――歴代のプリキュア達はバラバラの平行世界から集まったため、いくつかのグループ別に故郷の世界があった。ただし、春日野うらら、蒼乃美希、四葉ありす、ユニなどは同じ世界に転生しているため、そこは朗報と言えた。そんな中、月でのび太は仮面ライダースーパー1/沖一也からある存在について知らされる――
――のび太とフェリーチェが宿泊中のホテルのスイートルーム――
「鳥人戦隊の遺産?」
「そうだ。ビックワンが日本連邦に秘匿させていた『鳥人戦隊ジェットマン』が遺した偉大な遺産だ」
鳥人戦隊ジェットマン。1991年、ちょうどなぎさとほのかが生まれたくらいの頃に活動していたスーパー戦隊である。その後の数年ほどは活動していたが、ブラックコンドル/結城凱が1995年頃に暴漢に刺され、死亡してしまってからは活動を終えたと伝えられている。彼らの解散後、資産は上位組織である地球守備隊が引き取り、管理を続けていた。23世紀時点では、ヒーローユニオンが管理している。超新星フラッシュマンが最終決戦の折に置き去りにしたメカ共々に管理されているという。
「我々が極秘裏にオーストラリアの地下に秘匿している。幸い、アデレード付近の地下に施設を構築していたから、コロニー落としの惨禍も免れて健在だ」
「この情報を、なんで僕たちに?」
「現役時代からジェットマンを呼ぶ手はできることなら取りたくないと皆が考えている。他の戦隊と違って、彼らには一般人に戻る権利があるからね」
沖一也はスーパー戦隊の抱く意思を伝える。鳥人戦隊ジェットマンの召集は現役時代から行うしかない故に『できるだけ避けたい』と。ジェットマンはメンバーの大半が一般人であったからだろう。
「それに、地球を護るために造られたマシンをこのまま眠らせたまままにはいかないからと」
沖一也が渡した写真に写っていたのは、鳥人戦隊ジェットマンが使用していたメカニックと装備であった。激戦で失われたものもあるはずだが、地球守備隊がその後にリバースエンジニアリングで復元、改良したらしい。
「イカロスハーケンとバードガルーダ…。まさか、23世紀になっても現存していたとは」
「超新星フラッシュマンが置き去りにしたメカニックと共に管理されている。時代ごとに改修を加えてあるから、スペックは別物だがね」
「管理キーを君に預ける。ドラえもんくん達は命がけで施設を守った。その礼と思ってくれと、ビックワンから言いつけられている」
「わかりました。使わせてもらいますよ、偉大な遺産を」
のび太が託された『オーストラリアの極秘施設』の管理キー。旧・地球守備隊が21世紀にアデレードに築き、23世紀ではヒーローユニオンの管理下に置かれたというもの。キーを渡すということは、のび太に管理権を委譲することを意味する。
「こりゃ責任重大だよ」
と、苦笑する。超新星フラッシュマンは反フラッシュ現象さえ克服できれば、また戦う意志を持っているが、鳥人戦隊ジェットマンはその経歴故、再結成が難しい。今回の歴史においては、メカニックが遺産という形で使用されることで、その存在が注目される事になる。
「キュアコスモからの伝言だが、早急にキュアアクアとキュアミントのいる世界を突き止めてほしいと」
「すぐには無理ですね。ドラえもんに探させてはいますけど」
キュアアクアとミントは戦車道世界にはいなかったため、フェイトやドラえもんにも捜索させているが、成果は如月ハニーがキュアミント/秋元こまちの姉『まどか』の転生であったことくらいだ。
「士にも探させているが、時間はかかりそうだな。場合によれば、あの子達に使わせるかい?」
「ラブちゃんが聞いたら大喜びしますよ。あの子、隠れオタクで」
「なるほど」
この時期、フェイトは弱体化した時空管理局でかなり高位の執務官になり、姉のアリシア(花咲つぼみ)の願いを汲む形で、プリキュアの捜索を自ら行っていた。門矢士が取ってきたデータをリスト化するのも彼女の役割であったので、多忙になった。折しもバルディッシュ・アサルトが前倒しされた『次世代デバイス計画』のテストベッドにされたため、フェイトはシンフォギアのコピーを使い、戦闘を行っている。その都合で大人の姿に戻っているため、オリジナルを持つ風鳴翼からは苦言を呈されているが、『いいではないか、敵への欺瞞になるのだぞ』と意に介していない。そこはなのはの影響だろう。
「でも、貴方も難儀ですね、一也さん。本当なら、あんな暴漢なんて一瞬でしょうに」
「女帝に正体を知られるわけにもいかんからね、そこは自重している」
沖一也は赤心少林拳・玄海流の唯一の生き残りの伝承者であり、仮面ライダーの中ではほぼ唯一の拳法家の一面を持つ。当然ながら、23世紀の地球圏で最高の実力者集団『シャッフル同盟』とも対等に戦える実力者だが、諜報活動の都合で披露できないのを明言した。
「少しでも格闘技齧ってる奴なら、構えただけで流派に見当つけられるから、入りの崩しを工夫しなきゃいけないんだよなぁ…。」
「ご苦労さまです」
「奴らを送り込んだ彼女はアナハイム・エレクトロニクスの技術者の間引きすら実行した。我々が阻止したが、危険な女だ。君の子孫のノビタダくんに情報を流していいかい」
「ええ。あいつは僕と違って、即断即決の男ですから、すぐにたれこむでしょう」
「あのエレカはノビタダくんの?」
「いえ、その弟のノビヒサのものです。あいつは道楽者ですから、スポーツカータイプを買い込んでるんですよ」
のび太がホテルに戻るのに使用したエレカ(オープンカーのスポーツタイプ)はノビタダの実弟のノビヒサの所有する別荘にあったものであった。のび太の車道楽を色濃く受け継いだ彼から『壊れてもいい車』という条件で、一年戦争直後の時期に売れたオープンカータイプのエレカを借りたという。
「かなりレスポンスいいようだけど?」
「ガソリン車並のレスポンスの良さを持つ最初のモデルみたいですよ。立ち上がりが早いとかで」
「フォン・ブラウンで使うには、もったいない気がするけどなぁ」
「衛星都市も建設進められてるし、フォン・ブラウン自体が30kmくらいの大きさの街が何層にもなってますから、意外に楽しめるみたいですよ」
フォン・ブラウンは最下層にジャンク屋などがある事が有名だが、その何層か上に中心繁華街がある。その中心地に立つホテルのスイートルームにのび太たちは宿泊している。なお、月用のエレカには加速リミッターがある。フォン・ブラウンやグラナダなどの大都市はいざしらず、その他の初期の小規模から中規模都市では重力制御がされていないフロアもあるからだ。
「その他の古い都市は重力制御が導入されていないフロアがあるんで、加速にリミッターがつきます。これが問題になってるんですけどね」
実は大都市でも、鉱工業エリアは重力制御はされていない。低重力下で生まれる合金を加工する関係で、のび太達が行った工場は完成品の組み立て工場であるので、低重力下の環境である。
「アナハイム・エレクトロニクスの完成品組み立て工場に行って来ましたけど、だいぶ進んでいます。月は出ているか計画も第一段階に」
「それはおめでとう。よくプランの承認に」
「サイコフレーム規制論の議論のゴタゴタに乗じて通したそうです。ノビタダもやるもんだ」
地球連邦軍はサイコフレームの規制論に戸惑っていた。すでに量産型νガンダムは製造ラインに乗っていたからだ。ネオ・ジオン自身もヤクト・ドーガの量産をし始めていたため、かなり反対意見が多い。ミネバ・ザビは強引にネオジオングの製造を物理的に阻止しようとしていたが、沖一也の情報によれば、『時既に遅し』である。これは沖一也からのび太、更にノビタダに流れ、地球連邦軍統合参謀本部に伝わる。ミネバ・ザビは困惑した。自身には知らされていないし、シャアも知らないからだ。
「サイコフレームは封印かい?」
「いえ、ナイチンゲールやハイニューガンダムの関係もあるので、規制は当初案より緩くなるでしょう。技術封印は統合戦争以後はタブーですから。それはミネバ・ザビも知らないはずはないでしょうし」
サイコフレーム規制論は第一次に『ネオジオングの製造阻止』を目的にしていたため、現物が完成間近では、その目的の半分は無意味となる。また、この頃、反ロンド・ベル派が独自にフェネクスの予備機を建造しつつあったため、『フルサイコフレーム機の製造禁止』にシフトする。有事が続き、保有禁止に持ち込む事ができなかった(フルサイコフレームでも、ガンダムファイター級の人間の気力で抑え込まれる事が判明した事もある)からだ。
「フルサイコフレームの今以上の製造禁止がせいぜいでしょう。デビルガンダムの復活への危惧、プロトデビルンの再襲来の危惧、宇宙怪獣の生き残り。禁止する理由がどこにもないですからね」
のび太は知らないが、この頃、『未知の超能力で駆動するバスターマシンの開発案』も俎上に乗せられたが、その超能力が宇宙怪獣と同質のものである事がわかり、破棄されている。別の次元であれば『トップレス能力』と呼ばれたであろうが、人間が宇宙怪獣化する可能性を恐れたユング・フロイトの命で能力者は幽閉される事になったという。だが、デザリアム戦役の混乱で『トップレス能力者』らが計画破棄までに完成した試作バスターマシンらで反乱を起こす。それを想定していたユング・フロイトが自ら、完成していたGガンバスターを起動させ、鎮圧したという。
「宇宙怪獣か。あの計画で銀河中心にいた集団は倒したが、他にいくらでもいそうだな」
「そのためのグレートガンバスターですよ」
「グレートガンバスター、か」
銀河中心殴り込み艦隊遠征後も宇宙怪獣対策は続けられ、グレートガンバスターが一種の集大成であった。ガンバスターの追加建造よりも『後継機』を作ること。ユングはそれを軍在籍時から主導している。また、別の次元ではバスターマシン七号という形の一種の戦闘システムに組み込まれたであろうドロイド『ノノ』はバスターマシン七号『ダイバスター』の中枢を担う存在として、ユングが開発を指令したとも。グレートガンバスターは当初は後継機として開発予算を得ていたが、純粋な初代のブラッシュアップモデルになるため、後継機ではなく『モデルチェンジ』扱いに落ち着いたため、ダイバスターが後継機に収まるという。これはグレートがガンバスターの製造ラインと基礎設計を流用しつつ、縮退炉を次世代型に変え、武装を新式のものに多少変えた程度に収まったためだろう。(トマホークがブレードに変わった、バスターホームランがないなどの小変更だが)
「300m、10000トン。地上じゃ運用不可能ですよ。東京タワーがのし歩いてるようなものですから」
「つまり、アメリカの空母が直立してるようなものだな」
「バスターマシン状態でガリバートンネル潜ってから合体させないと、地上じゃ使えませんよ。ドイツの考えた巨大戦車みたいなもんですから」
Gガンバスターは史実の戦艦大和よりも大きい。対宇宙怪獣を考えると、これでもミニマムになってしまうが、地上ではガンバスターより使えない。機動兵器のガリバートンネルで人間サイズでの稼働テストと、新操縦システムのテストが進んだ理由の一つは同機の存在にある。ユングが次期バスターマシンの構想に『人間サイズでガンバスターの圧倒的能力を与える』という一文を入れる背景は『対宇宙怪獣用に大きくしすぎたGガンバスター』の存在に悩んでいたからだ。
「もしかして、ガリバートンネルでの機動兵器の縮小と稼働テストは?」
「グレートガンバスターの操縦システムの改良と地上での運用法の模索でしょうね、半分は」
ただし、副次的利点として、パワードスーツ開発の名目でマスメディアを誤魔化せる効果があるため、ガンダム試作二号機の教訓もあり、人間サイズでの機動兵器の稼働テストは連邦軍の財務省対策として定着していく。地上でキュアエースがスローネドライを使い、活躍した事もこの定着に一役買ったのである。(彼女がプリキュアの状態でシステムを働かせたため、プリキュアの能力値が機体能力に加算されるという意外な効果もあったが)
「あの子、凄い食べっぷりだな」
「大食いなんですよ、フェリーチェは。一食抜いたら、変身してても理性が飛びかけますよ」
のび太は経験則でそう語る。フェリーチェはかなりの量を食べる。これは元からというが、精神的成長が起こった事、以前より相対的に消費カロリーが増大した事によるものだろうとのび太は推測している。沖一也も面食らうフェリーチェの大食いぶりは、真剣な話をする両者の清涼剤であった。
――地上では、キュアエースがスローネドライを用いての戦闘を行っていた。史実と違い、核融合炉搭載であったり、機体塗装が明るめに変更され、キュアエース同様に白のラインが入っていたり、肩にAをデザイン化したエンブレムが描かれている。新システムを稼働させての戦闘なので、戦い方はキュアエースそのものであり、兵士や戦闘車両相手では多少なりとも、オーバー気味な戦闘になっていた――
「機体の武装はなるべく取っておきたいですわね。仕方ありませんが……」
武装を温存するべく、銃は兵士が落としたM1カービン銃を使用する。M1ガーランドと違い、装填がボックスマガジンでなされるため、熟練を必要としない。また、30カービン弾はこの時の戦場では『いくらでも手に入る』ため、鹵獲品が日本軍義勇兵らに好まれている。また、この戦いは兵器生産にも影響を及ぼした。扶桑陸軍が43年度に供与され、45年度からのライセンス生産を予定していた『ワルサーGew43』は弾倉の弾数の少なさ(10発程度)、装填の難しさを理由にライセンス生産が見送られ、64式7.62mm小銃や89式5.56mm小銃の供与で代えられ、M1カービンが鹵獲運用された。(外貨獲得手段が減った事、軍需産業の失業対策に悩むカールスラント軍の懇願で、より新式の『StG44』が提供され、湾曲弾倉で使用されたとも)扶桑陸軍はダイ・アナザー・デイまでにこうした突撃銃の普及が間に合わなかったため、敵からの銃の鹵獲運用が推奨された事もワルサーGew43のライセンス生産の意義を低下させた。
「…ふう。こうも馬鹿正直に銃剣突撃など、愚かな…。第一次世界大戦の機関銃陣地に突っ込む兵士を相手から見た気持ちがわかりますわね」
『エース、そちらは?』
「マーメイド、敵は30人ほど倒しました。それと、武器を少々鹵獲しましたので、これから持ち帰りますわ」
『わかったわ。帰ったら、報告して頂戴』
「了解しましたわ。まさか、私たちが火消しの役割とは」
『仕方ないわ。連合軍は急激な兵器更新に追いつかない内にこの作戦を迎えたもの。小銃だって、アサルトライフルとボルトアクション式が入り交じる状態。よくこれで作戦期日を変更しなかったと』
「日本の横槍が入ったとは聞いていましたが、まさかそこまでとは…」
『ええ。日本は最終的に『疫病でそれどころでない』と言って、連合軍への介入を取りやめたのよ。その尻拭いよ。やれやれ、綾香さんも可哀想に。機材調達まで自分でする羽目になったから』
日本がGフォースへの機材供給をほぼ投げたため、この時期には黒江があちらこちら奔走し、機材を調達していた。エンジンや機銃、アビオニクスなどは補給頻度を減らすため、地球連邦軍の最新規格に合わせて改造している。ベース機材は一見して多種多様だが、内部構造は改造のために一新されており、補給の容易さは増している。
「それは言えてますわね。しかし、熱核タービンを積むために改造するとは。元が残っていないのでは?」
『仕方ないわ。調達できた機材がてんでバラバラなのよ。F-5をF-20に改造したものまであるから』
「どこの傭兵漫画ですか」
『欧州のドラケン、ライトニングはもちろん試作に終わったはずのスーパータイガーまであるわ。手当り次第にかき集めたみたい。まるで航空博物館よ』
熱核タービンに積む機体のベースはどれでもいいため、手当り次第に機材をかき集め、一部は武装を独自に施して使用した。これはGフォースに割り当てられた『F-4EJ改』の老朽化が予想以上であり、退役間近の機体をタイムふろしきによるリフレッシュで使い続けるよりも、別の機体を調達したほうが効率がいいと判断されたが、2020年の世界で疫病が流行り、日本向けのF-35の配備が遅延し、疫病対応を名目に、日本の当局が統制を投げたため、黒江はここぞと言わんばかりに手当り次第に調達。多種多様な機体が集められたのである。もっとも、それは改造で『見かけ』だけだが。
「やれやれ。ミノフスキーフィールドを使って、付近の電波撹乱を行いますので、以後の通信はタキオン回線に切り替えますわ」
『了解』
スローネドライは『GNフィールド』を持っていた。それを擬似的に再現したのが『ミノフスキーフィールド』である。高濃度ミノフスキー粒子を散布し、かなり高密度の電波撹乱を行うため、20世紀半ばの頃の技術水準のレーダーは使いものにならなくなるし、通常回線はノイズが入り、事実上使えなくなる。そのため、地球連邦軍はタキオン粒子の通信技術の確立に力を入れ、この頃には実用化されている。
『ミノフスキーフィールド、展開。引き上げますわ。しかし、こうもいたずらに突撃を繰り返すとは…。第一次世界大戦と同じドクトリンですわね』
『この世界の軍隊は一部の実戦部隊以外は対人の機動戦を想定した訓練は受けていないわ。だから、多少の策ですぐに総崩れになる。怪異との戦争に慣らされてたツケね』
『対人戦に耐性がある者が少なすぎた事のツケがこの状況と?』
『多くは花嫁修業の感覚で送り込んできてたのよ。私は今の実家が軍人の家系だから、家の義務のようなもので志願させられたのよ。リーネもその類よ。あの気が荒い母親の思想はともかく、世間的にはビショップ家は豪商の名家なんだし』
『確かに』
リーネは他の次元では『士官教育を受けても、自分の思想を優先させ、短期間で軍を辞めた』という経緯が存在する。芳佳が戦い続ける世界ではそれは起こり得ないが、リーネ当人に強い罪悪感を抱かせ、『美遊・エーデルフェルト』になり切る事を選択したのである。リーネは強い責任感があるため、芳佳がプリキュアになる選択を取った事に触発され、自身も美遊・エーデルフェルトとして生きる事を選んだと言える。実家であるビショップ家の『呪縛』から逃れるためにエーデルフェルトの名を選んだ事はある種の皮肉めいたものがある。同情したマルセイユがそれに付き合う形で、『ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト』としての生活も始めたため、マルセイユはこれ以後、エーデルフェルト家の爵位を好きに使うようになる。
『でも、どのみち、社会的責任からは逃れられないかと?エーデルフェルトは爵位を持つ家柄なのですよ』
『むしろ、その方が周りの目を気にしなくていいそうな。ビショップ家は母親が英雄、姉がそれなりのウィッチだったから、プレッシャーがね』
皮肉なことに、ビショップ家の呪縛から逃れるために、エーデルフェルトの名を名乗ることにしたリーネ。ダイ・アナザー・デイ以後、リネット・ビショップは公には『連合軍の特務に引き抜かれた』という扱いになり、その後任が『美遊・エーデルフェルト』という事になっている。彼女特有の事情に同情するキュアマーメイドとキュアエースだった。
『母親の存在があの子を追い込んだというべきですか?』
『いや、大家族の真ん中というポジションでアイデンティティを見いだせなかったのが、あの子の不幸かもしれないわ。マルセイユが付き合うと言ってきているわ』
『あの方、何を?』
『マンネルヘイムに手を回して、『ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト』の名の戸籍を偽装させたのよ。しかも同名の子が生きていると偽装させて、爵位を得てるのよ』
『回りくどいやり方ですわね…』
『あの子もノリいいから、すっかりエーデルフェルトの当主してるわ。収入もそれで良くなったとか』
『あの方、そんな一面が?』
『意外に面倒見が良いのよ。ケイさんから聞いてはいたけど、まさかエーデルフェルト家の当主なんてものを、ぬけぬけと演じられるなんて』
キュアマーメイドも驚きのマルセイユの面倒見の良さ。自分もエーデルフェルトの人間になりきるというのは並大抵のことではない。圭子を見習ったのだろうか?それは二人にはわからないが、マルセイユは意外に優しいのは把握できたのだった。
――黒江たちが海戦に出ている最中、駐屯地には黒江が集めた機材が並べられていた。この当時にはオーパーツもいいところな機材ばかりであったため、カタブツのウルスラは文句たらたらであったが、扶桑の次期主力戦闘機の選定に向けての評価試験の名目で集められたものである。黒江はその中では、『ドラケン』、『F-20』、『F-8』、『F-14』、『クフィール』で専用機を確保している。これは既に次期主力戦闘機に内定済みの機種以外に、扶桑に相応しい機種を選定するためであった。扶桑は月光や極光などのレシプロ双発戦闘機群、また、性能が旧式化した鍾馗や雷電に代わる『邀撃戦闘機』を独自に選定しようとしていた。各分野に従事する戦闘機を一機種に依存することを扶桑は嫌っており、邀撃戦闘機としては『ドラケン』をこの後に極秘に選定。クーデター事件で初お披露目となる。これは多種多様な機体の製造ライン乱立を嫌う日本側に知られるのを避けるためであり、戦闘車両の統廃合で大混乱が起こったことの教訓であった――
「姉さま…、なんですか、これぇ!?」
「諦めなよ。状況的に一騎当千が求められてるし、正規の補給頻度は下がってんだ。このくらいのチートは仕方ないよ」
ハルトマンは意外な事にクフィールやドラケンで専用機を確保しており、デルタ翼機を好むらしい。妹のウルスラはカールスラントでまだ理論検証段階にあったはずの『デルタ翼機』がダブルデルタ翼、カナード翼付きといった発展系が用いられる事に仰天する。ウルスラはあくまで技術畑であるため、技術チートの反対派だったが、戦線はそれどころではない。
「それに、敵も早晩にジェットを本格生産してくるだろうから、対策は取っておくに越したことは無いよ。……離れてな、エンジンのパワーを上げるよ」
ハルトマンは邀撃機として置かれているクフィールに乗り込み、タキシングを開始する。当時のジェット戦闘機の常識からすれば、『オーパーツ』なクフィール。ウルスラからすれば、チートもいいところな機種である。この当時のカールスラントは『次世代機』で時速1000キロ台の速度を引き出すための模索をしていたところであるため、それを超越する速度を持つクフィールは『オーパーツ』であった。姉がそんな機体で出撃してゆく事に複雑な思いを持ちつつも、素直に見送るウルスラであった。なお、黒江が好みでデルタ翼系の機体を専用機にしている事は『道楽』と見られたが、ドラケンやクフィールすら乗りこなす黒江は『エースパイロット』と呼ばれるに相応しいと評判である。扶桑軍ウィッチ出身パイロットで、ここまでやるのは他にあまりいないのも『道楽者』の評判が立つ理由だが。
――駐屯地 休憩室――
「やれやれ。エーリカの妹は噂通りの堅物のようね、マーメイド」
「ええ。貴方、今はメルトランディのようね?」
「ええ、まぁ。気がついたらメルトランディやってたのよ。だから、相手が誰だろうと戦うことには抵抗はないわ」
「流石ね」
「でも、不思議なめぐり合わせよ?プリキュアであり、メルトランディなんて。どのみち戦いと切っても切れない縁だし」
「言えてるわね。のび太さんからデータが送られてきたけれど、どういう事かしら、ビート」
「のび太から?‥…これは国連時代の施設の管理コードよ」
「旧国連の?」
「統合戦争時代以前の古いものよ。ヒーローユニオンがいくつかを引き継いだというけれど…、なるほどね」
「どういう意味?」
「のび太はヒーローユニオンから託されたってことよ、マーメイド」
「何を?」
「鳥人戦隊の遺産よ。その秘匿施設のコードよ。アデレードの地下。旧・地球守備隊が統合戦争以前に建設していた秘密基地のね」
「地球守備隊?」
「1970年代半ばに国連軍が設立した『イーグル』という組織が前身にあたる特殊部隊。軍隊系スーパー戦隊の管理組織だった組織よ」
キュアビートは地球連邦軍内部にいるため、その事情に精通していた。ジェットマン解散後の装備の管理、超新星フラッシュマンが置き去りにしたメカニックの回収が20世紀末になされた事、その施設には『グレートタイタン』も秘匿されていることを意味する。また、ゴーグルファイブの旧基地の機材、ダイナマンの装備もあり、ゴーグルシーザーやダイジュピターはその基地にモスボール保管されていたものを回収したものという。
「その施設、解散したスーパー戦隊の装備の管理集積所だったけれど、統合戦争で守備隊が解散した後は忘れ去られてたのを、昭和ライダー達が復活後に再整備したらしいわ」
「その関係でのび太さんに?」
「表向きは23世紀の野比家が払い下げの施設を買い取ったって体裁にするでしょうね。だけど、ブツはお宝よ。フラッシュ星の叡智やデンジ星の遺産が眠ってるもの」
スーパー戦隊の装備はバトルフィーバー以前の仮面ライダー系の技術の応用のものと、デンジ星の遺産をもとに造られたものに分類される。電子戦隊デンジマンの『デンジランド』はネオジャパンなどのネオ国家系コロニーの基になったとされるため、電子戦隊デンジマンが後世に遺した足跡は大きいと言える。デンジ星はゼントラーディでも名が知られていたほど繁栄していたが、ある時にベーダー一族によって滅ぼされ、地球で電子戦隊デンジマンを結成し、ベーダー一族を討ち滅ぼした事は知られている。それがゼントラーディが地球に興味を持った遠因である。
「デンジ星?」
「電子戦隊デンジマンの先祖が住んでいた惑星。ある時に悪の一族によって滅亡に追い込まれたという伝説の星。電子戦隊デンジマンはその血を受け継いだ子孫達なのよ。彼らによってスーパー戦隊の方向性が決まったの」
ビートはプリキュア覚醒後は地球連邦軍に在籍している関係上、ドラえもんと早期に接触。のぞみが覚醒めた頃には、既に活動を開始していたのである。
「貴方、詳しいわね…」
「先立って動くわけにもいかないから、あなた達が出揃うのを待ってたのよ。それに、S.M.Sからの編入の手続きに手間取って…」
「のぞみさんの事は?」
「ケイから聞いたわ。あの子も難儀な事になってるわね。タイムテレビで調べたけれど、この戦が終わったら、フェリーチェをフェイトに合流させて、ディケイドと別口で『プリキュア5の世界』を探させるべきね」
「仮面ライダーみたいな話ね」
「仕方ないじゃない。次元世界の可能性はパンドラの箱のようなものよ?負けた世界やエターナルとの戦いに至らない世界、他のプリキュアとつながりがない世界……きりがないわ」
「あれは悪意が吹き出まくったじゃない」
「でも、最後に希望は残った。のぞみを助ける上で必要なのは『最後に残る希望』なのよ、マーメイド」
キュアビートはパンドラの箱に残った希望を引き合いにして、プリキュア5の世界を探す意思を伝える。それはのぞみ当人にも後に伝わり、黒江と智子が体験する『オールスターズ大決戦』を経て、遂にその世界を見つける。一度目は顔出しに留めたが、二度目はフェリーチェがキャプテン・ハーロックに懇願して訪れ、アクアとミントを連れてくるのである。ただし、フェリーチェはその後、アクアとミントの世界ののぞみが納得しなかったという報告を受け、その説得に難儀し、何故か戦闘に発展してしまったという。(その時は仕方がなく、自分の知るのぞみの新技である『プリキュア・クラッシュイントルード』、『プリキュア・スターライトミーティア』でノックアウトせざるを得なかったという)
「それと、ドラえもんと見たのだけど……ココにいるのぞみを助けるためって、別の世界からかれんとこまちを連れてくるわけじゃない?もちろん、その世界にものぞみはいるから…」
「戦闘が起こったと?」
「ええ。どういうわけかガチンコの殴り合いに」
「どうしてそうなるのよ」
「私だって、わからないわよ、そんなの」
ビートがドラえもんと見た光景はどういう流れでそうなったのか、ガチンコ勝負であったらしく、その世界のルージュが止めるほどに急展開だったのは読み取れたが、なぜそういう流れになったかはわからない。
「ただ、のぞみ、頭に血がのぼると前後の見境なくなるって、昔にりんから聞いた事が…」
「それよ!」
「はぁ!?」
マーメイドはひらめいた。あくまで推測だが、アクアとミントを強引に連れて行ったのを、分身で誤魔化された事が許せなかったのだと。なぜ、自分たちも連れて行かないのかという疑念と『自分達からかれんとこまちを奪った』という被害意識があったのだろうと。
「だからって、ルージュやココが見ている前で決闘騒ぎなんて。それに、今のフェリーチェに現役時代のドリームのパワーでどうにかなると?最悪、ストナーサンシャインで…」
フェリーチェは鍛え上げられた後のスペックはベクトルが違う。故郷での神通力は無くしたが、別の意味ではそれをも超える力を身につけ、現役時代のプリキュア5では比較にならない強さである。ビートは『ワンパンノックアウトは余裕だろう』という。
「のび太についてきてもらうしかないかしら」
「それしかないわ。それに、闇落ちしかけた自分の姿は見たくはないでしょう。その時のあの子、夢の中で『娘に闇落ちを囁かれて』錯乱するから…」
Gウィッチとしてののぞみは半落ち後、『娘に闇落ちを囁かれ、自分の罪に苛まれる』夢を見るようになり、とうとう錯乱状態に陥り、独房に入れられてしまうほどに病んでしまう時期がある。そこから立ち直るには『プリキュア5の再結成』は必須である。そして、立ち直る時、次代のキュアドリームになったという『次女』の幻が自分に微笑みかけたという。
――もう二度と忘れない……。りんちゃんの無念、あの子の無情……、老いた私の……無力を……!――
そのことを予め調べたビートは複雑であり、同位体は知りたくないだろう。だが、選択はその同位体に委ねるべきか。二人は悩むのだった。ただ、のぞみが立ち直った際にそう言う事は、Gウィッチとしての彼女は長女と確執を抱え、次女が自分の意思を継いだことを信じるしかない状況で死の床についた表れなので、凄まじい重さである。それを同位体とは言え、前途溢れる14歳ののぞみに言うべきなのか?キュアビートとキュアマーメイドはその課題としばし向き合うことになった。ドラえもんも『あの子は次元世界で有数に薄幸な人生を辿った場合の世界線の転生らしいからね…。あの子を幸せにさせてあげたいって、コージくんは思ってるはずさ』と、転生したココが即座に結婚話に乗った理由を明らかにしている。フェリーチェやのび太たちが世話を焼く理由も少なからずはその境遇に由来するだろう…。悩んだ末、結論がどうにも出なかったためにドラえもんに相談することにした二人は、その日の勤務が終わった後、ドラえもんを呼び寄せ、相談に乗ってもらうのだった。