ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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第十四話「十六夜リコの来訪と衝撃降下90度」

――基本的に、Gウィッチは対界~対軍級の能力を持つ者が魔力を得たケースも多く、歴代のプリキュアは対軍級に入る。シンフォギア装者は対軍級の力であるが、ポテンシャルが絶対的に聖衣や宝具には及ばない。そして、歴代のプリキュア最強フォームにも。歴代のプリキュアが通常フォームでも強化が重ねられた後のシンフォギアと同等以上に戦える理由を翼とマリアは測りかねていた。――

 

「何故、あの方達は私たちと互角に戦える。いくら、全平行世界の希望の戦士とは言え……」

 

「ええ。私たちのギアは相当に強化されてきている。それでも概ね互角に渡り合う。どういうことなの?」

 

訝しむマリアだが、その彼女らの前に一人の少女が現れた。それは。

 

「それはプリキュアのポテンシャルはシンフォギアで恒常的に引き出せるポテンシャルを上回るからよ、マリア姉さん」

 

「セレナ……!」

 

「何っ!?マリア、お前の妹は…確か」

 

「正確に言えば、私はセレナ・カデンツァヴナ・イヴの転生に当たる者です、風鳴翼さん」

 

「!?」

 

「私は十六夜リコ。魔法つかいプリキュアのキュアマジカルであり、セレナ・カデンツァヴナ・イヴの生まれ変わりです」

 

リコはそう言って、翼に会釈する。外見は現役時代の14歳当時のものだが、精神は成人後の状態なので、落ち着いた口調であり、セレナの面影を感じさせる、あどけない雰囲気を感じさせた。

 

「輪廻転生したというのか…!?フィーネのような仕掛けでもない限り…」

 

「輪廻転生は自然の摂理ですよ?ただし、英霊級の行為をした者の魂はその全てを保ったまま、新たな生を歩む事があるのです、翼さん」

 

「セレナ、調には?」

 

「月詠さんは私のこと知ってるよ。一緒に生活してるから。暁さんに会うために来たんだ」

 

マリアはリコがセレナの転生かつ記憶があることからか、リコの生活には干渉しないが、『セレナ』と呼び続けていた。リコもマリアの事を『姉さん』と呼び続けており、ソウルシスター的な関係になっている事が窺える。

 

「切歌、立花響の事があってからは意固地になってしまって。何故なのかしら」

 

「疎外感かも。あの子は綾香さんの入れ替わりからこの方、月詠さんが暁さんの百合じみた愛情を無条件で受け入れなくなって、綾香さんが戦士として生きる道を選んだように、あの子は騎士道精神を貫くことを選んだ。それに、月詠さんには『主を守れなかった』悔恨があるの。だから、暁さんとの共依存関係でいた自分の殻を破るために、のび太さんのところに行ったと思う。けして、見捨てたとかそういうものじゃないのだけど、綾香さんが入れ替わってた事を誤魔化されてた事、本人が帰ってきても、以前のような関係に戻れない事を受け入れられない。あの子がすべきことは前を向くことだと思う」

 

「君は戦士として、夢原女史の後輩だそうだが、なぜそのような事に?」

 

「その事は偶然の要素が大きいんですよ、翼さん。私は相方がいないと変身できないので、キュアマジカルとしての姿は見せられません。そのことはご了承くださるよう…」

 

「あいわかった。こちらも無理は言わんよ」

 

プリキュアは初代、スプラッシュスターを含む数代で『相方がいないと変身できない』要素が入る。魔法つかいプリキュアもそうで、プリキュアへの変身には、みらいとリコ、モフルンの三者が揃う必要がある。(フェリーチェのみ、単独変身が可能)その事を断りつつ、自分の輪廻転生を説明する十六夜リコ/セレナ・カデンツァヴナ・イヴ。

 

「立花はどうしても?」

 

「この戦いが終わらないことには小日向未来を呼べないでしょう?そこは諦めなさい。それに沖田総司も新選組の志を貫く事に一途な武士で、悪人ではない事はわかった。それだけでも収穫よ」

 

沖田総司(桜セイバー)は殺人マシーンと言える戦場での狂気性はあれど、普段は好人物である(怒ると、並半端な者では手がつけられなくなるが…)事は分かり、沖田も『響の人格を食らうつもりは毛頭ないですよ』と答え、一応の安全は約束された。他人の武士道や騎士道にも興味のない沖田ではあるが、新選組の誇りだけは貫くため、黒江が剣心のいる世界に行き、斎藤一や永倉新八からの伝言を伝えるという形で協力を取り付け、桜セイバーも『借り物の体ではありますが…』と断りつつ、戦闘に参加しだした。黒江の話術が桜セイバーを制御したのだ。

 

「綾香女史はどうやって、あの壬生の士を?」

 

「同じ隊士からの伝言を伝えたみたい。平行世界を行き交う事が容易だからこそ可能なことだけど」

 

「それはすごいな…」

 

「飛天御剣流の使い手はそれらを凌ぐというわ。それを自分で会得したエーリカ・ハルトマンはどんな才覚の持ち主というの…?」」

 

「ハルトマンさんは時代が時代なら、『剣聖』と讃えられるほどの才能がある。剣を用いた戦闘で、あの人と互角に渡り合えるのは限られてるわ」

 

「それほどの才能があるというのか…」

 

「ええ。プリキュアの中でも、彼女の剣を初見で見切れる者はいないでしょう」

 

リコは飛天御剣流を得たハルトマンの強さを『剣聖』に相応しいとし、歴代のプリキュアの全戦士を見回しても『初見では見切れない』と明言する。居合抜きなどで、黒江をも上回る速度であるからだろう。

 

「私達『Gウィッチ』の中でも、NO1を争えるでしょうね。智子さんは完全に超えてるそうですし」

 

「女史は知っておいでか?」

 

「模擬戦で十戦中八敗ですから、自覚はあるでしょう。あの人は慢心しがちなので…」

 

智子は剣技の才能はあるが、慢心しがちであるため、総合力では武子を若干超える程度。黒江には及ばない。その黒江で互角の戦績のハルトマンが異次元の剣技の持ち主であることが明確に示される。

 

「あの方が慢心とは?」

 

「智子さんは性格的に求道的ではないし、互角に戦える者は殆どいないので、自分の実力に満足してしまうんです。そこが難点でして。才能を伸ばす事にあまり興味がないのでしょう。綾香さんは求道的で、時々、僻地にこもるんですよ」

 

リコ曰く、『智子は今以上に剣の才能を伸ばす事にあまり興味がないが、黒江は僻地にこもって求道的に自分を鍛え続けるので、実力差は意外に開いている』との事。

 

「なるほどな」

 

「それに、響さんの一件以降に日本のネットギークからの中傷が増えたのは、たぶん、軍隊のブートキャンプ的思考が理解できないからでしょうね。ほら、フルメタル・ジャケットのあれじゃないけれど、軍隊ってのは兵士にするために新兵を罵倒して訓練を課す習慣があるんです。旧日本陸海軍でのシゴキもそうです」

 

「古い映画ね。昭和の頃の」

 

「ある意味、事実を描いてるよ、姉さん」

 

「気になっていたが、お前らはどこの出身だ?」

 

「祖父母と両親が旧ソ連のウクライナ出身で、あのチェルノブイリにいたのよ。祖父母と両親はその後のウクライナの領土問題や民族問題のゴタゴタで死に、私達は難民だった経験があるのよ。セレナにとっては遠い昔のことだけど」

 

「転生して、記憶が蘇ってからは表向き、ウクライナ出身で通してます。日本人の片親を持つっていうことで」

 

「そうか、あの…」

 

「だから、私達は核エネルギーについては思うところがあるのよ。野比のび太の世界ではタキオン粒子が取って代わるようだけどね」

 

チェルノブイリに自らとセレナの出自があることを明言するマリア。核エネルギーが最強のエネルギーだった時代に故郷を追われた祖父母と両親のこともあり、核エネルギーにはいい思いはないが、それに取って代わった波動エネルギーのことは受け入れたようだ。

 

「タキオン粒子?」

 

「SFで、よくガジェットに使われる『光速を超える粒子』よ。まさか、実在していたとはね」

 

「タキオン粒子砲は高出力のものなら、銀河をも余裕で叩き壊せるからね」

 

「野比のび太…、戻っていたの」

 

「北米の海軍工廠の強行偵察からね。リコちゃん、みゆきちゃんにこの写真を渡しといて」

 

「わかったわ」

 

「大人になると、そのような面構えになるのか、君は」

 

「童顔って言われますよ、よく。これでアラサーですよ、ハハハ」

 

青年のび太は少年時代の面影を残している。これが50代以降の壮年期以降になると、頭髪が年相応に後退し、面影が薄れてしまうので、アラサー当時までが少年時代の面影をもっとも保っていた。

 

「のび太、あなたは戦闘機の操縦も?」

 

「ガキの頃から慣れてたから」

 

マリアにはタメ口だが、翼には子供の頃に共闘しているため、敬語を用いるのび太。生年月日はのび太の方が先であるので、そのあたりは微妙であるらしいマリア。

 

「扶桑海軍は紫電改と烈風への切り替えに必死だよ。日本はジェット機に切り替えろっていうが、ジェット機の運用には相応の準備が必要だから、紫電改と烈風の普及が最重要になった。空母に載せるにも、日本のこの時代の時代の空母じゃ無理だしね」

 

日本が空母の運用を事実上再開するのは2020年代のことだが、加賀型相当の大きさのいずも型護衛艦で20機に満たない数(憲法との兼ね合いもあるが)しか運用できないため、大戦型のような30機以上の運用は超大型空母でないと不可能である。そこも空母が後方に置かれ、戦艦が弾除けに使われる運用方針の策定の理由だ。

 

「扶桑と日本はなぜ、揉めているのだ」

 

「史実の太平洋戦争の結果ですよ。日本が口を酸っぱくしてまくしたてる上、史実でやらかした軍人や官僚を粛清しまくってる。それに扶桑は反発してる。たぶん、史実で親英米派だったものしか中枢に残れないでしょうね」

 

「いくら史実で親独派が破滅を招いたとは言え、この世界にナチスはいないし、スターリンもいないのだぞ?何を恐れる」

 

「史実でもいる軍閥が国を支配しようとするって被害妄想ですよ。軍閥を解体して、既存の横のつながりを断って、組織を健全にしようってつもりなんでしょう。実際は横のつながりがある程度はないと、軍隊の円滑な運用は覚束ないんですけどね」

 

扶桑軍は『横のつながり』が絶たれ、相互幇助が覚束なくなることを恐れている。いくら昭和天皇が史実で軍閥を嫌っていたとは言え、横のつながりを完全に断ってしまうと、互いの兵科の交流に多大な齟齬が生じてしまう可能性が大きい。昭和天皇がY委員会を認めたのは、その悪影響を抑えるためである。

 

 

「君の世界の日本は神経過敏になっていないか?」

 

「恐怖でしょうね。僕も大人になってからわかりましたが、軍隊が暴走して、国そのものを滅ぼすことを異常に恐れている。だから、軍隊の首根っこを抑えて、限られた装備で最大の効果を出すように指導する。だから、最高練度の兵士を一纏めで運用する。64戦隊はそんな日本の指導の産物でもあるんですよ」

 

「綾香達はそれで苦労しているのね」

 

「そう。だから、私達プリキュアの手を借りてるの」

 

「貴方達は勢力として成り立つほどの人数なの?」

 

「令和以降は未知数だけど、平成の後半の15年だけでも60人を超えるの」

 

「多すぎじゃ?」

 

「毎年、三~四人のペースで増えていけばね。ただし、仮面ライダーほどは上下関係はないわ。彼らは体育会系だから」

 

仮面ライダー、とりわけ昭和仮面ライダーは大学の先輩後輩関係でもあることが多いため、野生児のアマゾン(山本大介)を除いて、基本的に厳しい上下関係の縦社会である。体育会系の部活を嗜んでいたりするため、リコはそんな昭和ライダーを体育会系と形容する。

 

「私達はどちらかと言うと、文系的ノリなんです。上下関係は必要最低限はあるけど」

 

プリキュアにも、なぎさ、ほのかを頂点にするヒエラルキーは一応あるが、仮面ライダーほど厳格ではない。ただし、現在では所属組織の都合で一応の序列は存在している。

 

「まぁ、みんな十歳から十六歳までの年齢で会うから、あまり意識しないんだよね、上下関係は」

 

現役時代は小学生であった者もいるため、プリキュアの年齢層は小学生から高校生程度までの少女である。それを翼とマリアに教えるリコ。二人はかなり微妙な顔を見せつつも、自分たちも装者になった年齢は十代前半から半ばの頃であるため、プリキュア達には親近感を抱くと同時に、『外見が年下なのに、正確に言えば、年上になるのはややこしい』と、自分らの生年月日がのぞみやラブよりも後である事に愚痴をこぼし、今はプリキュアとしての立場にあるセレナ(リコ)はかなりの苦笑混じりになりつつも、二人へ同情したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

――歴代のプリキュア達が相次いで軍籍を得た事はかなりの批判を招いたが、日本警察がヒーローやヒロインの戦闘行為の合法性についての議論を初めてしまい、結論が出ない有様であるため、身柄保護の観点もあり、歴代のプリキュアたちは素体が既に軍人である者に合わせる形で軍籍を与えられた。法的問題はこれでクリアされたわけだが、プリキュア達を一律で正式な軍人とした事に文句が出まくったのは言うまでもない。日本では、旧軍人へのマイナスイメージから、軍人は残虐なゴロツキのイメージが強いからだが、徴兵の兵や下士官と違い、将校として入隊した扱いなので、待遇は日本の大衆の抱くイメージよりずっといいのである。その分、求められるものは大きい。特に日本の一般大衆が求めるのは『指揮官先頭』の原則なので、高級将校(特に大尉~大佐)までに至る戦死率は高く、連合軍内部でも『指揮官戦闘』と揶揄されている。扶桑軍が困ったのは、少佐、もしくは大尉にまで昇進してきた中堅が使い物にならず、中佐以上になっていた者を現場復帰させてサボタージュをやめさせなければならないという問題で、ウィッチ兵科の中核となっていた層がサボタージュを起こすと、ウィッチ兵科はたちまちのうちに機能不全を起こすのだ――

 

 

 

 

 

――扶桑国内で急がれるクーデター計画は反G派が性急な改革を進める日本への不満のはけ口の側面もあり、横須賀航空隊、航空審査部など、Gウィッチの台頭で立場を失った部隊や部署の人員のみならず、面子を潰された軍需産業の技術者も少なからずがクーデターに加担する事になる。その中には黒江に『夢の結晶を否定された』テストパイロットの台場大尉と山越技師も含まれていた。クーデターでキ99の性能を実証して、台場大尉は散華するのである。ここで、キ99の諸元と経緯に触れよう。

 

※『キ99/試製高高度戦闘機』

 

――18気筒2列空冷星型エンジンをタンデム2基搭載、最高時速800km/h、最高高度12000m、二重反転プロペラ装備、排気タービン装備――

 

カタログスペックではレシプロの限界を極めている同機。パワーが有りすぎて、パワーダイブの時に強度限界を超える速度まで加速し、空中分解を引き起こすことが懸念された(黒江はレシプロ機の強度限界から、急降下でレシプロ機が音速を大きく超えるのは不可能と知っているために採用に反対した。わずかに超えた程度なら逸話が残る)、エンジンと機体製造に戦略物資を食いすぎること、専任の整備兵の育成が必要である点が黒江に指摘され、山越技師は面子を潰された。(彼が黒江と和解したのは、キ99の性能が台場大尉の死で実証された後のことだ)山越技師は所属の長島飛行機を去った後にクーデターに加担。台場大尉はキ99共々、クーデター軍のエースとして活躍する。それがキ99が放つ、ただ一回の輝きである。後に、黒江は日本の古い戦記漫画になぞらえて、『衝撃降下90度』とその出来事を伝えていく。日本の漫画が真になった事例の一つとして。

 

 

 

 

――キ99は戦時中でなければ、ジェット機の時代の足音が迫ってきた時代でなければ採用され、レシプロ時代の掉尾を飾ったかもしれない。その悲劇性、キ100の影でしかなかった生涯は後世に『悲運の名機』として語り継がれる。テストパイロットであった台場大尉は空中分解し始めた乗機のコクピットで満足そうに微笑みつつ、黒江らに敬礼しながら逝った。その目撃者となった黒江、のぞみ、シャーリー、調の四者は後に台場大尉の慰霊碑を立てる発起人となり、山越技師に『スポーツ機分野への技師としての復帰』を勧め、彼はジェット機の時代を迎えた後、キ99のレプリカを作成。日本の好事家向けのスポーツ機として人気を博すのだった。――

 

 

――クーデターの最中――

 

キ99は黒江達のVFに追従し、パワーダイブを敢行する。黒江は無線で呼びかけ、止めようとするが、台場大尉はそれを拒否し、『散華する事で、同じ皇軍の士に銃を向けたことへのお詫びとしたい』と広域無電で返し、死への衝撃降下を敢行した。

 

『止めてください、大尉!このままパワーダイブし続けたら機体が……!』

 

のぞみも錦として、台場大尉を止めようとする。錦は台場大尉に審査部時代に世話になっていたからだ。だが、台場大尉の意志は固かった。

 

『なんで、なんで、そう命を投げ捨てられるんだよ、大尉!』

 

『生き残ったところで、皇室に弓引いた叛逆者として処刑される。なら、俺の親友の夢を叶えて、戦死した兄貴や親父のところへ逝くのがおふくろへの禊となる』

 

台場大尉は戦死した父と兄のもとへ逝くことを禊とし、敢えて、ジェット機相手のパワーダイブを行った事を明言する。

 

『…山越の事を頼む。』

 

キ99は時速900キロを超えたあたりから空中分解の兆候が表れ出し、980キロに達したあたりで機体の潤滑油らしきものが吹き出し始め、ガタツキ始める。

 

『脱出しろ、大尉!』

 

『閣下、これは私なりのけじめでもあるのです。山越の願いを叶える一方で、おふくろを泣かすことへの。……俺が死ぬことで山越の夢は叶う。山越もそれを望んでいる。中島、この事を後世に伝えてくれ。俺たちの夢は徒花でなかったとな…。これは俺たちのけじめだ。理屈の問題じゃないんだよ』

 

大尉はそう言い残す。

 

 

『ああっ!』

 

その次の瞬間、調が悲鳴を挙げる。キ99が空中分解を始めたからだ。翼端フラッターが強くなり、潤滑油の機体からの噴出が起こり、補助翼は作動不良を起こす。そしてゆっくりと機体が分解していく。その瞬間の降下速度は1100キロに達する寸前であった。

 

 

――機体が完全に分解する時速1100キロに達する寸前に一同へ敬礼しつつ、微笑みを見せ、安らかに逝った。分解する一瞬、機体は音速を超え、衝撃波を周囲に散らす。

 

錦としてだが、一時とは言え、付き合いがあった記憶を持つのぞみはこの時、こみ上げる感情を顕にして、VFのコックピットの中で叫んだ――

 

『台場さぁぁぁ――ん!!』

 

台場大尉はこうして散華した。享年、25歳。乗機の性能を奮った後での自殺だが、黒江らの上申で戦死として処理され、彼の軍人としての名誉は保たれた。事後に山越技師への追求があまりされなかったのは、既にメーカーを去っていたこと、個人的信条の証明のために、制作した機体を提供したにすぎないとされたからだ。この出来事は黒江達に強く印象を残し、特に、台場大尉と『錦として』、64転属以前に面識があったのぞみは慰霊碑を建てる事を強く望み、クーデターの翌年の1947年にそれを成したという。

 

 

 

 

 

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