代も終わっていた』後に思春期を迎えた世代になるので、そこがプリキュア間のジェネレーションギャップであった。(ガラケー全盛時代とスマホの登場に至る時代はのぞみ、ラブの現役時代と合致する)
「この時代だと、90年代始め生まれもアラサーになるからね。そのへんは仕方ないさ」
「うむ。そこが、な。それと、戦いへの考えも違うからな。代を経ると、だんだんと穏やかになってくる。そこが初期世代と後の代のジェネレーションギャップかもしれん」
プリキュアはだんだんと浄化をメインに打ち出す(つぼみの代でその芽はあったが)ようになるため、ある意味ではなぎさとほのかがメタ的に課せられた『願い』からは外れてきていると言える。ある意味、のぞみはその相克に苦しんだ前世を送ったと言える。
「世代が違うと、考えが違うものさ。ラウラの昔の戦友もそこに苦しんだ事を引きずってるかもしれないね」
「言えてるな」
どことなくだが、のぞみの前世の苦しみの心境に理解を示すシャル。ある意味、のぞみの闇を形作る苦しみは『本人よりも周りが気づくタイプ』の苦しみであるのだろう。
「さて…。本当ならお前らを実戦に出したいが、セシリア、お前がネックになったそうだ。」
「うぅ。接近戦はできなくはないのですが…」
「如何せん、接近戦の戦績が悪いのがな。一夏はあの一件から教官の信頼を損ねているからな。まず、この件には関われん。鈴は今、中国の要請でIS学園に戻っているから、お前らが呼ばれたが…」
「うぅ…。わかってますわ~…」
「生徒会長を呼ぶ案も出ていたが、あの人は立場が複雑だからな。だからこその次善策だったのだが」
「す、すみません……」
更識楯無の派遣も検討されたが、一夏の護衛という観点上、彼女を送るわけにもいかないため、セシリアとシャルが鈴との交代という形で派遣されたという。なお、キュアビートが千冬の同位体が転生を重ねた姿ということはこの時には既に知らされている。
「それに教官も大変だぞ。自分の同位体がプリキュアしているのだからな」
「それが一番驚いてたよ、先生」
「それもそうだ。自分の別の可能性がプリキュアだとは想像もつかんからな。口裏合わせに苦労しておられる」
「なんかシュールだよね」
「仕方あるまい。一夏が箒に連絡しようとしたから、ビートに一芝居打ってもらったのだ。教官の言うことでなければ、あいつは言うことを聞かないからな」
そのキュアビートも苦笑しているように、一夏への連絡は千冬を介してか、キュアビートが千冬として伝える手段が取られている。一夏は権威などで引き下がる性格ではないため、千冬が仲介する方法が取られたが、立場上、多忙であるため、彼女の同位体であるキュアビートが代行している時も多い。千冬本人は口裏合わせに苦労しているが、一夏が無用なトラブルを口で起こす可能性を考えれば、安い苦労である。仮面ライダーブラックRXに諌められたように、どえらい赤っ恥をかいた事を思えば。
「それに、ビートの持っていた記憶から得た情報だが、教官と一夏は姉弟関係というよりは同じ遺伝子配列で生み出されたデザインベイビーという方が正しいとの事だ。私の同類だよ。要するに」
「そ、そんな…」
「もっとも、これを言ったところで一夏は頑なに否定するだろうし、教官も公には認めん。他言無用な情報だが、あいつの生命力の理由が分かった」
「確かに…。ラウラはそれを?」
「前から気になっていたのでな。異世界に行けばわかると思ったが、ビンゴだった」
「なぜ、生徒会長の派遣が取りやめられたのですか」
「色々な兼ね合いだよ。一夏に妙な事をされても、こちらが困るからだ。唯でさえ、あいつは教官に失望されたショックで自暴自棄気味だからな」
「汚名返上に躍起に?」
「そうとっていいとの事だ。教官はキュアビートの一芝居を公認したように、しばらくは一夏を謹慎させたほうがいいと判断なされた。箒もそれは同意している。私のこの姿にも否定的だったからな…」
一夏はキュアマーチに再覚醒したラウラときまずくなるという大失敗も犯してしまい、今回の出来事では完全に蚊帳の外に置かれている。可哀想だが、ある意味では自業自得であるとしか言いようがない。
「どうして一夏はそこまで…」
「教官の生き方を追いかけることこそが一夏のアイデンティティなのだろう。だからこそ、自分が強くあろうとしているのだろうが、空回りしてばかりだ。考えようによっては、私達の世界では珍しいくらいの気骨ある男だが、普通は分を弁えずに粋がってると見られるからな」
一夏を客観的に分析していたキュアマーチ。直情的な性格であり、最近は何かと無用なトラブルを起こしてきた一夏は『交流には相応しくない』と千冬は判断し、楯無に護衛名目の監視を命じている。自らの同位体の転生たるキュアビート/黒川エレンの事は承知しているらしく、ビートが打った芝居に調子を合わせるなど、連携を取っている節がある。もっとも、自分よりも年上かつ、ウルトラ短気なガンクレイジーである圭子には玩具にされがちらしいが。
「どうして、私達の機体の改造を本国は?」
「旨味だよ。イギリスはお前の機体の兄弟機の存在を公的に抹消するしかない屈辱を味わったが、お前の機体の完成度を兄弟機以上に引き上げるという旨味をちらつかせられて飛びつき、フランスは第三世代機を作るようになるため、さ」
「政治的ですわね」
「ISが無敵ではないことは知れ渡ったが、私達の世界はIS主体に再構築されてしまっている。あのグレートマジンガーはあくまでも超テクノロジーの産物だが、ISの製造で構築された利権を脅かすに充分なインパクトを関係者には残したからな…」
ISも製造維持に利権が生まれた時代を迎えていたIS世界の『その種の関係者』はグレートマジンガーというスーパーロボットの存在に異常に怯えた。ISの地位を守ろうとした各国のその種の勢力は千冬に圧力をかけたが、千冬はそれをいい大義名分として逆に利用し、別世界へ代表候補性と箒を正式に送り込んだ。もっとも、千冬も自分の同位体がプリキュアである事、箒がオリンポス十二神の守護闘士に選ばれた事は彼女も予想外であったが。
「その動きを教官は上手く利用したというわけだが、自分の同位体の転生体がプリキュア戦士である事と箒の件は予想を超えていたわけだ。これが私達の身の回りで起こってきた出来事の流れだ」
「この街はどうなっていますの?」
「八神はやて女史の推測だが、その昔に天海大僧正が何らかの認識阻害結界を施した名残りとのことだ。その中心にこの街が位置しているから、さほど気にも留められんそうだ。三本毛のおばけが歩いていようが、パーマンが飛んでいようと、私達があれこれしようとも、な」
「すごくありません?それ……」
「魔術的には偉大な足跡だ。丁度いい。セシリア、お前。紅茶を切らしたとか言っていたろ?ひとっ飛びしてこい」
「えぇ!?今はストライク・ガンナー装備ですから、スピードは出ますけれど…」
「飛んでみればわかる」
「ああ、もう!!こうなったらヤケクソですわ~!」
ISは開発目的が宇宙開発であり、その都合で飛行がメイン機能であったので、その脚部は飛行機で言うランディングギア以上の役目は負わされていないため、見かけの割に自前の歩行能力は低かったが、23世紀の銀河連邦の技術で改良されたため、その種のネガは消えている。ブルーティアーズを動かしながら、半ばヤケクソ気味に部屋を出ていくセシリアの背中からは妙に哀愁が漂っていた。
「いいの?」
「実感しない事にはわからんからな、このたぐいの事は。あいつも気にしているのだ。自分ととても良く似た声のヒロインがいる上、私の先輩ということをな」
「セシリア、あの様子だと、相当に気にしてるみたいだね」
「ほのかさんは格闘の猛者だ。化学部のはずが、どこでどうなったと言わんばかりに強いからな。その転生の候補に挙げられたが、すぐに『可能性無し』とされたのはショックだろう」
セシリアは地味に自身が『雪城ほのかの転生体候補に挙げられていたが、すぐに候補から外された』事を気にしているらしい。シャルは同情しているようだ。
「でも、ISの装備なんて、どこで使うんだい?」
「この街には学園都市の再編であぶれたチンピラも集まり出している上、再編で職にあぶれた学園都市の暗部部隊の一派などが野盗化してきている。野比氏のご子息がバスジャックにあったのが良い証拠だ。今はプリキュア達の大半は現作戦に参加しているから、彼のご子息の安全は我々とみらいたちで守るしかない」
「なるほどね……」
「この時代になると、かの学園都市は再編されて、組織的に解体されたからな。それまでに何があったかは調査中だが、少なくとも、何かかしらの出来事は起こっていたと思われる」
「独立国同然とまで言われた地域が没落したことで、抑えこまれてた悪意が吹き出した。まるで、パンドラの箱だね」
「だが、希望も残った。能力者はたしかに残ったし、存在が公式に大っぴらにされたことで、23世紀の寛容性の遠因に繋がっている。だから、プリキュアの過去生を持ち、プリキュアに現役復帰した能力者もいる」
これは婚后光子のことだ。キュアダイヤモンド/菱川六花の転生であったため。記憶の覚醒で『菱川六花』として行動しているが、婚后光子としての能力が失われたわけではないので『レベル4の空力使い』であり続けている。(なお、外見上は現役当時の菱川六花になっているが、婚后光子としての実年齢はこの時代では、成人に達しているという)
「つまり、学園都市の政治的解体が23世紀の世界の日本の寛容性に?」
「うむ。スペースコロニー、それもサイド3の連中がそうした事に不寛容なのは皮肉なものだよ」
ニュータイプ能力の研究においては先駆者と言えるはずのサイド3などの反連邦派スペースノイドはひみつ道具時代の再来を目指す地球連邦政府を『怠惰』と断じ、ネオ・ジオンを間接的に支援する者が多い。この世論が前々から検討されていた『サイド3の移民団化』を決定づける一打となるのである。サイド3はいくつかのコロニーを残し、主要コロニーは移民用の巨大宇宙船に改造されつつある。表向きはサイド3全体の生命維持装置の取替と太陽光発電ミラーの張替えという名目だ。
「サイド3の主要コロニーは遠洋移民団として、地球を離れる計画だが、それを棄民と考えるネオ・ジオンの強硬派に嗅ぎつけられるわけにもいかん。それこそ第三次ネオ・ジオン戦争だ」
「そんな事、23世紀の人達は?」
「異星人との戦争が当たり前となった時代、誰も内ゲバじみた戦争など望んではいないが、ジオン派は宇宙大航海時代においては、遠からず尽きるだろう自分達の命運を憂い、『最後の一花』を咲かせようとしているのだ。地球連邦の中興を実現させる上では文字通りに避けられん戦だろう」
「滅びの美学…?」
「私ら21世紀の欧州人には理解し難いが、かのアドルフ・ヒトラーも取り憑かれていたとされているからな。ジオンはこの考えを国家と軍の美徳と考えている。ソ連の督戦隊まがいの部隊までいたという話だ。連中は旧枢軸国と共産国をMIXさせたような軍隊だったというからな…」
実際、ジオンのキシリア派はジョニー・ライデンなどの華々しく活躍した撃墜王をプロパガンダする一方で、旧ソ連まがいの督戦隊すら抱えていたため、ジオンは本質は『内ゲバしやすい』体質の国家なり組織であると言える。グレミー・トト派を粛清した末にダイクン派が主導権を握ったネオ・ジオンだが、旧ザビ派やグレミー派は絶えたたけではなく、それらの生き残りである強硬派がネオジオングを建造してしまうのだ。キュアマーチ(ラウラ)はそんなジオンの危険性を予期していたのかもしれない。また、完成しつつあったネオジオングは地球連邦軍がネオ・ジオン穏健派から交渉のキャステングボートを奪うための材料とされ、身内に梯子を外される形となったネオ・ジオン穏健派はかなりの妥協を強いられる。また、統合戦争の教訓で『技術封印は暗黙のルールで禁忌とされている』事はネオ・ジオン穏健派の躓きの第一歩であった。それもあって、交渉はかなり遅延するハメとなり、デザリアム戦役からの混乱もあり、フルサイコフレーム機の運用禁止はかなり有耶無耶にされたという。
「ラウラは彼らが?」
「ああ、連中は戦争を起こすつもりだ。ジークジオンを合言葉にする、正真正銘の『最後の戦争』をな」
キュアマーチもそう断言するが、ダイ・アナザー・デイ中には『ネオ・ジオンは三度目の蜂起を夢よもう一度、とばかりに起こすだろう』と地球連邦のかなりのレベルに既定路線と認識されていたのが分かる。シャアはそれを多少なりとも遅延させようとするが、アナハイム・エレクトロニクス・グラナダ工場の企業努力で軍備再建が進んでしまったため、シャアは仕方なく、蜂起の日程を決めることになるが、奇しくもデザリアム戦役の勃発でそれは有耶無耶となるが、結局はナイチンゲールを駆って、ネオ・ジオン総帥としての『最後の仕事』を始めたのだった。