ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第五十三話「次元震パニックその十二~1948年~」

――ダイ・アナザー・デイ途中でのカールスラントに降りかかったパニックは国内の政情不安をも招いた。軍部もリストラがかなり強引に行われたため、失業軍人が首都に溢れかえる始末であった。ドイツは再就職先の斡旋を急ぎ、『希望者の軍復帰』も認めることにしたが、既に有能な人材の多くが扶桑皇国の誘いに乗って義勇兵化していたため、対策が急がれた。扶桑との外交交渉で『カールスラント義勇兵のカールスラント軍服の着用義務』を義務付けさせたのが、カールスラントにできる精一杯の抵抗であった。カールスラントは軍事技術輸出での外貨獲得が日本連邦とドイツに潰されたため、人材供出で外貨を稼ぐしか方法がないため、『これまで取得した技術情報のライセンス料をタダにする』代わりに、義勇兵の供出料は払ってもらうという方法で事実上の傭兵ビジネスを開始した。ダイ・アナザー・デイ後に事実上の公的ビジネスとなるのは、ドイツ連邦に強引に軍縮され、事実上、自分らの手で本土奪還が不可能に陥った事への失業軍人の猛抗議によるものであった。『カールスラント本土奪還は地球連邦軍に委ねる』という、政治的にやむなく判断された事項はカールスラント軍の風土的意味での退廃を招く。カールスラント軍が質的意味で『世界最高である』時代は終わり、日本連邦がその後継に収まる時代はこうして幕を開ける。カールスラントの外的要因での没落は日本連邦の旭日を起こしたと言える――

 

 

 

 

 

 

 

――カールスラント軍にこうして降りかかった災難は多分に政治的要因によるものであった。人種差別的言動などの禁止が通達されると、それを共同部隊での他人種の発奮に利用していた者はもれなく顔面蒼白に陥る羽目になった。グレーテ・ゴロプの黒江への差別的言動が公になった事の余波で高官が何人も更迭され、カールスラント軍の連合軍からの排除すら俎上に上がったからだ。ミーナの経緯が数年ほど機密にされたのは、上層部がエディタ・ノイマンの辞表提出に揺れていて、マルセイユが彼女の後を追って、軍を完全に辞める事が懸念されていたからでもあり、カールスラントの連合軍での立場が加速度的に悪化する時代を迎え、少しでも人材保全を図りたい上層部の意向が働いたからでもある。その努力にも関わらず、カールスラントは外的圧力で外征軍隊の体をなさなくなっていく。グンドュラ・ラルは高官就任後、その流れを少しでも緩やかにするために職務に励んだ。冷戦後に訪れるだろう平和な時代のカールスラント軍に光を残すために――

 

 

 

 

――1948年の初冬になると、太平洋戦争の宣戦布告はなされ、療養中の武子の最初の『代理』である八木大佐も戦死した。その後任として慌ただしく送り込まれたのが明楽大佐である。黒江たちを抑えるために『年上』の実戦経験者を選抜した。八木大佐が遺した教訓で『私心を軍務に挟まない協調性』が求められ、反G派の生き残りながら、軍務に個人の信条を挟まない性格の彼女が後任として送り込まれた。事変後期の実戦経験もあり、『個人の信条は軍務の前には無きに等しい』として、協調性を重視する彼女の派遣は一定の効果を挙げる。だが、彼女は友軍の高射砲部隊の誤射事故の犠牲者として、あまりに唐突に亡くなってしまう。在職期間はわずか数週間。その更に後任は不吉な噂が広まったこともあり、『年下世代』から選ぶしか無く、明野飛行学校教官であった広瀬大佐が送り込まれた。ここで軍中央に誤算が生まれる。広瀬大佐は圭子の小学校時代の後輩だったのだ――

 

「なんだ、お前だったのか」

 

「ハッ。お久しぶりです、先輩」

 

広瀬大佐は圭子の小学校での後輩であると同時に事実上の舎弟であったため、ここで軍中央の思惑がGウィッチに完全な形で知れ渡る事になった。

 

「私は中央の意向に従うつもりはありません。クソくらえです。ですので、私が知るかぎりの情報を伝えます」

 

「わかった。これで参謀連中の考えをご老人方に伝えられる。岡田の爺さんも怒るだろう」

 

「どうなるんでしょうか」

 

「中央にしてみれば、あたしらは『トップエースを抱えてるのに、好きに動かせないウザい部隊』だからな。岡田のじいさんたちに反論してくるだろうさ。だから、これからの戦線は最前線でこき使われていくのは間違いないだろうよ」

 

 

広瀬大佐は圭子に情報を全て明らかにした。内容は『代理を通し、軍中央の意向に従わせる』事を骨子にした参謀たち独自の戦争遂行策であった。丸々送られた理由を述べたわけである。だが、それはナポレオン戦争以前の『陣取りゲーム』の感覚で考えられた前時代的なものであったのが災いし、日本によるさらなる人事異動の嵐を巻き起こす事になり、扶桑の参謀たちにとっての長い冬が始まるのである。ただし、最前線に配置し続けることだけは認められ、中央の抵抗もわずかに認められはしたのも事実だ。広瀬大佐は心労を名目に代理の座を返上し、中央が送り込んだ宮部大佐の着任に至るが、その頃には武子の退院の日取りが決まったため、宮部大佐が代理であった時期は長くはないが、二人は武子復帰後も『中隊長』として残留。二人は武子復帰後も64Fの若手幹部の一翼を担うことになったが、これは64Fの立ち位置についての機密に触れた関係で、中央本来の目的の一つは最初から破綻していたと言えた。

 

 

 

 

――ドラえもんのひみつ道具の関連技術は統合戦争で失われたと思われたが、実は形を変えて使われていたり、完全には失われていなかったケースがある事がダイ・アナザー・デイ中までの再調査で判明した。例えば、光子エンジンは『光子力エンジン』の不完全版であったり、反重力技術などは宇宙船の重力制御技術に使われるためか、失われていない事が確認された。統合戦争とその後の災害で失われたのは、どこでもドアの中核技術である空間接続技術やがんすら治せていた高度医療技術、時間操作技術などが中心であった事が判明する。地球連邦はハーロックとクイーンエメラルダスの技術提供とドラえもんの持つ現物の解析で『ひみつ道具時代』の再来を図っていた。だが、ジオン系スペースノイドなどは『過度の機械技術の進歩は怠惰を招く』という理由だけで、その妨害をし、テロ行為を続けた。そんな情勢もあり、次第にジオン共和国の人々は旧公国軍残党を疎んじるようになり始めた。元々、ジオンは『同胞』と言える他のサイドのスペースノイドも虐殺してきた歴史があるため、23世紀初頭当時には『地球圏の疎まれ者』と見なされつつあったが、ジオン共和国政府からすれば、公国軍残党は『自分達の立場を悪くする存在』であり、一部の右派はともかく、大多数は共和国のいずれ訪れるだろう消滅を受け入れている。だが、ジオンの名を地球圏に残したいネオ・ジオン右派はタウ・リンという当時に名を馳せていた新進気鋭のテロリスト(彼は一年戦争時にジオン軍兵士であった)を利用せんとするが、逆に利用し返された。それがジオン史上最大の悲劇と言えた――

 

 

――ジオン系スペースノイドは過酷な環境で生きてきた者も多いため、『過度の機械技術の進歩は怠惰を招く』というスペースノイドに流行っている思想にかぶれており、そのくせ、連邦相手には何をしてもいいという空気もあり、連邦の派閥抗争にエゥーゴが勝っても敵対をする者は多い。エゥーゴは元々、ジオン残党を連邦の改革派が抱え込んで生まれた組織であるため、連邦が宥和政策を進めた原動力となった。特に空気税が各宇宙都市の生命維持管理装置の刷新で廃止される事は画期的であり、連邦の改革の一環という宣伝活動に役立っている。連邦が移民星の増加で地方分権制を推し進めていく事で『ジオンの存在意義』の喪失を恐れるジオニストはデザリアム戦役で蜂起したが、デザリアム戦役で三度の敗北を迎え、ネオ・ジオンも解体された。それでも一部は尚もテロ攻撃を続けており、連邦の悩みのタネであった――

 

 

 

 

 

――その後のウィッチ世界の1948年――

 

「これが……のぞみちゃんがパワーアップした経緯……」

 

日向咲は来訪後始めて、後輩の夢原のぞみが生前よりパワーアップした経緯を映像で確認した。りんがテロに巻き込まれ、命は助かったが、記憶喪失に陥った事、テロリストに友情や仲間意識を一笑に付され、怒りのままに向かったが、相手はプリキュア化しているはずの自分を相手とも見なさなかったことで『タガが外れ』、歪なパワーアップをし、その反動で心を蝕われた事、アクアとミントの登場で精神バランスを取り戻し、更に怒りと悲しみが自身をさらなる形態に導いた事、一体のある鋼の魔神を宥め、その魔神と遂には同化した事……。先輩である咲には驚きの話ばかりであった。

 

 

「そうだ。偶発的な事も重なったが、あいつはマジンガーと同化する事でシャイニングドリームの更に先にたどり着いた。その副産物でマジンガーとゲッターの技を撃てるようになったわけだ」

 

「ど、同化って!?」

 

「正確には『魂』とだがね。あいつはそれで単なるプリキュアを超えた存在になったわけだ」

 

「ロボットも魂があるんですか?」

 

「自我が生まれた場合に生まれるのさ。で、どうだ?感想は」

 

「…なんか凄すぎて、一言じゃ言い表せませんよ」

 

「仕方ないさ。あいつもなかなかにハードな経緯だったからな。この世界の戦争にいきなり関わるを得ない上、将校としての立場を引き継いだからな」

 

後輩が、映画でもそう見ないだろうと言うくらいのハードな経緯を辿り、オールスターズでもトップレベルに強くなった事に衝撃を受ける咲。のぞみが数年間で編み出した新技『プリキュア・スターライト・ミーティア』、『プリキュア・クラッシュイントルード』にも惹きつけられたようである。

 

「おまけに、新技を拵えてからに…。あれが新しい力なんですか?」

 

「そうだ。某宇宙の騎士の有名なほーや蒼き流星みたいだろ?」

 

実のところ、のぞみが自分で考えた技は前者のみで、後者は黒江が入れ替わった時に使用し、後に本人に伝授されたものだ。

 

「なんか苦労させちゃったみたいで、悪いなぁ…。来るのがもうちょい早かったら、あたしが…」

 

咲はハードな日々を送るしかなく、自分達の顔役としての役目も担わされたのぞみに同情した。自分達が少しでも早くに来れていたら、精神的負担を軽くできたのではないか?咲はそう考え、口に出す。

 

「実務はともかく、顔役には知名度も必要だからなー。悪いんだが、マイナーなんだよ、咲、お前は。挟まれたオセロのコマみたいに」

 

「えーーーー!そんなぁぁ~~!?」

 

咲は日本の国営放送の大投票でも『圏外』であった程度の知名度しかないため、主人公の割に影が薄い。直接の後輩にのぞみ、先輩になぎさという美味しいポジションのはずだが、いまいち目立っていない。

 

「いや、その、お前……。色々と製作の都合で予定が変わった番組の主人公だろ?」

 

「メタ的立ち位置に触れないでくださーい!!」

 

黒江もそこは気まずそうだ。スプラッシュスターは二年間放送の予定であったという話は後世のマニアの間では知れ渡っている話であるためだ。

 

「色々と後世に影響残したと思うのになー」

 

「そこは自覚あるんだな」

 

「自分達がアニメになった世界ってのは、現役時代から考えてこなかったわけじゃないし、想像は簡単にできました。こういうのって、『大人』になったって事ですか?」

 

「人間、ある種のことをやってりゃ、そういう事は考える。俺も始めて平行世界に行った時は自分の想像がつく限りの事を考えたもんさ。のぞみもそういった事は、後輩とかちあった時に考えたらしい」

 

「後輩かー。あの子も、気がつけば何十人も後輩いるんだよね。あたしも50人超えかー…」

 

「お前らはまだ、先輩後輩関係の概念が濃い世代だろ?これが平成の終わりくらいになると、そういった概念をあまり気にしなくなるからなー」

 

黒江が指摘するように、プリキュアチームは昭和仮面ライダーの持つ『体育会系的な厳しい昔ながらの上下関係』はないが、経験の度合いによる上下関係は一応は存在する。のぞみと咲はその理屈で言うと、ほぼ最高位に位置する。(なぎさを除けば最高位になるが)それ故に苦労が大きい。

 

「あたしたち、先輩後輩関係はあまり気にしなかったからなー。プリキュアとして会う時は同じ年代だから」

 

「公職につくと大変だぞ。のぞみもそれで気苦労あるからな。おまけに近隣の平行世界を行き交うから、顔出しもある。一時はすごかったから、白髪が最近出たとか?」

 

のぞみは気苦労が大きかったため、髪に白髪が生えたらしい事が黒江によって語られた。もちろん、りんの記憶喪失での精神的ストレスが大きかったための出来事であり、当人は白髪一本で大パニックになったのはいうまでもない。

 

「白髪かー。気苦労が多い時は生えますって」

 

「だろ?俺もちょろっと生えた事がある。一本や二本…」

 

剣鉄也なども一本でも生えた途端に『この世の終わり』みたいな顔で落ち込むなど、意外にショックが大きい白髪。肉体的に加齢が無くなった状態の黒江たちでも、生える時は生えるので、のぞみが大パニックになる(髪が普段からマゼンタ色であるため)のも無理からぬことだ。また、現役時代からさほど経っていない時間軸から来た咲も白髪が生えた経験持ちらしく、そこは諦めているらしい。

 

「これだけ凄いことになってれば、白髪くらいは仕方がないと思いますよ?」

 

「それにあいつ、ガンダムパイロットにもなったんだ」

 

「どのガンダムですか?」

 

「ダブルエックス」

 

「は…?」

 

「正確にはその機能を再現した機体だが…、それに乗ったわけだが」

 

「あれ、ニュータイプ専用じゃ?」

 

「あいつ、宇宙に出た時にニュータイプ能力が追加されたみたいでな。それでな」

 

「よく造れましたね?」

 

「技術的素地はあるからな。一部を別の技術の改造や応用で補ったが、だいたいは再現できた。あいつはそれを使った。ダブルエックスで三機目だな」

 

「子供の頃、かすかに見たような記憶がありますけど、すっごいエネルギー砲積んでませんでした?」

 

「サテライトキャノンな。あれはガンダムX系が戦略兵器って言われる所以だ」

 

デザリアム戦役の折にジオン残党の心を折った最大の要因は地球連邦軍がツインバスターライフルに匹敵する『サテライトキャノン』を実用化したからで、コロニー落としや隕石落としを容易にMSが阻止できるようになった事でジオン残党の取る破壊作戦の意味が無くなったからで、既に度重なる敗戦でジオン残党はデザリアム戦役末期には致命的に人手不足に陥った事から、月面のレーザー発振施設破壊作戦も実行できずに終わり、最後はシャア・アズナブルがアムロ・レイに敗北し、投降した事で組織が瓦解した。シャア・アズナブルは表向きは懲役刑を言い渡されて投獄されたが、実際は司法取引で『クワトロ・バジーナ』に戻り、連邦の一パイロットに戻っている。これはシャアの持つ戦闘技術が惜しまれたからで、地球連邦本星の『人手不足』も深刻であるからだった。(だからこそ、『戦略兵器』の開発と配備が急がれている。)

 

「そんなの、何と戦うために?」

 

「敵対的な異星人だよ。国内のテロリストへは抑止力も兼ねてる。のぞみがパワーアップした戦いじゃ、国内の争乱と星間戦争を同時にする羽目になったからな」

 

――23世紀の地球連邦は仮想敵がジオンから異星人に切り替わり始めていた時期にデザリアム戦役が起こり、一時は地上でジオン優勢になったが、デザリアムに邪魔者とされて捻り潰されるケースが続出した。そのデザリアムもヤマトが本星ごと銀河を破壊した事で『帰る場所』を喪失し、残党化したため、残党狩りが行われるに至った。デザリアム残党は宇宙艦隊の多くが海賊化するか、降伏を選んだが、地上部隊はゲリラ化し、地球連邦軍を悩ませている。それからそれほど間を置かずに太平洋戦争へなだれ込んだのが64Fである。つまり、星間戦争を戦った直後に国家間戦争を戦う事になったわけである。――

 

「宇宙戦争の後に国同士の戦争って、なんだか馬鹿らしいような」

 

「仕方ないさ。この世界は太平洋戦争を控えてたんだ、いつ起こっても不思議でないからな。7年も伸ばせただけ、マシさ」

 

 

後に判明するが、戦争の裏でリベリオン本国に日本の左派勢力が莫大な資金と各種技術の援助をした事が戦後に公にされ、それが扶桑の戦争を長引かせた要因と断定された。(彼らは皇国体制を敗戦で合法的に否定させ、戦後日本型の国にするつもりだった)だが、リベリオン本国は太平洋戦争で決定的にウィッチ資源をほぼ枯渇させてしまい、以後の衰退を決定づけた。日本の左派から非合法的に得た資金と技術で数十年の体制存続は成し得たが、リベリオン内乱は本土にも及び、各地でミリシャが勃興する事になり、64Fは第二次扶桑海事変前はその掃討任務に駆り出されることになる。

 

「アメリカ相手に、この時代の日本が勝てると思ってるんですか?」

 

「ワシントンに日章旗が華麗に翻るのを夢想する奴も多いが、そう単純にいかんよ。いくら史実よりかなり余裕があっても、真っ向から全土の占領は無理だよ」

 

「じゃ、どうやって?」

 

「西海岸を抑えた後にワシントンとニューヨークを空挺降下で抑えて、和平に持ち込むしかない。ホノルルは向こうさんが抑えてるからな。パール・ハーバーの占領が第一目標だよ」

 

扶桑のこの時点での構想は『パール・ハーバーを占領し、太平洋共和国の手に戻した後に大陸西海岸を占領、離反させた後にニューヨーク、ワシントンを空挺降下で電撃的に抑える』というものだった。だが、日本は西海岸の占領に悲観的で『せめて、五大湖工業地帯を完全破壊せよ』という条件をつけ、対怪異の観点から完全破壊を望まない扶桑とで折り合いがついていない。史実の生産力を知る日本は五大湖工業地帯の無力化を強く主張。『反応兵器をぶち込んでもいいから、あそこを吹き飛ばさんと二年で立ち直られる』と主張した。扶桑は『対怪異防衛のために必要』とし、のび太の仲介で『シアトル、ニューヨーク、ニューアークなどの大都市を人質に交渉で五大湖の工業施設の権利を買い叩く』方向で調整が進められているが、この時点で敵の攻勢期に入っており、一時的な休戦協定の『五輪の期間』までにどの程度の南洋島の地域が陥落するかという問題もある。また、南洋島の『田舎』には新型兵器は配備されておらず、史実1941年と大差ない有様で、最右翼の機甲兵器が『三式中戦車』という有様であった。これに日本側は嘆息したが、そもそも、配備予定を大いに狂わしたのは日本側であるため、遅滞戦術で抵抗する戦術を採択している。

 

――南洋島は半分取られても良い、引き込んだ上で補給線を徹底的に叩く!!――

 

大井篤少将(後、中将)の案が採択されたが、一つの問題があった。南洋最大の油田と目される油田が中央部付近にあるため、そこを死守すべしとする命令が出されたのである。64Fはその油田の防衛がその第一任務であり、八木大佐は敵の強行偵察で帰らぬ人になり、明樂大佐は油田防衛の高射砲(五式15cm高射砲)の誤射で事故死している。その高射砲はミサイル装備ではない在来型高射砲では最高位の火力を誇り、ウィッチではひとたまりもない。明樂大佐の致命傷は破片による身体中の傷であり、芳佳の力を以ても、もはや手のつけようがなかった。黒江と圭子は高射砲部隊に猛抗議を加え、高射砲部隊も調査を行った結果、伝令などがなんと新兵であり、敵味方の区別もつかない若造が起こした誤射と判明した。その折衝能力を以て、黒江達も動かせるほどに話術も優れた逸材であった明樂大佐の突然の殉職は軍中央を震撼させ、黒江達より年上のウィッチ達が『縁起が悪い』と着任を避けるようになる原因であり、年下世代の広瀬大佐が送り込まれたのである。

 

 

「幸い、三人目の代理はケイの舎弟で、俺たちに何も干渉しないから、好きにやれる。八木は露骨に俺らをいびったし、明樂はウチの先進機材に興味がなかったからな」

 

広瀬大佐は圭子の小学生時代の後輩(舎弟)であり、レイブンズの扱いについては二人の前任者よりも遥かに心得ていた。なおかつ隠れ親G派であったのもあり、持ち得る情報を全て提供した。これが64Fの空気が元に戻った理由だ。また、彼女は公には『中隊長』でしかない自らの立場もわかっており、Gウィッチに特に干渉もせず、隊の実際の指揮を黒江達に任せ、彼女は軍令上の判子を押す役である。(軍中央勤務の黒江達より上の世代のウィッチは『実力と運の問題、64Fメンバーが政治的に高い発言力を持つ』事が知られていたことから、後ろから飛ぶ弾を恐れ、『司令職は勘弁、一般隊員としてなら…』と言うようになっており、トップエースらを要するため、状況を利用して、故意に見えない後弾(史実でもままある事)など簡単にやれると恐れた事で誰もが固辞し、仕方なく、年下の世代から選抜したが、広瀬大佐は中央から既に離反していた。)

 

「あの人、なんか自信ありげですよ?」

 

「紅海戦線で『セイレーンの魔女』って鳴らしたそうだ。事変最後の世代だから、それなりにベテランだな」

 

広瀬大佐は黒田の同期であり、黒田のアフリカ転出後に頭角を現した。母方の隔世遺伝で扶桑人には見えず、黒髪以外は外人に見える長身の体躯であった事、母方の親類は『セラ』と呼んでいたため、当人もその呼び方を通したのが彼女の渾名『セイレーン』の由来であった。黒田の同期であるため、当然ながら幼年学校出身で、年齢は1948年で18歳程度と若く、黒田が抜けた後の紅海戦線で名を馳せたが、二年ほどで明野飛行学校教官になったという経緯を持つ。

 

「ま、ケイの舎弟で黒田の同期だから、『味方』だよ。振る舞いは品行方正だが、あいつ、中野学校に友人がいたとかで潜入も心得てるから、使える奴だよ。パーソナルマークは紅海帰りだからある。ハートだな」

 

広瀬大佐は黒田と紅海最強を競った。その気質は品行方正以外は圭子に似ている。言動もサバサバしているが、黒江達には敬語を用いるなどの特徴を持つ。前任者たちと違い、64Fの機材に興味を持って着任したため、F-104やA-4を乗りこなし、黒江も関心させている。

 

「珍しいですね、この時代のパイロットがジェットに興味あるなんて」

 

「八木と明樂は古いタイプだったからな。セラのようなタイプが今は当たり前だ」

 

咲もそこは関心しているようだ。八木大佐や明樂大佐は64Fの先進機材に興味を持たず、八木大佐に至っては『プロペラがないものをよく信用できるものだ』とまで言い放っていたため、広瀬大佐のようなタイプは目新しく見えるらしい。

 

「あれ、咲さんに先輩じゃないですか」

 

「のぞみちゃん、訓練帰り?」

 

「うん。ダブルエックスの慣熟訓練。マニアには砲台扱いされてるけど、曲がりなりにもガンダムだから、白兵も強いよ?」

 

「あのさ、どこがどうしてガンダムX系に乗ったのさ?」

 

「シャイニングブレイクを落とされて、困ってたところにGXのGコン渡されて、GXに乗ったんだ。それからはGX系だよ」

 

「誰に落とされたの?」

 

「アナベル・ガトー、ソロモンの悪夢さ。何回かやりあったんだけど、太刀筋を読まれて、袈裟懸けに斬られて、ね。幸い、変身してたから、脱出して、一矢報いたけど」

 

「よく乗り換えられたね?」

 

「運よく、機体が墜落したのが工場の目の前でさ、シューティングスターで隙を作ったけど、どうしようかって時に、のび太くんからGコンを渡されて、そのままGXに」

 

「いきなりガンダムなんて、贅沢だぁ」

 

「アナベル・ガトーの声聞くと、ムシバーン思い出しちゃってね。なんか変な感じだったよ」

 

「そういうの、あたしにも心当たりがあるなぁ」

 

咲はニュースで聞いたマクロス7船団長の『マクシミリアン・ジーナス』の声を聞いて、かつて自らが葬った『サーロイン』を思い出したようで、お互いに声が似ている人間がいる事にため息らしい。

 

「で、ネオ・ジオンの心をツインサテライトキャノンでへし折ってやったよ。コロニーレーザーと同クラスのエネルギーを扱えるガンダムなんて、そうはいないからね」

 

のぞみはツインサテライトキャノンを使う事で、ネオ・ジオンに継戦を諦めさせたと語る。実際、レーザー照射設備がどうにかなれば、ガンダムX系は戦略兵器としての役目を果たせるので、間に合わせの設備でもジオン強硬派が恐れ慄くほどの恐怖を抱かせる。戦争抑止力こそがのび太がガンダムダブルエックスを建造させた真の理由である。

 

「あたしも、なんか乗ろうかなぁ…」

 

「余ったGXでも乗る?」

 

「そうしようかなぁ。あたしもなんかステイタスは満たさないと」

 

「はるかちゃんが来たら、アルケイン・フルドレスは用意してるんだけど」

 

「いいな~!」

 

「あれ、響ちゃんは何に乗ってるの?」

 

「紅蓮聖天八極式の改良型」

 

「そ、それぇ!?」

 

「いいじゃん。ほのかさんが蜃気楼に乗るより」

 

「うーん。確かにありそうだよなぁ」

 

咲もその可能性は考えている。黒江曰く、『セシリア・オルコットもそれはなかったから、その線はねーな』との事だが、シャーリーとのぞみ、咲は本気でそれを懸念している。ほのかに声が似ていたのは、C.Cの他にセシリア・オルコットも挙げられるが、セシリア・オルコットは射撃以外はポンコツ気味であるため、すぐに除外されており、緑川なお(ラウラ・ボーデヴィッヒ)も『それはない』と否定している。ちなみにセシリア当人は『屈辱ですわ~!』と怒っているが、キュアマーチとの模擬戦で一蹴されたり、黒江がIS学園に潜り込んだ際にも一蹴されているなど、最近は噛ませ犬ポジションに甘んじているという。

 

「セシリアがそうでなかったから、可能性は低いがな。前に俺が箒の姿でIS学園に潜り込んだって言ったろ?」

 

「ああ、箒がインフルエンザで寝込んだ時ですよね」

 

「その時に一回、模擬戦をしたが、射撃以外はポンコツ気味でな」

 

「あれ、先輩、その時、アガートラームを」

 

「使ったよ。敵が来た時に。赤椿が進化した直後だったから、持ってきたアガートラームを箒の姿で使った。あのイキリ坊主に突っかかれたけど。その時に黒うさぎを脅してやった」

 

黒江はIS学園滞在時にシンフォギアを緊急で使用し、無人ISを一蹴したが、その時にてんやわんやがあった事を語る。一夏が例によって突っかかり、黒江は感づかれた事から、千冬には正体をばらした事、その時はラウラがプリキュアの転生者だとはわからなかったと言い、少なくともラウラの覚醒は『それ』があった後に起こったらしいことが確定した。

 

「その時だったよ。ケイやクランと千冬が声がそっくりだったのに気づいたの。クランがキュアビートだったから、それを使って、あの坊主が変な気を起こさんように仕向けてもらった。エレンは千冬の同位体の転生らしいからな」

 

キュアビートに頼み、箒にかかってきた織斑一夏の電話の応対をしてもらい、『篠ノ之に面倒をかけるな』と脅してもらった事を明言した黒江。キュアビートも苦笑いだが、仕事はこなした。ケイだと『ヤサグレ度が出すぎる』からであろう。

 

「なんだかややこしい話」

 

「シャーリーなんて、アルバイトで美雲・ギンヌメールの影武者してんだぞ?それに比べりゃ、二年前に俺がのぞみと入れ替わった事は可愛いもんだぜ。シャーリーのアルバイトやアストルフォのアレは魂に刻まれた因果と縁のなせる技だな」

 

自信満々に語るが、黒江が『やりすぎ』で、なぎさ達をドン引きさせた事を知る咲は苦笑いであった。

 

「あの時はやりすぎですって」

 

「そっか?」

 

「せんぱーい~!」

 

目をウルウルさせるのぞみ、冷静にツッコむ咲、キョトンとする黒江。三者の認識の違いがよく出ていると言えた。

 

「やっちまえばそれで通す、やったもん勝ちだろ?」

 

黒江のその言葉で盛大にずっこける二人だった。

 

 

 

 

 

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