ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

142 / 826
前回の続きです。


第三百八話「ダイ・アナザー・デイの戦い 35」

シンフォギアであろうと、ISであろうと、プリキュアであろうと、ティターンズ残党の幹部は無傷に等しい差で退けた。それは極限まで鍛え上げた肉体を基本に、さらにジオンで最初期に行われていた身体強化措置を受けていた者もいる上、実は神闘士や海闘士であった者さえおり、もはや、64Fでなければ、太刀打ちできぬ有様であった。その64Fも戦力を一箇所に集中できぬ事情があるので、ダイ・アナザー・デイの不気味な均衡状態はしばらく続くことになった。さらに、問題になったのが、連合軍の機甲戦力があまりに微小なことであった。五式中戦車改とM4シャーマンがあればいい方で、ひどいと、戦間期以下の水準であった。この有様に、連合軍統合参謀本部は無能と糾弾されたのだが……。

 

 

 

 

「仕方がないだろ、カールスラント陸軍が霧散しちゃったんだから!!」

 

カールスラント軍が本来の主力であったため、他国は戦力供出に興味がなかったが、あまりの急転直下により、結局は温存していた主力を出征させざるを得なくなっていた。扶桑陸軍は本来、軍全体の機械化に興味の薄い軍隊であったが、44年以来の流れにより、機械化を進めるしか手段が無くなり、やむなく進めていた。その試金石がさっそく訪れてしまい、やむなく、戦車師団を複数出征させた。だが、規格の相次ぐ変更などが災いし、補給に支障をきたす始末。そこで、カールスラント軍が退去した際に遺棄した兵器群が再利用される事になった。このことで脚光を浴び、日本連邦の自動工場で増産された兵器も多かった。さらに、文化財関連のことで、有能な将校を理不尽に奪われた連合軍はその穴埋めを迫った。彼らの言い分は『この世界に存在していない論理で断罪した挙句に、家族までも巻き込むのか!?』というもので、至極当然であったが、日本はカールスラントを徹底的に断罪した。その結果、国家自体が崩壊状態に陥り、日本連邦軍の部内もガタガタになったため、カールスラントの元軍人を大量に登用せざるを得なかった。特に参謀や熟練の下士官などが空洞化したのは致命的ですらあり、結局、扶桑軍の統制も怪しくなったため、カールスラント軍を追い出された者たちを大量に登用した日本連邦。部隊や装備ごとのマフィア化を警戒したからで、実際、数割は装備ごとマフィアに落ちてしまう有様であったことから、『下手にクビにしたら、犯罪者の巣窟になる』と恐れられたので、アジア流の『僻地で飼い殺しにする』方法が取られるようになっていく。日本警察は『逆らいそうな軍人などは拷問で潰しておけばいい』と宣ったが、冤罪も多かった上、その後の暮らしに重大な支障が生ずるほどの後遺症が残った例が報じられては困るため、政府の指令で、軍病院の拡充が図られ、隔離病棟に死ぬまで隔離するという隠蔽工作も行われた。日本政府には不都合な事実だからで、日本連邦もけして清廉潔白ではなかったりする。これは戦後日本の『軍人蔑視』が最悪の方向で表れた事例で、これはのぞみの一件で、追求が止まるまで続くのである。日本警察のこうした、軍人蔑視の傾向は部内(若手ら)でも問題視されていたのだが、上層部は連合軍からの正式な抗議が来るまでは『たかをくくっていた』節があり、かの正木俊介を敵視していた派閥出身の者が中枢にいたため、一笑に付していた。だが、山下奉文大将や鈴木貫太郎、岡田啓介の元首相クラスが来訪するに至り、事の重大さを悟った政府は警察庁長官を叱責するが、その矢先に『のぞみの一件』が報じられ、政府を顔面蒼白に陥らせる。それは見境なく、中堅層の軍人を『潰した』報いでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうした流れは一部の日本人が引き起こしていたため、現場の扶桑人は知る由もなかった。ダイ・アナザー・デイをどうやって勝つか。それが先決だったからだ。特に、いくら核融合炉による大パワーがあるとはいえ、本気で地上空母を作ってくるとは思っても見なかったからだ。殆ど移動しないとはいえ、第四世代機以降の高性能ジェット機を搭載していると思われるからで、連合軍の航空戦力は良くても、第一世代ジェット機だからで、空母の制圧が目指された。しかし、南斗六聖拳が思わぬ壁として立ちふさがり、歴代プリキュアすらも敗退に追いやっていった。そして、シンフォギア装者やIS操縦者も苦なく退けるに至った。さらにクライシス帝国の暗躍。連合軍はその対応に追われていた。

 

 

 

 

「あいつもやられたか。当分は迂闊に行動を起こせんな……」

 

「どうする?連中の艦載機如何じゃ、連合軍の航空戦力が一発で蹂躙されるよ」

 

「玲のコスモタイガー隊に小手調べさせる。負傷者の負傷が治らんと、こっちは組織立って動けん。俺達でも、南斗六聖拳クラスの使い手は油断ならん相手だし、聖闘士に類する連中がいたら、ガキ共だけで行かせたら、全滅しちまうしな。現役時代通りの能力では、通じないってことだな」

 

「現状、戦力にカウントできそうなのは少ないね」

 

「仕方あるまい。プリキュアは、ほぼ全員が喧嘩殺法のド素人だ。現役時代から連れてきた子もいるから、連中にとっちゃ、ケツの青いガキに過ぎん。文字通りにな」

 

プリキュアは良くも悪くも、格闘技の経験もない者が多い。逆に言えば、そこから、一年で経験者並みの動きを身につけるのは凄いが、極めたプロの前には、素人と大差ない程度の範囲である。この差はそう簡単には埋められない。必ずしも倒す必要はないが、まともに戦えないのでは、話にならない。ましてや、闘気などを用い、普通の物理法則を無視してくる相手なのだ。

 

「今は有望なヤツを重点的に鍛えるしかないな。時間もないし」

 

「全員が戦闘向けでもないしなぁ。はーちゃんから聞いたけど」

 

「戦闘向けの世代を重点的に鍛えるしかないな。ましてや、ジオン残党並に妄執に取り憑かれてる連中だ。浄化技は効かんだろう。シャアが物見遊山で来たそうだが、ヤツが介入したら、アムロさんとカミーユさんでないと、止められん。騎士王のエクスカリバーを無効化できた以上、プリキュアの合体技もものともしないだろう。サイコフレームがなくとも、ガンダリウム合金に通じるとも思えんが……」

 

サイコフレームは後に、黒江たちも利用するが、この時はシャア・アズナブルが用いた。また、ガンダリウムγ合金は『旧式になった』と揶揄されるこの頃でも、物理強度自体は『プリキュアの合体技に耐える』ほどのものであることが明言される。

 

「まいったね。プリキュアたちの技の物理的破壊力は上限がある。それに、今回のような純粋な悪人たちには効かない」

 

「それが問題だ。そうなると、身体能力だけでドンパチさせるしかなくなる」

 

のび太も悩むが、この時、プリキュアの範疇を超えた破壊力を発揮し得る者は一人のみ。他は現役時代と同じ能力でしかない。さらに言えば、敵は妄執に囚われし残党軍や、異世界の悪どい帝国主義国家。つまり、純粋な悪人としか言いようがない連中である。

 

「プリキュアたちは、敵の残酷さを知らないからね。最も、南斗聖拳のスプラッタぶりに吐きそうになったのも多いと思う」

 

「人体程度は、軽くぶった斬れるからな。下手なプリキュアをぶつけられんよ」

 

南斗聖拳の攻撃は人体程度は軽く斬り裂ける。それを考えれば、プリキュアを考えなしにぶつけられない。それがのび太と黒江の結論であった。この後、プリキュアたちに特訓が順次、課されていくことになるが、それで『遥かなる前世』の記憶が蘇り、現役時代を超えた力を手に入れるケースも生じてくるのである。

 

「昔、ドラえもんがネズミにおやつ食われた時さ、『ネズミなんざ人間じゃねぇ!!叩っ斬ったる!!』ってヒス起こしたことあるんだ。あの勢いがあればねぇ」

 

「どこの時代劇だよ、まったく。相当古いぜ?お前ら、変に博識だよなぁ」

 

と、のび太とドラえもんの妙な博識さに呆れる黒江。これは玉子が割に時代劇を好んで見ていたためで、大江戸捜査網、桃太郎侍、破れ傘刀舟悪人狩り、暴れん坊将軍などのぶった斬り系であり、ドラえもん、のび太、調、ことははその影響を受けていた。

 

「とはいえ、名刀電光丸の在庫はそんなないんだろ?まったく」

 

「DX版は二振りしか買ってないからね。普通のは護身用の域を出ない性能なんだ」

 

電光丸は大抵の相手に勝てる性能のコンピュータを積まれていたが、ミノフスキー粒子散布下での性能低下を免れるほどの防護機能はついていない。そのため、暴徒鎮圧用に作られていた上位版を用意したが、ドラえもんの蓄えでは、二振りしか買えなかったのである。

 

「ドラえもんの奴め、もっと電光丸を買えよ」

 

「あいつ、蓄えの半分はどらやきに消えるのよ。ぼくが無理言って、買わせたけどさ」

 

大人のび太が買わせたが、名刀電光丸は高めの値段らしく、そのDX版は『おこづかいの数ヶ月』分らしく、相当に渋ったが、野比財団の資金で買わせるという裏技を使ったと、のび太は言う。

 

「で、ドラえもんは?」

 

「のぞみちゃんに、ガンダムの性能諸元を説明してる」

 

「魔女のガキ共は乗り物が苦手なことも多いが、あいつが使えるのは僥倖だ。車さえ動かせんからなぁ、ひどいと」

 

魔女が嫌われるようになったのは、通常兵器の操縦要員などに転向することが少なく、すぐにモデルや俳優に転向してしまうところがネガティブに捉えられてしまう時代を迎えてしまったからである。世界の覇権を握るのが、戦時は『大衆娯楽』を軽んじる傾向の強い扶桑皇国なのも、魔女の役目を終えた者らには不幸であった。結局、R化措置をしない者は『軍に籍だけでも残しておかないと、戦時下では、世間から後ろ指をさされる』という状況に追いやられてしまう事になるわけで、扶桑が覇権を握るのを良しとしない風潮もあったが、他国にはその余裕はなく、扶桑が覇権を握るのは規定事項となっていった。他国は『娯楽を軽視するな』と圧力をかけるしかなく、扶桑は『どないしろっつーねん!!』と国際会議の場でヒステリーを外交官が起こす醜態を見せるなど、周りに振り回されまくった。この時代に『軍人は割に合わぬ仕事だ』という認識が扶桑人に浸透してしまい、軍は1947年以降、慢性的にどの分野でも人手不足に陥る。その兼ね合いで、64Fのような精鋭部隊が社会的に許容され、軍需を満たすための工廠の維持が決まるのである。

 

 

 

「そんなに?」

 

「芳佳なんて、普通の銃の扱いもできんかったしな。覚醒でそうじゃなくなって、ほっとしてるよ。問題はプリキュアたちに持たせる銃だよ。南部十四年式や九四式。旧軍式の拳銃を持たせたら、逆に人命軽視ってクレームが来ちまう」

 

九四式拳銃が日本の意向で回収されたため、結局、将校クラスはSIGやベレッタなどの外国産拳銃を現地購入することが流行った。64FはSIGやベレッタの使用率が高かったが、米軍と自衛隊で採用されていたからである。私物を廃する意向であったが、千万近い人数の扶桑軍人から拳銃をすべて回収する事は机上の空論であったし、将校の装備品は私的に調達すべきという規則であった。困った日本は『将校は自主的に外国の自動拳銃を購入すべし』という通達を発した。軍内の『国産拳銃に統一しよう』という声を抹殺する形になるが、九四式拳銃の『欠陥』から、使用禁止と回収を強引に行ったが、扶桑は将校の拳銃は官給品の支給を行っていなかったため、大問題となった。結局、SIGのP220を1946年以降に支給すること、45年8月以前に少尉以上の階級であれば、私物の使用をそのまま許可することが認可された。ダイ・アナザー・デイの混乱はこれで、日本は慌てて、自衛隊の余剰品の放出をしようとしたが、自衛隊には在庫品の余裕はなく、結局は外国産拳銃の新規購入を大量に行う羽目になった。こうして、扶桑軍は拳銃の完全国産化の思惑を潰される羽目となったわけである。

 

「ブローニングハイパワーにしたら?ガバメントはこの時代の子らにはデカいし」

 

「それはそうなんだが、この時代にデザートイーグルやオートマグがあるかよって、日本の官僚に文句言ったぜ。44マグナムも、開発は戦後だ。俺らはお前らのツテで持ててるだけで……」

 

「日本の官僚は軍事に無関心だから。戦後式もたせりゃいいって思ってんのさ。民間の銃規制を強くかけるつもりだったし」

 

「それで、扶桑の退役軍人に狩猟免許与えて、熊を狩ってもらおうってか。虫の良いことで」」

 

「怪異や害獣対策を組織立って取れるわけでもないし、熊やイノシシを退治するだけで、歩兵連隊を出させるわけにもいかんでしょ。それで、日本警察は困ってるそうだ。日本も、学園都市の解体で、その周りの治安が悪化してるからね。倅が直に幼稚園(当時)だけど、心配でね」

 

のび太の子であるノビスケはダイ・アナザー・デイの終了から程なくして、幼稚園バスごと誘拐される事件に巻き込まれてしまう。それをルージュ、マーチ、フェリーチェの三人が解決する。その事件は町内では有名だが、警察本部はまともに顧みなかった。それがのぞみの一件の厚生労働省や文部科学省の失態に繋がるのである。一連の騒動で、日本は複数の官庁で粛清人事の嵐が吹き荒れる事になり、扶桑への介入への興味を無くしていく。だが、必要上、『指導』や『協議』はしなければならず、警察から防衛省に出向する者は『扶桑が絡む案件』に関わる事を自然と避けるようになったという。結局、扶桑も予備役制度をガタガタにされるため、のぞみと同時期に予備役編入願いを出した者たちを『召集継続』の扱いにするしかなくなる。また、この時期に海保が(よりによって最高責任者が)問題を起こしてしまい、日本政府は(負けた後で発展できた故の)揉め事を官庁が勝手に起こすのに悩まされるが、それは一連の流れの序章に過ぎなかった。連合艦隊が独自の作戦遂行能力を行使できたのは、ダイ・アナザー・デイが最後となる。これ以降は日本の失策で、空母機動部隊が形骸化。それを理由に、現存艦隊主義に走るからである。

 

「日本は扶桑をどうしたいんだ?」

 

「今の規模の軍隊と内務省の分割解体だろうけど、内政干渉になるから、実現性のある『軍隊の大幅軍縮』をさせようと躍起になるだろうね。太平洋戦争が起きれば、そんなの言ってられなくなるのに」

 

「分かってんのかね」

 

「分かっちゃいないよ。太平洋戦争の後、朝鮮戦争が起きた理由もね。特に、日本の政治家はその場凌ぎで適当なことを言うからね。だから、この世界も冷戦は来るよ。完全決着は日本の望むことじゃないからね。」

 

「めんどいことを」

 

「今の自由リベリオンの首脳陣は生きてるうちに母国の土は踏めないと思うよ。史実通りになるのをティターンズ残党が狙ってるとしたら、東西冷戦の終わりは1991年になるし」

 

「やれやれ。アメリカ役を演じろってか。それでいて、アメリカ文化を享受させろって……」

 

「軍部と華族さえ無くなれば、国が栄えるって思ってるのは、アホの考えさ。華族にも生活はあるし、警察は他国の正規軍とのぶつかり合いは想定外だ。だから、扶桑軍を自衛隊の一部にして、言い訳代わりに、海上自衛隊より多少大きい艦隊を置けばいいと思ってるのさ。独自防衛力を認めるって体裁でね。だから、今回(ダイ・アナザー・デイ)の抗議は想定外なのさ。だから、ブリタニア陸軍の主力を溶かせろって流れになったのさ。自分たちの無理な要請のせいで、ヒスパニア(スペイン)とロマーニャ(南イタリア)の陸軍主力を全滅させてるってのに。地球連邦軍が来なけりゃ、欧州全土がM26に蹂躙されてるよ。ティターンズも、日本がそこまで無能だとは思わなかっただろう」

 

結局、日本が連合軍に強く出られなくなったのは、スペインとイタリア。1940年代時点での中堅国と言える両国の陸軍主力をむざむざと全滅させたからである。ロマーニャ陸軍の主力戦車はそもそもが、1945年時点で時代遅れのM13/40で、それすら出回る数が少ないという有様だった。さらに言えば、数が最も多いのがL3/33。大戦末期の時点で既に陳腐化済みの豆戦車であった。これでは、史実のドイツ機甲部隊を想定して整備された『M26パーシング』や『M36ジャクソン』や『M24チャーフィー』を要するリベリオン合衆国軍に蹂躙されるのは自明の理であった。この格差はどうしようもなく、ロマーニャ陸軍は瞬く間に、組織的抵抗力を喪失した。日本の官庁も連合軍からの抗議は想定外であった。通常兵器の発達が遅れた世界線故に、イタリア最強のP26/40重戦車は試作途上であった。故に、地球連邦軍のMSはロマーニャ地域からの投入となった。連邦軍から提供された『米軍の進撃の横で、無惨な屍を晒す、時代遅れのイタリア軍機甲部隊』の写真は日本の失策をまざまざと示していた。結局、カールスラント軍の霧散で、矢面に立たされた扶桑陸軍は機甲部隊を急いで刷新せねばならず、四式中戦車すら『時代遅れ』とされてしまう現状に絶句。こうして、魔女の世界でも、主力戦車の主砲口径は90ミリ~120ミリの時代へ突入してしまったのである。

 

 

 

「まったく。イタリア軍の戦車があんな時代遅れの代物だって知らなかったんだから、お笑い草もいいところだぜ。おかげで、数万の将兵を全滅させちまった。おかげで、扶桑陸軍はパニックだ。カールスラントの代わりを押し付けられたんだからな」

 

「地球連邦軍を呼んだのは、それを補うためだけど、この世界では久しぶりだろうね。数万人が人同士の戦争で死ぬのは」

 

「ナポレオン三世の時代以来だよ、たぶん。だから、連中はこの戦いが終われば、非難轟々だ。俺達がほとんど孤立無援状態に追い込まれたのを、お前と、お前の財団が救った。連中は保有戦力を『遊ばせている』だけで、怪異は出ないし、魔女を乗せた空母は、義勇兵の特攻で撃沈済みとくればな」

 

「VT信管もなければ、CICもまだ試験段階。そんな状態で特攻されれば、エセックス級はスクラップにできるからね。連中は『土地との結びつきが弱い』から、魔女の補充は困難。ましてや、天測航法ができる熟練の魔女は」

 

彗星や天山、流星が爆装で逆落としから特攻すれば、エセックス級はスクラップにできる。それは史実で証明済みである。ましてや、航空攻撃への抵抗訓練は(魔女の世界では)机上のみでなされていたので、史実より耐久力は脆弱であった。そのため、史実では耐えられたはずの損害で、エセックス級空母が沈没するという醜態であった。

 

「これで、連中の大義名分は消え失せた。あとは、君等が如何に、作戦に貢献できるか。それに今後がかかってるよ」

 

「俺達が血みどろになりながら、地上空母を制圧すればいいんだろ?それで、バダンやクライシスとも戦ってみせる。ロンメルはそれを見越してたんだな?」

 

「ああ。本来はミーナ中佐の顔を立てつつ……だったけどね。こうなった以上は、君等の戦争だ。思う存分暴れな」

 

「そうするさ」

 

ミーナの破滅は、坂本への愛が引き起こしたと言っても過言ではないが、その坂本は『同性愛に嫌悪感を持っていた』という、さもしいオチであった。もしも、坂本への愛(一方的な)をうまく隠し、黒江たちと『うまく』やれていれば、カールスラント空軍の少将への特進もあり得た。だが、実際は外交問題級の失態を犯した。この事例以降、軍人の若齢での昇進に強い歯止めがかかることになるので、服部静夏や雁淵ひかりの世代が『以前の規則で昇進できる』魔女の最後となった。さらに、後のクーデター以降は集団よりも個人を表彰することが是とされていく。日本がそれを奨励していくからで、のぞみの英雄扱いはそれに即していたが、日本はまたも失態を犯してしまう。扶桑海軍航空隊はこの流れで(人的に)ズタボロになり、立て直しが困難と見なされ、場当たり的に『元の艦上機部隊を空母に乗せる』施策が実行され、太平洋戦争で常態化する。

 

「まったく、扶桑は扶桑で、集団戦を意識したら、日本はエースパイロットを欲しがるから、軍国主義のレッテルで排除されるってのも、かわいそうだぞ」

 

「ものすごく優秀な個が戦局を動かす時代に戻るからね。アムロ少佐とガンダムの登場で。その芽がこの戦いなわけさ。ある意味、特殊部隊への信仰が形を変えたものさ」

 

「日本も悪どいからね。反抗的な魔女をロボトミーしたとか、意図的に全身麻痺にしたとか。公安警察も悪どい拷問をするもんだ」

 

「わーお…。ロボトミー手術って、表向きは禁止されてるはずだろ?狂っとるな。強化人間化並だぞ」

 

と、44年から45年まで、戦後日本が扶桑に清廉潔白に振る舞ったわけではなく、官庁単位では、ジオンやティターンズと同レベルの非人道的な拷問やロボトミー措置を非公然に行った例も実は多かったのである。

 

「お前がカミさんを出世させたがってるのは、そういうわけか」

 

「そういうこと。扶桑皇国は大日本帝国じゃない。その基本もわからないウスノロが多いのよ、それも官庁のお偉方に。多元世界論はある世代より下じゃないと知られてないし」

 

のび太は『多元世界論』を身を以て体感してきているが、日本全体ではまだ認知度の高くない理論であった。その煽りを被ったのが、扶桑皇国の悲劇であった。それ故に、のび太は『英雄の輩出』を演出していく。それが戦後の個人主義の強い時代の日本の風潮に合うからで、集団主義が否定される時代が訪れたとも言え、それが英雄像の否定に躍起になった海軍航空隊と、英雄を尊ぶ風潮が(カールスラント譲りで)強い陸軍航空隊(後に空軍)の明暗であった。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。