ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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四十七話の続編です。


第五十二話「次元震パニックその十一~1948年~」

――扶桑は国民の福利厚生費に資金を回さなければならなくなったため、軍備の整備が遅れてしまっていた。兵役につく者も色々な面で減り、軍部は人員の新陳代謝的意味で窮地に立たされた。また、学生の勤労動員も廃され、一気に生産ラインの近代化が進められたが、今度は機械を扱える技術者の育成が追いつかない上、勤労動員関連の法令が廃止されたことで、現在進行形で勤労する学生への手当等の支給や就職斡旋などの問題も各軍需産業にのしかかった。日本も軍人傷痍記章を持つ軍人、戦傷で退役した軍人(俗に言う傷痍軍人)の取り扱いに難儀し、最終的に『記章に伴う社会的優遇は制度としては廃止されるが、廃止までに恩恵を受けていた者は恩給、給金の加算は継続される。また、今後の戦役で傷痍軍人が生ずる場合、日本の恩給や遺族年金制度で対応する』という事で折り合いがつけられた。日本もこれ以上は扶桑の社会不安を煽るつもりはなかったからだ。単に軍人の社会的優遇を肯定する制度を廃するだけのつもりが、現地の社会不安を結果として煽ったのは不本意だったからで、その償いが『Gフォース』の指揮権の日本連邦軍本部の直轄化とGウィッチの特権の公認であった。64F隊長代理であった『八木大佐』はその施策に反発し、Gウィッチをこき使い、東京五輪出場者を含めて徹底的にいびったが、とうとうその報いを受ける日がやってきた――

 

 

 

 

八木大佐は公的にリベリオンからの宣戦布告がなされた後、南洋に上陸した敵の強行偵察を自ら指揮したが、敵が即座に整備した飛行場から発進した『P-47』の迎撃を受け、敢え無く戦死した。P-47の銃撃を防御できず、片腕を吹き飛ばされた挙句の果てに墜落死したのだ。この報に軍中央は震撼した。自分らの計画の露見を恐れたからだ。また、八木大佐の高慢な態度は隊内の不和を招き、黒江への計画の露見が心配されたため、二人目以降は信条はどうであれ、折衝能力に優れた佐官が派遣されるようになった。この頃は『冬季五輪の期間は休戦する』という珍妙な協定が結ばれたものの、彼女はめでたく(?)大戦の戦死第一号のウィッチと認定された。隊はこの報に大喜びだったが、『後任』の着任にげんなりしたのは言うまでもない。そんな状況下……。

 

 

 

――48年の初冬――

 

この時期になると、次元震パニックで新たに現れた『また別のシンフォギア装者』についても、ホテルで待機をさせる事になった。

 

「参ったわよ。また『姉さん』に説明が…」

 

この頃になると、魔法つかいプリキュアも活動を再開していたため、64Fの戦列に加わっていた。『装者』達は『今回』も黒江が第一発見者であった。今回は容姿を変えていたのが幸いし、出合い頭の戦闘は避けられた。だが、今回は既に『ダイ・アナザー・デイを戦った装者』がいるため、リコはまたも説明に追われていた。今回は『黒江が接触した世界』の装者達よりは『物分りがいい』ため、目立った反発はなかった。逆にウィッチのほうに手を焼いているのが現況だった。芳佳とリーネは前年に黒江と智子の同位体を一方的に責め、いざこざを起こしたため、坂本の要請で『顔を隠しての救難任務』に従事していた。これはホテルに軟禁状態にされた事での八つ当たりに近かったため、坂本Bも処理に難儀し、黒江Aに処理を頼む有様だった。前年に模擬戦をさせた結果、A世界の黒江達の強さを示し、レベルの差を思い知ったが、芳佳Bはなおも食い下がった。困った黒江Aは最後の手段として、複座型のドラケンに乗せて、さんざ振り回した。芳佳Bは更にクフィールTC10の複座型にも乗せられ、お互いのスピードの差を突きつけられた。A世界は既にジェット機の時代であり、時速600キロ台で高速扱いの時代ではないのだ。更に黒江は、ダメ押しとばかりに、当時に新進気鋭の隊員とされた服部静夏と雁渕ひかりにF-86Fストライカーを履かせ、芳佳BとリーネBで模擬戦をさせた。最初は紫電改ストライカーで芳佳Bは模擬戦に臨んだが、上昇力などで圧倒された。速度がシャーリー以上であるため、芳佳Bの見越し射撃が当たらないのだ。二度目は逆であったが、ジェットの反応、速度が紫電改より優れていたため、芳佳Bは振り回され、撃墜判定をもらった。

 

「大変だね、リコ」

 

「で、何してるの、綾香さん」

 

「芳佳ちゃんの同位体の教育。去年にいざこざ起こしたから、定期的に飛ばせてるんだって」

 

「へぇ。こっちの芳佳ちゃんはみゆきちゃんの転生でしょ?その割に食えない性格してない?」

 

「それは、別の子の割合が高いからだよ。みゆきちゃんの現役時代の頃の面影、殆どないからね」

 

みらいもこの頃には日本連邦空軍大尉の軍籍を取得しており、隊の中堅扱いであった。元から魔法つかいであるため、その気になればストライカーも履ける

 

「で、向こうのウィッチの子達、わたし達の事はわかってくれた?」

 

「仲間同士でいざこざ起こしたから大変よ。向こうの智子さんと綾香さんは『戦えない』のだけど、芳佳が坂本少佐を引き合いに出してね…」

 

「あの人の考えは極端だからねー」

 

坂本を引き合いに出し、芳佳Bは智子Bと黒江Bを責め、智子Bを泣かせてしまった。智子Bには戦える力は残っていないのに、ホテルでのほほんとしているだけだと責め立てるのはお門違いであるため、黒江Aはそこを怒る羽目になり、圭子が坂本Bと協議する羽目となった。B世界の坂本は来訪直後に烈風丸を没収されたが、それ以外はアニメ通りの経緯を辿っており、そこも坂本Aが言い聞かせる羽目になる点であった。また、智子が人形のモデルとなった前世代のエースである事も教える羽目となり、坂本Bは智子Aに詫びることになった。

 

「で、智子さんが人形のモデルになった人って教えたのだけど、芳佳、映画見てなくて、みっちゃんに電話して、教えてもらったのよ」

 

「智子さんも災難だね」

 

「で、本人同士もややこしいことに、こっちは現役バリバリでエースだから」

 

――体質の限界からウィッチとして飛べなくなる事は有る、だが航空ストライカーだけが飛ぶ方法じゃないし魔力も関係なく空で戦う勇士達も居る。戦場を飛ぶのは覚悟と努力と機会を掴む時の運を見逃さない目端の力だ――

 

坂本Aは駄々っ子のように周囲を振り回す事があるBより精神的に大人であるため、言い聞かせるような穏やかな声で芳佳Bを諌めた。また、智子Bも驚きだが、智子Aは水瓶座の黄金聖闘士であり、覚醒系の固有魔法も有する強大な戦士であるため、A世界では絶対的エースの一人である。Bの栄光が一時のものなのに対し、Aは揺るぎない力を持つ戦士であることは人形のモデルである事実と併せ、芳佳Bを驚かせ、坂本Bも腰を抜かした。

 

「え!?ど、どうしてそんな事になった!?お、お前、若い頃は……」

 

「神を超え、悪魔を倒すためにオリンポス十二神に仕えただけよ。スカウトの条件が良かったしね」

 

智子Aは水瓶座の黄金聖衣を纏う姿も披露し、オリンポス十二神に仕えたという一言に説得力を与えた。また、Bのスオムスでの活躍が秘匿されたのに対し、A世界では色々な理由で開示されていること、智子が501の幹部であるため、戦士としての強大さは微塵も衰えていない事もプロパガンダされているのも違いだ。

 

「若い頃は徹子に小馬鹿にされてたくせに」

 

「あの子、こっちじゃ万年三位よ。まっつぁんと義子が海軍出身のワンツーだし」

 

「何!?」

 

「よう。そっちじゃ変な刀作ったそうだな、貴様」

 

「よ、義子……?」

 

西沢はA世界では転生で同位体の要素が強まったため、元々の天然さは鳴りを潜め、その代わりに荒くれ者要素が増大している。海軍軍人としての最終階級は特務中尉だ。

 

「そっちのあたしは曹長のままらしーが、このあたしは特務中尉で、教官兼務の小隊長だ」

 

「お前が尉官?なんの冗談だ?」

 

「バカタレ、世界が違えば、事情もちげーんだよ」

 

「あ、穴拭…。コイツを特務にした阿呆はどいつだ!?」

 

「アンタねぇ…」

 

西沢はA世界では転生後、同位体の要素が強く出た事もあり、小隊程度の指揮能力を持ち、根っからのドッグファイターとして名を馳せ、黒江の腹心の一人でもある。若本は坂本の親友ポジションを奪ったとライバル視し、撃墜数を競っている仲である。

 

「バカ、この前に特務階級廃止で正規士官に任官したろーが。忘れたのか?」

 

「長年のクセでしてね、黒江さん」

 

「……」

 

敬語も用いるなど、B世界での西沢と似ても似つかない振る舞いである。子供っぽい振る舞いをするBと違い、Aは古武士的な雰囲気を持つ荒くれ者である。服装はセーラー服の上からフライトジャケットを羽織っており、バンカラ倶楽部に入っているとの事。

 

「美緒、貴様。何を固まってるんだ、えぇ?」

 

「……す、すまん、180°くらいキャラが違うから…」

 

坂本Bはこの有様であるが、西沢は扶桑空軍で十指に入る達人であり、この時には既にセブンセンシズに到達もしているなど、黒江の護衛に足る存在である。

 

「コイツ、天才肌でな。俺らと同じ領域に達しつつあるから、若本より今は上だろう」

 

「ま、黒田さんほどじゃないけど」

 

「ん?黒田って、506の黒田中尉か?」

 

「そうだ。俺の副官をさせてるが、こっちじゃ侯爵家の継承者で、俺と智子と同業者でもある」

 

「そういうことさ、坂本」

 

蠍座の黄金聖衣を纏った黒田も現れる。A世界では陸幼在籍中に引き抜かれたため、坂本より古株であるため、年齢は下だが、先輩である。

 

「こっちじゃ、黒田はお前の先輩だぞ」

 

「な、なにィ!?」

 

「うん。陸幼の時に引き抜かれたからね。色々あって爵位も継いだから、色々大変でさ」

 

「……」

 

「一応、その証拠」

 

「本当だ…」

 

事変後半時の写真も持ってきた黒田。A世界では黒江とバディを組んできたので、坂本より先任である。また……。

 

「こっちでのケイ先輩との写真もあるよ」

 

「加東か。こちらでは『桂子』だが、記憶ないんだ」

 

「お前、しばかれるぞ」

 

「うちの宮藤とリーネが泣いたからな…」

 

圭子は『転生』の際にB世界の自分を素体にしたために代替存在が生まれており、黒江の要素も持つ『桂子』という形になっていたため、圭子だけはよく似た別人で通じるのだ。

 

「なんなんだ、あの兵隊やくざは?宮藤とペリーヌが怯えたぞ」

 

「ケイは見たとおりだよ。あいつが従順なのは、まっつぁんと若さんにだけだ」

 

圭子は今回は素行がすこぶる不良であり、一時的におとなしい時は病気を本国で疑われ、42年以降に本領発揮すると、『猫かぶり』で済ませられるほどに『触らぬ神に祟りなし』状態であった。その割に北郷や江藤と数歳しか離れていないことから、江藤から『問題児』扱いされていたことすらあり、扶桑陸軍の狂気との渾名すら持っている。なお、自衛隊と共同任務が常態化した後は逆に人気者で、『レヴィ姐さん』と呼ばれている。別名義が本当に『レベッカ・リー』であるためだ。

 

「ったく、いちいち驚かれんじゃ、仕事になんねーっての」

 

「お、噂をすれば。驚け。この中華系リベリオン人っぽい女がケイのもう一つの姿だ」

 

「!?」

 

「なんだ、向こうのガキのほうの坂本と芳佳のガキじゃねーか。テメーら、ガキどもに自慢でもしてんのか?」

 

「事情説明だよ、アホ」

 

「向こうはマルセイユと面識がないから、肩透かし食らったぜ。その代わりに真美にキラキラな目で見られた」

 

「良かったな」

 

どう転んでも、真美に尊敬されるのが圭子だが、マルセイユと桂子は縁が無かったらしい。

 

「で、向こうの竹井にどう説明したんだ?キュアマーメイドのこと?」

 

「変身させて説明させた。もっとも、自分が変身したことより、錦の事が驚いたらしいがな」

 

「ま、実質は別人だし、立場が逆転してるからな、プリキュアとしては」

 

「ま、アルトリアさんよりは説明楽だったですよ、先輩。ハインリーケさんはカールスラントの王位継承権あるけど、アルトリアさんは円卓の騎士だし」

 

「ええ。クニカのおかげでなんとか…」

 

「お、アルトリア。お前も来たか」

 

「ハインリーケがパニックしましたが…なんとか」

 

アルトリアはハインリーケから受け継いだカールスラントの軍服姿である。肉体の関係で生前よりかなり背が高くなっている以外は概ねは生前の姿である。

 

「坂本、紹介しとく。アルトリア・H・P・Z・ザイン・ウィトゲンシュタイン中佐。ここでのハインリーケ少佐に当たる存在だ」

 

「よろしく、坂本少佐」

 

「こちらこそ。ところで、そちらでのペリーヌは退役したのか、黒江」

 

「色々な事情で予備役に退いた。紅城トワ大尉はさる侯爵家の令嬢にあたる、ペリーヌの後釜だ」

 

「リーネとルッキーニ、サーニャは?」

 

「リーネは司令部の特務に引き抜かれ、ルッキーニは長期休暇でぶらついてる。サーニャは軍を辞めてるぞ」

 

 

「サーニャが辞めただと?エイラがなんていうか」

 

「連絡は入れてるからって伝えておけ。補充要員は扶桑とカールスラントと他部隊の統合でまかなった。俺もそうだし、それに軍関係なしにイチャイチャできるって狂喜乱舞してるぜ?」

 

「呼んだかしら、綾香、それとアルトリア?」

 

「クロ、用事は済ませたのですか?」

 

「今しがた。向こうのエイラにあの子を紹介してきたわ」

 

クロがやってきた。中身は精神が大人になった後のルッキーニ当人だが、演技派であるので、まるっきり別人を演じてみせる。

 

「クロエ・フォン・アインツベルン大尉。フランチェスカ・ルッキーニ少尉の穴埋めって事でカールスラントから派遣されました」

 

「フォンということは…、君は貴族なのか?」

 

「ええ。ユンカーの出ですが、一応は」

 

クロは坂本Bを内心でからかいつつも、取り繕う。本当に爵位はカールスラント皇帝から与えられた物であるから、そこは嘘ではない。A世界では、本当にアインツベルンは伯爵家として存在しているからだ。

 

「家はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン…、私の親戚で、本家筋の最後の生き残りの子が継承しているので、皇帝陛下がお情けで爵位を授けてくれた身ですが」

 

(これはサーニャがイリヤスフィール・フォン・アインツベルンになりきるのに付き合うことにしたルッキーニのためにカールスラント皇帝が与えたもので、それらしい子爵位となっている。ちゃんと戸籍も用意させるあたり、カールスラント皇帝のナイスガイぶりが際立つ)

 

「とは言え、子爵だけど。あ、俺たちも戦功で爵位持ちだ」

 

「何、お前らは勲功華族なのか?」

 

「ああ。事情あって永世だがな。華族の新陳代謝のためって説得されてな、聖上に」

 

「お前ら、そんなに戦功立てたのか」

 

「ま、後で映像は用意させるよ。芳佳もここじゃ推されてるくらいにエースだ」

 

「え!?」

 

「お、始めて声だしたな、このガキ」

 

「い、いえ、なんだかすごすぎて…」

 

「無理もねぇか。向こうのミーナもこっちのジェット機に腰抜かしてたな、そういや」

 

「当たり前よ、ケイ。向こうの機体はまだシュワルベやエアラコメット、ミーティアのレベルよ?それが一気にセイバーやサンダーストリーク、ドラケンだもの」

 

「まぁ、地獄ですらぬるま湯と言われてる訓練受けてれば当然、と言っても、そんなにウチの訓練メニューキツかったっけ?」

 

「普通から見れば、ね。八木大佐も亡くなる前はドン引きしてたでしょ」

 

「次の奴は誰になるやら」

 

「少なくとも、事変の激戦期の経験がある者から選ぶでしょう。八木大佐は前半期しか知らなかったのがアレでしたし」

 

アルトリアもこれである。

 

「他所じゃ11Gの連続旋回なんか基礎空戦機動のトレーニングに入ってないってよ。ブリタニアの駐在武官と話しててビックリされたわ」

 

「マジかよ」

 

「グローリアスの連中もそこまでのハードな訓練はしてないって」

 

「女王陛下ご自慢の部隊も張子の虎に落ちたな」

 

「世代交代期だもの、本当は」

 

「お前らはどんな訓練をしとるのだ?」

 

「ジェット機の時代に相応しい訓練だ。ジェット機はレシプロの比じゃない荷重がかかるからな」

 

「ウルスラ中尉が腰を抜かしていたぞ。いくら二年以上の時間が経っているとは言え、胴体内蔵式が量産されていて、制空戦闘に供されるのか、と」

 

「ジェット機同士の空戦が起きれば、需要は興るもんだと伝えとけ」

 

「彼女が興味を惹かれていたぞ、あの三角形のような飛行機に」

 

「ダブルデルタ翼だよ、あれは」

 

「あれはこっちの最新鋭ですよ、坂本少佐。バルトランドの出ですが」

 

「何、あの北欧の?」

 

「局地戦連中の後継扱いだ。あれは邀撃機向けの機体でもあるからな」

 

ドラケンを独自に採用したことは日本連邦評議会で物議を醸したが、扶桑が求めたのは、乙戦の後継になるインターセプターなのだ。連合国体制でバルトランド(史実スウェーデン)のライセンスは問題ないし、キングス・ユニオンのバックアップを保証した事もあり、扶桑はインターセプターとして採用した。48年になると、元々の防空任務部隊の機材をF-104などと共に置き換える形で配備が進んでいる。特に配備が優先された南洋では、すっかり馴染みの機体である。日本連邦向けの改良も施されており、特に黒江が乗る『炎のたてがみのユニコーン』を尾翼に描く機体は人気があり、プロパガンダにも使用されている。

 

「まだ配備途中の機体だからな。運がいいぞ、お前ら」

 

「格納庫見たんですけど、なんか別の時代に来ちゃったみたいな…」

 

「的は射てるな。だが、戦争は急激に技術レベルを押し上げる。それはお前も知ってるだろ、宮藤?」

 

「は、はい」

 

「この世界はジェット機の揺籃期なんだ。色んな機体が短時間に生まれては消えていく。俺たちはそのテストも引き受けてるのさ」

 

「お前らのような古参がか?」

 

「閣下を見ろ、閣下を。俺たちはガランド閣下の薫陶を受けてるんでな」

 

「あの御方、新しいもの好きだからな。そうだ、ミーナが燃費を聞けと煩くてな」

 

「燃費か。ま、シュワルベが嘘みたいに良くなったぜ」

 

黒江はそう回答する。シュワルベは燃費が最悪で知られ、覚醒前のミーナも忌避感を見せた程であるからだ。2570リットルの機体タンクに300リットルの増槽を二個つけても、作戦行動半径は小さいものに留まるほどで、それから如何に後世のジェットエンジンの燃費が最初期から改善されたかが分かる。

 

「でも、なんで震電は造られなかったんですか?」

 

「あったにはあったが、もうジェット機の時代だったし、量産する価値に疑問符がついてた。その上、量産する予定の改良試作型が内乱で燃やされてな。残った機体を参考に新しく作ったから、まるっきり別物だ。だから、お前の機体にパーツをやれないんだ」

 

志賀大尉に贖罪意識を根付かせたのが『宮藤博士の遺した理論で造られたエンジンを積んだ試製震電が失われた』からだが、実際は改良試作機のほうが燃やされたのである。震電のレシプロとしての量産が頓挫したのは、震電用に試作し、採用予定の改良された魔力コンデンサとスターターが失われたからというのが本当のところだ。

 

「しかし、信じられんな。いくら敵が変わって、必要が生じたと言っても…」

 

「戦争はそういうものだよ、坂本」

 

「ええ。だから、貴方方は戦いに出させられないのですよ。お互いの速度も違えば、戦術も異なりますから」

 

「そう。仕事はこちらで回しますから、技能維持のための訓練は続けててください」

 

坂本Bもそれは納得済みの事項だ。芳佳Bはもの凄く複雑だが、圭子も言うように、自分は人同士の戦いには加わるつもりはないため、救難任務で当座を凌ぐことで自分を納得させた。Aが『プリキュア戦士』でもあるため、そこは割り切っているのと対照的に、Bはあくまで怪異を相手にしてきたウィッチであった差であろう。

 

「……私と同じか、それ以下の子も戦争に駆り出されてるのに……」

 

芳佳Bはそこがやりきれないらしいが、A世界での1948年も終わろうとしている時代では、芳佳も18歳を迎え、日本でも成人扱いされだす年齢に達しているのだが。

 

「宮藤、ここは3年後の世界だぞ。お前もその頃には18歳なんだぞ」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「状況の違いを理解しろ。ここはお前らから見れば『地獄』のような世界だ。お前らはそこの『お客様』だってことなんだよ」

 

芳佳Bはシュンと落ち込む。芳佳Bも流石に自分の出る幕がないことを突きつけられ、ストライカーも世代交代している上、戦いも様変わりしているからだろう。

 

「元々、他の世界を引き寄せ易い地球系列世界だから、時空間を飛び越える事故は起きやすいし、ウィッチはそれに巻き込まれ易い、過去の英雄が伝説を打ち立てた後の消息が知れなくなるとか多いのは、そういう事象に今回みたいに巻き込まれてるのかも知れんなぁ」

 

「お前、やけに詳しいな」

 

「つい二年前に自分が遭ったばかりだからな。お前らはこの世界の戦闘に参加したら、死ぬだけだ。ジェット機には誘導ミサイルがあるし、機銃も段違いの威力だ。それをねじ伏せるためには、それを超える必要があるのさ。その映像を見せよう」

 

黒江はダイ・アナザー・デイでの自分の映像を見せた。黒江お得意のライトニングプラズマであった。一秒間に億単位のパンチを繰り出し、副次的に発生させる雷と併せて相手を焼きつつ倒すこの技は歴代のプリキュアであろうと、防御すらほぼ不可能。最近の模擬戦では、キュアウィンディを一瞬でノックアウトし、キュアブライトを慄かせた。黄金聖闘士は『一人の戦士』として最高峰に近い戦闘能力を持つため、嫉妬も買いやすいのも事実だが。

 

「……なんですか、これ」

 

「一秒間に億単位のパンチを電撃と一緒に撃ってるだけだ」

 

「は…?」

 

「この方達は物理限界を振り切ってますから」

 

アルトリアも苦笑いである。とは言うものの……。

 

『束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるが良い!!エクス!!カリバァァ――!』

 

「なんですか、これ」

 

「見たとおりだ。ビームぶっぱ聖剣持ちのお前も大概だぞ?」

 

エクスカリバーは最近は黒江たちもホイホイ使うが、本家大元と言えるアルトリアも撃っているので、思わず言い返す。

 

「同じ()使う人が何を言いますか?」

 

「俺も聖剣持ちだから、いいだろー」

 

「自分で自分を大概の外認定ですか……タメイキ)」

 

「……今のは?」

 

「何って、約束された勝利の剣。アーサー王伝説知らんのか、お前」

 

「……いや、そうじゃなくて…」

 

「俺たち、普通にエクスカリバー持ってるから、ブリタニアの連中に勝手に血の涙流されるんだよ」

 

「お前、扶桑人なのに、なぜ持ってるんだ!?」

 

「オリンポス十二神からもらったから」

 

「……」

 

「それに、トワ大尉は燦然と輝く王剣を持ってるし、シュルシャガナもあるからな、ウチ」

 

「扶桑の宝具がないんだが……」

 

「オリンポス十二神が持ってるはずねーだろ」

 

「どうなっとるんだ」

 

坂本BはA世界では宝具も普通の道具感覚である事に驚く。

 

「娘が天叢雲剣授かる予定だが、遠い未来のことだしな」

 

「お前、子供を?」

 

「兄貴の孫を引き取るんだよ。俺は独身貴族だしな」

 

「お前は土方兵曹と結婚するからなぁ」

 

「ミーナへの説明は誰にさせた?」

 

「グンドュラとトゥルーデ。あの二人にさせた」

 

「まて、バルクホルンはいいが、グンドュラ?たちの悪いジョークはやめろ」

 

「ここだと、空軍中将に出世したが」

 

「あの悪童が?正気か?」

 

「本人が聞いたら、電撃地獄だぞ」

 

「大丈夫だ、もっとタチの悪い空自の古狸共に揉まれて、お巫山戯はオフにしかやらんようになったから。下原引き抜いた事のいいわけだが、『宮藤を入れるフラグ立てた引き換えと思え』だと」

 

「あの悪童め…。ミーナが蜂の巣にしたいとか」

 

「こっちではミーナのほうが大変だったがな」

 

「話は下原に聞いた。降格された後に戦車兵の資格を取った?こちらのあいつは信じなかったぞ」

 

「当たり前だ。こっちのミーナはパイロットもできる戦車兵に変わったしな。それに責任を取って、501の管理から手を引いたから、俺たちで回してたからな」

 

ミーナはA世界では西住まほ化した事もあり、責任を取って、管理業務からは手を引き、陸戦ストライカーのライセンスを取得、一戦士として、ダイ・アナザー・デイの後半を戦った。デザリアム戦役で少佐に戻ったが、隊長の職に戻らずに一士官であり続けている。

 

「ミーナが新しい専門生やしたおかげで統合任務部隊化出来たのは不幸中の幸いか」

 

「なぜ、お前らが指揮を?」

 

「先任だったし、俺らはこの世界だと将官になったからな。それとカールスラントと扶桑の政治的取引だ」

 

「どういうことだ?」

 

「ほれ、ブリタニアがやらかしただろ?あれで大和型戦艦をもう一隻造れるくらいの賠償問題になって、閣下が管理を引き継ぐのを申し出た。その時に俺らは赴任したんだが、その時にミーナがやらかしてな」

 

「やらかした?」

 

「あいつ、俺達の赴任を『飛べるエクスウィッチの管理官』の送り込みと勘違いしやがったのよな」

 

「あたしのことも見下してたし、もー最悪だったぜ。ほんで、まっつぁんが送り込まれたんだが、それでも言うことをなかなか聞かないから、西沢を呼んだり…」

 

「で、ついには雁渕まで呼ぶことになったタイミングで他の統合戦闘航空団と統合に変更だ」

 

「全くの遊兵になっちまいそうだったから訓練名目で飛んで戦闘に介入しまくってやったがな、やり過ぎてミーナをちっとばかり泣かしちまったがな」

 

「ものはついでだから、アフリカ戦線に負けて、行き場がないマルセイユも引き取ったから、オールスターな編成に」

 

「事情は聞いたが、よくそんな編成が…」

 

「前代未聞の事態なので、認められたんですよ。ですが、他の部隊の支援が殆ど受けられず、後で軍上層部が犯人探しに躍起になりまして」

 

「それほどの人材を集めればなぁ…」

 

「ミーナも考えようではかわいそうだぞ。扶桑のトップ10を集めても見下してたってんで、カールスラントと扶桑で外交問題に」

 

「馬鹿な、あいつは…」

 

「しょうがないから、機密扱いの俺らのスコアを開示して、当時の記録映像をパットン将軍がガランド閣下に流して、上映して、査問が二回も…」

 

黒江はある程度は誤魔化す。実際の理由の何割かが個人的な嫉妬心に由来するため、『ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ』の名誉に関わるからだ。

 

「一回は直接オレらに関係無いんだけど、部隊運営上ちょっと見過ごせない事をやっててな、坂本が上手いことやってたんだが、隊内規文書が上にバレてな…」

 

「整備兵のことか?」

 

「よくわかったな」

 

「こちらでも叱った事あるからな」

 

「あー、あの時のことですね、坂本さん」

 

「そうだ。そちらでは査問になったのか…」

 

「そうだ。それで錯乱しちまったんで、ケイが芳佳に命じて、隔離する羽目に。それで降格さ」

 

ミーナはそれで覚醒した。覚醒した後はダイ・アナザー・デイ中は運用責任者であったが、作戦後に辞し、黒江達に隊の管理を委ね、一士官として属し続けている。説明が難しいが、大まかな箇所のみを説明した。

 

「あ、謝っておくことがある」

 

「管野と中島のことだろ?」

 

「そうだ。醇子や下原とも話したが、あの二人は血の気が多くてな」

 

「若い頃の若本ほどじゃねーし、ガキの癇癪って思ってるよ。管野は孝美を俺らが三下扱いするのが気に入らなかったよーだが、実際、俺らからすりゃ、孝美はまだまだタマゴ野郎だからな」

 

「そちらの中島はどういうことだ、あれは?醇子に説明が…」

 

「あれはここのアイツ特有のもので、あいつの前世は全部の次元を守る戦士だった。その能力を使えるようになったからだ」

 

実際はのぞみが錦の肉体の意識を上書きする形で蘇り、デザリアム戦役後の時点では『Gウィッチとしての真なる覚醒』をマジンガーZEROとの同化でなし得た事で、黄金聖闘士に比肩する強さとなったのだが、黒江は事前に決めていた通りの説明をした。全てをいう必要はないからだ。

 

「ちょうど、そこにいる子達もそうだ」

 

「実は同席していたんですが、しゃべる機会がなくて」

 

「そ、そうか。ルッキーニやリーネくらいの歳に見えるが、君たちが?」

 

会釈をするみらいとリコ。話に混ざれないため、同席はしていたが、気づかれていなかったのである。

 

「朝日奈みらい大尉です」

 

「十六夜リコ中尉です」

 

一応の挨拶をする二人。見かけは現役当時とさほど変わりない。みらいのほうが階級が上なのは、『プリキュアの中心戦士は原則的に大尉とする』規定に基づくものだ。

 

「私より下…だよね…この子たち」

 

「バカモノ、お前より階級が上だぞ。挨拶くらいせんか」

 

「す、すみません」

 

芳佳Bは坂本Bに言われ、慌てて挨拶する。芳佳Bはロマーニャ戦役当時は軍曹のままだからだ。

 

「先輩、模擬戦終えてきました~」

 

「お、来たか」

 

「皆さん、お揃いで…あれ、向こうの芳佳と坂本先輩?」

 

「話してたところだ」

 

「ドリーム、誰と模擬戦してたの?」

 

「ブライト。同じ精霊の力を使えるから、教えてもらうついでに、ちょっとガチンコしてきたよ」

 

「結果は?」

 

「ドローだね」

 

「お前ら、音速で戦ったのか?」

 

「空中でやりました。殴り合いになったんで…」

 

「うわぁ。ガチだね…」

 

「私の世代はガチの殴り合いしてたからね」

 

と、何気に模擬戦と言う割にガチンコ勝負になってしまう新旧主人公対決に苦笑いのみらい。

 

「それでどうだった?」

 

「クロスカウンターでダブルノックダウンです。光弾使いだから、舐めてかかったら、ガチンコに」

 

「あほ、咲はなぎさより洗練された戦法取ってるぞ」

 

日向咲はなぎさのコンパチなどと言われるが、戦法はケンカ殺法ななぎさより洗練されているものであり、のぞみと殴り合いを充分にこなせる技量がある。なぎさがパワーなら、咲はテクニックタイプである。

 

「咲さん、まさか正規の戦闘訓練積んでるあたしとやりあえるなんて~…。誤算でしたよ」

 

「ラスボス相手に四人がかりでとは言え、ガチンコしてるんだぞ、あいつら。侮りすぎだ」

 

「左のレバーブロウに脾臓打ちで合わせられて悶絶させられました…くぅ。オールスターズの時は目立たないのになぁ、咲さん」

 

「それ言ったら、怒られるぞ」

 

黒江も呆れるが、内容からはかなり本気を出したらしく、ウェンディが止める間もなく、殴り合いをしたことが窺えた。

 

「たぶん、咲さんも同じこと言ってると思いますよ。でも、今のあたしについて来れるのは予想外だったなぁ」

 

「精霊の力を最大にしたんだろう。向こうからすれば、お前のほうが怖かったと思うぜ」

 

「ウェンディが固まってましたしね」

 

「ピーチが今度、力の使い方を聞きたいって言ってます。でも、せつなちゃん、どこでサンダークロウなんて」

 

「あいつ、シャイナさんと関係あるのかもな。そうでないと、サンダークロウは撃てん」

 

圭子もそこは不思議であるらしい。キュアパッション/東せつなはなぜか、蛇遣い座のシャイナの闘技『サンダークロウ』が使えるようになっているのだ。パッションが現れた最初の時にとっさに撃ったが、シャイナを知る者はその技に驚愕したのはいうまでもない。

 

「たぶん。この分だと、奏ちゃんもイーグルトゥフラッシュが」

 

「白銀最高レベルの能力だから、マッハ五か。初代の現役当時より強くなってるぞ…」

 

「たぶん。腰抜かすだろうなぁ、あの三人」

 

これは多分に推測も入っているが、少なくともキュアパッションについては完全に白銀聖闘士最高位レベルの強さである事は『サンダークロウ』の存在で確定している。これについてラブは「えぇ~!?」とのコメントである。ただし、魔鈴の要素を受け継いでいたのは、キュアベリーのほうであると後に確定し、ラブはどっちみち腰を抜かす羽目になるのだが。

 

「なぎささん、どう思うかな…」

 

「わからないね。ただ、少なくとも現役当時のなぎささんなら余裕でワンパンできるからね、わたしたち」

 

「先輩も二年前の時の事件の時になぎささんは『ライトニングプラズマ』が見えなかったって言ってるから、間違いないね」

 

「その時にその世界のつぼみが凄く悔しそうだったんだよ。ま、あいつはあんまり強くないからなぁ」

 

「つぼみちゃんの強さは並の下くらいですからね」

 

アリシア・テスタロッサに転生した花咲つぼみもあまり強いプリキュアではないため、キュアブロッサムは頭脳労働担当に近いと言えるが、その戦いでは自分の弱さに思い悩んでいたのを思い出した黒江。

 

「でも、機転と不屈の心持っているいい戦士には違いないですよ」

 

みらいがフォローする。その戦いでは最終的に全力を出したため、プリキュア達に正体バレした後に質問攻めにあった黒江。もっとも、それよりもフェリーチェなどの正体に質問が多かったが。

 

「あ、あのー、あなた達、私と歳、そんなに違わないですよね?」

 

「それがそうでないんだ、芳佳。あたしもみらいちゃんもハタチ超えなんだ」

 

「えぇぇ――ッ!?嘘ぉ!?」

 

みらいは一見して短いような肉体再生の期間も、マジンガーZEROから逃れるために、時たま再生中の機材を別次元に移し、ゆっくりと再生させた都合の換算、のぞみは錦の戸籍を流用した関係で、戸籍年齢は48年時点では21歳になろうかという頃だ。

 

 

「治療で5年くらい意識無かったりしたけどね」

 

「あたしは転生した時に、肉体の戸籍年齢は17だったから、もうすぐ21だよ」

 

「黒江さん、肉体は十代半ばのままだけど、戸籍上は二十代後半だっけ?」

 

「み、みらい、お前、そこは…」

 

「けっ。あたしなんざ、アラサーだぞ、アラサー。来年で三十路だぞ」

 

圭子も混ざるため、芳佳Bは呆気にとられてしまう。戸籍年齢が凄いことになっている一同勢揃いだからだ。もっとも、圭子は実家の命令でお見合いを繰り返す羽目になっているために嫌気が差しているのだが。

 

「お前たち、どうなっとるんだ…」

 

「あなた達の考えてる摂理をとうに超えてるだけですよ、坂本先輩」

 

キュアドリームがそう締めくくるが、あまりに凄すぎて何もコメントできない坂本Bであった。

 

 

 

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